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3 教員の教育・研究指導能力の向上のための方策

 今後の大学院教育の組織的展開が有効に機能するよう,各大学院における課程の目的,教育内容・方法についての組織的な研究・研修(FD)の実施が必要である。また,大学院の課程の修了時における質の確保等を図る観点から,成績評価基準等の明示等について,大学院設置基準に規定を置くことが適当である。
 これらの取組に加え,各大学院は,教員の教育研究活動について評価を行うことによって,教育・研究指導能力の向上に資することが重要である。
【具体的取組】

  •  大学院の課程におけるFDの実施(大学院設置基準の改正)
  •  大学院の課程における成績評価基準の明示と厳格な成績評価・修了認定の実施(大学院設置基準の改正)
  •  各大学院における教員の教育研究活動の評価の実施

 今後の大学院教育の組織的展開が有効に機能するためには,体系的な教育課程とともにそれを支える教員の教育・研究指導能力の向上が重要な課題となる。このため,個々の教員の教育・研究指導能力向上とそのための組織的な研修体制の充実や学生に対する成績評価の管理,さらには,教員の教育研究活動を適切に評価する仕組みが一体となって機能することが必要である。また,授業内容を公開するなど,教育・研究指導の内容を同一学科内の教員が評価できる仕組み(いわゆるピアレビュー)を導入することも効果的である。

  •  下記、線で囲んだ部分については、分野別ワーキング・グループの報告書の内容を記述したものである。

○ 人社系大学院

 専門職大学院においては,優れた実務家を大学教員として活用することが不可欠だが,その際には,専門職大学院の教員として必要な教授能力等を身に付けるための研修の機会を充実するなどの工夫が必要である。

○ 理工農系大学院

 大学教員の教育能力の向上を図るためには,在外研修や外国で研究に参加する機会等を活用しつつ,諸外国の大学院における実際の教育活動に関する知見を広げることも有効である。

○ 医療系大学院

 教員に対する評価としては,研究実績や教育に関する資質・能力に加えて,臨床医学系・臨床歯学系分野等の大学院の教育研究や機能を高める観点から,担当教員の臨床に係る実績や臨床を通じた研究成果の評価が重要である。

<体系的な教育課程の編成と教育内容・方法の改善のための組織的活動の実施>

 各大学院における教育課程の編成,実践等に当たっては,関係する教員が課程の目的,教育課程等について共通理解を深めるとともに,教員の教育・研究指導能力の一層の向上を図る取組があいまって初めて効果的に機能するものである。このような教育の課程の組織的展開の重要性にかんがみ,それぞれの大学院教育の現場における教育研究の特色,創造性等が阻害されることのないよう留意しつつ,各大学院における課程の目的,教育内容・方法についての組織的な研究・研修(ファカルティ・ディベロップメント(FD))を実施することが必要である。これを踏まえ,各大学において授業及び研究指導の内容等の改善を図るための組織的な研修及び研究を実施するものとする旨の規定を大学院設置基準に置くことが適当である。

<成績評価基準の明示と厳格な成績評価・修了認定の実施>

 今後の知識基盤社会にあっては,専攻分野に関する専門的な知識・能力と関連する分野の基礎的素養が確実に身に付いていることが求められる。このような社会の動向も踏まえ,大学院の課程の修了時における質の確保を図るとともに,教員の教育能力の向上を図る観点から,教員は,学生に対してあらかじめ各授業における学修目標や目標達成のための授業の方法,学位論文の作成や審査に至るプロセス及び課程の年間計画等を明示することが必要である。また,学修の成果に係る評価及び修了の認定に当たっては,学生に対してそれに係る成績評価基準をあらかじめシラバス(講義実施要綱)などに明示するとともに,当該基準に沿って厳格な成績評価を実施することが必要である。これを踏まえ,各大学院における成績評価基準等の明示等について,大学院設置基準に規定を置くことが適当である。

<教育研究活動の評価の実施と活用・反映>

 教員の教育・研究指導能力の向上には,FDの実施や成績評価基準等の明示等とともに,自らの教育研究活動についての評価を行うことによって,その実効性を担保し,更なる改善のための材料とすることが重要である。
 現在,教員の研究活動に関する評価は,各大学院や競争的研究資金の公募審査などの場において,例えば,論文生産数,被引用論文数(サイテーション・インデックス),各種競争的研究資金の獲得状況,知的財産権の出願・取得状況など一定の定量的指標を設定し実施されている。しかし,教育活動に関する評価は,その指標に定性的なものが多く適切な指標設定が難しいことなどから,社会的にいまだ定着しているとは言い難い。今後,教育活動に関する評価の指標として,例えば,単位制度の趣旨に沿った学習量の確保状況や成績評価基準等のシラバスへの明示内容,シラバスに沿った授業の実施状況,学生への論文作成指導の状況,学生による授業等の評価などに加え,課程の目的とする人材養成として想定される就職先への就職率や,修了者のキャリアパス形成に関する指導状況,修了者の社会での活躍状況なども考えられる。
 各大学院においては,自主的・自律的な検討に基づき,教育活動に関する評価の積極的な導入を図るとともに,人事・採用面における処遇等にも活用・反映していくことが期待される。また,個々の教員の活動は,各大学院における教員の組織的な役割分担や学問分野,時期等によって多様であることを踏まえ,「教育」か「研究」かといった単純な区分ではなく,各大学院における自主的な調査研究に基づき,個々の教員の多様な活動状況を考慮した形で,活動評価を行っていく方法も有効であると考えられる。


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