第2章 幼児教育の充実のための具体的方策

 前章で述べたように,幼児教育の今日的課題として,幼児教育を構成する家庭や地域社会の教育力の低下が指摘されており,子どもの育ちに変化を及ぼしている。
 このため,幼稚園等施設が中核となって家庭や地域社会の教育力を再生・向上させていくとともに,幼児教育と小学校教育との接続等,幼稚園等施設の教育機能を強化し,拡大していくことが必要である。
 したがって本章においては,前章における今後の幼児教育の取組の方向性を踏まえ,取り組むべき三つの課題と重点的に実施すべき七つの施策に整理し,幼稚園に係る施策を中心に幼児教育の具体的方策を提言する。

 三つの課題と七つの重点施策フローチャート

第1節 幼稚園等施設の教育機能の強化・拡大

1 すべての幼児に対する幼児教育の機会の提供

 従来からの幼児教育の成果を踏まえ,幼稚園を中心として幼児教育の機会の拡大に努めるとともに,幼児教育振興プログラム(平成13~17年度の5か年計画)について引き続き推進していく。

(1)幼児教育の機会の拡大

  • 幼稚園教育の地域的偏在の問題等を踏まえ,入園を希望するすべての満3歳児から5歳児の就園を目標に幼稚園の整備を進めることなど,幼児教育の機会の拡大について,総合施設(次章参照)に関する検討状況も踏まえながら,更に検討し,推進,充実する必要がある。
     その際,障害のある幼児等への対応についても配慮することが必要である。また,発達障害者支援法の成立を踏まえ,発達障害の早期発見及び発達支援に留意する必要がある。

(2)幼児教育振興プログラムの着実な推進と検証等

  • 幼児教育振興プログラムにおける幼稚園教育の条件整備に関する施策について,引き続き着実な推進を図るとともに,適切な検証を行う。
     具体的には,例えば,子どもの育ちをめぐる今日的課題を踏まえ,基本的な生活習慣や態度,人とかかわる力などが幼児期に確実に育まれるよう,幼稚園教育要領の趣旨や内容についての関係者等の理解を深める事業を更に推進する必要がある。
     加えて,効果的・効率的な幼児教育の施策の在り方について,新たなプログラムの策定も含め,検討することが望まれる。

(3)次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画への位置付け

  • 地方公共団体や事業主が,次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画を策定し実施するに当たっては,幼児教育の充実について十分配慮することが望まれる。

2 発達や学びの連続性を踏まえた幼児教育の充実

 子どもの育ちに係る今日的な課題を受け,幼児教育と小学校教育との連携・接続の強化・改善や3歳未満の幼稚園未就園児の幼稚園教育への円滑な接続など,幼児の発達や学びの連続性を踏まえた幼児教育の充実を図っていく。

(1)小学校教育との連携・接続の強化・改善

 遊びを通して学ぶ幼児期の教育活動から教科学習が中心の小学校以降の教育活動への円滑な移行を目指し,幼稚園等施設と小学校との連携を強化する。特に,子どもの発達や学びの連続性を確保する観点から,連携・接続を通じた幼児教育と小学校教育双方の質の向上を図る。
 具体的には,幼児教育における教育内容,指導方法等の改善等を通じて生きる力の基礎となる幼児教育の成果を小学校教育に効果的に取り入れる方策を実施する。
 その際,例えば幼稚園においては園児の8割近くが私立幼稚園に在園していることなどを踏まえ,市町村教育委員会が積極的役割を果たすなどして,公立・私立の連携を図りつつ実施することが必要である。

