戻る

4  「個に応じた指導」の一層の充実

(1)現状と課題

(これまでの経緯等)

  平成8年の中央教育審議会答申(第一次答申)においては、児童生徒の発達段階に即し、ティーム・ティーチング、グループ学習、個別学習など指導方法の一層の改善を図りつつ、個に応じた指導の充実を図ることが提言され、平成10年の教育課程審議会答申においては、児童生徒の発達段階等を考慮し、学習内容の理解や習熟の程度に応じ、弾力的に学習集団を編成するなどの個に応じた指導を一層進める必要があると提言されたところである。
  これを踏まえ、新学習指導要領においては、基礎・基本の確実な定着を図り個性を生かす教育を一層充実させる観点から、個に応じた指導の方法等として、小学校については、個別指導やグループ別指導、繰り返し指導が例示されており、中学校については、個別指導やグループ別指導に加えて「学習内容の習熟の程度に応じた指導」が例示されている。また、中学校の選択教科については、生徒の能力・適性、興味・関心等に応じ、一層多様な学習活動ができるよう、「補充的な学習」や「発展的な学習」が例示されている。
  一方で、「学習内容の習熟の程度に応じた指導」は小学校については例示されておらず、また、「補充的な学習」、「発展的な学習」が小学校及び中学校の必修教科では例示されていないところである。

(「個に応じた指導」の実施状況と課題等)

  教育課程編成・実施状況調査によれば、平成15年度の計画において、小・中学校とも約7割の学校が必修教科で「学習内容の習熟の程度に応じた指導」を実施しており、その中で小・中学校とも約5割で「発展的な学習」に取り組むとともに、「補充的な学習」にも約7割が取り組んでいる。また、小学校で約4割、中学校で約3割が必修教科で「課題別、興味・関心別の指導」を実施している。
  学力向上フロンティアスクールなど、このような「学習内容の習熟の程度に応じた指導」、「補充的な学習」や「発展的な学習」、「課題別、興味・関心別の指導」など「個に応じた指導」を積極的に取り入れている学校では、児童生徒の学力の伸長をはじめ様々な面で効果を上げているほか、保護者からの肯定的な意見も寄せられている。
  一方で、教育に対する意識調査の結果からは、習熟の程度に応じて集団を編成した指導を行っている教員は、約2割となっており、また、学校によっては、「学習内容の習熟の程度に応じた指導」が小学校学習指導要領の「個に応じた指導」に例示されていないことや、「補充的な学習」、「発展的な学習」が小学校学習指導要領及び中学校学習指導要領の必修教科では例示されていないことを理由に、これらについて限定的に実施するものとして取り扱っている実態も見受けられる状況にある。

(2)当面の充実・改善方策

  現状と課題においてみられたように、小・中学校において「学習内容の習熟の程度に応じた指導」をはじめ、様々な形で「個に応じた指導」が行われているが、[確かな学力]を育成し、新学習指導要領のねらいを実現するためには、各学校において、児童生徒一人一人のよさや可能性を伸ばし、個性を生かす教育の一層の充実を図ることが期待される。各学校においては、児童生徒の発達段階やそれぞれの特性、学校の実態、教科等や指導内容の特質を十分踏まえるとともに、児童生徒の実態や指導のそれぞれの場面に応じて、個に応じた選択学習、個別指導やグループ別指導、学習内容の習熟の程度に応じた指導、繰り返し指導等、効果的な方法を柔軟かつ多様に導入することが重要である。

(学習指導要領の記述の見直し等)

  「学習内容の習熟の程度に応じた指導」について、多くの小学校において取組が進み、効果を上げている現状にかんがみ、小学校における「個に応じた指導」を一層充実する観点から、小学校学習指導要領の記述を見直し、発達段階等を踏まえ、問題の生じないよう十分に考慮しつつ、取り扱うことができるよう、例示として追加することが必要である。
  同様に、「補充的な学習」、「発展的な学習」についても、小学校及び中学校の必修教科において多くの学校で取組が進み、効果を上げている現状を踏まえ、小・中学校学習指導要領の記述を見直し、必修教科において、発達段階等を考慮しつつ取り扱うことができるよう、例示として追加することが必要である。

(各学校における「個に応じた指導」を行う上での配慮等)

  各学校で「学習内容の習熟の程度に応じた指導」等を実施する際には、いたずらに児童生徒に優越感や劣等感を生じさせたり、学習集団による学習内容の分化が長期化・固定化するなどして学習意欲をそいだりすることのないように十分留意して指導の方法や体制等を工夫するとともに、保護者に対しては指導内容・方法の工夫改善等を示した指導計画、期待される学習の充実に係る効果、導入の理由等を事前に説明するなどの配慮が望まれる。
  また、「補充的な学習」、「発展的な学習」を実施する際には、それぞれのねらいを明らかにし、扱う内容と学習指導要領に示される各教科等の目標や内容との関係を明確にして取り組むことが大切である。このため、「補充的な学習」を行う際には、様々な指導方法や指導体制の工夫改善を進め、当該学年までに学習する内容の確実な定着を図ることや、「発展的な学習」を行う際には、児童生徒の負担過重とならないように配慮するとともに、学習内容の理解を一層深め、広げるという観点から適切に導入することが期待される。
  その際、学校が一体となって共通理解の下に進めるとともに、校長がリーダーシップを発揮して校内体制を整備することや教員間の情報共有を図ることなど、それぞれの役割分担を明確にすることが重要である。

ページの先頭へ