(3)教職員の評価と処遇

 教職員が意欲を持って業務を遂行し、自らの役割を果たすことができるよう、一人一人の教職員の能力や業績を適正に評価するとともに、これを適切に人事や処遇に反映することが極めて重要であると考えられる。
 このため、教職員の評価の改善充実とその処遇などへの反映について検討する必要があると考える。また、教職員は専門的な能力が求められるものであり、その資質向上について研修などが行われているところであるが、評価と育成を連動するものとして、その専門性を適切に評価し、これに基づく体系的な人材育成を行うようにすることが大切である。さらに、優れた実績や高い指導力のある教職員について、これを評価することも重要であると考える。
 一方で、教職員の人事管理について、適材適所の配置や教職員の資質向上の観点から、例えば教員の公募制やFA制などの様々な工夫が講じられているところであり、今後更にこうした取組を進めることが求められるところである。
 評価の改善などを進めるに当たっては、これら人事管理全般の見直しの一環として行う必要があり、人事管理に関するシステムすべてを人材育成の観点から見直し、上記の新たな評価システムづくりと併せて、総合的にこれらを推進していくことが大切であると考えられる。

1.教職員の評価の改善とその処遇への反映

 公立学校の教職員の評価については、公務員法制上の勤務評定制度はあるが、一律の評価や処遇となっているなど、評価や処遇に差を設けることに消極的であり、必ずしも十分に行われていないとの指摘があるところである。しかし、近年、学校教育の信頼確保などの観点から、教職員の評価の改善充実が課題となっている。それとともに、評価結果について適切な処遇への反映を図ることも検討する必要がある。
 なお、平成18年度から実施される予定の公務員制度改革においても、公務員について、能力や実績などに応じた評価や処遇が求められているところであり、その動向を踏まえる必要がある。
 評価の改善充実に当たっては、人材育成と業務改善の向上の2つの視点を重視することが大切であると考える。とりわけ、学校においては集団としての活動が大きな位置を占めることから、チームとしての活動を適切に評価できるよう検討する必要がある。また、学校の評価と教職員の評価は密接に関連するものであり、これらを連動させながら取組を進める必要がある。これらにより、学校の組織的な取組と個々人の取組が連鎖して組織力の向上と教職員の資質向上につながるのである。

(ア)評価の改善充実

 現在、すべての都道府県、指定都市の教育委員会において、教職員の新たな評価システムの構築が進められているところであるが、今後、これら取組の一層の推進が求められる。
 評価は、公正で透明性の高いものとすることが重要であると考える。具体的には、例えば評価要素や項目ごとに求められる職務行動(コンピテンシー)を基準として明確にすることで、評価の客観性を高めると同時に、職員がどのような職務行動が求められているか理解するようにして自己改善に資するものとし、かつ、評価者とのコミュニケーションを促進するような仕組みについて検討する必要があるのではないかと考える。
 目標管理手法は業務改善の一方法であり、単なる評価のためだけの目標管理とならないようにし、学校全体の目標を共有した上で、これに基づいて個々の職員が自己の目標を設定することが大切である。これにより、学校が目標達成のためのチームとなり得るものである。
 学校組織の中でどれだけの役割を果たしたか、あるいはその貢献度などについても評価されるよう工夫することが必要であると考えられる。これにより、教職員の参画意欲を高め、学校組織全体の総合力の向上につながるものと言える。
 新たな評価システムについては、その趣旨内容を教職員が十分に理解するよう努め、また、そのシステムが有効に機能し適正な評価が行われるよう、特に評価者の十分な研修などが重要となるであろう。
 評価システム自体についても、教育委員会による自己評価や第三者評価などによりきちんと評価し必要な改善を図ることが大切である。
 これら教職員の評価に加え、例えば優れた実践のある学校の表彰など、組織単位で評価する仕組みについても併せて検討する必要があると考えられる。