ア 教育内容における接続の改善
  • 幼稚園等施設において,小学校入学前の主に5歳児を対象として,幼児どうしが,教師の援助の下で,共通の目的・挑戦的な課題など,一つの目標を作り出し,協力工夫して解決していく活動を「協同的な学び」として位置付け,その取組を推奨する必要がある。
  • 遊びの中での興味や関心に沿った活動から,興味や関心を生かした学びへ,さらに教科等を中心とした学習へのつながりを踏まえ,幼児期から児童期への教育の流れを意識して,幼児教育における教育内容や方法を充実する必要がある。
  • 幼稚園教育要領等で幼稚園等施設と小学校との連携の推進等について,より明確化する必要がある。また,これに関連して,将来的には,学校教育法第1条における学校種の規定順序の在り方についても見直すことが望まれる。
イ 人事交流等の推進,奨励
  • 幼稚園等施設の教員等と小学校の教員の合同研修等を通じて相互理解を深め,教員等の資質向上を図り,きめ細かな教育を展開する必要がある。
  • 幼稚園等施設と小学校の双方において,非常勤講師等で相互の経験者を活用することや,人事交流を推進するなどの施策を通じ,より一層,双方の教育の質を高める必要がある。
  • 加えて,特に幼稚園と小学校との連携に関しては,人事交流や相互理解を進める上で,教員免許の併有を促進する必要がある。例えば,免許法認定講習等の実施方法の改善について,中核市等への実施主体の拡大,都道府県の認定講習等の実施の拡大等を検討することが望ましい。
ウ 「幼小連携推進校」の奨励,幼小一貫教育の検討
  • 市町村教育委員会の支援の下に,教員等の人事交流,「協同的な学び」や小学校の生活科等での幼稚園等施設と小学校との合同活動等,連携の取組を積極的に行う幼稚園等施設・小学校を,例えば「幼小連携推進校」として奨励し,その成果や課題に関する情報の提供に努めるなど,各地域に適した連携の強化が進むようにする必要がある。
  • 幼稚園等施設の教育と小学校教育の一貫性に配慮した教育の在り方について,現在の連携に関する様々な取組の進展状況,その検証,学校間連携全体の在り方の議論,幼小一貫教育の必要性などを踏まえながら検討する必要がある。

(2)3歳未満の幼児の幼稚園への接続の扱い

  • 幼稚園においては,幼稚園就園前の幼児が,家庭・地域における生活から幼稚園における集団での学習活動へ円滑に接続できるよう,例えば3歳未満の段階から親子登園や相談事業等を実施するなどの取組を推進することが適当である。
     また一方で,幼稚園は就園した3歳児が集団生活に適応できるよう十分に配慮していくべきである。
  • 3歳未満の幼児の幼稚園就園について,地域によってニーズの高まりがあり,構造改革特別区域において満3歳に達する年度の当初からの幼児の就園事業を行っている。
     このため,実施状況を引き続き検証しつつ,総合施設に係る検討状況や,保育所等の既存施設や従来からの子育て支援の取組等の状況なども踏まえ,3歳未満の幼児の幼稚園就園についてどのように考えるか,専門的な検討を行う必要がある。この場合,3歳以上の幼児と比較した発達段階の違いや個人差の問題,職員配置,教育課程上の位置付け,施設設備等の条件整備,幼稚園教育の在り方などに配慮することが必要である。

3 幼稚園教員の資質及び専門性の向上

 社会環境の急速かつ大きな変化に伴う幼児教育の多様な展開に対応するため,幼稚園教員の養成・採用・研修等の改善や上級免許取得の促進を図るなど,その資質及び専門性の向上を図る。

(1)幼稚園教員の養成・採用・研修等の改善

  • 教員志望者自身が多様な知識や豊かな体験を得ること,また,養成段階においても一般教育科目の取得のみならず,インターンシップ(就業体験)等,幼稚園現場での実践を経験することが重要である。
  • 標準的な養成年限である4年間の養成を経た一種免許状を有する教員の増加策を検討することが必要である。
  • 採用・処遇の改善による経験豊かな教員の配置を推進することや,経験に応じた研修体系を整備すること,また,子どもの育ちの今日的課題に対応して養護教諭の有効な活用を図ることが望まれる。
  • 現在,女性教員の割合が9割を超えているが,ある程度幼稚園にも男性職員がいる方が幼児の教育上好ましいとの意見も踏まえ,男性職員の割合を高める方策等を講ずることが望まれる。
  • 人事交流や合同研修等が幼稚園教員の資質向上に好影響を与えると考えられるため,小学校教員など他校種の教員や保育所保育士との人事交流,合同研修を推進する必要がある。
  • 家庭・地域社会への子育て支援などの今日的課題に対応するために,障害のある幼児等に関する専門性の向上,カウンセリング能力の向上など,養成段階のほか幼稚園の内外における研修による教員の資質向上が求められている。
     また,研修機会の拡大,研修内容の充実のために,都道府県教育委員会等が主催する研修への私立幼稚園教員の参加や参画を促進する必要がある。

