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3 義務教育制度の改革の方向

(2)就学の時期

 義務教育の始期である就学時期について,現行制度では,一律に満6歳に達した日の翌日以後における最初の学年の初めとされている。諸外国においても,就学開始年齢は概(おおむ)ね4歳から7歳であり,6歳とする例が主流と考えられるが,その中で,例えば,フランス,ドイツ,韓国などのように,満6歳に達しなくても,保護者の申請等により一定の条件の下に早期就学を認める取扱いを行う国も見られるところである。
 我が国においても,近年,子どもの身体の発達について全般的な早熟化傾向が指摘されていることや,一方で子どもの発達段階には個人差が大きいことなどにかんがみ,就学の時期についての弾力化を検討すべきとの声も出てきている。
 このことについて,本分科会の審議では,就学年齢を一律に引き下げるべきとする意見,一定の幅で弾力化すべきとする意見,現行制度のメリットを指摘し,就学年齢の変更に慎重な意見など,様々な意見が出された。

 具体的な意見としては,主に次のようなものがあった。

(就学年齢の引き下げが望ましいとする意見)

  •  5歳児からの就学とし,5・5制として義務教育期間を延長することを考えるべき。
  •  義務教育の入り口と出口について,年齢の扱いも含めて工夫が必要。
  •  就学年齢を下げるのであれば,小学校教育を早く行うのではなく,幼児教育の内容を義務化して6,7歳まで行う方がよい。
  •  5歳児に小学校の内容を教えるかどうかは別にして,発達の前傾化を考えれば制度を合わせるべき。学校型の授業でもなく保育でもない,遊びの中で知的発達を系統的に図る教育をもっと考えるべき。

(就学年齢の弾力化が望ましいとする意見)

  •  児童生徒の能力に合わせて義務教育のスタート地点を変更する等の施策について,「主に親の教育に関する発言権を中心にする」という考え方を根拠に考えてみてはどうか。
  •  医学の発達や栄養状況の改善などによって,心身の発達段階がかつてと大きく変わってきている。現行の就学年齢を原則にした上で,プラスマイナス1歳の幅で,就学時期を保護者の選択の余地が入るようにすることを検討すべき。その際,保護者の意思の表示をベースにした上で,例えば医師,心理学の専門家,教員などで構成するチームの意見・判断を参考にするなどの枠組みを用意することが必要。
  •  就学時期を親と学校が相談して決める仕組みを考えてはどうか。就学年齢を6歳に限定せずに,1年早くもできる仕組みが考えられないか。6歳は義務教育の入り口としては遅くないか。親も関与させ責任を持たせることが大事。
  •  5歳では個人差が非常に大きく,一律に受け入れるのは学校にとって負担。個人差を認めてよい。ただ,その際には,親の判断だけというわけにいかないので,専門家からの意見も聞くなど慎重に考えるべき。
  •  学校教育法23条の就学義務の猶予措置は,ネガティブな意味で捉えられることが多いが,今後はそのプラス面も考える必要があるのではないか。猶予の制度は,弾力化されておらず,工夫が必要であり,就学年齢にはあまり拘(こだわ)らない方がいい。

(現行制度の維持が望ましいとする意見)

  •  制度の問題として,子どもや保護者にとって良い方法は何かという議論をすると,できる子には早く機会を与えるべきとなるが,学校こそ子どもたちが能力差はあっても同年齢の多様性の中で社会性を身に付ける場であるという考え方もある。
  •  家庭や地域の教育力の弱まりに伴い,幼児教育は困難な状況にある。3年かけても十分に教育が行えないような状況の中で,幼児教育の義務化ならともかく,就学年齢の引き下げは難しく,学校現場では就学年齢の弾力化に対する要望はない。むしろ,幼稚園から小学校への接続を強化するための方策を考えることが重要。
  •  あまり早くから知的学習を進めると子どもは学びに疲れてしまう。発達が早まっているから就学を早めるというよりは,幼稚園で知を支える基盤を十分に作ってから小学校に上がるほうが望ましい。
  •  幼児の発達は,早くなっている面と遅くなっている面があり,コミュニケーション能力や社会生活への態度はむしろ遅れている面である。幼稚園で知を支える基盤を十分につくってから小学校に上がる方が望ましい。
  •  全体として就学を早めて5歳から何らかの義務教育を行うということは議論としてはわかる。一方,子どもによって就学時期を早めるという議論は質が違う。発達が進んでいる子は上の学年に入れてクラスを均質化するのか,同年代の多様性のある子どもたちを一緒に教育するのか,二つの考え方があるが,後者が良いと思う。仮に子どもによって違える場合,判定の基準をつくることは困難である。
  •  スコットランドなどと違い,日本はとにかく早く進む方がいいという社会なので,どのようにして就学時期を決めるかが大きな問題。

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