中央教育審議会(第119回) 議事録

1.日時

平成30年11月26日(月曜日) 15時00分~17時00分

2.場所

文部科学省「第二講堂」(旧庁舎6階)

3.議題

  1. 「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン(答申)」について
  2. 「新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について(答申骨子案)」について
  3. 「人口減少時代の新しい地域づくりに向けた社会教育の振興方策について(答申(案))」について
  4. その他

4.出席者

委員

 北山会長,小川副会長,永田副会長,明石委員,有信委員,生重委員,伊藤委員,帯野委員,亀山委員,菊川委員,志賀委員,篠原委員,恒吉委員,寺本委員,時久委員,日比谷委員,村田委員,山野委員,善本委員,米田委員

文部科学省

 浮島文部科学副大臣,中村文部科学大臣政務官,藤原事務次官,山脇文部科学審議官,芦立文部科学審議官,生川官房長,瀧本総括審議官,藤野サイバーセキュリティ・政策立案総括審議官,清水総合教育政策局長,永山初等中等教育局長,義本高等教育局長,白間高等教育局私学部長,常盤国立教育政策研究所長,下間大臣官房審議官,丸山大臣官房審議官,玉上大臣官房審議官,森大臣官房審議官,平野大臣官房審議官,塩見社会教育振興総括官,寺門総合教育政策局政策課長,蝦名高等教育局高等教育企画課長 他

5.議事録

【北山会長】
 それでは,ただいまから中央教育審議会総会を開催いたします。本日はお忙しい中,お集まりいただきまして,誠にありがとうございます。
 また本日は,浮島副大臣に御出席いただいております。
また,当初は柴山大臣にも御出席いただく予定でしたが,国会対応が入りまして,残念ながら御欠席です。
なお,中村政務官には途中から御出席いただく予定になっております。
 それでは,本日の議事について,まず御説明いたします。本日の議題は大きく3つありまして,まず,2040年に向けた高等教育のグランドデザイン(答申)について,大学分科会で取りまとめられましたので,後ほど私から浮島副大臣に手交いたします。
 続いて議題の2つ目,新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策の答申骨子案について,初等中等教育分科会で取りまとめられましたので,御報告いたします。
 最後に議題の3つ目,人口減少時代の新しい地域づくりに向けた社会教育の振興方策(答申(案))について,生涯学習分科会で取りまとめられましたので,これも御報告いたします。
 なお,きょうは報道関係者から,会議の全体について録音・カメラ撮影を行いたい旨,申出があり,許可しておりますので,御承知おきいただきたいと思います。
 それでは,議事に入ります。まず配付資料について,寺門課長からお願いします。

【寺門総合教育政策局政策課長】
 本日の配付資料でございますけれども,お手元の会議次第記載のとおり,資料1から資料3になってございます。過不足あればお申し出ください。また,このほか,机上には本日の文科省側の出席者の名簿を御用意してございます。この名簿には,去る10月16日付けで異動のあった者につきましてはアンダーラインを引いてございます。時間の関係上,個々の紹介は省かせていただきますので、御了承ください。
 また,10月16日付けで文部科学省が行いました組織再編についての概要も配付をしてございます。後ほど御高覧賜ればと存じます。
 以上でございます。

【北山会長】
 ありがとうございます。配付資料はよろしいでしょうか。
 それでは早速,議題1に入りたいと思います。2040年に向けた高等教育のグランドデザイン(答申)について,前回の総会で答申案を御審議いただき,今回答申として手交することについて御了承いただいたところであります。
 10月5日総会後の経過といたしましては,大学分科会,将来構想部会において2回にわたって13団体からヒアリングを実施していただくとともに,パブリックコメントの結果,208件の意見があり,それを受けた審議も経て,答申案の表現や記載内容を精査いただきました。その結果,若干の微修正が入っておりますが,内容に大きな変化はありませんので,前回にお約束させていただきましたとおり,本日答申として浮島副大臣にお渡ししたいと思います。
 まず,浮島副大臣に答申をお渡しするに当たりまして,私から一言御挨拶申し上げます。本件につきましては,昨年3月に大臣から諮問を受けて,大学分科会を中心に,永田副会長を大学分科会の会長,将来構想部会の部会長として,そのリーダーシップの下で,1年8か月にわたって審議を重ねてまいりました。
 答申では,予測不可能な時代に文理の枠を超えて普遍的な知識・理解や汎用的技能を身に付けた人材を育成するため,高等教育を学修者本位の教育へ転換することや,地域における質の高い高等教育機会を確保し,各大学の特色と強みを最大限に生かすための地域連携プラットフォームの構築など,今後の社会動向を踏まえた我が国の高等教育の在り方について提言しております。文部科学省におかれましては,この答申を十分に尊重いただき,我が国の未来を見据えた教育改革の実現に向け,関係諸施策の充実や必要な制度改正に迅速に取り組まれることを期待いたします。
 それでは,私から答申をお渡ししたいと思います。

(答申文手交)

【北山会長】
 それでは,浮島副大臣から御挨拶をお願いいたします。

【浮島副大臣】
 皆様,こんにちは。本日も大変に御苦労さまでございます。
 ただいま北山会長から,この2040年に向けた高等教育のグランドデザインの答申を頂きました。本件につきましては,今,北山会長からもお話がございましたけれども,昨年の3月以来,1年8か月にわたって大変精力的に御審議を賜りましたこと,心から感謝を申し上げさせていただきたいと思います。本当にありがとうございます。
 また,この答申におきましては,北山会長をはじめ,委員各位の英知を結集され,充実した内容の答申をまとめていただいたことに,心から感謝を申し上げさせていただきたいと思います。本当にありがとうございます。
 私といたしましては,我が国の大学について,国際競争力が低下しているのではないか,又は高等教育を受けた学生には社会で活躍できる力が身に付いているのだろうか,また18歳人口が減少する中で,高等教育の規模が現状のままで適切なのかなどの課題があると考えているところでございます。本答申では,このような課題についても的確に御提言を頂いていると承知をしております。
 お示しいただいた御提言をしっかりと受け止めさせていただきまして,必要な法改正を含め,関連施策の推進に全力で取り組んでまいりますので,今後ともどうか御指導くださいますよう,よろしくお願いいたします。本日は本当にありがとうございます。

【北山会長】
 副大臣,ありがとうございます。
 文科省におかれましては,ただいま副大臣にお渡しした答申の具体化をお願いしたいと考えております。この機会に,答申を今後具体化させていくに当たって,御意見のある委員がいらっしゃいましたら,お願いしたいと思います。どなたかいらっしゃいますでしょうか。
 これから文科省がインプリメンテーションや,法案の準備など,様々な論点の各論に入っていくにあたって御意見があれば,後程でも,事務局に提出していただければと思いますので,よろしくお願いいたします。
 それでは,議題2に入ります。これは,昨年6月22日の文科大臣からの諮問を受けて,学校における働き方改革について初等中等教育分科会の下に設置された,学校における働き方改革特別部会を中心として審議が進められてきたところであります。昨年の12月の総会におきまして,本件に関する中間まとめについて審議していただいた経緯がございます。初等中等教育分科会や,学校における働き方改革特別部会では,中間まとめ以降,精力的に審議を進めてこられ,今般,答申骨子案として取りまとめられました。
 まず,答申骨子案の作成に大変御尽力いただきました初等中等教育分科会の小川分科会長から,報告をお願いしたいと思います。

【小川副会長】
 それでは私から,初等中等教育分科会長並びに特別部会の部会長として,これまでの審議の簡単な経緯を御報告させていただきたいと思います。答申骨子案の具体的な中身については,この後,事務局から御説明がありますので,事務局の方もまたよろしくお願いいたします。
 昨年6月に文部科学大臣からの諮問を受け,初等中等教育分科会の下に設置された学校における働き方改革特別部会において,昨年7月から審議をスタートさせ,これまで19回の審議を重ねてまいりました。毎回非常に闊達な議論を頂きまして,昨年12月に,学校と教師が担う業務の見直しなどを中心とした中間まとめを取りまとめ,公表しました。その後,文部科学省においては,その中間まとめを踏まえて,学校や教師の業務の役割分担や適正化を着実に実行するための方策などを盛り込んだ緊急対策を取りまとめていただき,本年2月に各教育委員会に通知をしていただき,現在各教育委員会において様々な取組が進められてきております。
 中間まとめの公表の後,引き続き特別部会としては,次の3点,第1に学校の組織運営体制の在り方について,第2に学校の労働安全衛生管理の在り方について,そして第3に時間外勤務抑制に向けた制度的措置の在り方について議論を進め,11月13日の特別部会及び11月19日の初等中等教育分科会におきまして,きょう総会に提案されている答申骨子案について審議を行いました。
 答申骨子案の具体的な内容については,この後,事務局に説明をお願いいたしますけれども,学校における働き方改革の議論に際しては,授業など教師の本来的業務以外の他の多くの業務を教師が担っている現状を抜本的に改善して,教師が日々の生活の質や教職人生を豊かにすることで,授業の質を高め,子供たちの学びが深まっていくことを目指すという目的をしっかりと押さえながら,これまで検討を進めてきました。
 これまでの議論においては,働き方改革を着実に進めていくために,これまであまり徹底されてこなかった勤務時間管理や健康安全管理を意識した働き方改革を促進すること。そして,特に文部科学省が,何が学校や教師の業務であるのかというメッセージを明確に社会・地域に発信し,学校と社会のバッファー,すなわち緩衝役,調整役としての役割をしっかりと果たすことの重要性。そして教育委員会や学校においても,これまで慣習的に行ってきた業務の大胆な見直しを進めていただくことなどについても指摘しております。
 また,給特法,そして1年単位の変形労働時間制といった勤務時間制度に関する議論についても,様々な議論,そしてまた御指摘を頂いておりますけれども,教職員定数の改善や専門スタッフの配置・充実をはじめとする必要な環境整備についても,議論を深めてまいりました。
 現在の学校の状況が,教師を志す若者を減少させているのではないかという強い懸念の声もございます。今次の働き方改革によって,学校現場は大きく変わろうということをしっかり示せるよう,今後答申の取りまとめに向けて,更に議論を進めていきたいと考えております。
 それでは,事務局から答申骨子案の詳細について,御説明をよろしくお願いいたします。