(2)上級免許状の取得促進,所有者の配置拡大

  • 現在,現職の幼稚園教員は二種免許状所有者が中心であるので,本来,要請されている一種免許状所有者の増加を促進する必要がある。そのために,幼児教育に関する政策プログラムに盛り込むなど,地方公共団体が一種免許状取得促進の努力目標を設定することが望ましい。
  • 二種免許状を所有する現職教員が一種免許状を取得することなど,上級免許状取得のための免許法認定講習等の実施方法の改善について検討する必要がある。例えば,中核市等への実施主体の拡大,都道府県の認定講習等の実施の拡大等を検討することが望ましい。
  • 一種免許状所有者の配置を促進するための方策を検討する必要がある。

4 幼稚園等施設による家庭や地域社会の教育力の再生・向上

 幼稚園等施設において行われている子育て支援や幼稚園における預かり保育の取組を,家庭の教育力の再生・向上,「親と子が共に育つ」という教育的視点から改めて整理し,充実を図る。また,幼稚園等施設が地域社会の一員として地域社会の教育力の再生・向上に資する役割を果たしていく。

(1)子育て支援の在り方

ア 幼稚園等施設における子育て支援の推進等
  • 「親と子が共に育つ」観点から,幼稚園等施設を利用している幼児の家庭に対する支援を推進していくことが必要である。例えば,子育てに係る相談の実施,情報提供,親子参加型の事業等の実施を働き掛ける必要がある。
  • また一方で,幼稚園等施設を利用していない子どもを育てる家庭の教育力向上のために,親子登園,園庭開放や子育て相談を実施するなど,幼稚園等施設が積極的にかかわっていく必要がある。このことは,特に3歳未満の幼児について配慮される必要がある。
  • 子育て支援の望ましい在り方については,実施体制,内容・方法など,幼稚園教育要領等における位置付け等の明確化も含め検討する必要がある。
  • 現在,各幼稚園等施設において行われている子育て支援の内容や方法について,国や教育委員会等が具体的な事例を収集・集約し情報提供することによって各幼稚園等施設におけるプログラムの開発・実施等を奨励する必要がある。
イ 地域社会との双方向ネットワークの構築
  • 都市化や核家族化等により分散された子育て資源を活用していくため,幼稚園等施設と地域社会との双方向のネットワークを形成していく必要がある。
  • 具体的には,幼稚園等施設が,地域の実情に応じて,児童館・公民館等の施設,地域のボランティア団体及び民生・児童委員などの地域社会の教育力を積極的に活用する姿勢が求められる。
  • 同時にまた,幼稚園等施設が,地域の祭り等に積極的に参加するなど地域社会の触れ合い拠点となったり,あるいは地域住民の希望者を募って子育てボランティアを育成したりするなど,自ら地域社会の教育力を高めることが求められる。

(2)幼稚園における預かり保育の明確化

  • 幼稚園における預かり保育については,地域の実情や保護者の要請により実施している面もあるが,幼児の生活の連続性の観点から家庭や地域社会の教育力を補完するとともにその教育力の再生・向上につながるという意義もある。
  • 幼稚園の教育活動としての預かり保育の望ましい在り方について,実施体制,内容・方法,実施時間,適切な名称など,幼稚園教育要領における位置付け等の明確化も含め検討する必要がある。
  • 現在,各幼稚園において行われている預かり保育の内容や方法について,国や教育委員会等が具体的な事例を収集・集約し,情報提供することによって,各幼稚園におけるプログラムの開発・実施等を奨励する必要がある。

第2節 家庭や地域社会の教育力の再生・向上

1 生涯学習振興施策や働き方の見直し等による家庭や地域社会の教育力の再生・向上

 家庭・地域社会の教育力を高めるためには,家庭・地域社会において,生涯学習振興施策等を推進することや,企業における働き方の見直し等を進めることが重要である。

(1)生涯学習振興施策等の推進

  • 生涯学習振興施策の一環である家庭教育に関する学習機会・情報の提供や相談体制の整備等を推進する。今後一層,一人でも多くの親に対するきめ細かな家庭教育支援や地域の大人たちの教育力を結集した子どもの活動拠点の整備など,家庭や地域社会の教育力の再生・向上を図る取組を充実する必要がある。
     その際,家庭教育支援を行うに当たっては,子育て中の親のニーズを直接把握しやすい地域の子育て支援団体(NPO(民間非営利団体)やボランティア団体など)等との十分な連携に留意する必要がある。
    「つどいの広場」事業等の福祉関連施策や,まちづくり関連施策等についても,「親と子が共に育つ」という教育的視点を踏まえた上で有効に活用していくことが求められる。

