4.地域社会全体で学習活動を支援する具体的方策

(1)学習活動を支援する多様な人材が育つ仕組の構築

  • 社会人の「学び直し」や「家庭・地域の教育力向上に資する学習活動」を推進するため、これらの学習活動を支援する多様な人材を育成することが重要である。特に、前述2.(4)に指摘した、学校教育・家庭教育支援等を行う「教育サポーター」、「教育サポーター」と学校や社会教育施設等の活躍の場への橋渡し役となる「学習コーディネーター」、社会人の学び直しの相談から学習後の社会参加までのカウンセリングを含めた学習相談を行う「学習相談員」を育成する必要がある。
  • このため、これらの学習支援を行う人材の役割と機能、また、人材に求められる基本的な資質・能力を整理し、具体的な育成の在り方等について、有識者や関係機関等によって構成される検討会等において、今後、さらに検討することが必要である。
  • 「第15期中央教育審議会第一次答申(平成8年7月)」において、地域の教育力を生かす方策として提言された「学校支援ボランティア」や生涯学習審議会答申「学習の成果を幅広く生かす-生涯学習の成果を生かすための方策について(平成11年6月)」等において提言された学習活動を支援するボランティア学習コーディネーター等の育成等について、様々な取組が実施されてきた。
  • このような中で、学習活動を支援する人材育成が地域によって十分に確保できず、また、専門性の高い人材が育成されても認知されずに財政的支援が十分に受けられないため活動が継続しない・活用されていないといった課題が指摘されているため、学習支援の人材の資質・能力の全国的な通用性を確保し、有効活用を促進するための全国的な仕組を構築する必要がある。このため、社会教育施設・大学・NPO等の民間団体等多様な主体によって提供される学校支援やボランティア学習コーディネーター等学習活動を支援する指導者を育成し、認定する事業(以下、人材育成・認定事業という。)の質を保証する認証システムの構築を検討する。
  • 認証システムの仕組としては、有識者、人材育成・認定事業を行う大学等教育機関・NPO等の民間団体、学校関係者等ユーザーの代表によって構成される全国的な第三者機関により、当該機関が示す基本的な要素を満たした事業を認証し、その情報を広く国民に対して提供を行う仕組が考えられる。
  • 人材育成・認定事業においては、実際に活動する学校・社会教育施設・社会福祉施設等の場を想定し、カリキュラムに講義だけでなく実技指導を実施するほか、例えば、教育委員会や社会教育施設、福祉施設等の協力を得つつ、これらの施設でのインターンシップ制度等の実務実習や事例研究、現地調査等を取り入れることが必要と考える。また、人材育成・認定事業の形態としては、
    • 都道府県レベルの社会教育施設が複数の大学・民間団体等と連携して行う事業
    • 複数の社会教育団体や民間教育事業者が行う全国的な人材育成事業
    • 大学コンソーシアム等において複数の大学等と教育委員会が協力して行う事業
      等が考えられるが、引き続き、有識者等による検討が必要である。
  • その他、学習相談員等の養成については、職業教育の重要性に鑑み、既存のキャリア・コンサルタント(注)制度の活用を検討することが考えられるところである。例えば、学習相談員等とキャリア・コンサルタントのカリキュラムの一部の相互乗り入れについて検討することが考えられる。
  • また、このような取組を推進するにあたり、地域社会全体の学習活動を行政として支援する仕組づくりにおいて、関係者の連携を促しつつ、総合的な企画・立案、運営等を行う社会教育主事の存在が極めて重要である。このため、前述2.(5)において指摘されたように、期待される役割・機能に応じた資格・養成の在り方を見直す。
  • その他、地域における先進的な取組事例の把握・収集を行うとともに、成功要因を分析・評価し、今後の取組に活かすため、インターネット等を活用した全国的な情報提供システムを構築する。

注 個人の主体的なキャリア形成ができるよう、相談を行う者。厚生労働省職業能力開発局長が定める複数の民間機関等が、キャリア・コンサルタントとなるための養成講座や能力評価試験を実施している。

(2)学校・家庭・地域の連携協力を促進するための方策

  • 学校・家庭・地域の連携協力に当って、学校教育、社会教育、家庭教育がそれぞれ担うべき役割と責任を明確にするとともに、学校教育との連携協力及び家庭教育への支援が社会教育行政の責任の一つであることを明確にする。
  • 小・中・高等学校等における体験活動・ボランティア活動等を進めるための担当者(地域連携担当、学社連携担当、学校と地域を結ぶコーディネーター、体験活動等推進主任、ボランティア教育担当等)を校務分掌に位置づけている学校は、全学校の約4分の1となっているが、これらの担当者の多くは、日常業務が忙しく外部との連携を図る時間がない、学校におけるコーディネーターとしての研修機会が十分でないといった課題がある。このため、学校外の地域の人材から学習コーディネーター等の活用を推進するとともに、学校の担当の教職員に対する研修機会の充実を図る必要がある。
  • 必要な研修内容としては、体験的な学習活動プログラムの企画・立案の知識・技術や学校・家庭・地域の連携協力を促進するコーディネーターとしての資質・能力を身につけるための研修等が考えられる。今後、国立教育政策研究所社会教育実践研究センター等において、研修プログラムを開発し、地方公共団体等において活用されるようなモデルを提供することなどが考えられる。
  • さらに、子どもを巡る様々な教育課題の解決のためには、家庭教育や社会教育、学校・家庭・地域の連携の重要性についての教員の基本的理解が大切である。このため、教職の課程認定大学においては、引き続き家庭教育や社会教育、学校・家庭・地域の連携に対する理解を促進し、カリキュラムの充実に努めるとともに、様々な教員の現職研修においても、同様の研修内容を充実させることを検討する必要がある。
  • また、各学校における学校経営において、校長や教育長の更なるリーダーシップの下で、学校・家庭・地域の連携協力を促進するため、学校内の教職員の意識啓発に関する取組、学校内における地域との連携を図るための校務分掌の明確化、学習コーディネーター等民間の人材の活用のための校内の仕組づくりなどを行うことが必要である。
  • 学校外からの人材の活用については、前述2.(5)に指摘されているように、学校で、社会教育主事資格を有する者や、前述の学習コーディネーターの中でも、学校教育支援を専門とする者(学校教育支援コーディネーター)を活用することを推進する必要がある。
  • 企業においても、学校教育・家庭教育を社会全体で支え合う一つの具体的方策として、教育委員会との連携の下、例えば、社員の啓発、職業教育・体験活動の受入、講師として社員の派遣等、学校行事参加のための休暇制度、教育活動参加のための短時間勤務制度の創設等を実施するなど、学校教育・家庭教育の支援を推進する先進的な取組が全国へ普及するよう国が促す。

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