【永山初等中等教育局長】
 失礼します。初中局長でございます。
 それでは,資料に沿いまして,資料2-1でございますけれども,私から骨子案につきまして御説明を申し上げます。
 11月13日に行われました第19回の会議におきまして示された骨子案でございますけれども,まず1ページ目,1ということで,働き方改革の目的でございます。我が国の学校教育の蓄積と成果,そして現在の課題を記載した上で,政府全体の働き方改革推進法や,教育基本法あるいは学校教育法に定める教育の目的や目標にも触れながら,我が国の教育を維持向上していくために行うものであるという目的を,しっかりとここで確認することが必要だと思っております。
 次に,2といたしまして,改革実現に向けた方向性でございます。先般の勤務実態調査の分析に基づきまして,まず教師の勤務の長時間化の現状について述べた後,検討の視点として,これまで特別部会で検討してきました5つの項目をお示ししております。特に,文部科学省が改革を進める主体として施策を講じ,社会に対して明確に訴えていくことが重要となりますので,その視点も基本的な方向性の中にはしっかりと明記することが重要だと考えております。
 3以下は,その具体的な内容になりますけれども,まず先ほどもお話がございました勤務時間管理の徹底,それから勤務時間・健康管理を意識した働き方改革の促進でございます。まず,制度の現状を述べた後で,労働安全衛生法等の改正による勤務時間管理の徹底について記載いたして,さらに,勤務時間の上限に関するガイドラインの策定と実効性確保のための工夫,そして,そのガイドラインをスタートといたしました対応の徹底を記載することが重要ではないかと考えております。
 次に,登下校時刻や学校閉庁日等の設定といった,適正な勤務時間の設定についての記載が必要ではないかと考えてございます。
 次のページをごらんください。2ページですが,労働安全衛生の徹底でございます。現状と課題について,これも記載いたしました後に,学校の労働安全衛生管理の充実のための方策といたしまして,法令上の義務の周知徹底,小規模校も含めましたストレスチェックの実施,教師が適切に相談しやすい環境の整備等を記載いたしまして,さらに,教職員一人一人の働き方に関する意識改革といたしましては,人事評価等におきまして,同じような成果であれば,より短い時間でその成果を上げた方の教師に,高い評価を付与するといったことですとか,学校評価を公表するといったことを通じまして,働き方改革への取組や成果がきちんと評価されるものとしていくことが必要だと考えております。
 また,労働安全衛生法の遵守はもちろんですけれども,不幸にも過労死が起こってしまった場合に,勤務時間管理が曖昧であったために公務災害の認定に非常に多くの時間が掛かって,御遺族を一層苦しめる,そういったことがあってはならないということも明記することが重要ではないかと考えております。
 4ですが,学校及び教師が担う業務の明確化・適正化でございます。ここでは,何よりも文科省が独自に取り組むべき方策,文科省でなくてはできないことを,しっかりと明記することが必要ではないかと考えております。業務の学校・教師以外への積極的な移行,あるいは教師の業務負担軽減,慣習的業務の廃止といった基本的な考え方を述べた後で,文部科学省が独自に取り組むべき方策,具体的には文科省が,教師の担うべき役割は何かを文部科学省として明確に示すといったことや,社会と学校のバッファーとしての役割を果たすこと。それから2つ目として,実態の把握の公表といった,いわゆるメタレベルの取組が進むような仕組みを確立する。それから3つ目として,文科省内で新たに業務を付与しようとする際の調整体制を徹底していきたいといったことを考えております。
 それから,教育委員会が取り組むべき方策といたしましては,本年2月9日付けで通知いたしました13項目,下に点線で囲ってございますけれども,そういった項目の取組の推進,あるいは市町村教育委員会による業務の仕分け等について記載してはどうかと考えております。
 次のページをごらんください。3ページですが,各学校が取り組むべき方策としては,校長が夏季のプール指導,早朝に行われる各種の指導あるいは研究指定校などを,大胆に業務削減すべきと具体的に記載し,また役割分担を進めるべきとした14項目,これも点線の中に囲ってございますけれども,それらについて,更に記述を深めまして,例えば安全配慮義務などの責任について,可能な範囲で法的な整理等を記載してはどうかと考えております。
 また,学校が作成する計画等の見直し,総合的な学習の時間における家庭・地域と連携した校外学習の位置付けの明確化といった,教師の働き方改革に配慮した教育課程の編成や実施,そして業務の明確化・適正化を含めた場合に,どのぐらいの勤務の時間が縮減するのか,これも目安として提示してはどうかと考えております。
 5,学校の組織運営体制でございます。副校長あるいは教頭の負担軽減,それからミドルリーダーによる若手の支援,事務職員の活躍などについて記載した上で,目指すべき学校の組織運営体制の在り方といたしまして,校内委員会の整理統合ですとか,校務分掌のグループ化,主幹教諭や事務職員の標準職務の明示,若手教師の支援,学校事務の適正化・効率化,管理職のマネジメント能力の向上などを提示してはどうかと考えております。
 4ページでございます。6,勤務時間制度ですけれども,これは資料2-2の方に詳しく記載いたしておりますが,まず給特法の今後の在り方については,今般の政府全体の働き方改革推進法も踏まえまして,一部の委員からは,給特法を廃止して,36協定に基づく労働基準法の基本原則にすべきではないかという御意見も頂きました。一方で,現在の給特法の枠組みについては,教師の専門職としての専門性や,それに基づく働き方を勘案した場合に,なおその有効性を失っていない。この場合,給特法の基本的な枠組みを維持した上で,むしろ,3で示した勤務時間管理の徹底や上限ガイドラインの策定,そして4でお示しいたしました学校や教師の業務の明確化や適正化等を,徹底して行っていくことが必要であるべき。そういった意見も多数賜っておるところでございます。
 次に,1年単位の変形労働時間制につきましては,与党において5月には,導入に向けた検討を積極的に進めると御提言いただいております。中教審でも,一部慎重な御意見もありますけれども,変形労働時間制は,教師の勤務の縮減の切り札とするようなものではございません。多くの委員からもございましたとおり,まずは教師の勤務の縮減の総合的な方策を取る中で,業務をしっかり縮減して,かつて学校6日制時代のまとめ取りのように,教師の勤務の繁閑を踏まえまして,社会的な理解を得た上で,教師が自分としっかり向き合うための時間を確保する仕組みとして,地方自治体の御判断で,育児・介護等の職員への配慮も行いながら,選択的に導入することを可能としてはどうかと考えているところでございます。今後とも引き続き検討していく事項もあるものと考えてございます。
 次に,7は環境整備でございます。学校指導・運営体制の効果的な強化・充実といたしまして,小学校における専科教員の充実,教職員定数の改善,これはもちろん小学校に限りませんけれども,スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー等専門スタッフの配置促進,部活動指導員の配置促進等について記載いたしまして,勤務時間管理の適正化や業務改善・効率化への支援といたしまして,ガイドラインの提示や,真剣に取り組む自治体を支援する仕組みというものを構築してはどうかと考えております。教職員定数や専門スタッフ・外部人材の予算もしっかり確保してまいりたいと考えております。
 最後に,8,今後のフォローアップといたしまして,今後の働き方改革の進め方を明確化してはどうかと考えておりまして,勤務時間管理等の市町村の取組状況を把握して公表するといったことで,自治体が自ら改革を進める仕掛けとしていきたいと考えております。
 最後に,今後も定期的に勤務実態調査を実施いたしまして,これを起点に,絶えずPDCAサイクルを回していくことが重要であると考えております。今後も中教審での御審議を踏まえまして,学校における働き方改革にしっかり取り組んでまいります。
 説明は以上でございます。よろしくお願いいたします。