(2)企業における働き方の見直し等

  • 幼児教育の充実を考える上で,育児休業制度など雇用施策等の活用も重要である。その際,企業においては,次世代育成支援の視点に加え,「親と子が共に育つ」視点に立って,より一層子育て家庭に対する理解を深め働き方の見直しを進めることが望まれる。
     例えば,雇用の継続等,育児休業制度等の制度・対策の定着・取得率の増加に向けた取組を推進する。また,働き続けながら子育てを行う労働者が,子どもとかかわる時間を増やせるようにするためにも,労働時間の短縮,短時間勤務制度,在宅勤務等の推進が期待される。
     加えて,仕事と生活の調和を図ることが求められてきている中,幼児教育の充実の観点からも仕事と家庭生活の両立を図るための取組が期待される。
     その際,男性の幼児教育への参加についても十分に図られるべきである。
  • 各企業に雇用される労働者は,同時に地域社会の構成員であるため,企業においては,地域の子育て支援活動等に参加しやすくするために,例えば労働者にボランティア休暇の取得を促進するなどの取組により,地域の教育力の再生・向上に貢献することが望まれる。

2 幼稚園等施設による家庭や地域社会の教育力の再生・向上

 上記に加え,前節で述べたように,幼稚園等施設における子育て支援等の取組を通じて,家庭・地域社会の教育力の再生・向上を図ることも重要である。

第3節 幼児教育を支える基盤等の強化

1 地域の人材等の積極的活用

 地域の多様な人材等を活用するなど外部人材等の活用により幼児教育を支援するための方策を講ずる。

(1)幼稚園等施設における地域の人材等の活用

  • 特別な支援を必要とする幼児に対する教員等へのアドバイス,子育てに不安を抱える保護者へのカウンセリングなどに関し,地方公共団体等が教員と保護者を支援する「保育カウンセラー」を導入し,活用しやすくなるような方策を検討する必要がある。
  • 地域の実情に応じて,児童館・公民館等の施設を幼稚園等施設の活動の場として活用していくとともに,地域の多様な人材(民生・児童委員,保護司,育児経験者,中高生・大学生,退職者等)を外部人材として幼児教育においても活用する必要がある。
     特に,保育体験学習等により,中高生・大学生など,これから親になる世代に幼児と接する体験の機会を提供することは,親の子育て意識を醸成する観点からも有用である。
  • 幼稚園等施設を利用する幼児の保護者もまた,地域の教育資源である。親をはじめとする保護者やPTAのかかわりを,保育の「参観」から始めて,施設の行事への「参加」,さらには施設の計画の策定や外部評価等への「参画」へと高めていくことが必要である。また,園児の卒園後も保護者が継続的に幼稚園等施設を支える関係を構築することも望まれる。
  • 幼児の多様な体験の機会を増やすため,幼稚園等施設において地域の人材や専門分野の外部人材を活用しやすくするような制度を検討する必要がある。

(2)幼児教育にかかわる地域の人材等の育成

  • 幼児教育に係るボランティア人材バンク(ボランティアの登録・紹介制度)の整備など,ネットワークの形成の促進を図るとともに,講座・研修等によって幼児教育を支える人材の育成を図ることが求められる。

2 幼稚園等施設を地域社会で支える基盤等の充実・強化

 幼稚園等施設を地域に開かれたものにしていくとともに,地域社会での幼児教育の振興の取組を支援するために,各幼稚園等施設及び幼児教育全体の持続的な改善を促すための基盤を整備し強化していく。

(1)幼稚園における自己評価・外部評価と情報提供等の推進

  • 幼稚園においては,その教育の水準の維持・向上のため,子どもの健やかな成長を保障する観点から,自己点検・自己評価を充実するとともに,関係者による評価や第三者評価等,外部からの評価の導入を検討していくことが必要である。
     また,自己評価等の結果の公表等,保護者や地域への情報提供,情報公開に努めることが望まれる。
  • 地域に開かれた信頼される幼稚園とするため,公立・私立の幼稚園において学校評議員制度等を積極的に活用することが必要である。
     また,同様の趣旨から,公立幼稚園においては地域の実情に応じて学校運営協議会制度の活用も検討されることが望まれるとともに,制度の趣旨にかんがみ,私立幼稚園や他の施設においても,同様の取組が行われることが期待される。

