(2)経済界からの主な提言

21世紀を生き抜く次世代育成のための提言‐「多様性」「競争」「評価」を基本にさらなる改革の推進を‐ (日本経済団体連合会2004年4月)

  • 企業内外の企業との熾烈な競争の中にあり、特に、知恵で競い合う時代になっている。こうした中、産業界は以下の3つの力を備えた人材を求めている。第1に「志と心」である。「志と心」とは、社会の一員としての規範を備え、物事に使命感をもって取り組むことのできる力である。第2に「行動力」である。「行動力」とは、情報の収集や、交渉、調整などを通じて困難を克服しながら目標を達成する力である。第3に「知力」である。「知力」とは、深く物事を探求し考え抜く力である。
  • 現状では、新卒採用者の専門知識のレベルは低下し、仕事を通じて社会に貢献しようという使命感、役割意識も希薄になっている。「志と心」、「行動力」「知力」ともに不足していると言わざるを得ない。明確な目標を持ちにくい時代であることもその背景の一つと考えられるが、このような時代を生き抜く上で、大学在学中に、自分で目標を立て、その達成に向けて継続的に課題に取り組む意欲を持続させ、試行錯誤し取り組んだ体験を有することは、その後の人生において大きな拠り所になる。大学がそのような体験を得ることができる機関に生まれ変わることを望みたい。
  • 具体的には、各大学が、人材輩出機関としてどのような役割を果たすかという点について特色ある方針を立て、これを実施することが必要である。加えて、学生などによる授業評価を通じて授業の質の向上を図るとともに、授業形式の工夫(例えば、教員側からの一方的な講義から対話型の指導への転換など)に努めるべきである。その上で、成績評価の厳格化に基づき出口管理を強化し、将来の職業生活においてベースになる知識を学生にしっかり身に付けさせてから社会に送り出すことを徹底すべきである。

戦略的な国際標準化の推進に関する提言(日本経済団体連合会2004年1月)

  • 欧米においては、公的研究機関や大学が、国際標準化に積極的な役割を果たしている。わが国においても、公的研究機関や大学の研究者が研究活動の一環として国際標準化に取り組むことにより、国際標準化により積極的な役割を果たしていくことが重要である。
  • 大学においても、今後、国際標準化の活動を充実させていくことが期待される。
  • さらには、政府が、国際標準化の支援活動を充実させていくにあたっては、大学や公的研究機関の研究者にも配慮すべきである。
     国際標準化が産業競争力に与える経済効果の分析においても、大学の研究者の貢献が期待される。

「若者が自立できる日本へ」-企業そして学校・家庭・地域に何ができるのか-(経済同友会2003年4月)

  • 社会人としての力とは、基礎的な学力、自分の考えを伝え、他者の考えを理解する力、他者を尊重し、円満な関係を築きながら共に行動する力、自分自身をコントロールしたり、動機付けする力、必要なときに自ら学ぶ力、そして悪いことを悪いと思う心などである。これを基盤に、就業観や職業に関する知識を身に付け、自分の強みや個性を認識することで、それぞれの人生における目標を見出すことができるのである。そうした「自立した個人」を若いうちに育成することが重要である。
  • 大学では、まず基盤となる教養教育(哲学、歴史、文学、芸術、科学など)を重視する。その上で専門教育・実践教育を大学院も含めて充実させる。
     大学は大衆化の時代を迎え、自由競争のもと、それぞれの特色を明確にした多様な教育を提供していく必要があるが、専門性の追求とともに、哲学的なものの考え方や人間観を深めるため、教養教育を必修とし、徹底して学べるようにすべきである。

産業力強化の課題と展望‐2010年におけるわが国産業社会‐(日本経済団体連合会2003年4月)

産業技術人材の育成促進

  • 大学については、学部教育の充実を図るとともに、特に工学系大学院におけるより実践的な教育体制の構築、産業の実態に即した学科の設置などを強化すべきである。また、米国に倣って、社会人などを対象としたMOT(ManagementofTechnology)コースを普及させることも必要である。

開業・創業の促進

  • 今後、大学をプラットフォームとして活用した産学官の連携や起業家支援、起業家や高度専門人材の育成強化、大学と密に連携するインキュベーターやテクノロジーパークの整備などにより、クラスター形成を加速することが必要となる。

人材育成システムの強化

  • 高い能力・スキルを有する高度専門人材へのニーズが高まっているにもかかわらず、雇用の流動化が進むにつれて、企業・個人の人的投資はむしろ減少する惧れも指摘されている。
  • 経営や事業再生、ベンチャーなど、わが国の競争力強化、経済活性化の核となる高度専門人材の育成のため、スキル標準の策定やカリキュラム・教材開発などのインフラ整備に集中的に取り組むべきである。また、このプログラムを実践する場として、大学の独立行政法人化と第三者評価体制の整備、専門職大学院の設置促進などを通じた高等教育機関の充実を図る。

大学と人材育成システムの改革を目指して‐社会活性化のための人材育成サイクルの実現‐(関西経済同友会人材育成委員会2001年4月)

  • 21世紀に求められる人材は、グローバル化や急速な科学・技術の高度化に対応でき、国際競争を勝ち抜いていく人材である。
  • かつての勤勉性・協調性だけを備えた人材ではなく、政府や企業への依存心から脱却して、競争社会を勝ち抜く自律性と気概を備えた人材が必要である。
  • 加速する技術革新に柔軟に対応して新たな付加価値を創出するだけでなく、日本の次代のリーディングカンパニーひいては産業を築いていくだけの、高い専門性と独創性を備えた人材が求められる。

グローバル化時代の人材育成について(経済団体連合会2000年3月)

  • 国民の平均的な基礎知識が高いことが我が国の強みであったが、これからはあらゆる人材について主体性、プロ意識、知力等の新しい能力も求められる。
  • 指導的立場の人材については、哲学を含む幅広い教養を前提とした、以下のような人材が求められている。
    • 将来ビジョンを示すことのできる人材
    • 様々な意見をまとめて人材を糾合し、物事を確実に成し遂げる人材 など
  • 大学は、経済社会の変化に迅速に対応し、国際的に活躍できる人材を育成するため、実社会とのつながりを重視し、開発者の先行者利益の獲得を確実にすることで技術革新にインセンティブを与える知的財産権をはじめ、起業家教育、情報化教育など実践的教育の充実を図るべきである。

志ある人々の集う国‐志を育て、尊重し、達成できる新しい日本を目指して‐(経済同友会1999年6月)

  • これからの新しい日本は社会の様々な分野で性別・年齢・人種・国籍を問わず、志ある個人が生き生きと活躍することから生じるエネルギーによって大きく支えられる。
  • グローバルなコミュニケーションツールとしての英語のレベルを向上する。また、高等教育では英語に加え、さらに他の外国語を本格的に習得できるゆとりと自信を確保する。
  • 国際的に通用する、プロフェッショナルなビジネスマン養成のための教育機関としての大学院を充実する。

(文部科学省により抜粋)

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