【北山会長】
 長山局長,ありがとうございました。
 それでは,この答申骨子案の審議に入りたいと思います。まず,篠原委員,お願いします。

【篠原委員】
 基本的な流れはこれでいいと思うんですけれども,私が不満なのは,こういう改革を進めることによって,保護者や児童,子供たちですね,生徒に,どういう影響が出るんだと。そのメリット,デメリット,両方あると思うんですよ。そういうところをもう少し盛り込んでもらいたいなと。これでは教員・学校のサイドの視点で,子供にとってどうなんだろうというところが弱い感じがします,これ全体を見ると。
 そういう働き方改革を進めれば,どうしても児童生徒,それから保護者への影響というのは当然あるわけで,これはメリットだけじゃなくて,デメリットもあると思うんです。そこのところをしっかりと盛り込んでもらいたいなと。どういう意味合いが,そっちの家庭や子供や生徒にとってあるのかというところを,デメリットを余り言いたくないかもしれませんけれども,そういうこともしっかりと明記していただきたい。
 それから,それに関連しまして,部活ですね。これはスポーツだけじゃなくて,文化部活動もいろいろあるので。この間,ある新聞を見ていたら,夜部活というのがだんだん今,はやってきていると。僕は前から向こうでも申し上げているんですけれども,大学では体育会系のやつと同好会系のと,両方ありますよね。だから,中高でもそういうのを導入できるところは導入したらいいんじゃないかと。アスリートを目指すんじゃないけれども,少し体を動かしてスポーツをやりたいとか,あるいは文化活動をやりたいという子供たちは結構いますよ。だけど両立させたいんですよ,勉強のこととか,家庭のこととか。
 そういうものがギシギシというか,本当の体育会系の部活だと,そういう余裕がない。帰ってきて寝るだけだと。その辺は,ダブルトラックを各学校で作れるところは作っていくという。僕はそういうのがずっと広がっていくことも,教員の働き方改革にもつながると思っていまして,是非,きょうじゃなくてもいいですけれども,次回でも結構ですが,今この夜部活というのが全国でどの程度普及・波及しているのか,中高の資料があったら是非出していただきたいなと。よろしくお願いします。

【北山会長】
 ありがとうございます。お二人ぐらいずつご発言いただき,もし事務局からコメントがあればお願いしたいと思います。では,恒吉委員,お願いします。

【恒吉委員】
 教師の多忙化とかバーンアウトの状況は大きな問題になっていて,それにメスを入れていかなくてはいけないので,すごく大変な作業をなさっていると思います。
 2点だけ。1つが,実は去年は附属の校長をしていましたので,非常に多忙化しているという状況を身をもって感じて,変えようといろいろしていたのですが,罰の発想ではいけない。学校とか教師を罰する形の変えさせ方をするというのは,教育の弱体化につながりやすいので,それを避けるべきだと思うのですね。
 それで,実際に仕事があるのに,あるいは自分が良いと思う教育を徹底するためには,こういうところで生徒と触れ合っていかなきゃいけないと思っている熱心な教師が,時間だけ,そちらの意図はそうじゃないのでしょうけれども,時間だけ短縮されると,持ち帰る話になると思うのですね。要するに,学校でやっていることが,家に持ち帰って隠れて見えなくなるだけになってしまう。それは避けなくてはいけない。頑張っていい教育をしようと思っている教師が,正に頑張ってこうやって減らしていこうとするような改革に,是非していただければというのが1点ですね。
 もう一つが,国際的に見たときに,今,授業だけではやっていけない,公教育が授業だけを相手にしていては授業の効果が出ないというのが,国際的に流れになっていると思います。そこで,例えばPISAは2015年にCollaborative Problem Solvingというテストを入れましたし,社会情動教育というものも各国ですごく力を持ち始めている。そうした中で,日本は教科だけじゃない部分,教科外のものもカリキュラムの中に入れている国として,教育視察団なんかもどんどん来ているわけですよね。ある意味,非常に国際的な先進モデルになっている。
 その枠組み自体は,非常に国際的に先進性が多分あるのだと思うのですね。その枠組みは変えるべきではない。ただ,それを全部担任ないし教師が担わなくてはいけないかというのは,また別の問題であると同時に,生徒が多様化していて,問題も多様化している,家族も多様化している。そういった中で,多様化して負担が増えた部分を全部,今いる教師が吸収しなきゃ駄目かどうかというのも,別問題で,むしろこの部分が非常に大きな問題なのだと思います。
 問題によっては,例えば成績処理というのが出てきましたけれども,教員がしない形でできると思うのですね。むしろ教育を強める形でできる。あるいは,情報ですよね。明らかに専門性がある方が,セキュリティーが高まる。そういうところに入れていく。だけれども,教育の全人的な,今国際的に評価されているようなところにメスを入れる形になってくると,やはり違う問題だと思うのですね。だから,その辺りを線引きしながら,是非めり張りのある方向でお願いできればと思います。
 以上です。

【北山会長】
 ありがとうございました。では,合田課長からお願いできますか。

【合田初等中等教育局財務課長】
 小川先生の下での部会の具体的な御説明でございますので,財務課長でございますが,私から事務的に御説明させていただきます。
 まず,篠原先生から御指摘いただいた件,今回の働き方改革は確かに,先生方の働き方ということに随分焦点を置きました。先生方の働き方が変わってくると,子供たちが属する家庭や地域のありようも大きく変わってくるというのは事実かと存じます。先生方の働き方が変わることによって,むしろ子供たちの選択肢が増えるという側面と,その選択肢を誰が支えるのかという側面がございます。その点につきましては,小川先生とも御相談をさせていただいて,大変重要な御指摘を頂いたと思っておりますので,更に部会で議論を深めさせていただきたいと思っております。

【篠原委員】
 それだけじゃ弱いので,是非きちんと盛り込んでください。

【合田初等中等教育局財務課長】
 かしこまりました。
 それから,部活動の在り方につきましては,当然私どもは,運動会系の部活動と同好会系の部活動と分けては把握はいたしておりませんけれども,部活動の実態等につきましては把握してございますので,その状況も含めて,また御紹介をさせていただきたいと思っております。
 それから,恒吉先生から御指摘いただいた点でございますが,こちらにつきましては,まず前者については御指摘のとおり,今回の議論全体として,部会におきましても懲罰的な対応ではなく,改善・改革のプロセスを共有すると。そして,その努力や工夫というのがどこに配されているのかというものを共有するプロセスとして,進めていく必要があるという御指摘を頂いたところでございまして,御指摘をしっかり踏まえさせていただきたいと思っております。
 特別活動の意義・役割について研究をしていらっしゃる恒吉先生の御指摘,授業においての共同的な学びですとか,学び合いとか教え合いというのは必要なことだと思っておりますけれども,それも含めた学校教育活動全体の中で,だけれども限られた時間,子供たちにとっても教師にとっても限られた時間を,どうプライオリティーを置いて組み合わせていくのかという議論につきましては,また引き続き部会で深めていただきたいと存じております。
 以上でございます。

【北山会長】
 それでは,次に山野委員,その次は,明石委員にお願いします。
 では,山野委員。

【山野委員】
 ありがとうございます。19回にも上る議論を本当にありがとうございました。
 私からも,先ほど出た御意見と近いんですけれども,なかなか教員の方々の仕事というのは切り分けられないので,どうやって実際これを導入していくのかというときに,評価という,教員の個別の評価という軸だけでは,なかなか厳しいんじゃないかなと思いました。なので,今話題に出ていました,子供たちがどう変わっていったのかとか,次の話にも関係するんですけれども,いろいろなコミュニティ・スクールを導入したとか,地域協働を使っていったとか,あるいはスクールソーシャルワーカー,スクールカウンセラー,教師が,先ほども出ました決まっている今ある仕事を,単に時間を短くするだけでは,なかなか見通しが立たないのではないかなと思うので,そういったいろいろな外部のものを活用していったところに,例えば評価していくとか,何か教員の個人の評価ではなく,もちろん学校評価も議論されていらっしゃったと思いますし,いろいろな視点があったと思うんですが,特にそういうふうに思いました。1点目がそれです。
 2点目は,今の話に関係するんですけれども,7のスクールソーシャルワーカー,スクールカウンセラーの専門スタッフの導入という,ここが進まない限り,やはり教員が,先ほどのいろいろな家庭が複雑になったり,子供たちのいろいろな問題を引き受けたりせざるを得ないかと思うんです。だから,ここの導入をきっちり法定化してくださったり,各学校に1人みたいなところに進めたりして,是非並行して進まないと,教師の負担ばかりがまた増えるんじゃないかなと,非常に危惧します。
 非常に整理していただいて,例えばラインの問題も,管理職の問題のところも複数入れていくということとか,その仕組みがどう機能していくのかという実装のところの今後の課題かなと思いました。本当に御議論ありがとうございました。

【北山会長】
 ありがとうございます。
 それでは,明石委員。

【明石委員】
 明石です。ありがとうございます。
 1点だけ質問したいんですけれども,学校及び教師が担う業務の明確化・適正化という4番がございますよね。その議論をするときに,AIといいましょうか,人工知能が導入されてきますよね。学校の業務と教師の業務で,人工知能がどこを担えるかという議論はされたんでしょうか。例えば学校事務の半数ぐらいはAIがカバーできるとか,教師の教科指導の例えば3分の1ぐらいは,ビッグデータを入れれば,いい発問というのはAIが担えますよね。そうすると教師の業務が,AIができない学級づくりとか特別活動とか,スクールカウンセラー的な接触とか,そういう視点の議論はあったんでしょうか,なかったんでしょうか。1点だけです。

