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第2章 青少年の意欲をめぐる現状と課題

2.データが示す青少年の生活実態等の現状と課題

(3)直接体験の少なさ

1 スポーツ等の体を動かす体験の少なさ

[調査結果]
  •  現在の青少年はスポーツや外遊び等の体を動かす経験が少なく(図21)、自由時間の大半は自分の家や友達の家で室内遊びをしたり、一人で過ごしたりしている(図22)。また、「体力・運動能力調査」等の年次推移をみると、現代の青少年の運動能力は以前の同年代と比較して低くなっている(図23)。
[これまでに得られた知見]
  •  乳幼児期において頭も体も動かすこと、特に五感を存分に使うことが、身体機能の発達に対してだけでなく脳の成長にとっても必要であることが明らかとなっており、成長期に十分に体を動かさないことは、運動能力だけでなく心身の発達全体に影響が及ぶと考えられている。
     このため、スポーツや外遊び等の体を動かす活動を意識的に青少年の生活に取り込むよう、特に乳幼児期や学童期には保護者をはじめとした周囲の大人が配慮することが必要であると指摘されている。
青少年の運動時間は減少しており、帰宅後に戸外で遊ぶ青少年は少ない。

図21−1 1週間の運動時間(男子)

図21−2 1週間の運動時間(女子)
財団法人日本学校保健会
『児童生徒の健康状態サーベイランス事業報告書』(平成12年度、14年度、16年度)

図22 学校から帰ってどこで遊ぶか
川村学園女子大学
『平成16年度子どもたちの体験活動等に関する調査研究のまとめ』

小中学生の運動能力は、20年前の同年代に比較して低下している。

図23 昭和60年と平成15年の体力・運動能力の比較(上段:昭和60年、下段:平成15年)
◆走る力(50メートル走、持久走)
※男子6歳、女子6歳
50m走

※男子12歳、女子12歳
持久走

◆跳ぶ力
※男子9歳、女子8歳
跳ぶ力(立ち幅跳び)

◆投げる力
※男子10歳、女子11歳
投げる力(ボール投げ)

◆握力
※男子17歳、女子16歳
握力
文部科学省
『平成15年度体力・運動能力調査』

2 自然体験の少なさ

[調査結果]
  •  「太陽の昇るところや沈むところを見る」「チョウやトンボ、バッタなどの昆虫をつかまえる」といった身近な自然体験をほとんど経験したことがない青少年が以前と比較して増えている。また、「キャンプ」や「川や海で泳ぐ」ことなども含め、全体として自然の中で活動する青少年が減っている(図24)。
     青少年が行う自然体験の中でも、家族や友達と行う自然体験が、学校や青少年教育施設、青少年団体を通じて行う自然体験と比較して著しく減少している(図25)。
[これまでに得られた知見]
  •  自然体験の多い青少年の中には、道徳観・正義感があり学習意欲・課題解決意欲の高い青少年の多いこと(図26,27)や、集団による長期キャンプは、積極性や協調性を高め判断能力を育てるといった社会性の育成に効果の高いことが明らかとなっている。これは、自然という人間が完全にはコントロールできない環境のもとで、仲間と一緒に様々な課題や困難に立ち向かう中で、仲間や指導者に支えられながらこれらの力が育成されていくためと考えられている。
     青少年の自然体験の少なさは、青少年がこうした教育効果の高い活動に参加する機会を失っている可能性を示す指標の一つであると考えることができる。
身近な自然体験も含め、自然の中で活動する青少年が減少している。

図24 自然体験を経験した割合
チョウやトンボ、バッタなどの昆虫をつかまえたこと
海や川で貝を取ったり魚を釣ったりしたこと
大きな木に登ったこと
ローブウェイやリフトを使わずに高い山に登ったこと
太陽が昇るところや沈むところを見たこと
夜空いっぱいに輝く星をゆっくり見たこと
野鳥を見たり鳴く声を聞いたこと
海や川で泳いだこと
キャンプをしたこと
国立オリンピック記念青少年総合センター
『平成17年度青少年の自然体験活動等に関する実態調査』

夏休みに青少年が家族や友達などと一緒に自然体験活動に参加する機会が減少している。

図25 夏休みにおける自然体験活動への参加割合
独立行政法人国立青少年教育振興機構
『青少年の自然体験活動等に関する実態調査報告書』(平成18年)

