はじめにこの答申は,幼児教育の重要性について,国民各層に向けて広く訴えることを目的としたものである。 平成15年5月,中央教育審議会は,文部科学大臣から「今後の初等中等教育改革の推進方策について」の諮問を受けた。 教育は,常に子どもの望ましい発達や健やかな成長を期待し,子どもの持つ潜在的な可能性に働き掛け,その人格の形成を図る崇高な営みである。特に幼児期は,生涯にわたる人間形成の基礎が培われる重要な時期であり,このような幼児期に行われる教育は,子どもの心身の健やかな成長を促す上で極めて重要な意義を有するものである。 このような認識の下に,この答申では,子どもの最善の利益を第一に考え,子どもの視点に立ち,子どもの健やかな成長を期待して,小学校就学前のすべての幼児に対する教育の在り方を提唱している。具体的には,家庭,地域社会,幼稚園・保育所等の施設の三者を視野に入れて検討を行った。 一方で,入園を希望する3歳以上の幼児に教育を行う学校である幼稚園と「保育に欠ける」0歳以上の幼児を保育する児童福祉施設である保育所とでは,その目的や機能において違いがある。このため,幼稚園に対する個別具体的な方策を保育所等においても求めることは,必ずしも適当ではない場合があることから,そのような場合には,幼稚園についてのみ言及している。 この答申の構成については,第1章において,子どもを取り巻く環境の変化を踏まえて,今後の幼児教育の方向性として,(1)幼稚園等施設が中核となって,家庭や地域社会とともに幼児教育を総合的に推進していくことの必要性,(2)幼児の生活の連続性及び発達や学びの連続性を踏まえて幼児教育を充実していくことの必要性等を提唱した。 この答申を機に,幼児教育の重要性について,社会全体で認識が深まり,議論の輪が広がることを期待している。 なお,現在,地方公共団体や事業主においては,次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画の策定が求められているところである。幼児教育の充実に関する事項等については,この答申が十分に活用され,特に,地方公共団体にあっては,幼児教育の在り方について主体的に考え,その振興に積極的に取り組む契機となることを切に願う。
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