【北山会長】
 では,また合田課長からお願いします。

【合田初等中等教育局財務課長】
 働き方部会におきましては,AIというものに特化した議論,集中した議論というのはさせていただいておりませんけれども,他方でICTを活用すると。例えば,校務支援システムが導入をいたしますと,例えば年間でいくと,私どもの実際把握している実践例などを見ても,120時間ぐらい先生方の勤務時間が短くなるというデータもございます。したがいまして,ICTを活用することによって,これはまだまだ学校は進んでいないところでございますから,そこのところをしっかりと学校の働き方改革に使っていくという御議論はございます。
 他方で,AIにつきましては,今先生がおっしゃいましたように,例えば採点とか,発問ですとか,子供たちに合った個別最適化された学びですとか,そういうことにかなり大きな可能性があると思っております。これにつきましては,この部会の議論の大きな前提といたしまして,文部科学省としても今年6月に,Society5.0に向けた人材育成という,前の林大臣がビジョンを出しておられまして,その中で,これはまだまだ具体的な形にはなっておりませんけれども,そういうことを導入したら,先生方の働き方改革も進むのではないかという御議論を頂いているところでございます。
 他方で,AIの専門家からこそ御指摘を頂いておりますのは,子供たちが黙々とタブレットに向かっているような学校は絶対に避けてくれと言われておりまして,学び合いですとか,教え合いですとか,先ほど恒吉先生がおっしゃったように,正に協働する力,対応する力というのは,学校で育むべきということでございますので,それについては来年度,私どもの方で,そういった新しい技術を活用した教育の在り方ということで,新しい予算を要求させていただいているところでございます。しっかり取り組ませていただきたいと存じます。

【明石委員】
 ありがとうございました。

【北山会長】
 山野委員の御意見は,1つ目が評価についてで,2つ目がスクールソーシャルワーカー,スクールカウンセラーについてでしたが,こちらについてはどうですか。

【永山初等中等教育局長】
 恐らく1点目,2点目,かなり共通の部分もあろうかと思いますけれども,おっしゃったとおり,評価をする場合に,学校評価とも違うわけですけれども,その中では,学校の管理運営体制。これは正に今,チーム学校ということで取り組んでいる中で,教職員だけではなくて,今おっしゃったスクールソーシャルワーカー,スクールカウンセラー,それから部活動指導員とか,スクールサポートスタッフとか,様々いろいろな方々の協力を得ながらということも,大きな評価の項目だと思っていますので,そういったものを含めた評価ということを,これからも称揚していきたいと思ってございます。
 それから,スクールカウンセラー等の配置は非常に大事だということは,私どもは全く同じ立場でございまして,来年度要求では,スクールカウンセラーにつきましては全公立小中学校に配置できるように,それからスクールソーシャルワーカーにつきましては全中学校区に置けるように,こういった要求をいたしてございまして,こういったことについても今後,充実を図っていきたいと思ってございます。よろしくお願いします。

【北山会長】
 それでは,次に,生重委員,その次に善本委員にお願いします。
 では,生重委員,お願いします。

【生重委員】
 ありがとうございます。全体的によく検討されているなと思うんですが,私自身がいろいろな学校で,いろいろなことを体験したり,相談を受けたりしている際に,例えば,せっかくコミュニティ・スクールや地域協働活動の推進などが図られていくように,前向きに進めているにもかかわらず,学校の施設は誰のもの?と思うんですが,校長が貸してくれなかったりというのがものすごくありまして,地域が休みとか放課後の時間を補ってくれることによって,先生たちの業務の軽減にもつながっていくと思うんですが,そういうときに,学校の施設を貸したがらない学校経営責任者が,いまだにたくさん存在しているというところを,もうちょっときちっと研修もしていただきたいというのが1つなんですが。
 書き込むところに,学校・地域・家庭の連携推進という,教育委員会等が取り組むべき方策というところに,7番目に学校・家庭・地域の連携促進というふうな,これは昔から言われていて,とても曖昧で,今せっかく法改正までして,コミュニティ・スクールであり,地域学校連携推進だと言っているんですから,そこもきちんと書き入れてほしいですし,書き入れた上で,なおかつ信頼関係がない限り,やはり人間ですので,その施設を貸していただくことも,共に相談に乗って一緒にやっていくことも不可能と思いますので,信頼関係を進めるという。この夏の温暖化のようなことが進めば,プールだって,普通の学校のプールは全く使えなくなるような状況になりますので,外部にどう連携委託し,室内のプールを活用し,子供たちが泳ぐ機会を増やしていくのかとか,そういうことも含めて,全てが校長の理解だと思います。
 そして,学校の働き方改革の最大のことは,最初に篠原先生がおっしゃっていましたけれども,家庭の理解があって初めてですので,そこのところも,きちっとうまく理解していただけるようなことを推進していただきたいと。
 何よりも日本の強みは,教育や人材育成によってなし遂げられると思っておりますので,是非文部科学省さんには,これはスクールソーシャルワーカーの問題もスクールカウンセラーの問題も,それから教員の臨時雇用になっている人たちの問題も含めて,正規雇用にしてということを考えて,しっかりした学校体制を作っていく必要があるかと思うんです。そのときに必要なのは予算ということで,是非文科省に頑張っていただきたいなというのが私からの意見でございます。

【北山会長】
 ありがとうございます。
 続いて,善本委員,お願いします。

【善本委員】
 ありがとうございます。短期間にこれだけの議論が進んだことに,現場を預かる者としては,非常に感謝の気持ちが大きいですし,また,ここまで来たという感慨の思いも非常にあります。
 そういう中で,先日ですか,学校で子供の朝御飯を提供するという新たな取組が,極めて先進的な良い取組であるという文脈で報道もされていました。私はこれを見て,やはり学校の働き方改革って,非常に難しいんじゃないかという思いを強く持った部分もあります。正にその取組は効果的であって,子供にとって良いことであるのは確かでありますし,そうであるが故に,良いことであるから,できるべきことというのは物すごくたくさんあって,だけれども,もちろん100%それが教員の業務量を増やすことなくできるのであれば,望ましいわけですけれども,そんなことはあり得ないのは,現場の人間なら誰でも簡単に想像が付くことです。朝7時半に生徒たちと一緒に,「いただきます」と教員が御飯を食べている,勤務時間前なわけですけれども。
 ということを考えると,良いことである,教育において効果があることであっても,学校なり教師が担うべきかどうかということを証明するということは,ここでやっていただいているんですが,一歩進んで,抽象的にマネジメント能力の向上ということではなく,先ほど申し上げたような授業は,教育委員会と校長が推進しているわけですから,教育委員会なり校長は,私は校長の立場で自戒を込めて申し上げますけれども,これは教育と限らないと思いますが,新しい授業を構築するに当たって,教師の労力のコストとか,その削減の方法を,必ず明示すべきであるということを明らかにすべきではないかなと思っています。
 そうでないと,教育上効果があることというのは無限にあるので,どうしてもそれを減らしていくという圧力というのは,物すごく現場では難しいと思います。まして目の前に子供がいて,助けてほしいと望んでいる保護者がいてという状況の中で,このようなことが起きているということも,つい最近のことでしたので,改めて是非,教育委員会と校長のマネジメントが,教員の労力のコストの削減に対して具体的に明確な方策を持っていただきたい。これが1点です。
 もう1点は,先ほど小川先生からもお話があったのですが,学校の働き方改革に光が当たることによって,負の側面として,いかにも学校の現場は非常にブラックな職場であるというイメージが進んでいることもあって,教員の希望者というのが,ここしばらく減少しているという状況があります。これはボディーブローのように教育の質の低下に効いてくるので,現場としては非常に危機感を持っています。
 働き方改革に具体的な策を講じる中で,より一層教師の仕事の魅力を増すような制度の構築も,もし可能であれば検討していただきたいなと思います。例えばサバティカル制度は,私の知る範囲では今,大学でしか行われていないのではないかと思いますけれども,非常にすばらしい成果を上げた教員に対して,サバティカルのようなものを新たに構築するとか,そういう教員の魅力を増やすような施策も,併せて考えていただければというのが私からのお願いでございます。
 以上です。

【北山会長】
 ありがとうございます。
 今の生重委員と善本委員の御意見に文科省の方からコメントはございますか。

【永山初等中等教育局長】
 ありがとうございます。御指摘のとおり,この働き方改革を進める上では,保護者,地域,それから保護者の理解というのも不可欠でございますので,そこはできましたら答申の中にしっかり書き込むということを,まずさせていただいた上で,更に進んで,理解だけではなくて,実際に正に協働していただくということで,教員の学校の職務を3つに分類いたしました中にも,1個その地域,もしかしたら先ほどの子供の朝の御飯もそうなのかも分かりませんけれども,そういったものも地域の方々,あるいは自治会ボランティアの方々に御参画いただくということが有効な,あるいはそれが可能なものというのは結構あるような気がいたします。そういったものも含めて,答申の中にも御記載いただければと思ってございますし,私どもとしても関係のところに十分そこは周知,お願いをしていきたいと思います。
 それから,正に教育委員会あるいは校長のマネジメントが大事だというお話は,そのとおりでございまして,きょう骨子でお話をした中にも,校長がリーダーシップを持って大胆に,これまでの慣習にとらわれず,それから見直すということも書いてございます。教育委員会もしかりですけれども,最終的には,あまたある業務の中で,全てその教育的意義がないものはほとんどないわけで,そうすると,最終的に優先順位と申しますか,比較考量ということになってくるわけで,そこにつきましては,各教員ということより,むしろマネジメントのレベルでしっかり取り組むということが大事だと思いますので,そういった中身を含めまして,答申の中にまたきちんと書いていくということも重要ではないかと私も思います。
 それから,魅力を増す方策につきましては,サバティカルの御提案もありましたけれども,今すぐここでというのは,議論はそこまで至ってはいないんですけれども,文科省としても働き方改革と併せて,学校の魅力を増やす,あるいは教職の魅力を増やす,高めるという方策も,大変重要だと認識をいたしてございます。また取り組んでいきたいと思います。ありがとうございました。

