大多数の教員は、教員としての使命感や誇り、教育的愛情等を持って教育活動に当たり、研究と修養に努めてきた。そのような教員の真摯な姿勢は、広く社会から尊敬され、高い評価を得てきた。
しかしながら、現在、教員をめぐる状況は大きく変化しており、教員の資質能力が改めて問い直されている。
教員の職務は、人間の心身の発達にかかわっており、その活動は、子どもたちの人格形成に大きな影響を与えるものである。「教育は人なり」といわれるように、学校教育の成否は教員の資質能力に負うところが極めて大きい。このような重要な職責を遂行するため、大多数の教員は、教員としての使命感や誇り、教育的愛情等を持って教育活動に当たり、研究と修養に努めてきた。また、そのような教員の真摯な姿勢は子どもや保護者はもとより、広く社会から尊敬され、高い評価を得てきた。
しかし現在、教員をめぐる状況は大きく変化しており、教員の資質能力が改めて問い直されている。教員をめぐる状況の変化には、様々な要因・側面があるが、概ね以下の6点に整理することができる。
1.(1)において述べたように、現在進みつつある社会構造の変動は、これまでになく大規模かつ急激なものである。本来、学校や教員には、社会の変化を踏まえつつ教育活動を行っていくことが求められているが、現在の変化に迅速かつ適切に対応するためには、これまで以上に、必要かつ高度な専門的知識・技能を修得し、適時に刷新していくなど、教員に求められる資質能力の維持・向上を図るための更なる取組が必要とされている。
都市化や核家族化の進行等を背景に、家庭や地域社会の教育力が低下しており、これに伴い、例えば、子どもの基本的な生活習慣の育成等の面で、学校や教員に過度の期待が寄せられている。また、保護者の中には、教員に対して一定の目に見える教育成果をあげることを求める傾向が強まっている。
学校と家庭、地域社会との役割分担の在り方については、本来家庭や地域社会が果たすべき機能を学校に持ち込むのではなく、家庭や地域社会がその責任を果たすことが必要であるとの意見がある。その一方で、家庭や地域社会の教育力を取り戻すことが難しい現状では、学校や教員が一定の役割を果たすこともやむを得ないのではないかとの意見もある。この点については、地域や学校によっても事情が異なり、一概に固定的な役割分担の方向性を示すことは困難であるが、いずれにしても今後は、社会全体として子どもの教育を支えることが、ますます重要となる。このような意味で、保護者や地域住民の学校運営への参画を進め、理解と協力を得ながら教育活動を進めるなど、学校や教員には、家庭や地域社会の意向を踏まえながら、職務を行うことが求められていることを理解する必要がある。
社会状況や子どもの変化等を背景として、学校教育が抱える課題も、例えば以下のように一層複雑・多様化してきている。
教員の中には、子どもに関する理解が不足していたり、教職に対する情熱や使命感が低下している者が少なからずいることが指摘されている。また、いわゆる指導力不足教員は年々増加傾向にあり、一部の教員による不祥事も依然として後を絶たない状況にある。こうした問題は、たとえ一部の教員の問題であっても、保護者や国民の厳しい批判の対象となり、教員全体に対する社会の信頼を揺るがす要因となっている。
社会の変化への対応や保護者等からの期待の高まり等を背景として、教員の中には、多くの業務を抱え、日々子どもと接しその人格形成に関わっていくという使命を果たすことに専念できずに、多忙感を抱いたり、ストレスを感じる者が少なくない。
また、教科指導や生徒指導など、教員としての本来の職務を遂行するためには、教員間の学び合いや支え合い、協働する力が重要であるが、昨今、教員の間に学校は一つの組織体であるという認識の希薄になっていることが多かったり、学校の小規模化を背景に、学年主任等が他の教員を指導する機能が低下するなど、学びの共同体としての学校の機能(同僚性)が十分発揮されていないという指摘もある。
現在の教員の年齢構成を見ると、大量採用期の40歳代から50歳代前半の層が多く、いわゆる中堅層以下の世代が少ない構成となっている。今後、大量採用期の世代が退職期を迎えることから、量及び質の両面から、優れた教員を養成・確保することが極めて重要な課題となっている。
生涯学習政策局政策課
-- 登録:平成21年以前 --