初等中等教育における当面の教育課程及び指導の充実・改善方策について(答申) 前文

 中央教育審議会は,本年5月文部科学大臣から「今後の初等中等教育改革の推進方策について」包括的な諮問が行われたことを受け,初等中等教育に関する多角的な検討を行っているところである。その中で,「初等中等教育の教育課程及び指導の充実・改善方策について」は,諮問理由説明において,当面の具体的な検討事項として,1.学習指導要領の「基準性」の一層の明確化,2.必要な学習指導時間の確保,3.「総合的な学習の時間」の一層の充実,4.「個に応じた指導」の一層の充実,5.全国的かつ総合的な学力調査の在り方やその結果の活用が挙げられ,初等中等教育分科会の下に置かれた教育課程部会を中心に審議が行われてきた。
 本審議会では,国や各教育委員会,各学校として来年度からの教育課程及び指導の充実・改善に反映可能なものについては,周知期間等を考慮して早急にまとめる必要があることから,これらの検討事項について教育課程部会の下に「総則等作業部会」及び「教科別専門部会」を設置し鋭意検討を進めてきたところである。審議の過程においては,新学習指導要領の下での教育課程及び指導上の課題を明らかにするため,有識者等から意見を聴取するとともに,国で実施した平成13年度教育課程実施状況調査や平成15年度教育課程編成・実施状況調査等の結果,児童生徒,保護者,教員等に対する意識調査の結果,民間や関係団体で行った調査の結果,国で開催した各種研究協議会等で指摘された実施上の課題,国民一般からの意見募集の結果等のデータや資料等に基づいて,学校の実態に即した議論に努めてきた。また,本年8月には,教育課程部会としての「審議の中間まとめ」を公表し,これに対して広く国民一般からの意見募集を行い,これを踏まえ,総会,初等中等教育分科会,教育課程部会において更に議論を深め,今回,答申として取りまとめたところである。

 その結果,本審議会としては,子どもたちに基礎・基本を徹底し,[生きる力]をはぐくむことを基本的なねらいとする新学習指導要領の更なる定着を進め,そのねらいの一層の実現を引き続き図ることが必要であるとの結論に達した。この答申を機に,学校のみならず,家庭・地域社会や教育委員会・国がそれぞれの立場でここに掲げた当面の充実・改善方策に早急に取り組み,来年度からの教育課程及び指導の充実・改善に生かすことを期待したい。その際,学習指導要領に示されている共通に指導すべき基礎的・基本的な内容の確実な定着を図るとともに,各学校の裁量により創意工夫を生かした取組を行うことや,各教育委員会が地域の実態を踏まえ,地域にふさわしい取組を進めることにより,[生きる力]の知の側面である[確かな学力]を育成するという理念をしっかりと踏まえることが望まれる。
 なお,本審議会では,先に述べたような文部科学大臣の包括的な諮問を受けて,今回,当面の充実・改善方策についての答申を行ったところであるが,引き続き教育課程及び指導の充実・改善を図っていくためには,今後とも,常設化された教育課程部会を中心に新学習指導要領の実施状況を不断に検証し,必要に応じて教育課程の基準全体の見直しについて検討していくことが重要であると考えている。

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初等中等教育局教育課程課教育課程企画室

(初等中等教育局教育課程課教育課程企画室)