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2  留学生交流の現状と課題

(世界の留学生数の動向等)

  主要50か国における外国人留学生数(当該国に受け入れた当該国外からの留学生数)の総計は,国際的な経済・社会のグローバル化を反映し,昭和63年(1988)年から平成10(1998)年の10年間に,約94万人から約161万人へと約7割増加している。この間の留学生数を国別に見ると,アメリカ合衆国が約37万人から約49万人に,イギリスが約7万人から約22万人に,オーストラリアが約2万人から約7万人に,フランスが約13万人から約15万人に,ドイツが約9万人から約17万人に増えており,英語圏を中心に外国人留学生の受入れについて高い増加を示している。
  これらの国々においては,近年,諸外国との相互理解の増進,大学等の国際競争力の強化等の観点から,外国人留学生の受入れに戦略的に取り組んでいる。また,アジアにおいても世界トップクラスを目指す高等教育機関が出現するなど,留学生の受入れ促進は各国共通の課題となっている。

(留学生数の現状)

  我が国が受け入れている外国人留学生の数は,近年大きく増加しており,平成15(2003)年5月1日現在,109,508人で,過去最高となっている。そのうち国費留学生は,9,746人であり,全体の約1割を占めている。留学生全体の9割以上はアジアからの留学生であり,中国の70,814人を筆頭に韓国,台湾を加えると全体の8割に達している。これらの留学生の多くは,学位の取得を目指している。一方,いわゆる短期留学生の数は,6,750人で,全体の6.2%となっている。
  また,学校種別では,大学の学部が52,981人で全体の約半数を占めており,次いで大学院が28,542人,専門学校が21,233人,などとなっている。設置者別では,私立が78,451人で全体の7割を占め,国立は28,305人,公立は2,707人となっている。
  海外に留学する日本人の数は,年々着実に増加し,平成12(2000)年には,主要32か国で,76,464人となっている。しかし,このうち国からの支援を受けて留学している者の数は,極めて少ない。留学先を地域別に見ると,全体の6割は北アメリカへの留学生であり,これにヨーロッパへの留学生を加えると全体の約8割に達している。
  以上のように,我が国に受け入れた外国人留学生及び海外へ留学した日本人学生の数は増加している。しかし,我が国の大学等の在学者全体に占める割合で見ると,受入れは2.6%,派遣は1.5%にすぎない。これを国際的に比較すると,例えば,フランスでは,受入れは7.6%,派遣は2.6%となっており,我が国の水準は,まだ十分とは言えない。
  留学生の受入れが少ないことの背景としては,我が国の大学等の国際化が十分に進んでいないことや留学のための経済的負担が大きいことなどが考えられる。

(受入れ中心から相互交流重視へ)

  諸外国との間の相互理解の増進,友好関係の深化を図るという意味では,本来,留学生交流は,双方向の相互交流であることが望まれる。しかし,我が国の留学生政策においては,国際貢献という観点から,特に途上国からの留学生受入れに重点が置かれてきており,日本人の海外留学についての政策的な対応は十分取られてきたとは言えない。また,地域別の留学生数を見ると,受入れはアジア中心,派遣は欧米中心であり,均衡が取れていない。

(留学生の急増に伴う質への懸念)

  最近の受入れ留学生数の変化を見ると,5年前の平成10(1998)年には,51,298人であり,この5年間におよそ2倍という急激な増加が見られる。増加した留学生のほとんどは私費留学生であり,かつ約8割は中国からの留学生という状況である。
  この背景には,1中国をはじめとするアジア諸国の著しい経済成長に伴う大学等への進学意欲の拡大,2我が国の18歳人口の減少等に伴う我が国の大学等の積極的な留学生の受入れ姿勢,3入国在留審査における諸手続の簡素化などが考えられる。
  このような状況の中で,各大学等においては,入学者選抜,教育研究指導,在籍管理などの受入れ体制を十分に整えることなく,安易に留学生を受け入れ,結果として学習意欲等に問題のある留学生を在学させているのではないか,という懸念が増している。さらに,一部の留学生による不法就労などの問題も表面化している。

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