自然体験の経験の多い小中学生には道徳感・正義感の身についている者が多く、自然にふれることで学習意欲を喚起される者が多い。

図26 [自然体験と道徳観・正義感]
独立行政法人国立青少年教育振興機構
『青少年の自然体験活動等に関する実態調査報告書』(平成18年)
図27 自然に触れる体験をしたとき勉強に対してやる気になるか
文部科学省
『平成14年学習意欲に関する調査研究』

(4)情報メディアの急速な普及に伴う問題

[調査結果]

  •  インターネットや携帯電話等の情報メディアは青少年にも急速に普及しており、インターネット利用率は小学生で6割、中学生以上で9割を超え(図28)、携帯電話の所有率は高校生で9割を超えている(図29)。
     また、コミュニケーション手法のうち、会話や説明よりもインターネットでの情報収集やパソコン等での文書作成を得意とする青少年の増加や(図30)、小・中学生の友達への相談手段として「メールの活用」の増加を示す調査もある(図31)。
     一方、インターネット等を利用した犯罪の被害に遭うなど、情報メディアを介してトラブルに巻き込まれる青少年が近年増加しているが(図32,33)、青少年の情報メディアの利用について保護者の実態把握や監督等が十分とはいえない(図34)。

[これまでに得られた知見]

  •  情報メディアの青少年への影響については、科学的に明らかとなっている知見はまだ少なく、今後より一層の研究の進展が強く期待される分野である。
     しかしながら、メディア上の暴力表現が青少年への暴力傾向を促すことや、インターネットへの過度ののめり込みと社会的不適応の間に相関性があることなど、青少年への悪影響がある程度明らかになっている事項もある。
     また、情報メディアを利用したバーチャルコミュニケーションの急速な普及が、青少年の脳の発達に重大な影響を及ぼす危険性があるとの指摘もある。これに関連する知見としては、顔の特徴を持つ刺激にのみ反応する「顔ニューロン」と呼ばれる神経細胞がサルや人間の脳に存在することが明らかとなっており、人間関係能力形成の基本的方法として、直接顔と顔を突き合わせる対面コミュニケーションが脳に組み込まれているのではないかと考えられている。
     一方で、良質のテレビ番組が青少年の社会性を高めるなど、情報メディアには青少年に有益な影響があることも分かっている。また、青少年が情報メディアに接触しているときの保護者の関わり方が、メディアの青少年への影響を左右するという研究結果もある。
インターネットや携帯電話の利用が青少年に急速に普及している。

図28 インターネット利用率
総務省
『通信利用動向調査報告書』(平成18年)

図29 携帯電話(PHSを含む)の所持率
ベネッセ教育研究開発センター
『第1回子ども生活実態基本調査』(平成17年)

コミュニケーションに情報メディアを活用する青少年が増加している。

図30 コミュニケーション手法
内閣府政策統括官
『青少年の社会的自立に関する調査報告書』(平成17年)

図31 相談したい場合の友だちへの相談方法
川村学園女子大学
『子どもたちの体験活動等に関する調査研究のまとめ』(平成16年)

青少年を狙ったサイバー犯罪(情報技術を利用する犯罪)やトラブルが増加している。

図32 サイバー犯罪のうち青少年保護育成条例違反等の検挙件数
警察庁
『平成17年中のサイバー犯罪の検挙及び相談受理状況等について』(平成18年)

図33 未成年者を当事者とする消費生活相談件数(うち約9割が情報メディアに係るもの)
独立行政法人 国民生活センターより
(平成18年7月25日現在)

青少年の情報メディア利用について、保護者の実態把握が十分とはいえない。

図34−1
メディア接触についての家庭内ルール「特にもうけていない」割合(パソコンのインターネットについて)

図34−2
メディア接触についての家庭内ルール「特に設けていない」割合(携帯電話について)
社団法人日本PTA全国協議会
『平成17度マスメディアに関するアンケート調査 子どもとメディアに関する意識調査』

図34−3 パソコンでインターネットを利用するときの親の対応
警察庁
『少年のインターネット利用に関する調査研究報告書』(平成18年)
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