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3  新たな留学生政策の基本的方向

(留学生交流の一層の推進)

  経済・社会のグローバル化が今後ますます進展することが予想される中で,我が国が諸外国との友好関係を維持するとともに,国際競争力を強化していくためには,留学生交流は今後ますます重要性を増すと考えられる。
  同様の観点から,平成12(2000)年4月に開催されたG8(注)教育大臣会合においては,今後10年間で学生,教員等の流動性の倍増を目標とする合意がなされている。
  我が国の留学生交流の現状を見ると,特に受入れについては,いわゆる「留学生受入れ10万人計画」で目標としていた水準を超えている。しかし,大学等の在学者数に占める留学生数の割合は,受入れ・派遣とも欧米先進国と比較して低い水準にあることなどから,留学生交流を更に推進し,我が国の大学等の国際化を進めていく必要がある。

(注)G8
  日本,アメリカ,イギリス,フランス,ドイツ,イタリア,カナダ,ロシアの主要8か国を指す。

(各大学等の取組を基本とした交流の拡大)

  留学生の受入れが10万人を超えている状況を踏まえ,今後の留学生交流の推進においては,国のみならず各大学等がより主体的な役割を果たし,各大学等の特色を発揮した形で優秀な留学生の受入れ,日本人学生の派遣に努めるべきである。国はそのような各大学等の取組を支援するという考え方に立って留学生交流の拡大を図っていくべきである。
  特に,留学生の受入れに関しては,我が国の大学等が日本人学生にとっても留学生にとっても魅力あるものであることが不可欠の条件である。そのため,各大学等において教育研究内容の国際的な通用性・共通性の向上と国際競争力の強化,留学生交流の実施体制の充実を図ることが必要である。

(日本人の海外留学への支援)

  これまでの留学生政策は,国際貢献という観点から外国人学生の受入れに重点を置いたものであった。しかし,今後は,諸外国との間の相互理解の増進,友好関係の深化という観点から,交流という面をより重視していくべきである。
  取り分け,現在日本人学生の海外留学に対する国の支援は限られたものでしかない。しかし,我が国の国際競争力の強化やグローバル化した社会で活躍できる人材を育成するという観点から,より多くの日本人学生が短期留学や学位取得を目指して海外留学を経験することが望ましく,国として,それを推進する必要がある。
  特に,最先端の教育研究活動を行う海外の大学において,日本人学生が国際的な競争環境の中で学習や研究を行うことは極めて有意義であり,国としてこれを支援していく必要がある。

(留学生の質の確保と受入れ体制の充実)

  近年,留学生の受入れが急激に増加していることに伴い,各大学等における入学者選抜,教育研究指導,在籍管理等の面において,留学生の増加に対応した体制を十分に取らず,その結果,真に勉学・研究を目的としているか否かなど,留学生の質の問題に対する懸念が増している。
  留学生の受入れ体制の充実については,各大学等において主体的に責任を持って取り組むべき課題であるが,特に学生数の確保という観点からのみ安易に留学生を受け入れることは,厳に慎むべきである。
  また,国としても,留学生に対する各種の支援策を講ずるに当たっては,各大学等の留学生の質の確保のための取組を促すとともに,関係省庁との連携の下,留学生の質の確保のための取組を強化すべきである。
  なお,留学生の質については,最低限の質の確保だけでなく,より積極的に世界各国から優秀な留学生をいかに日本に引き付けるかという観点も重要である。

(日本学生支援機構設立等による支援体制の強化)

  平成16(2004)年4月に,現在,特殊法人日本育英会が実施している日本人学生への奨学金の貸与事業と,(財)日本国際教育協会,(財)内外学生センター,(財)国際学友会及び(財)関西国際学友会が実施している留学情報の収集・提供,「日本留学試験」の実施,留学生宿舎の設置・運営,日本語予備教育,国による外国人留学生への奨学金の給付事業などを統合して,日本人学生と外国人留学生の双方に対する支援業務を統一的視点から総合的に実施する機関として,独立行政法人日本学生支援機構が設立されることとなっている。
  留学生に対する各種の支援業務は,今後,日本学生支援機構を中核として総合的に実施する体制が確立されることになり,留学生に対するきめ細やかで充実した支援が行われることが期待される。また,各大学等の留学生関連業務に対する支援・協力も強化されるべきである。
  文部科学省においては,日本学生支援機構との連携協力を図りつつ,留学生政策の企画調整機能の充実を図るとともに,外務省をはじめとする関係省庁との一層の連携の下,政府一体となった留学生政策を展開すべきである。さらに,企業,地方公共団体,各種民間団体等とも連携し,社会全体として国際的に開かれ,留学生を暖かく迎え入れるような環境を構築すべきである。

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