【北山会長】
 ありがとうございます。
 それでは,伊藤委員,その次に帯野委員お願いします。

【伊藤委員】
 ありがとうございます。まずは,学校における働き方改革という大変難しい問題に対して,ここまで取りまとめを頂いたことに対しまして,感謝を申し上げたいと思います。その上で,学校現場からの要望ということになるかもしれませんけれども,2点ほどお願いいたします。
 1点目は,本来の教員の業務でないものの抜本的な見直しということが先ほどありました。業務の担い手を学校あるいは教師以外へ移行するときに,誰が担うのかを自治体レベルで明確にしていただきたいということでございます。といいますのは,これまで長い年月を掛けまして,先ほど特別活動の意義・役割というのもありましたけれども,例えば掃除や給食当番なども含んで,いわゆる日本型教育というものが築き上げられてきたわけで,それは教員の専門性であるとか,児童生徒との人間関係を基盤としてやってきたというところが多々あろうかと思います。
 ですから,地域によっては,純粋なボランティアの御協力による体制づくりがうまくいくといったところがあるかも分かりませんけれども,多くは行政が財源を確保し,御支援いただける方を募り,そしてある程度の研修も受けていただいた上で,責任を持ってやっていただくという体制整備をしなければ,なかなか長続きはしないだろうと思っています。ですから,ここのところはもう少し詰めた御議論,そして方策の提示をお願いしたいところでございます。
 もう1点は,年単位の変形労働時間制というのが出てまいりましたけれども,これは非常に現実的な方策であろうと思いますし,選択的に取り入れることを可能とするという考え方には,個人的には賛成です。ただ,実態を見てみますと,夏季休業中も,中体連をはじめとした各種大会,音楽コンクールなどの開催などに伴って,どうしても部活動の練習というものが出てきます。あるいは教員の研修,これは県単位でありますとか,市町村単位でありますとか,学校単位もございますけれども,スケジュールがかなり入っているというのが現状です。
 ですから,関係団体,関係者に幅広く呼び掛けていただいて,こうした行事や大会等の精選と一体的に取り組んでいくということが重要になってくるだろうと思いますので,よろしくお願いいたします。

【北山会長】
 では,帯野さん,お願いします。

【帯野委員】
 先回の初等中等分科会で述べた意見の繰り返しになりますが,今回の答申案は,上限のガイドラインの作成であるとか,マネジメントであるとか,非常にいろいろな方策が網羅されていて,一見総花的であるけれども,これを見ていて,教員の勤務状態を改善するのは,これといった決め手はなくて,合わせわざであるということを再認識しました。
 ただ,その上で,人の意識を変えていくのは制度でありますので,今,伊藤委員からも御意見が出ました変形労働時間制ですね。これが一番,実現可能であると思いますので,今の御意見のように,そこをしっかり整理して,自治体の裁量に任せるだけではなく,相当整備をして,国から強く制度化を実現していただけたらと思います。その際に,かつてのような自主研修という不明確なことではなく,はっきり夏季休暇と位置付けて強力に進めていく。この制度化を是非お願いしたいと思っています。
 それから,本日は加えて,給特法のことについて述べたいのですが,給特法については様々な議論があったようで,引き続き議論を進めていく必要があるというふうに,どこかで結ばれておりましたが,4%の調整額を触ったところで,なかなか過重な労働の抑制にはつながらず,これは教員の制度,給与を考えるときに必ず出てきて,そしてまた消えていく問題でありますので,そろそろ本格的に見直しを検討する時期が来ているのではないかと思います。
 そして,今後議論を進めていくときに,4%がふさわしいか否かという小さな議論ではなく,日本全体の給与制度を踏まえた大きな流れの中での見直しが必要ではないかと考えます。時間で対価を払うという考え方,それから終身雇用に基づく年功序列であるとか,新卒一括採用であるとか,これは日本の企業の大きな強みでもありましたが,今,グローバル化の中の大きな課題にもなっています。今後,勤務時間実態調査は5年に1度ぐらい,短いタイムスパンで行うと書かれておりましたが,恐らく5年もすると,日本の給与制度,雇用制度は随分変わると思いますので,今からこれを研究してもよいのではないでしょうか。
 その際に,例えばですが,裁量労働制のような新しい考え方も,あってもよいのではないかと思います。いわゆるホワイトカラーエグゼンプションですが,採用1年目からは無理にしても,例えば5年10年たって高度な業務がこなせるようになったときに,そういう制度を取り入れるのも1つですし,それからもう一つは,先生の自由度って,すごく大切だと思うのですね。今回の直近の実態調査では,量的調査はされておりましたが,質的調査はされていなくて,どういうときに先生が労働の満足度を得られるかということは明らかにされていません。
 例えば,部活で夏季休業中でも勤務をしていても,それで成績が良ければ,もしかすると先生も非常に達成感があるかもしれない。夜遅くまで授業プランを書いていても,それで生徒が能力向上すれば,そのときに教師として大きな幸せを感じるかもしれない。こういう自由度も大変大切だと思いますので,自由度プラスやりがいをかなえられるような,例えば私の思いつきのような意見でありますけれど裁量労働制といった仕組みを,専門家を入れて,大きな給与制度の中での議論というのを進めていただけたらと思います。そういう趣旨で,この答申の中に,新しい給与制度の調査研究を始めるみたいなことを書いてはいただけないものかとお願い申し上げます。

【北山会長】
 ありがとうございます。
 もうお一方,米田委員までお願いして,このセッションを一旦締めたいと思います。
 米田さん,お待たせしました。

【米田委員】
 3点お話しします。1つは,他県でもみんなそうだと思いますが,多忙化防止に向けてのガイドラインのようなものを,県単位あるいは市町村単位で設けて,市町村教育委員会あるいは県の教育委員会がリーダーシップを取って,あるいは学校長もリーダーシップを取って,多忙化防止に向けて,軽減に向けて動いております。そういう面では,教員の意識は大分変わりつつあると見ております。これは,この4月から,まだ年度途中ですので,最終的に来年の3月に一度振り返ってみて,次またどうするか考えるということにしておりますが。
 ただ,その中でどうしても気になるのは,どの学校にも必ず超多忙な教師がいるということです。超多忙な教師が1人でもいて,その1人に何かあったときに,非常に大きな問題になるという危機感も持っているということは事実でありますが,いずれ意識を変えていく上で,校長あるいは県はじめ,教育委員会のリーダーシップ,指導の力は大きいと感じております。
 それから外部スタッフは,いろいろな専門スタッフを入れることはもちろん賛成なんですが,県によっては,例えばスクールカウンセラーあるいはスクールソーシャルワーカーなど専門スタッフの配置をしたいんだけれども,実際その資格を持っている人がいない。あるいは,いても,ほかの仕事にフルタイムで勤務していて,なかなか学校に回ってもらえないということ。もちろん,予算的な面もございます。そういうこともありますので,長いスパンで見るならば,こういうスクールカウンセラーあるいはスクールソーシャルワーカー等の養成に関して,もっと力を入れていけないものかなと思っております。
 それからもう一つ,質問になると思いますが,今,給特法あるいは変形労働時間制について取り上げられておりますが,例えば給特法も,言ってみれば50年ほど前にできて,当時の超過勤務時間の平均が大体8時間であったということをベースに,4%の調整額が付けられたというところからスタートしているんですが,結局,50年たった今,時代は大きく変わっているということもありまして,そういう時代の変化を踏まえながら,この後,どういう形で検討していくのか,あるいはこのままでいくのかということ。
 最後は,変形労働時間制につきましても,国立大学法人の附属校ではかなり導入されているんですが,いろいろな課題も多分あるんだろうと思います。そういう面をもっと出して,ディスカッションしていくことになるのか,最終的にこの答申に,具体的に方向性を持った形で入れることになるのかどうか,その辺を伺いたいと思います。

【北山会長】
 ありがとうございます。
 今の,伊藤委員,帯野委員,米田委員からの御質問,御意見について,事務局からよろしいですか。

【永山初等中等教育局長】
 まず伊藤委員から,教員が担っている業務を,それ以外の専門スタッフ,地域の方も含めて,誰が担うのかということについては,おっしゃったとおり,本当に個々の学校というよりも自治体レベルで,きちんと予算措置をするということが,持続可能な制度の構築には必要だと思いますし,国庫負担,国庫補助があるもの,ないものがありますし,自治体がそれぞれでやっておられるところはありますけれども,そういった事例も我々は集めながら,いい例というのを展開していって,本当にチーム学校として持続可能な体制を組めるような仕組みを作っていきたい,そういう状況に持っていきたいと思ってございます。
 それから,変形労働時間制に関係しまして,特に夏休みは中体連ですとか,様々なコンクールですとか,あるいは公的な,あるいは自発的な研修とか,非常にたくさんあります。これらについては縮減ということを,これも個々の学校ではなくて,まず私ども文科省としても,きちんとこれをお願いして,そういった動きを作り出していきたいと思いますし,各県・市町村でも同じような形で,教員の勤務実態に照らして,本当に必要なのか,動かせないのかどうかを含めて,本当に真剣に本気でお願いしていきたいと思ってございます。ありがとうございました。

