2.教育委員会の在り方 5 都道府県と市町村との関係の改善

(1)国,都道府県,市町村それぞれの役割と関係

 教育とりわけ義務教育の実施に当たっては,国,都道府県,市町村それぞれが役割を分担し責任を負っている。市町村は小中学校の設置義務が課され,義務教育の直接の実施主体として責任を負っている。都道府県は,小中学校の教職員を任命してその給与費の2分の1を負担し,広域で一定水準の人材を確保する責務を負っている。国は,学校制度の基本的な枠組みの制定や教育内容に関する全国的な基準の設定を行うとともに,教職員の給与費の2分の1を負担するなど義務教育の実施のための財政支援を行っている。
 このような役割分担を基本としつつ,近年,教育長の任命承認制度廃止や義務教育費国庫負担制度における総額裁量制の導入など,地方分権を進める制度改正が行われている。教育内容面においても,総合的な学習の時間の創設や中学校における学校独自の教科の設定などが行われている。
 今後,更に,国から地方へ,都道府県から市町村へ権限の委譲を進め,地方自治体が権限と責任を持って地域の実情に応じた教育を実現できるようにしていくことが必要である。
 また,国の方針が,都道府県,市町村,学校と進むに従って強く受け止められ,教育が画一的となる傾向があるとの指摘がある。国は地方の,都道府県は市町村の自主性を最大限尊重するとともに,市町村も主体的に教育行政に取り組むことが必要である。また,政令指定都市については,原則として都道府県と同等の権限と責任を与える必要がある。

(2)市町村への教職員人事権の委譲

 子どもや住民に最も身近な市町村が責任を持って教育行政に当たることができるよう,市町村に可能な限り権限を委譲していくことが必要である。
 市町村立の小中学校の教職員の給与負担と任命権については,公務員制度の例外として,都道府県が給与を負担し任命権を行使する県費負担教職員制度が採られている。この制度は市町村の財政力の差によって教員の給与水準に差が生じるのを防ぎ,あらゆる地域で必要な教職員を確保するとともに,広域で人事を行うことにより県域全体を通じて適材を配置し,教職員の職能成長を図ることを目的とするものである。
 この県費負担教職員制度については,教職員が市町村に属しながら市町村に人事権がない,小中学校の教職員は市町村の職員としての自覚を持ちにくいなどの課題が指摘されている。また,中核市については,既に研修の事務が委譲されているが,異動の権限を持たないことから,研修の成果を教職員人事に反映できないとの指摘もある。
 このため,教職員の人事権については,できるだけ市町村に委譲する方向で見直すことを検討すべきである。一方,採用や懲戒処分も含めた人事関係事務を現在の市町村の事務体制で処理することができるか,また,県内全域で人材が確保できるかどうかに留意すべきである。当面の方策として,中核市や一定規模以上の市町村に教職員人事権を委譲する方向で検討する必要がある。
 また,同一市町村内における人事異動については,基本的に市町村が主体的に行えるよう工夫を講じることや,現在特例措置として市町村が独自に常勤の教職員を任用できる制度を全国化することも検討する必要がある。

(3)都道府県教育委員会の在り方

1.都道府県の役割

 市町村への権限委譲が進められた場合,義務教育の実施における都道府県の役割が改めて問われることとなる。
 小中学校の設置は市町村の事務であり,その教育内容については市町村が責任を負っているが,市町村の規模等は様々であることから,県域全体における教育水準の維持向上を図るため,都道府県が,市町村の自主性を尊重しつつ,規模等の差により市町村間の格差が生じないよう支援を行う必要がある。
 特に,指導主事を配置することが難しい小規模市町村の学校に対する指導や,指導主事の配置が難しい教科における指導については,都道府県教育委員会が指導主事を派遣したり,指導主事を市町村教育委員会に配置するなど,市町村教育委員会を支援することが必要である。
 一方,市町村がより主体性を持って学校運営の責任を負う体制が整うに従い,都道府県の行う指導・助言・援助の役割を限定する方向で見直すことが必要となる。最終的には都道府県教育委員会の役割について,学校評価や児童生徒の学習到達度評価のセンター機能に重点を移していくことが考えられる。

2.教育事務所の在り方

 都道府県教育委員会は,一般的に,全県域を幾つかの区域に分け,区域ごとにその区域の教育事務を執行する教育事務所を置いている。教育事務所は,教職員人事に関する市町村との連絡調整や,指導主事の派遣など,域内の市町村教育委員会に対する支援機関として重要な役割を果たしている。
 これらの教育事務所は,市町村合併が進展する中でその在り方について見直しが必要となっており,現在,各都道府県において検討が行われている。市町村への権限委譲が進んだ場合,教育事務所の見直しの必要性はますます高まると考えられる。
 今後,教育事務所については,小規模市町村に対する支援や,域内における情報交換,教育研究団体の育成など,市町村相互又は市町村を超えた教育活動への支援に重点を置く方向で見直すことが必要と考えられる。

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