新時代の大学院教育-国際的に魅力ある大学院教育の構築に向けて-中間報告 はじめに

 大学院に関しては、昭和62年に設置された旧大学審議会が「大学等における教育研究の高度化、個性化及び活性化等のための具体的方策について」の調査審議を行う中で、大学院制度の弾力化、学位制度の見直し、大学院の評価、大学院の量的整備等、大学院の抱える様々な課題について幅広く検討を行い、累次の答申等を行ってきた。それらを受け、これまで、我が国の大学院の質的・量的整備が図られてきたところである。
 平成10年には、「21世紀の大学像と今後の改革方策について」が答申され、大学院における教育研究の高度化・多様化を進めていくため、1.大学院研究科の制度上の位置付けの明確化を図るなどの組織編制の在り方、2.高度専門職業人養成の役割をもより重視した大学院の課程の目的・役割の明確化、3.高度専門職業人養成に特化した実践的教育を行う大学院修士課程の設置促進、4.卓越した教育研究拠点としての大学院の形成・支援など最近の大学院改革の基礎となる提言がなされている。
 また、本審議会においては、平成13年4月の文部科学大臣からの「今後の高等教育改革の推進方策について」の諮問を受けて、平成14年8月に「大学院における高度専門職業人養成について」及び「法科大学院の設置基準等について」答申を行い、これを踏まえ、平成15年4月から専門職大学院(専門職学位課程)制度が創設されている。さらに、本審議会は、本年1月「我が国の高等教育の将来像」を答申し、大学院も含めた今後の高等教育全体の方向性や在るべき姿の全体像について示したところである。一方、科学技術・学術審議会においては、「第3期科学技術基本計画」の策定に向け、平成17年4月に中間取りまとめを行い、この中で、科学技術創造立国の実現のためには、優れた科学技術人材を養成・確保することが不可欠であり、その観点から大学院教育の改革が重要課題の一つであるとの指摘がなされている。
 本審議会の答申等を踏まえたこれまでの取組により、基本的には「知識基盤社会」への移行のための大学院の基盤強化は一定の成果があがっているが、従来から大きな課題であると指摘されている修士・博士課程における教育の課程の組織的展開の強化(大学院教育の実質化)については、未だその解決には距離がある状況である。
 グローバル化の一層の進展の中で、国境を越えて高度かつ多様な知的活動が展開され、教育研究上の相互協力、世界的貢献などが求められる一方、人材・技術等の知的資産を巡る国際競争が激化している現状を踏まえると、世界のあらゆる分野で活躍し得る高い能力を持った人材を養成することが急務である。このため、本審議会は、高度な人材養成機能を持つ大学院がその役割、機能を積極的に果たし、教育の実質化に本格的に取り組むことが必要と考え、この点に焦点を当てつつ、平成15年12月から大学分科会大学院部会において鋭意審議検討を重ねてきた。
 これまでの審議の過程において、産業界等の有識者からのヒアリングなどを経て、平成16年8月に「大学院部会における審議経過の概要」を取りまとめて公表したが、その後、さらに学問分野別のワーキング・グループを設置するなどして審議検討を継続し、ここに中間報告を取りまとめたところである。
 なお、高度専門職業人の養成については、従来から社会の要請に適切に応えるための様々な大学院教育の改革が重ねられるとともに、先に述べたとおり、最近では、高度専門職業人養成に特化し、理論と実務を架橋した実践的な教育を行う専門職大学院制度が創設された。専門職大学院制度は発足から未だ日も浅いが、現在、その発展が積極的に図られている。その一方で、新たな制度としての専門職大学院の急速な広がりに伴う諸課題も浮かび上がってきており、このことは、専門職大学院の果たすべき役割とそれ以外の大学院の果たす役割、さらには学部段階の教育との関係も含めた大学全体に及ぶ課題も投げかけている。このため、専門職大学院(専門職学位課程)の実績を見つつ、修士課程及び博士課程との関係等を踏まえて、その在り方については、今後、検討すべき課題であると考える。その際には、学士、修士、博士のそれぞれに係る課程の在り方や相互関係、大学、大学院、学部といった法令上の用語の使われ方の再整理等も視野に入れつつ、検討が進められていくことが望まれる。
 大学院教育の改革の実現は、今後の我が国全体の在り方を左右する最も重要な課題の一つと言っても過言ではなく、本中間報告の趣旨・内容について、国、大学、産業界等の関係者はもとより、広く国民の間で積極的な議論が行われることを期待したい。

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