【合田初等中等教育局財務課長】
 帯野先生と米田教育長から,特に給特法の在り方について御質問いただいたところでございます。御指摘のとおり,給特法は昭和46年度にできた法律でございますけれども,他方でこれは給特法と人確法と相まって,教師の教職としての特性を踏まえた人事管理制度,給与制度を形成しているというのも事実でございます。
 先ほど局長から申し上げましたように,この給特法の在り方については,働き方部会の中でも様々な議論を頂いておりますけれども,しかしながら,多く頂いている御指摘といたしましては,給特法という枠組みを1つ利用しながら,生かしながら,先ほど来御指摘いただいておりますように,学校に多く寄せられている様々な業務の中で,教職の専門職たる教師でなければできないことというものを明確にして,そしてそこに時間を再配分していくということが,まずはどうしても必要ではないかということでございます。
 米田先生の御質問でございますけれども,中教審におかれましては,昨年6月からの議論,この任期の関係もございますので,ここで1つ,答申という形で御結論を御判断いただくということが大事だと思っておりますので,給特法という枠組みも1つの土台にしながら,学校の働き方改革が,先ほど来,話がございますように,とにかく実効性ある形で確実に前に進んでいくという御議論を,一度ここでお取りまとめ賜りたいと思っております。
 ただし,先ほど帯野先生もおっしゃっておられましたように,先生方の働き方というのは,ただ単に先生の働き方だけではなくて,労働法制でありますとか,あるいは労働市場でありますとか,それから,多くの先生方は公立学校の先生でございますので,公務員法制でありますとか,そして何よりも,先ほど帯野先生がおっしゃいましたように,18で教職を志し,22で先生になって,60まで仕事をするという先生像以外の先生像が,これからどんどん増してくるだろうと。
 その中で,給与の在り方だけではなくて,例えば教員免許の在り方でございますとか,それから先生の在り方や役割ということも含めて,今後引き続き,オープンエンドな形で議論を進めていく必要があるという御議論は,働き方部会でも小川部会長の下で頂いているところでございますので,そういった議論を答申の中ではしっかりとまとめさせていただきたいと考えているところでございます。
 以上でございます。

【北山会長】
 皆様,いろいろな御意見をありがとうございました。きょうの総会での審議はこれまでとさせていただきたいと思います。追加で御意見があれば,文科省事務局にお出しいただければと思います。
 本答申骨子案につきましては,ただいま委員の皆様から頂いた御意見も踏まえまして,初等中等分科会及び学校における働き方改革特別部会において,必要な修正も含めて御検討いただきたいと思います。今後,答申取りまとめに向けて,引き続き御審議を頂くということで,小川分科会長,よろしくお願いいたします。
 それでは,議題の3つ目に入りたいと思います。これは本年の3月2日の文科大臣の諮問を受けて,社会教育の振興方策について,生涯学習分科会を中心として審議が進められてきたところであります。8月10日の総会でも本件に関する審議のまとめについて,この場で御審議いただきました。生涯学習分科会では,審議のまとめ以降も精力的に審議を進めてこられて,今般,答申案として取りまとめられました。
 まず,答申案の作成に大変御尽力いただきました生涯学習分科会の明石分科会長から,御報告をお願いいたします。

【明石委員】
 答申案の詳細な説明は,この後,事務局にお願いするといたしますが,私からは,生涯学習分科会における審議の簡単な経緯と,答申案のポイントについて御説明をさせていただきます。
 今回の答申案の取りまとめに当たっては,本年3月に文科大臣から中央教育審議会に対して行われました,人口減少時代の新しい地域づくりに向けた社会教育の振興についての諮問を踏まえ,精力的に審議を進めてきたところでございます。
 答申案は2部構成となっております。1部は,今後の地域における社会教育の在り方とし,地域における社会教育の意義や果たすべき役割について,今後社会教育を基盤とした人づくり・つながりづくり・地域づくりが一層重要であるとしております。その上で,新たな時代の社会教育の方向性として,開かれ,つながる社会教育を提示しております。さらに,今後の社会教育の展開に当たりましては,学びの場への地域住民の主体的な参画を得ることや,首長部局,学校,NPO,企業等の多様な主体が,これまで以上に連携・協働することが必要となり,これらを実際に主導するため,様々な取組を企画・実施する専門性のある人材の活躍推進が重要であるとしております。
 第2部は,本年7月に取りまとめました当分科会の審議のまとめの内容も踏まえ,今後の社会教育施設の在り方としまして,社会教育施設には学習と活動の拠点としての役割のみならず,住民主体の地域づくり等の拠点としての役割も求められていくことをお示しし,また,地方公共団体の長が公立社会教育施設を所管できることとする特例については,審議のまとめの結論を維持し,社会教育の適切な実施の確保に関する制度的担保が行われることを条件に,可とすべきとしております。
 私からは以上でございます。事務局から,答申案の詳細について御説明をお願いいたします。

