教員の教育・研究指導能力の向上のための方策 今後の大学院教育の組織的展開が有効に機能するよう,各大学院における課程の目的,教育内容・方法についての組織的な研究・研修(FD)の実施が必要である。また,大学院の課程の修了時における質の確保等を図る観点から,成績評価基準等の明示等について,大学院設置基準に規定を置くことが適当である。
今後の大学院教育の組織的展開が有効に機能するためには,体系的な教育課程とともにそれを支える教員の教育・研究指導能力の向上が重要な課題となる。このため,個々の教員の教育・研究指導能力向上とそのための組織的な研修体制の充実や学生に対する成績評価の管理,さらには,教員の教育研究活動を適切に評価する仕組みが一体となって機能することが必要である。また,授業内容を公開するなど,教育・研究指導の内容を同一学科内の教員が評価できる仕組み(いわゆるピアレビュー)を導入することも効果的である。
○ 人社系大学院専門職大学院においては,優れた実務家を大学教員として活用することが不可欠だが,その際には,専門職大学院の教員として必要な教授能力等を身に付けるための研修の機会を充実するなどの工夫が必要である。 ○ 理工農系大学院大学教員の教育能力の向上を図るためには,在外研修や外国で研究に参加する機会等を活用しつつ,諸外国の大学院における実際の教育活動に関する知見を広げることも有効である。 ○ 医療系大学院教員に対する評価としては,研究実績や教育に関する資質・能力に加えて,臨床医学系・臨床歯学系分野等の大学院の教育研究や機能を高める観点から,担当教員の臨床に係る実績や臨床を通じた研究成果の評価が重要である。 <体系的な教育課程の編成と教育内容・方法の改善のための組織的活動の実施>各大学院における教育課程の編成,実践等に当たっては,関係する教員が課程の目的,教育課程等について共通理解を深めるとともに,教員の教育・研究指導能力の一層の向上を図る取組があいまって初めて効果的に機能するものである。このような教育の課程の組織的展開の重要性にかんがみ,それぞれの大学院教育の現場における教育研究の特色,創造性等が阻害されることのないよう留意しつつ,各大学院における課程の目的,教育内容・方法についての組織的な研究・研修(ファカルティ・ディベロップメント(FD))を実施することが必要である。これを踏まえ,各大学において授業及び研究指導の内容等の改善を図るための組織的な研修及び研究を実施するものとする旨の規定を大学院設置基準に置くことが適当である。 <成績評価基準の明示と厳格な成績評価・修了認定の実施>今後の知識基盤社会にあっては,専攻分野に関する専門的な知識・能力と関連する分野の基礎的素養が確実に身に付いていることが求められる。このような社会の動向も踏まえ,大学院の課程の修了時における質の確保を図るとともに,教員の教育能力の向上を図る観点から,教員は,学生に対してあらかじめ各授業における学修目標や目標達成のための授業の方法,学位論文の作成や審査に至るプロセス及び課程の年間計画等を明示することが必要である。また,学修の成果に係る評価及び修了の認定に当たっては,学生に対してそれに係る成績評価基準をあらかじめシラバス(講義実施要綱)などに明示するとともに,当該基準に沿って厳格な成績評価を実施することが必要である。これを踏まえ,各大学院における成績評価基準等の明示等について,大学院設置基準に規定を置くことが適当である。 <教育研究活動の評価の実施と活用・反映> 教員の教育・研究指導能力の向上には,FDの実施や成績評価基準等の明示等とともに,自らの教育研究活動についての評価を行うことによって,その実効性を担保し,更なる改善のための材料とすることが重要である。
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