1.今後の生涯学習振興方策の基本的考え方

(1)生涯学習を振興していく上での基本的考え方

  • 近年、フリーターやニートの増加や中高年の再雇用問題等の課題がある中、国民一人一人が、生涯を通じて、職業能力を高め、新しい知識・技術等を習得していくための環境整備が求められている。また、少子高齢化、核家族化、都市化、情報化等の経済社会の変化や人間関係の希薄化、地域における地縁的なつながりの希薄化などにより、家庭や地域における教育力が低下していることも指摘されている。こうした様々な社会的な課題が指摘されるとともに、学習意欲の低下や、子どもたちに基本的な生活習慣が身についていないこと、自然体験等の体験活動や読書活動の不足、学力や体力、コミュニケーション能力の低下など子どもたちに関わる課題も指摘されている。
  • 前述のような課題に対し、国民一人一人が、自己の人格を磨き、豊かな人生を送ることができるよう、その生涯にわたって、あらゆる機会に、あらゆる場所において学習することができ、その成果を適切に生かすことができるような環境を整え、国民一人一人の資質・能力の向上を通して、社会全体の活性化を図っていく生涯学習社会の実現を目指すことが極めて重要である。
  • また、天然資源に恵まれない我が国においては、人材こそが資源であることを再認識し、「子どもは社会の宝、国の宝」であるという考え方に基づき、学校や家庭、地域など社会全体で、新しい時代を切り拓く心豊かでたくましい人材を育成するため、家庭や地域の教育力の向上を図るための方策を講ずることが急務である。
  • このため、今後、次のような基本的な考え方の下に、学校・家庭・地域が連携協力しながら、それぞれの教育力の向上を図るとともに、社会全体で生涯学習社会の実現を目指すことが重要である。
    1. 「個人の要望」と「社会の要請」のバランスを確保する。
    2. 「生きがい・教養」だけでなく「職業的知識・技術」を習得する学習を強化する。
    3. これまでの知識・技術・経験を「継承」しつつ、それらを生かした新たな「創造」により、社会の発展を目指す。

(2)今後重視すべき視点

1.国民の学習活動を促進するために必要な5つの視点

ア.国民全体の人間力の向上

 国民の学習活動を促進することは、一人一人が健康で心豊かな生活を送り、人や社会とのつながりを築く力や職業生活に必要な知識・技術を習得し、社会を支え発展させることができる人間力を向上させるとともに、ひいては我が国全体の知識基盤を強固なものとし、経済・社会の持続的発展に資するものである。
 また、学習活動は、一面で健康増進による社会保障費の節減、安全・安心な地域づくりの促進など、社会のセーフティーネット作りに貢献するといった効果もある。このため、国や地方公共団体等を中心として、国民の学習活動を積極的に支援することが必要である。

イ.「公共」の視点の重視

 自らの知識・技術・経験を生かしたいと考えている人々が地域や社会の課題解決や形成に主体的に参画し、活躍することが求められている。このため、地域や社会の課題や歴史・文化などに関する学習活動の支援を行う必要がある。
また、住民が、学校・社会教育施設・企業・NPO等の民間団体等との協働の中で、自らの意思に基づいて、社会の課題の解決に取り組んでいく学習活動を支援する必要がある。

ウ.人の成長段階に即した多様な選択肢を提供する政策の重点化

 人生のある段階の一度の選択でその後の人生の全てが決まってしまうことなく、国民一人一人が、生涯にわたって主体的に多様な選択を行いながら人生を設計していけるよう、学習する意欲や習慣を身につけ、いつでも「学び直し」が可能な環境整備を行うことが重要である。このような視点から、各成長段階に応じて必要とされる知識・技術を習得する学習ができるよう、政策の重点化を図ることが重要である。

エ.実社会のニーズを生かした多様な学習機会の提供

 国民一人一人が学んだことを職業や社会活動に生かせるよう、学習内容を充実していくことが必要である。このため、社会教育施設・大学・専修学校等の学習機会の提供者は、地域や社会の課題、産業界、関係団体等のニーズを適切に把握し、反映した上で、多様な学習機会を提供することが重要である。

オ.情報通信技術の一層の活用

 インターネット等情報通信技術は、時間的・地理的制約などの生涯学習を振興する上での制約要因を解消し、生涯にわたる学習機会の選択肢を多様で豊かなものとするとともに、高齢者や障害者等に対する学習環境の充実や仕事や子育てとの両立のための方策としても有効である。このため、情報通信技術を活用した具体的方策の充実を図ることが重要である。

2.家庭の教育力向上に必要な3つの視点

ア.親と子どもの主体的な「育ち合い」(共育)

 親も子育てを通じ親として成長するものであり、親も子どもも共に育ち合うというスタンスに立ち、親の能力もうまく引き出しながら、親子共に自立的に成長していくするための支援につなげることが必要である。

イ.地域全体での子育ての「支え合い」(共同)

 子育てについては、家庭だけではなく地域全体のものとしてより広くとらえるべきである。子どもは「親の子」、「家族の子」として育てるとともに、「地域の子」、「社会の子」として、地域全体で支え、育てていくことが大切である。

ウ.多様性の認識の「分かち合い」(共生)

 家庭教育などの在り方や行政の支援を考える際には、家庭教育には多様なスタイルがありうることを理解し合い(分かち合い)、常に基本に据えておく必要がある。

3.地域の教育力向上に必要な3つの視点

ア.地域全体での子育て「支え合い」(共同)

 地域全体で「地域の子」、「社会の子」として子どもを見守り、子育て家庭を支援していこうとするという意識変革が大切である。また、個々の親の責任という観点だけから考えるのではなく、地域社会を見据えた視点が必要である。

イ.地域の課題解決は地域自身の手で「助け合い」(共生)

 地域の課題は地域の人々自身が解決するという住民自治の理念を具体的に実現していくためには、地域の人々が社会に関わる力を向上させていくことが大切である。

ウ.家庭や地域の教育力と学校教育の効果的な連携「つながり合い」(共育)

 学校が地域の教育の一主体として、保護者や地域住民・団体と対等な協働関係を作っていくことが必要である。また、地域の大人たちが学校に協力することは、大人自身の持つ知識・技術・経験を生かすとともに、生きがいづくりにも資するものである。

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