2.教育委員会の在り方 2 教育委員会の組織及び運営の改善

(1)教育委員会の組織等の弾力化

 教育委員会について指摘される問題点に対し,各地方自治体の状況に応じた解決を図るためには,教育委員会制度について,各自治体の自由度を高めることにより,それぞれの状況に応じた制度運用の改善を促すことが必要である。
 現在の教育委員会制度は,委員数について一定範囲で増減が可能になっているものの,その他は,自治体の種類や規模等にかかわらず一律のものとなっている。自治体は人口規模や行政資源が多様であり,その状況に応じ,教育委員会の組織や運営について各自治体が選択できるようにすることが必要である。このことは,各地方自治体が,地方自治の観点から自己の組織編制について決定できるようにすることにも資するものである。
 このため,現在の教育委員会制度について,教育機関の管理運営における首長からの独立性,合議制,レイマンコントロールといった基本的な事項は国が定めた上で,その他の事項についてできる限り弾力化し,自治体がそれぞれの実情に応じて教育委員会の組織や運営について決定できるようにすることを検討する必要がある。

(2)教育委員の選任の改善

 教育委員会が本来の機能を発揮するためには,教育委員に適材を得ることが不可欠であり,その点で任命権を持つ知事,市町村長や,承認を行う議会の責任は大きいと考えられる。教育委員の選任に当たっては,従来の慣行にとらわれず,地域住民の代表として,教育行政に深い関心と熱意を有する人材の登用に努める必要がある。
 委員選任において広く適材を求めたり住民の意向を反映するような工夫として,委員の候補者の公募や,住民の推薦のほか,選考の過程を地域住民に公開するなどの方法を取り入れている地方自治体もあるところである。これらの実施状況を参考にしながら,選任方法を工夫していくことが望まれる。
 なお,本部会では,教育委員の選任に公選制やこれに準ずる方法を導入することについても議論がなされたところである。公選制は,教育委員の選任に直接民意を反映することができる選任方法ではあるが,その反面,教育委員会の場に党派的対立が持ち込まれるおそれや,投票率が低い場合には十分に民意を反映した選任がなされないおそれもあるところであり,昭和31年の地教行法制定の際に廃止された経緯もある。今後,これらを踏まえつつ,中長期的な課題として慎重に検討することが必要である。

(3)教育委員会議の運営改善・公開

 教育委員会が合議制の執行機関として本来の機能を発揮し,適切な意思決定を迅速に行っていくためには,教育委員が教育委員会議において常に活発に議論し,適切な意思決定を行う必要がある。このため,開催回数を増やすとともに,夜間開催など開催時間を工夫し,委員による議論の機会を最大限確保すること,また,十分な審議ができるよう案件の内容を事前に教育委員に説明することが望まれる。
 また,教育委員会の意思決定の過程は,首長や議会に比べ,住民から見えにくいという問題がある。このため,教育委員会の会議の公開を徹底することが望まれる。会議の公開については,平成13年の地教行法の改正により,すべての自治体に義務付けられたが,傍聴者の数が少なく,公開が地域住民の理解に十分結び付いていないのではないかとの指摘もある。このため,会議開催予定を積極的に広報するとともに,開催時間や開催場所について,地域住民ができるだけ傍聴しやすいよう配慮すること,また,会議の開催後できるだけ速やかに会議録を作成し,インターネットなどにより公開することが望まれる。

(4)地域住民の意向や所管機関の状況等の積極的な把握

 教育委員会の意思決定に地域住民の意向を反映していくためには,教育委員自身が様々な場を通じ,地域住民の意向を把握することが重要である。このため,住民広聴会の開催や移動教育委員会議の開催など,意向把握のための工夫を行うことが望ましい。学校等教育機関への訪問等により,所管する機関等の状況を把握したり,警察など教育関係以外の機関・団体,PTA,経済団体,大学等と意見交換することも望まれる。
 また,教育委員が自ら資質を高める機会を設けることも重要である。このため,国や都道府県教育委員会は,市町村教育委員が自主的に開催する研究会・研修会や,市町村教育委員会によって構成される団体を支援することにより,教育委員の情報交換・研究協議の場が確保されるよう努めることが望まれる。

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