(2)幼児教育を支援する拠点機能(センター機能)の整備

  • 幼稚園等施設や,家庭・地域社会における教育力を支えるため,各地域の実情に応じ,幼稚園等施設や家庭・地域の取組を支援する機能を集約した拠点を整備する必要がある。
     支援の主体としては,市町村等地方公共団体,教員養成系大学等,幼稚園関係団体等が考えられる。
     活動内容としては,例えば,カウンセラー等専門家の派遣,教育課程の編成支援,教員等への研修,調査研究,外部からの評価の推進,保護者の相談事業,子育て講座等の実施などが求められる。

(3)幼児の状況等に関する国及び地方を通じた実証的な調査研究の推進

  • 幼児の状況に関する国及び地方を通じた実証的な調査研究を推進・継続することにより,幼児を取り巻く環境,発達の課題等を明らかにするとともに,研究成果を蓄積し,継続して社会に提供する必要がある。
     国の取組としては,例えば,幼児にとって望ましい教育時間等についてはどの程度が適切かなど,幼児教育の課題をテーマとして,大学・研究機関との連携による各種調査,そのデータベース化,脳科学・発達心理学などの成果を踏まえた学際的アプローチによる調査研究手法等の開発,大学・研究機関・研究者による子どもに関する調査研究の支援等が考えられる。
     地方公共団体の取組としては,幼児を取り巻く環境,発達の課題等に関する定点調査の実施等が考えられる。

(4)幼児教育を推進しやすい行政体制作り

 公立幼稚園に係る事務は都道府県・市町村の教育委員会が所管し,私立幼稚園に係る事務は都道府県知事が所轄していることが多い。このような現状を踏まえつつ,公立・私立の幼稚園等施設を通じた行政の体制の整備について検討する必要がある。

  • 幼稚園教育事務についての都道府県と市町村の役割
     地域に身近な市町村が幼児教育の中心的な役割を担い,公立幼稚園のみならず私立幼稚園も含めてその地域全体の幼児教育の水準の維持向上を図るべきである。この点,都道府県は地方自治法に基づき,事務の一部を市町村に移譲することも可能とされている。これらを踏まえ,今後,都道府県と市町村それぞれの幼稚園教育事務の役割の在り方について,総合施設における検討状況も踏まえながら,中長期的に検討していく必要がある。
  • 幼児教育事務における教育委員会の役割
     公立・私立の幼稚園などに共通する横断的・総合的な施策(幼児教育に関する政策プログラムの策定,幼児教育と小学校教育との連携など)の円滑な実施を図るため,法令上の取扱いを含め,教育委員会の役割を明確化することを検討する必要がある。

第4節 その他の課題

(1)幼稚園の教育環境の整備の在り方

  • 幼稚園の教育環境の整備の在り方については,以下の意見を踏まえ,総合施設における議論も踏まえつつ,今後更に専門的・技術的な検討が必要である。
    • 職員配置の在り方については,幼児の発達段階や一人一人に応じたきめ細かい教育を行う観点から,他の学校種における取組の進展等も踏まえつつ,検討を求める意見
    • 施設設備の在り方については,地域の創意工夫を生かした教育内容・方法に対応した保育空間の確保等,施設設備の基準の見直しを求める意見

(2)幼児教育の振興に向けた関係者の連携協力と教育投資の充実

  • 幼児教育の振興には,国民各層の幅広い理解と協力が不可欠であり,国や地方公共団体,教育・保育関係者はもとより,一人一人の国民,企業やメディアなどの関係者の取組とその相互の連携協力が求められる。
  • また,教育は未来への先行投資であり,今後,幼児教育の振興を図っていくためには,幼児教育分野への重点的な資源投入を図る必要がある。現在の厳しい財政状況の下で,そのような重点的な資源投入を実現していくためには,今まで以上に幼児教育の質の向上を図り,教育投資の費用対効果を高めるなど,国民の理解・支持を得ることができるよう努めていく必要がある。

お問合せ先

初等中等教育局幼児教育課

(初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室)