(イ)処遇などへの反映

 評価結果の適切な処遇などへの反映について検討する必要があると考える。現行でも特別昇給や普通昇給延伸、勤勉率などに結びつけているところもあり、前述の評価の改善とあわせて検討することが大切である。
 具体的には、一般的に能力評価は任用、業績評価は給与上の措置に反映することが考えられるが、能力評価と業績評価のバランスが大切であり、教育においては、その特質にかんがみれば、余りに成果主義に傾きすぎるのはなじまないと考えられる。
 これに関連して、国立学校準拠制の廃止や総額裁量制の導入により地方公共団体の裁量が大幅に拡大したことを踏まえ、給与体系の見直しについて検討することも必要ではないか。その場合、例えば前述の主幹や後述のスーパーティーチャーなどについて新たな級を設けるなど給与体系上の位置付けを明確にすることも検討する必要があると考えられる。その際、必要な財源の確保にも留意する必要があると考える。

(ウ)評価に基づく体系的な人材育成

 能力開発を重視した評価においては、面接などを通じた本人へのフィードバック、評価者による指導なども大切であり、評価を人材育成につなげることが求められると考える。
 人材育成システムの中に評価を明確に位置付けるとともに、評価結果を人材育成の視点から人事配置や研修などにも活用することが適当であると考える。

2.優秀な教職員の評価と処遇

 優れた実践や高い指導力のある教職員については、一部の教育委員会において、優秀な教員の表彰などの取組を進めており、その処遇への反映を図っているところもある。
 しかし、優れた教員を任用面で遇するには、これまでは管理職への登用しかなかったが、教職員と管理職の能力は必ずしも一致するものではなく管理職には向いていない場合もある。このため、管理職への登用だけでなく、教職員として専門性を高め、これに管理職に相当する位置付けを与え、現場でキャリアをまっとうする道を開くことも検討する必要があると考える。すなわち、教職員のキャリアの複線化を図ることも重要であるのではないか。
 また、教育指導の専門職として高い能力のある教員を適切に位置付けることにより、前述のチームなどにおいて他の教職員の指導的な役割を担わせるようにすることが考えられるところである。
 なお、いわゆる指導力不足教員に対する取組についても、各教育委員会においてその人事管理システムが構築され、適切な対応が図られているところであるが、更にこうした取組を進めることも大切であると考える。

  • 高い指導力のある優れた教員を位置付けるものとして、例えば、広島県のエキスパート教員などのような認定の仕組みや、さらには宮崎県などで検討されているような、処遇などにおいて相応の位置付けを与えられるスーパーティーチャーなどのような職種を設けることについて、更に検討する必要があると考える。
  • これらの優れた教員については、基本的には学校に配置され、教育活動等にその力を発揮してもらいながら、併せて他の教員の指導助言にも当たることになると考えられるが、例えば、他校の研究会や教職員研修などにおいて活用するなど、その成果を普及し、地域全体の水準向上のための指導的役割を担うようにすることも考えられるのではないか。その際、位置付けや職務などについて、教育委員会事務局に置かれ、学校への指導に当たる指導主事との整理を明確にするとともに、研修を体系的に行うなど、それぞれが十分に機能を果たすよう配意する必要がある。
  • キャリアの複線化を図る場合には、例えば、30代くらいまでを持ち味を探す時期、30代から40代をその持ち味を磨く時期として、その上で40代半ばくらいにいずれの道を目指すのか選択することとし、その後、管理職を目指す場合には主幹などとなり、あるいは後述の管理職候補者登録制などにより、その資質を育成することも考えられるのではないか。また、系列間移動の道も開いておくことも必要となると考えられる。
  • その際、教員の年齢構成などを踏まえ、管理職や上述の指導的な役割を担う教員など全体の構成のバランスを十分に考慮しながら採用や人事を行うことが重要である。
  • 優秀教員の表彰に関する取組を更に推進するとともに、表彰に伴う措置として特別な研修機会を与えるなどのほか、特別昇給などの処遇への適切な反映を図るとともに、他の学校の研究授業や教職員研修に活用するなど、その成果の普及も併せて考慮する必要がある。

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