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5.  市町村教育委員会に人事権が移行した場合の問題点(自由記述より)

 広域人事を実施する上でのデメリットに関する記述が非常に多く見られた。また、人事権の移行に伴って、市町村教育委員会に求められるであろう行政能力に対して懸念する意見も多く見られた。以下では代表的な意見を列挙する。

〔都道府県教育委員会〕
広域人事に関するもの…24件
  「広域交流において、異動事務が繁雑になることが予想される」
「いわゆる教員の定住率の低い地域やへき地校をかかえている地区への人的配置が困難になることが考えられる」
「人事交流の停滞、教職員の高齢化をはじめ、都市部における教員の過剰と中山間地・離島における教員不足、事務量の増大及び財政難等々数え切れないほどの問題が生じる」
「市町村間の人事交流を図るようにしないと、地域間で教員の年令構成や男女比に較差が生じ、教育の質に差が出る可能性がある」
「小さな市町村においては、転勤の幅がせばまり、刺激が少なくなり教員の資質の向上に懸念される」
「人材育成の観点から、市町村の枠を越えた異動を積極的に推進しているところであるが、市町村に人事権が移譲された場合、資質ある教員の広域異動が困難になることが予測される」
市町村教委の事務能力に関するもの…9件
  「市町村合併が、順調に進んでいない本県の現状で人事権が移譲されれば、広域交流がストップし、財政力のある市町村と、そうでない市町村間の差が非常に大きくなる事が容易に予測される」
「教職員一人一人の異動先市町村を、いつ、誰が、どのように決めるのか自体が明らかになっていないため、異動その他が教職員の心に大混乱を生じさせ、学校教育の安定をゆるがす。」
「優秀な人材の確保(採用)や広域人事が困難になり、市町村格差が広がり、県全体の教育力が低下する恐れがある。」


〔教育事務所〕
広域人事に関するもの…94件
  「人事異動が停滞し、交流が減少し、教育の活性化が阻まれる」
「市町村をまたぐ人事異動が減り、教員の資質向上に影響を及ぼす。特に、1市1中学校ではまったく異動がなくなる」
「市町村教委間の意見交換や調整事務が大変となる」
「多くの離島を抱える本県においては、僻地にある学校数が5割にも上回り、全県的な広域人事を進めなければならないが、市町村教委への人事権が委譲されれば、県下全体の人事が停滞することになる」
「市町村教委外への異動については優秀な人材の抱え込みが多くなり、広域にわたる人材育成の視点からマイナスと考える」
「異動希望が郡市部に集中し、郡部で人材不足が生じる」
「市町村を異にする人事異動が停滞し、長年勤務者の増大が予想される」
「市町村間での異動が縮小・停滞し、全県的な視野での移動が難しくなる。そのことにより、教職員の年齢や、質に大きな偏りが生じる。又、教職員の生活根拠地と勤務地のずれが拡大される」
「採用と異動の権者が異なり、一貫した人事や現職教育が難しくなる」
「市町村に人事権が移譲された場合、調整役をどうするのかが問題である」
「域内全体のバランスのとれた公平な人事異動に、支障が出るおそれがある」
「人事交流の広範囲が狭くなり利便地とはいえない市町村に経験豊富な人材を配置することが難しくなる。(一般教員)」
「指導力に課題のある人の異動がより難しくなるのではないか」

市町村教委の事務能力に関するもの…28件
  「様々な面での市町村間の格差が大きくなり、規模は大きな市中心の人事異動になりやすい」
「小さな町村内だけでの人事は不可能であり、他市町村との交流を進めるためには県の関与が必要」
「市には管理主事がおかれ、教員籍であるので、人事は行えるが、町村教委には管理主事をおく余裕がなく、しかも行政出身者しかいない教委もあり教育あるいは教員についての把握が不足しがちである。また規模の小さな町村では学校数も少なく人事異動は他の市町村間との異動となりその調整に苦労を要すると思われる。」
「各市町村が異動のための基準をいかに設定するか」
「人事を行う職員の確保と能力開発、任命権者と服務監督者の関係の明確化等の課題がある」
「各教委の教員研修体制の強弱により教育の地域間格差が拡大される」
「人事担当者が配置するための情報や力量が不足→よって適正な人事配置は望めない。反面、偏りのある人事配置の恐れも懸念する。」
「任命権者としての県教育委員会と服務監督としての市町村教育委員会としてのそれぞれの権限、役割が不明確になる心配が生じるのではないか」
「市町村教委の人事担当者の人数等の配備が十分になされていないことも考えられる。(財政力の関係で)」
「町教委はスタッフ不足で、調整役が必要」



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