【北山会長】
 それでは,清水局長,お願いします。

【清水総合教育政策局長】
 総合教育政策局長でございます。
 それでは,答申案の内容につきまして,事務局から御説明させていただきます。答申案は資料3-2,35ページある資料でございますが,資料の3-1にその概要を,縦長2枚物でございますけれども,まとめてございますので,この資料3-1,概要に沿って御説明をさせていただきます。
 明石分科会長から御説明がありましたとおり,本答申案は2部構成となっておりまして,1枚目が第1部,今後の地域における社会教育の在り方,そして第2部が2枚目でございますが,今後の社会教育施設の在り方となっております。
 まず1枚目の,今後の地域における社会教育の在り方についてでございますが,こちらも上段と下段にありますけれども,まず,地域における社会教育の目指すものといたしまして,その意義,役割,新たな方向性を述べた上で,社会教育を基盤とした人づくり・つながりづくり・地域づくりに向けた具体的な方策を述べるという形になっているところでございます。
 まず,上段をごらんいただきたいと思います。地域における社会教育の目指すものとして社会教育の意義と果たすべき役割につきましては,この方向性を示すフレーズといたしまして,社会教育を基盤とした人づくり・つながりづくり・地域づくりとまとめているところでございます。
 1つ目のポツでございますが,現在,我が国においては,多様化し複雑化する課題と社会の変化への対応が強く要請されているところでございます。この課題,1ポツ目に書いてあるわけでございますけれども,人口減少,高齢化,貧困の問題,独り暮らし世帯の増加等を背景とした人と人とのつながりの希薄化,社会的孤立,地域財政の悪化等があるところでございます。
 また,国際的な動きといたしまして,2015年9月の国連サミットにおいて,「地球上の誰一人として取り残さない」をテーマとした持続可能な開発目標が採択されているという状況もございます。こういった中で,一人一人がより豊かな人生を送ることのできる持続可能な社会づくりを進めるためには,行政のみならず,企業や大学,団体,個人など,様々な主体がそれぞれの立場から主体的に取り組むとともに,特に地域においては住民自らが担い手として,地域運営に主体的に関わっていくことが重要となってくるところでございます。
 そういった人生100年時代の到来,Society5.0実現の提唱といった社会の大きな変化を踏まえますと,誰もが生涯にわたり必要な学習を行い,その成果を個人の生活や地域での活動に生かすことのできる生涯学習社会の実現への取組を,より強固に進める必要があるところでございます。
 そして,社会教育が個人の成長と地域社会の発展の双方に重要な意義と役割を果たす旨を,人づくり・つながりづくり・地域づくりの観点から,図でまとめたところでございます。1つ目が人づくりでございますが,これは社会教育における学びが,例えば健康・安全な暮らしや趣味,教養等,個人の問題意識や関心をきっかけとして行われること。そして,その学びの過程を通じて,個人の知的欲求の充足,人間的成長,自己実現につながっていくということが,この人づくりでございます。
 2点目,右側のつながりづくりですが,社会教育における学びの場で,住民相互の学習を通じてつながりの意識が醸成され,住民同士のきずなが強まるという効果が期待されるところでございます。
 そして3点目,下の地域づくりでございますが,地域で共に学び,問題意識を共有したり,相互に認め合ったりすることで,地域に対する愛着や帰属意識が育まれ,地域の将来像を考え取り組む意欲の喚起や,住民の主体的参画による地域課題の解決につながっていくというものでございます。
 社会教育におきましては,学びを学びに終わらせることなく,その成果を地域の活動の中で積極的に生かすことで,積極的に地域の活動に参画する熱意や,更なる問題解決のために新たに学びを求めるという持続的な学びと活動の循環につながっていくところでございます。繰り返しになりますけれども,社会教育は,個人の成長と地域社会の発展の双方に重要な意義と役割を持つということで,この社会教育を基盤とした人づくり・つながりづくり・地域づくりの重要性は,地域行政全体を通じてますます大きくなっていくところでございます。
 その上で,下の段,新たな社会教育の方向性についてでございますが,社会教育が人づくり・つながりづくりという強みを最大限に発揮しつつ,地域づくりに大きく貢献していくために,今後はより多くの住民の主体的な参加を得て,多様な主体の連携・協働と幅広い人材の活躍により行われる社会教育,これを「開かれ,つながる社会教育の実現」と呼んでおりますけれども,これへの進化を図る必要があるところでございます。この進化を図るために,3つのポイントを挙げております。
 初めに,住民の主体的な参加のためのきっかけづくりでございます。住民にとって身近で目的を共有しやすいテーマを設定するなど,社会的に孤立しがちな人々も含めまして,より多くの住民の主体的な参加を得られるように工夫し強化することでございます。
 次に,地域における社会教育を,社会教育行政の担当部局で完結させることなく,首長,NPO,大学,そして企業等と幅広く連携・協働して行うことで,ネットワーク行政の実質化を図っていくべきということでございます。
 最後に人材の関係でございます。伝統的に社会教育の分野は社会教育主事が当たっていたわけでございますけれども,地域の学びと活動を活性化する人材,すなわち地域の社会教育の全体を俯瞰的に捉えて,学びや活動と参加者をつないだり,必要な学習の場について調整を行ったりする役割を担う者の活躍を後押しすることが重要だとしているところでございます。
 続きまして,この社会教育を基盤とした人づくり・つながりづくり・地域づくりに向けた具体的方策を,1ページ目の下でありますけれども,4点挙げているところでございます。
 1つ目が学びへの参加のきっかけづくりの推進ということで,より多くの住民が地域づくりを含む多様な活動に主体的に参加できるようにしていくということでございます。ここでは,例えば,楽しさをベースとした学びや地域防災,健康長寿など,関心の高いテーマを設定することで,学びや活動のきっかけづくりを工夫すること。また,子供・若者の参画を促すこと,彼らにとって地域との関わりの動機付けとなるような成功体験づくり。そして,社会で孤立しがちな人に対しては,福祉部局との連携により,アウトリーチの取組を強化するといったことが挙げられております。また,国においては,各地における具体的な取組の収集・共有,地域における活動の事例分析や周知等を行うことが求められるとされております。
 2点目が,多様な主体との連携・協働の推進でございます。これにつきましては,首長部局との連携を効果的に図るために,総合教育会議を活用することや,地方公共団体で社会教育の行政担当部局と首長部局との間で人事交流を推進すること。学びを通じた地域づくりに関して,NPO,企業,大学等と行政関係者との積極的な意見交換や協議を行うこと。さらに,地域学校協働活動を核にした社会教育と学校教育の連携・協働の一層の推進を図ること等を挙げております。
 3点目が,多様な人材の幅広い活躍の促進でございます。学びへの参加のきっかけづくりや多様な主体との連携・協働を推進する上で,様々な取組を企画しコーディネートする人材が重要になってきておるところでございます。これにつきましては,教育委員会における社会教育主事の確実な配置とともに,2020年度から発足いたします称号,社会教育士について,多様な主体による取得の推奨を行うことが示されております。
 最後,4点目でございますが,社会教育の基盤整備と多様な資金調達手法の活用でございます。地域財政の逼迫(ひっぱく)の中で,地域づくりの基盤としての社会教育の取組を活性化し,持続可能なものとする観点からは,各地方公共団体における十分な社会教育費の確保が必要でございますが,同時に,クラウドファンディング等の多様な資金調達手法の活用といった工夫を行いまして,基盤を整備していくことが必要だとしております。
 1ページ目が以上でございます。1枚おめくりいただきまして,資料の2ページ目が,今後の社会教育施設の在り方についてでございます。
 まず,今後の社会教育施設に求められる役割といたしまして,各社会教育施設には,住民の学びを支援する,これは従来からの役割でございますけれども,これに加えて,例えば公民館には,地域コミュニティの維持と持続的な発展を推進するセンター的な役割や,地域の防災拠点としての役割,図書館には,他部局と連携した個人のスキルアップや就業等の支援を行うこと,また,住民のニーズに対応できる情報拠点としての役割が,そして博物館には,学校における学習内容に即した展示・教育事業の実施,観光振興や国際交流の拠点としての役割といった,社会教育施設の各類型で,新たな役割を果たすことが期待されているところでございます。
 これらを踏まえて,今後の社会教育施設の所管の在り方についてでございますが,地方公共団体から,それぞれの地方公共団体の判断により,地方公共団体の長が公立社会教育施設を所管することができる仕組み,こういった特例を導入すべきという意見が提出されたところでございます。昨年12月に閣議決定された,地方からの提案等に関する対応方針におきましても,この特例について政府として検討し,本年中に結論を得て必要な措置を講ずると求められているところでございます。
 この答申案では,社会教育に関する事務について,今後とも教育委員会の所管を基本とすべきとする一方で,地方の実情を踏まえて,より効果的だと判断される場合には,地方公共団体の判断により地方公共団体の長が社会教育の施設を所管できる特例を設けるということについて,社会教育の適切な実施を確保するための制度的担保が行われるということを条件にした上で,可とすべきとしたところでございます。
 先ほど,明石先生からの御説明もありましたように,本年7月に取りまとめまして,8月の総会で御報告いたしました生涯学習分科会の審議のまとめの結論を,ここで維持するという形で,こういう方針を盛り込んでいるところでございます。
 そして,特例を設けることによって考えられる効果をまとめたところでございます。まず,他の行政分野との一体的な運営による質の高い行政サービスが実現される可能性があること。また,他の分野と交流する,連携することで,社会教育行政全体の活性化につながる可能性があるということ。3つ目は,社会教育の新たな担い手といたしまして,これまでまちづくり,地域の課題解決に熱意を持って取り組まれてきた方の中で,社会教育と接点がなかった方が,社会教育の新たな担い手として活躍していただける可能性があるということ。そして,最後でございますけれども,施設の効果的・効率的な整備・運営という点におきましても可能性があるということでございます。
 ただ,社会教育の適切な実施を担保するための検討も求められるということで,例えば政治的中立性を確保するといったことが,社会教育行政においても重要でございますので,特例を導入する場合には,政治的中立性の確保等のために,例えば,教育委員会による関与など一定の担保措置が必要と考えられるところでございます。
 この担保措置の在り方につきましては,例えば,地方公共団体の長が社会教育施設を所管することについて条例を定める際に,教育委員会の意見を聞くことを義務付けることなど,幾つかの仕組みを導入することについて議論があったところでございますけれども,具体的な在り方につきましては,法制化のプロセスにおいて具体的に検討すべきとされたところでございます。
 そして,2ページ目の最後の箱でございますが,地方公共団体において特例措置を活用する場合に留意が求められる点を書いてございます。
 1つ目のポツといたしましては,移管の対象となる施設は引き続き,社会教育法に基づく社会教育施設になりますので,法令の規定を踏まえた専門的職員の配置・研修,運営審議会等を活用した評価・情報発信等は引き続き重要だということでございます。
 2つ目は,教育委員会は総合教育会議の活用,首長部局とNPOとの連携・調整を通じまして,社会教育振興の牽引役として,引き続き積極的な役割を果たしていくことが重要というところでございます。今後,地方公共団体が特例措置を導入する場合にも,地方公共団体の長と教育委員会が密接に連携をして,地方行政全体の中に社会教育を基盤とした,学びを通じた人づくり・つながりづくり・地域づくりの視点を明確に組み込んでいくことが重要であるとされているところでございます。
 私からの説明は以上でございます。よろしくお願いいたします。

【北山会長】
 清水局長,ありがとうございました。
 それでは審議に入ります。中村政務官,御出席いただきましてありがとうございます。ご挨拶についてはこの議題の後頂くという順番にさせていただきたいと思います。
 それでは,社会教育の在り方についての質問・御意見を頂戴したいと思います。いかがでございましょうか。
 では亀山委員,お願いします。

【亀山委員】
 若干トリビアルな問題かもしれないんですけれども,今後の社会教育施設に求められる役割は,確かにこのような。しかし,現実に公民館,図書館,博物館の様々な機器の老朽化というのは非常にひどくて,全面的なリニューアルをしないと,実際そこが魅力的な空間になっていかないということがあると思います。
 私もいろいろなところで講演などをする場合に,ほとんどパワーポイント1つ,きちんとまともに使えるというところがなかなかお目に掛かれないということで,私的なといいましょうか,家庭の中で接している映像の世界と,そういった公的な空間で経験できる視覚経験というものは,物すごく大きな断絶があるので,ますます今の状況では家庭の中に入っていくだろうと。やはり公共空間といいましょうか,そういったところにおける全面的なリニューアルといいましょうか,重点的にもそういったところでお金を投入していただかないと,なかなか集まりにくい,その空間自体に魅力がないということだろうかと思います。

