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はじめに

  中央教育審議会は,平成13年4月11日に文部科学大臣から「今後の教員免許制度の在り方について」の諮問を受けた。その際に,具体的審議事項として,

の三つが挙げられた。

  この諮問については,初等中等教育分科会に付託し,初等中等教育分科会教員養成部会(以下「部会」という。)を中心として関係団体からのヒアリングを行いつつ,総会,分科会,部会を通じて計22回にわたる審議を行い,このたび,答申として取りまとめたものである。

  これらの審議事項については,学校教育の状況が,近年の教育改革の推進により大きく変化していることなどを踏まえてなされたものと考える。
  まず,平成10年度に幼稚園教育要領及び小学校等の学習指導要領が改訂され,幼稚園においては平成12年度から実施され,小・中学校等においては平成14年度から,高等学校等においては平成15年度入学生から本格実施されることとなっている。新学習指導要領においては,完全学校週5日制の下,各学校が「ゆとり」の中で「特色ある教育」を展開し,子どもたちに学習指導要領に示す基礎的・基本的な内容を確実に身に付けさせるとともに,それを基にして自ら学び自ら考える力など「生きる力」をはぐくむという基本的な考え方に立ち,授業時数の縮減と教育内容の厳選,個に応じた指導の充実,体験的・問題解決的な学習活動の重視,総合的な学習の時間の創設,選択学習の幅の拡大などの改善を図ることとしている。
  平成11年度からは,これまでの中学校・高等学校に加えて,生徒や保護者が6年間の一貫した教育課程や学習環境の下で学ぶ機会を選択できるようにすることにより,中等教育の一層の多様化を推進し,生徒一人一人の個性をより重視した教育の実現を目指すため,中高一貫教育校が学校教育法等の改正により制度化された。
  また,校長のリーダーシップの下,学校がより自主性・自律性を持ち,組織的・機動的に運営され,子どもや地域の実情に応じた特色ある学校づくりを展開できるよう,学校評議員制度の導入,校長の裁量権限の拡大,校長及び教頭の資格要件の緩和等が図られている。
  さらに,平成13年度からは,基礎学力の向上ときめ細かな学習指導の充実を図るため,教科等に応じた少人数指導等の具体的な学校の取組に対する支援を行うこと等を内容とした第7次教職員定数改善計画(公立高等学校については第6次教職員定数改善計画)が実施されている。
  本審議会としては,このたびの三つの具体的審議事項について,平成12年12月の教育改革国民会議の最終報告や近年の教育改革における諸施策の推進等により,教員をめぐり新たに生じている課題が集約されたものとの認識の下,旧教育職員養成審議会各答申における諸提言を前提としつつ,これらの解決の要請にこたえるべく具体的かつ実効性ある提言を行うよう努めた。
  特に,「教員免許更新制の可能性の検討」については,三つの審議事項の中で最も重い課題であると受け止め,慎重かつ精力的に審議を進めた。そして更新制の導入には一定の意義があると考えられるものの,現時点における制度上の制約などに加え,その政策的有効性についても十分検討を進めたところ,導入には,なお慎重にならざるを得ないとの結論に至った。しかし,その一方で,その可能性の検討に当たり設定した三つの検討の視点,すなわち1教員の適格性の確保,2専門性の向上及び3信頼される学校づくりの三つの視点を,教員の資質向上にかかわる課題ととらえ,これらの解決に向けての取組が必要ではないかと考え,諮問事項である教員免許制度の在り方についての検討に関連して,教員の資質向上を目指した幾つかの具体的提案を行うに至った。そして,これらの提案において「評価」を組み入れることにより,その実効性を担保するようにした。
  適格性を欠く教員や指導力が不足している教員については,人事管理システムを早期に構築することを通じて,分限処分や他職種への転職措置を適切に運用すること,また,優秀な教員については,その意欲や努力が報われ,適切な評価や処遇等に反映されていく体制を早急に確立することを強く求めたい。
  また,学校としての説明責任を果たす取組に関連して,今後,保護者や地域住民とのコミュニケーションの在り方や公開授業等の場面において,教員個々の力量や学校としての取組が日常的に外からの評価を受けることになることを強調した。今後,力量ある教員やしっかりした取組をしている学校は,その意欲と努力が外からも評価され,意欲や努力が不十分であるところには厳しい評価がなされることになるものと考える。
  本答申の提言によって,各学校間の教員の双方向の連携・交流,学校における社会人の活用が促進されるとともに,指導力不足教員等に対する人事管理システムの構築等による教員の適格性の確保,新たな教職10年を経過した教員に対する研修等による専門性の向上及び学校評価システムの確立等による信頼される学校づくりが大きく進展することを強く望みたい。これらの諸施策により,学校現場の課題等に適切に対応できる力量ある教員が確保されることで,保護者や地域住民の期待により一層こたえ得る学校教育が実現することを念願している。

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