〔3-5〕高等教育の発展を支える財政支援の在り方

(1)高等教育への財政的支援の拡充

  • 高等教育機関は、教育・文化、科学技術・学術、医療、産業・経済等社会の発展の基盤として中核的な機能を有する極めて重要な存在である。
  • 我が国の高等教育は、国公私立の三つの設置形態による機関がそれぞれの特色を発揮することにより発展してきているところであるが、中でも私立学校の比重は高く、例えば、大学・短大・高専の学校数・学生数ともに約4分の3を占めるなど、私立学校は我が国の高等教育の普及と発展に大きな役割を果たしてきた。また、高等教育の費用負担はこれまで家計に多くを依存してきている。現在では、国立・私立を問わず学生納付金が国際的に見てもかなり高額化しており、これ以上の家計負担となれば、個人の受益の程度との見合いで高等教育を受ける機会を断念する場合が生じ、実質的に学習機会が保障されない恐れがある。国は、個人の経済状態を問わず高等教育を受ける機会を実質的に保障して「ユニバーサル・アクセス」を実現する見地から、私立学校振興助成法の趣旨に沿った私学助成の一層の充実を図るとともに、国立大学法人への支援の更なる強化、意欲・能力のある個人に対する支援を一層推進するための奨学金をはじめとする学生支援の充実等の各般の措置を推進することにより、教育・研究条件の維持・向上とともに学習者の教育費負担の軽減に努めるべきである。
  • このため、高等教育への公財政支出の抜本的な拡充を図るとともに民間企業や個人等からの資金の積極的導入に努めることが必要である。
  • 高等教育の重要性にかんがみ、各国で高等教育への投資を充実しつつある。
  • 我が国においても、欧米並みの公財政支出の実現に向けた努力をしていかねばならない。そのためには、全ての関係者が、この点について国民(=納税者)の理解を得られるよう最大限の努力をする必要がある。
  • 高等教育を受ける学生個人とともに、高等教育を受けた人材によって支えられる現在及び将来の社会もまた受益者である。このことは、高等教育がエリート段階(進学率15%未満)、マス段階(同15%以上50%未満)又はユニバーサル段階(同50%以上)のいずれにある場合でも基本的に変わるものではないと考えられる。
  • ユニバーサル段階では、高等教育の普及によって個人が高等教育を受けたことによる収益は低下することと一般的には考えられるが、知的なネットワークの広さと質が極めて重要な意義を持つ知識基盤社会においては、質の高い労働力や研究成果の供給による利益の他に、層の厚い高等教育の存立そのものが経済社会全体の発展の基盤として不可欠の存在となるものと考えられる。

(2)高等教育機関の多様な機能に応じたきめ細やかなファンディング・システム

  • 高等教育への国からの財政的支援は、伝統的に、(a)国立学校特別会計や私学助成による機関運営経費の措置と助成、(b)科学研究費補助金や各種の委託研究費等の研究活動助成、及び(c)育英奨学等の学生支援経費が中心であったが、それぞれの趣旨・目的は異なるものと考えられ、これら全体で高等教育へのファンディング・システムを構成するとは必ずしも明確に意識されなかった。近年は、(a)(b)の中間的な形態として(d)「21世紀COEプログラム」「特色ある大学教育支援プログラム」等の国公私を通じた競争的・重点的支援、競争的な研究資金の間接経費や国立大学法人に関する教育研究特別経費の措置、(b)(c)の中間的な形態として(e)ティーチング・アシスタント(TA)やリサーチ・アシスタント(RA)への支援、日本学術振興会特別研究員事業等が行われるようになり、支援の形態の多様化が進められてきた。
  • 今後の財政的支援は、競争的環境の中で高等教育機関が持つ多様な機能に応じた形にシフトし、機関補助と個人補助の適切なバランス、基盤的経費助成と競争的資源配分の有効な組み合わせにより多元的できめ細やかなファンディング・システムが構築されることが期待される。これにより、国公私それぞれの特色ある発展と緩やかな役割分担、適正な競争条件の確保が目指されるべきである。
  • 具体的には、平成16(2004)年時点との比較で言えば、1.国立大学法人運営費交付金・施設整備費補助金は教育研究の特性に配慮した経営努力を求めつつ、政策的課題(地域再生への貢献、新たな需要を踏まえた人材養成、大規模基礎研究など)への各大学の個性・特色に応じた取組を支援することができるよう、所要額を確保する必要がある。2.私学助成は、基盤的経費の確保を図りつつ、傾斜配分の考え方に基づいて特別補助や高度化推進特別補助に相当する部分を中心に拡充する必要がある。3.国公私を通じた競争的・重点的支援は、大幅な拡充が期待される。4.企業向け研究費補助金を大学へ開放するとともに、競争的な研究資金の間接経費を充実する必要がある。5.高等教育を受ける意欲と能力を持つ者を経済的側面から援助するため、奨学金等の学生支援を充実する必要がある。
  • 高等教育機関の財源として、学生納付金や国からの支援だけではなく、民間企業や個人等からの寄附・委託費や附属病院収入・事業収入等の自主財源も確保し、財源を多様化することが望まれる。国はそのような努力を積極的に支援すべきである。
  • このような民間企業や個人等からの支援の充実は、社会の大学に対する評価をフィードバックし、大学の社会貢献を一層促す上でも効果的と考えられる。

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