【北山会長】
 ありがとうございます。
 それでは,時久委員,お願いします。

【時久委員】
 本当に大切な御議論をありがとうございました。私からは2つですけれども,1つは社会教育士の,このことがとても大事だと思っています。実は,社会教育に関しましては,いろいろもろもろの課題があるわけですけれども,世の中の動きをしっかり見て,そして,どのように変わっていっているかということもしっかり見据えて,そのまちの社会教育を作っていくということをするときに,ミドルのチームというか,みんなを引っ張っていくチームのしっかりした学習はどうしても必要です。
 社会教育にはいろいろ,個々課題があるわけですけれども,小さな事業にこだわって,大きなところが見えていないということがあるので,ここに改革が必要といっても,全体が見えないということがあります。かつて社会教育の講習を受けて取っていたんですけれども,だんだんそれが異動によって減ってきまして,非常に数が少なくなっています。ですから,もう一度社会教育をしっかり勉強して,そういうチームが少しできて,まち全体の社会教育にメスを入れていくことが是非とも必要だと思うので,この社会教育士が取れるように,そこの辺りのバックアップを是非お願いしたいというのが1つです。
 もう一つは,地域学校協働活動が非常に進んできまして,地域がすごく活性化しています。特に学校の子供たちを中心として,学校を中心にした地域の活動が盛んになってきて,非常に盛んになると,これが公民館とつながってということで,どんどん活性化していくわけですけれども,そのときに,コミュニティ・スクールの運営協議会がとても大事ということは,やってみて強く思います。
 協働活動は,たくさんしてはくださるのですけれども,学校の課題をしっかり守秘義務を掛けて分かり合って,そして共に地域を作っていくというところに立つのには,ざっくばらんな話を一定の委員さんでして,そのことが必要な部分を共有した上で,協働活動を行っていくということが大切なので,コミュニティ・スクールと地域学校協働活動の2つがどうしても必要だと思っています。
 これは働き方改革のところでも,私はしょっちゅうこの意見ばかり言っているような気がするんですけれども,働き方にしても,それから教育課程を進めるにしても,何をしても,このコミュニティ・スクールのところがまずあって,協働活動があってということが,是非必要なので,その辺は書き切るというか,社会教育のところで随分書いてくださっているので,表現としてはいいと思うんですけれども,とても大事だということは意見として言わせていただきたかったのです。よろしくお願いします。

【北山会長】
 伊藤委員,お願いします。

【伊藤委員】
 ありがとうございました。今の御意見との関連でございますけれども,13ページにあります学校教育との連携・協働のここについてでございますが,現状はもう少し動いてきていると捉えてもいいんじゃないかなという状況認識を,私なんかは持っているんですよね。つまり,13ページの一番下の丸のところから,文章の最後だけを見てみますと,「広がりつつある」と。「地域と学校の連携・協働が様々な活動の実践によって広がりつつある」。
 その次の14ページは,「活動の輪が広がっていくことが期待される」。あるいは,次は「学校教育と社会教育との一層の連携を推進する必要がある」とあるわけですけれども,先ほどありましたように,例えばコミュニティ・スクールについては,平成16年の法律の制定により制度的にスタートして,もう10年以上が経過をしているわけです。コミュニティ・スクールで育った子供たちが,今,大学生や,あるいは社会人になっています。もちろん,地域によっての実態は異なるだろうと思いますし,コミュニティ・スクールそのものの中身も学校によってはいろいろな違いがありますけれども,地域に関わり,地域に貢献しようとすることが,割と自然になってきているし,その良さも感じている子供たちは増えつつあるのではないかなという実感を持っているわけです。
 ですから,まだまだ全国的には兆しが見え始めているというぐらいの状況なんだろうと思いますけれども,今後の社会教育の振興方策をこれで示すわけですから,そろそろこういった子供たちの力を生かしてという発想が出てきてもいいのかなと。もう一歩前に進み出てもいいのかなという,どこかに少し,その辺りのニュアンスが出てくる表現があってもいいんじゃないだろうかという感想を持ちました。
 以上です。

【北山会長】
 ありがとうございます。
 それでは,菊川委員,お願いします。

【菊川委員】
 お二人の先生,ありがとうございました。私は生涯学習分科会の委員でございまして,審議に参加しておりますが,おっしゃるように,現場はもう少し動いているかもしれないと思います。この頃,福岡県の社会教育課長さんと話していましたら,地域学校協働活動のコーディネーターが250名を超えていて,その中に多くの元社会教育主事や元教職員がいらっしゃるようです。そして,退職後,生き生きとそれで働いてあると。ですから,そういう方にもう一度,リカレントで単位を取っていただいて,社会教育士として認定するということは,とても大事なことだと思ったところでございます。
 それから,今日,高等教育の答申や,教員の働き方改革の答申等をお聞きしながら思うことですが,高等教育のところにも人づくりのリカレントの話が繰り返し出てまいります。それで,高等教育で生涯学習を議論すると,学び直し,あるいはリカレントということになって,それから社会教育の領域で話すと,生涯学習,趣味・教養的な色彩がどうしても強くなるということですが,例えば地域の社会教育においても,大学のリカレントを支援する,あるいは地域の住民を大学のリカレント教育に巻き込んでいくみたいな目線が要るのではないかと思いながら,1つ目の議事を聞いておりました。
 また,2つ目の働き方改革ですが,これも福岡県の話で恐縮ですが,県のPTAの研修の中で,この14項目のテーマを研修の中で,自分たちは何ができるだろうかということでワークショップをしたという話を,これもこの頃聞きました。また、福岡県のPTA連合会は6月に「福岡県教職員の働き方改革サポート宣言」をしています。社会教育というのはベースになる施策だと思いますので,ほかの部会の議論も生かしながら,あと1回ぐらい部会があると思いますので,確認する作業をしたらいいのではないかと思ったところでございます。

【北山会長】
 ありがとうございます。
 今,4人の委員の方々から御意見・御要望がありました。清水局長,コメントされますか。

【清水総合教育政策局長】
 各先生,ありがとうございました。
 最初の亀山委員からの,社会教育施設の施設・設備が老朽化しているところがある,リニューアルが必要だといった点の御指摘につきましては,本当に大きな課題だと考えているところでございます。地域によって,もちろん図書館,博物館等,いいものを造っているところがある一方で,やはり遅れているところがあるというのも事実かと思いますが,社会教育施設の補助金等については,一般財源化されているということで,各地域に委ねられているところでございますので,むしろ,各地域でそういう社会教育施設が重要だということを,他の行政も含めたネットワークをこれから広げる中で理解を広げて,首長を含めて,予算等を獲得していっていただきたいと考えているところでございます。もちろん国も,文部科学省としても,様々ないい事例を集めて提供する等々の活動,そういった形での取組を図っていきたいと思っているところでございます。
 また,社会教育士といった社会教育主事,指導者の重要性,さらには,学校・地域の連携における学校運営協議会,コミュニティ・スクール,地域学校協働活動の重要性については,本当に御指摘のとおりかと思いますので,確かに近年,活動が全国的にもかなり広がってきているということは,データでは出ているところでございますけれども,これを更に全国各地域に広げていくということにつきましては,一層の努力が必要だと考えております。文部科学省でも,コミュニティ・スクールを導入するための自治体の体制づくりや,地域学校協働活動を推進するための予算等を引き続き計上しているところでございますので,そういった形でこれを進めていきたいと思っております。
 また,本日頂いた御意見を踏まえて,また先生方と御相談の上,対応していきたいと思っているところでございます。

【北山会長】
 ありがとうございます。
 ほかに御意見・御質問,よろしいでしょうか。またございましたら,事務局にお出しください。
 本答申案につきましては,今,委員の皆様から頂いた御意見も踏まえて,生涯学習分科会において,必要な修正も含めて御検討いただきたいと思います。その上で,本件につきましては次回総会において,修正後の答申案について御確認いただいて,御了承いただければ,答申として提出という段取りになります。よろしいでしょうか。
 本日の議事はこれまでです。中村政務官,最後まで御出席いただきましてありがとうございます。それでは最後に中村政務官から,一言よろしくお願いします。

【中村大臣政務官】
 御指名いただきました大臣政務官の中村裕之です。
 中教審の先生方には,大変重要な3つのテーマについて熱心な御議論を頂きまして,ありがとうございます。社会教育に関しても,現場はもっと進んでいるよという御意見も頂き,過去の議論や取組が現場に浸透しつつあることが明らかになっています。これから新しい技術や新しい社会に向かう中で,非常に重要な,例えば,施設の魅力づくりや,社会の構成員としての社会教育士のチーム化など,いろいろな提言を頂いているところであります。こうした取り組みをしっかりと地域に根差していけるように,必要な予算の確保もしなければ,施設の魅力化や,教師の本来でない部分のタスクシェアなどができていきませんので,そうしたことも含めて,文部科学省を挙げて一生懸命頑張ってまいります。
 最終の答申まで,皆様の貴重な御意見を引き続き今後ともよろしくお願いしたいことを申し上げ,御挨拶とさせていただきます。ありがとうございます。

【北山会長】
 中村政務官,ありがとうございました。
 それでは,最後に次回の日程について,寺門課長からお願いします。

【寺門総合教育政策局政策課長】
 次回でございますが,来月21日月曜日,13時からの予定でございます。場所はこちらと同じでございます。年末お忙しい中でございますけれども,よろしくお願いいたします。
 以上でございます。

【北山会長】
 それでは,これで本日の会議は終了でございます。ありがとうございました。

─了─

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