(3)学修・研究環境の改善及び流動性の拡大学生に対する修学上の支援及び流動性の拡大のための方策 博士課程(後期)レベルにおける優れた人材の育成を行うため,博士課程(後期)在学者等を対象とした修学上の支援策の充実を図ることが重要である。
学生においても,高度な研究水準にある大学院等で,異なる研究経歴の教員から多様な視点に基づく教育・研究指導を受けたり,異なる学修歴を持つ学生の中で互いに切磋琢磨しながら自らの能力を磨いていく教育研究環境に豊富に接していくことが重要であり,学生の流動性を拡大していくことが必要である。
さらに,社会人の大学院教育に対する期待にこたえるため,そのニーズを的確に受容し,大学院教育へのアクセスの拡大を図っていくことが重要である。
<学生に対する修学上の支援の充実> 博士課程(後期)レベルにおける優れた人材の育成を行うため,博士課程(後期)在学者等を対象とした修学上の支援の充実を図ることが重要である。これまで,日本学術振興会の特別研究員事業,及びTA(ティーチングアシスタント)・RA(リサーチアシスタント)等としても活用できる競争的研究資金の拡充等を行ってきており,これを引き続き推進することが必要である。今後は,これらに加え,進学意欲を持つ優秀な学生が経済的な事情から進学を断念することがないよう,大学院受験前など可能な限り早期に,奨学金や授業料免除などの経済的支援制度が受けられるか否かを判断することができる措置について検討する必要がある。 <学生の流動性の拡大>今後の知識基盤社会にあって,グローバル化や科学技術の進展,人材の流動性の高い社会に対応できる若手研究者を養成するために,学生においても,高度な研究水準にある大学院等で,異なる研究経歴の教員から多様な視点に基づく教育・研究指導を受けたり,異なる学修歴を持つ学生の中で互いに切磋琢磨しながら自らの能力を磨いていく教育研究環境に豊富に接していくことが重要であり,このような意味で,学生の流動性を拡大していくことが必要となる。このため,各大学院においては,必要に応じて大学院入学後に補完的な教育を提供することや学生に対する経済的支援の判断を可能な限り早期に行う仕組みの導入などを図っていくことが重要と考えられる。 <社会人が学ぶための環境整備> 今後の知識基盤社会の到来に向けて,多様な学修歴を持つ社会人の大学院教育に対する期待にこたえるため,そのニーズを的確に受容し,大学院教育へのアクセスの拡大を図っていくことが重要である。 若手教員の教育研究環境の改善及び流動性の拡大のための方策 大学院の教育研究機能の活性化を図っていくためには,若手教員の研究環境の改善,とりわけ,博士課程学生からポスドク,助教等といった大学における教員・研究者としてのキャリアの各段階に応じた体系的な研究支援措置の推進を図っていく必要がある。
大学院の教育研究能力を高めていくためには,多様な場での教育活動の実践経験や豊富な研究経歴を有する大学教員・研究者が相互に刺激し合い影響されるような教育研究環境を整えていくことが重要であり,教員・研究者の流動性を拡大していくことが必要である。このような人材の流動性拡大の検討に当たっては,産学官の広い枠組みの中で社会全体の流動性の拡大を推進していくことが必要である。
<若手教員の教育研究環境の改善> 現在,若手教員の研究上の独立性が確保され,流動的・競争的な環境の中で研究を進められるような研究体制や,研究に専念できるような研究支援体制の整備が十分ではない等,若手教員の教育研究環境の改善に関する課題が指摘されている。
○ 人社系大学院 今後,専門職学位課程の増設など人社系大学院の機能の分化と拡充が見込まれる中で,教員組織,教材,文献等資料,設備,スペースなどの教育研究環境の充実が極めて重要となり,これに対する国等の支援が必要である。 ○ 理工農系大学院 理工農系の各分野において,諸外国の学生や研究者にとっても魅力ある大学院となるよう,国際水準の教育研究環境が整備されることが重要であり,施設,設備,教育スタッフ,支援スタッフ等の確保に向けて各大学が努力するとともに,国等が各大学の取組を重点的に支援することが求められる。 ○ 医療系大学院医療系の各分野において,研究者や高度専門職業人等の人材養成機能及び学術研究機能をさらに一層充実させるためには,国際水準の教育研究環境が整備されることが重要であり,教員の増や教育スタッフ・支援スタッフ等の確保,施設・設備の整備等に伴う予算の充実など,国等による財政支援が不可欠である。 若手教員のキャリアパスについては,各大学において,任期制等を活用し,優秀な人材を適切に活用していくことが求められるが,分野によっては,米国において導入されている任期付雇用期間中に審査を経てテニュア(終身在職権)を取得するテニュア・トラック制を適用することも効果的であると考えられ,本制度の趣旨である若手教員の自立性の確保のためには,スタートアップのための資金の支給,研究スペースの確保,研究支援体制の充実等により,テニュア・トラックにある若手教員が資質・能力を十分に発揮できるよう,研究に専念できる体制を整備していくことが不可欠である。
などが考えられる。 <教員・研究者の流動性の拡大> 我が国の大学院の教育研究能力を高めていくためには,多様な場での教育活動の実践経験や豊富な研究経歴を有する大学教員が相互に刺激し合い,影響されるような教育研究環境を整えていくことが重要であり,教員・研究者の流動性を拡大していくことが必要である。
また,教育研究機関の組織全体を通じてのシステム改革や人材養成等を目的としている競争的研究資金制度等については,各大学院の採用選考・人事システム改革の取組,又は各種サポート体制の整備等の若手教員の自立性や流動性を高めるための取組を審査・評価の一指標とする等の方策を講じることも考えられる。
など,今後の知識基盤社会に向けた努力が求められる。
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