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2.薬学教育の修業年限について

  近年の医療技術の高度化、医薬分業の進展等に伴う医薬品の安全使用や薬害の防止といった社会的要請に応えるため、薬剤師の養成のための薬学教育は、教養教育や医療薬学を中心とした専門教育及び実務実習の充実を図るとともに、これらを有機的に組み合わせた教育課程を編成して効果的な教育を実施しうるようにする必要がある。また、現在厚生労働省において行われている薬剤師国家試験受験資格の見直しの検討において、当該受験資格を得るための教育は6年間の学部教育を基本とする旨の提言が行われている。さらに、諸外国における薬剤師の養成のための薬学教育の実施状況を見ると6年間の教育が行われている例が多い。
  以上を踏まえ、今後、薬剤師の養成を目的とする薬学教育については、学部段階の修業年限を4年から6年に延長することが適当である。

  他方、現在、薬学教育においては、薬剤師の養成のみならず、薬学に関する研究、製薬企業における研究・開発・医療情報提供、衛生行政など、多様な分野に進む人材を育成している。これは、我が国の薬学が基礎研究を出発点として発展してきたという歴史的背景によるものであり、特に薬学研究においては世界的にも高い評価を得ている。このため、薬学系の基礎教育を中心とした教育を行う現行の修業年限4年の学部・学科を存置することを併せて認めることが適当である。

  修業年限6年の学部又は学科(以下、「6年制学部・学科」という。)、修業年限4年の学部又は学科(以下、「4年制学部・学科」という。)、いずれの教育においても、薬学が人間の生命にかかわる学問であることを踏まえ、豊かな人間性と幅広い教養の上に、薬学の基礎的な能力を身につけることが求められる。6年制学部・学科においては、「最終報告」で述べられている「モデル・コアカリキュラム」を参考にしながら、各大学において、主として医療薬学及び実務実習の拡充が図られる必要がある。また、4年制学部・学科においては、基礎薬学を中心とした薬学の一般的な知識を修得させた上で、特に、知的集約産業である創薬分野における我が国の国際競争力の強化を図る、という観点から、薬学の研究者を目指す者に対しては、近年の学問の発達に対応し、生命薬学など薬学の基礎研究に関連するカリキュラムの充実が行われることが必要である。
  なお、多様な薬学生の進路を考慮し、制度に柔軟性を持たせるため、学生が6年制学部・学科と4年制学部・学科の双方の課程の間で進路変更することができるよう、適切な方策を講じる必要がある。

  薬剤師国家試験受験資格については、厚生労働省において、6年制学部・学科を卒業した者に認めることを基本とすることで検討が進められているが、4年制学部・学科を卒業し、薬学関係の修士課程を修了した者が薬剤師を目指す場合には、実務実習を含む医療薬学に関する履修などの一定の条件の下で、受験資格を付与すべきであると本審議会は考えている。

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