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資料1 |
「新しい時代における教養教育の在り方について」(答申素案)目次
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資料1 |
新しい時代における教養教育の在り方について(答申素案)
第1章 今なぜ「教養」なのか
(1) | 「教養の危機」 | ||
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(2) | 新しい時代にふさわしい教養の必要性 | ||
◇ | 我々は歴史的に大きな転換期・変革期に位置し、「教養の危機」ともいうべき状況に直面している。我々は、これを乗り越え、一人一人が自らにふさわしい生き方を実現することのできる社会を築くために、新しい時代にふさわしい教養を再構築していかなければならない。
とりわけ、21世紀は「知識社会」といわれる。知識が一層重要なものとなればなるほど、何のための知識なのか、それぞれにとって本当に必要な知識とは何なのか、根本を常に見直すことを通じて、人間と知識との有機的なつながりを回復することが必要であり、こうしたつながりを社会の中でよりよく生かしていく力こそが新しい時代に求められる教養であると考える。 |
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◇ | また、教養が求められているのは個人に対してだけではない。教養は、個人の人格形成や幸福の実現にとって重要であるのみならず、目に見えない社会のインフラストラクチャーでもある。教養ある社会を作ることは、それぞれの多様な生き方を個人としても社会としても認め合いながら、生涯にわたって自らを高め、社会の一員としての責任と義務の自覚を持って生きることのできる魅力ある社会を築くことである。このような社会の実現こそが、我が国を国際社会において尊重され、尊敬される「品格を備えた社会」として輝かせることになるものと考える。 |
第2章 新しい時代に求められる教養とは何か
◇ | 教養とは、個人が社会と関わり、経験を積み、体系的な知識や知恵を獲得する過程で身に付ける、ものの見方、考え方、価値観の総体ということができる。教養は、人類の歴史の中で、それぞれの文化的な背景を色濃く反映させながら積み重ねられ、後世へと伝えられてきた。 21世紀を迎え、変化の激しい流動的な社会に生きる我々にとって必要な資質や能力は何か、これを培うための教育はどうあるべきか、こうした観点から、我々は、新しい時代に求められる教養について検討を行い、その要素を次のように整理した。 |
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ア | まず、教養といえば知的な側面のみを連想しがちであるが、新しい時代の教養は、「知・徳・体」、「知・情・意」という言葉に示されるように、社会規範意識と倫理性、豊かな感性と美意識、主体的に考え行動する力、バランス感覚、体力や精神力などを含めた概念として捉える必要がある。 | |
イ | さらに、東西の冷戦構造の崩壊後、グローバル化が進む中で、他者や異文化、更にはその背景にある宗教を理解することの重要性が一層高まっている。我々一人一人が、幾多の歳月を掛けて育まれてきた我が国の伝統や文化、歴史等に対する理解を深めるとともに、異文化を理解する資質・態度を育むことが重要である。世界の人々と的確に意志の疎通を図るための外国語によるコミュニケーション能力を育成していくことも強く求められる。 | |
ウ | このような教養の礎として特に重要なのが、国語の力である。国語は、我が国において日常生活を営むための言語技術であるだけでなく、論理的思考力や表現力の育成、日本人としてのアイデンティティの確立、豊かな情緒や感性の涵養などに深くかかわるものである。すべての知的活動の基盤となる国語の力を、初等教育における教養教育の基礎に位置付ける必要がある。 | |
エ | また、教養を形成する上で、我々日本人にとって、礼儀・作法など型から入り、身体感覚として身に付けられる「修養的教養」は重要な意義を持っている。このためにも、我々の思考や行動の規範となり、教養の基盤を形成している我が国の生活文化や伝統文化の価値を改めて見直す必要がある。 | |
オ | あわせて、社会とのかかわりの中で自己を位置付け統制していく力、個人としての座標軸(行動の基準とそれを支える価値観)、主体性ある人間として向上心や志を持って生きる力、社会全体の幸福を考え、その実現に向かって行動することができる力、他者の立場に立って考えることができる想像力なども教養の重要な要素である。 | |
カ | これらのことを総合的に捉えれば、新しい時代に求められる教養の全体像を、地球規模の視野、歴史的な視点、多元的な視点で物事を考え、未知の事態や新しい状況に的確に対応していく力として総括することもできる。こうした教養を獲得する結果として、品性や品格といった言葉で表現される徳性も身に付いていくものと考える。 | |
◇ | このような資質や能力をだれがどこまでのレベルで身に付ける必要があるかは一律に決められるものではない。しかし、今後の激しい変化の中で、社会における自らの生き方を主体的に選び取り、異なる生き方や価値と調和して生きる力を身につけるために必要な教養を、一人一人が生涯にわたって自覚的に培っていく努力が必要であることは疑いない。 このために求められる教養教育の在り方について、以下に具体的に述べることとしたい。 |
第3章 どのように教養を培っていくのか