中央教育審議会(第113回) 議事録

1.日時

平成29年9月28日(木曜日) 10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省 「第二講堂」(旧庁舎6階)

3.議題

  1. 地方文化財行政に関する特別部会の設置について
  2. 学校における働き方改革に係る緊急提言について
  3. 第3期教育振興基本計画の策定に向けたこれまでの審議経過について
  4. 平成30年度文部科学省概算要求及び税制改正要望事項について
  5. その他

4.出席者

委員

 北山会長,小川副会長,明石委員,天笠委員,有信委員,生重委員,伊藤委員,帯野委員,亀山委員,五神委員,篠原委員,寺本委員,時久委員,中田委員,日比谷委員,無藤委員,室伏委員,山田委員,山野委員,横倉委員,善本委員

文部科学省

 林文部科学大臣,宮川文部科学大臣政務官,戸谷事務次官,小松文部科学審議官,藤原官房長,中川総括審議官,藤野サイバーセキュリティ・政策評価審議官,山下文教施設企画部長,常盤生涯学習政策局長,髙橋初等中等教育局長,義本高等教育局長,村田私学部長,柿田会計課長,岡村大臣官房政策課長,有松国立教育政策研究所長,神山大臣官房審議官,塩見文部科学戦略官,氷見谷生涯学習政策局政策課長,他

5.議事録

【北山会長】
 それでは,定刻でございますので,ただいまから中央教育審議会総会を開催いたします。
 本日は御多忙の中,また,足元の悪い中御出席いただきまして,誠にありがとうございます。本日は,宮川政務官に御出席いただいております。なお,林大臣は後ほど御到着の予定です。
 政務官におかれては,御就任後初めての中央教育審議会総会への御出席となりますので,一言御挨拶を頂戴したいと思います。それでは宮川政務官,よろしくお願いします。

【宮川大臣政務官】
 皆様,おはようございます。大臣政務官を拝命しております宮川典子でございます。
 本日,初めて中央教育審議会の総会に出席をさせていただきますが,文部科学行政の在り方,そして,私も受け止めをさせていただきました働き方改革の問題,また,教育振興基本計画の問題,いろいろと御議論いただきたいと思っております。
 今回,総理も,政府一丸となって教育再生に向けているのだということを今まで以上に打ち出していただいたと思っております。しかし,手段の議論だけで終わらずに,しっかりと文部科学省として,日本の教育をどう考えているのかという理念を打ち出すということが我々にとっては一番重要なことと思っております。是非,委員の先生方から忌憚(きたん)のない御意見を頂きまして,私たちもそれに向けてしっかり頑張ってまいりたいと思いますので,引き続きの御指導,よろしくお願い申し上げます。本日は本当にありがとうございます。

【北山会長】
 宮川政務官,ありがとうございました。
 それでは,まず,文部科学省において人事異動がありましたので,事務局から御紹介をお願いしたいと思います。

【氷見谷生涯学習政策局政策課長】
 7月に事務局の異動がございましたので,その中から出席をしております者を御紹介いたします。
 まずは,総括審議官の中川でございます。

【中川総括審議官】
 中川でございます。

【氷見谷生涯学習政策局政策課長】
 続きまして,サイバーセキュリティ・政策評価審議官の藤野でございます。

【藤野サイバーセキュリティ・政策評価審議官】
 藤野でございます。よろしくお願いします。

【氷見谷生涯学習政策局政策課長】
 次に,初等中等教育局長の高橋でございます。

【高橋初等中等教育局長】
 高橋です。よろしくお願いいたします。

【氷見谷生涯学習政策局政策課長】
 次に,大臣官房会計課長の柿田でございます。

【柿田会計課長】
 柿田でございます。よろしくお願いいたします。

【氷見谷生涯学習政策局政策課長】
 次に,国立教育政策研究所所長の有松でございます。

【有松国立教育政策研究所長】
 有松でございます。

【氷見谷生涯学習政策局政策課長】
 次に,文部科学戦略官の塩見でございます。

【塩見文部科学戦略官】
 塩見です。よろしくお願いいたします。

【氷見谷生涯学習政策局政策課長】
 以上でございます。

【北山会長】
 ありがとうございました。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは,本日の議事について御説明いたします。本日は,まず,議題(1)の地方文化財行政に関する特別部会の設置について提案させていただきます。
 続いて,議題(2)といたしまして,学校における働き方改革に関する緊急提言が,初等中等教育分科会の下に設置されております特別部会にて取りまとめられましたので,これについて御報告いたします。
 そして,議題(3)といたしまして,教育振興基本計画部会にて,第3期の教育振興基本計画の策定に向けたこれまでの審議経過が取りまとめられましたので,説明の後,意見交換を行いたいと思います。
 最後に議題(4)といたしまして,平成30年度文部科学省概算要求及び税制改正要望事項について説明がございます。
 なお,本日,報道関係者より会議の全体について,録音,カメラ撮影を行いたい旨,申出があり,許可しておりますので,御承知おきいただきたいと思います。
 それでは,議事に入りたいと思います。まず,配付資料について,氷見谷課長から説明をお願いします。

【氷見谷生涯学習政策局政策課長】
 本日の配付資料について御説明いたします。
 お手元の会議次第に記載のとおり,資料1から資料6‐2及び参考資料でございます。資料1については,総会の議を経ない諮問についてです。資料2が議題(1)に関わる資料です。資料3が議題(2)に関わる,学校の働き方改革に係る緊急提言等についてです。資料4が教育振興基本計画のこれまでの審議経過に関わるものです。資料5が文部科学省の平成30年度の概算要求に関わる資料です。資料6が平成30年度の税制改正要望に関わるもので,参考資料1‐1から1‐2,2を,横倉委員から御提出いただいたものです。
 資料については以上ですが,本日,机上に配付しておりますものと同じものをタブレットに入れております。操作方法については,通常のノートパソコンと同じように表示されておりますが,タッチパネルとしても使えますので,PDFをクリック,又はタッチしていただいて御覧いただけます。また,操作で分からない点がございましたら,事務局にお声掛けをいただければと存じます。
 今回,総会の議を経ない諮問については,資料1ということで,皆様にメール等で御案内をさせていただいておりますが,6月22日に行われました中央教育審議会の総会以降,審議会規則,運営規則に基づき,総会を経ないで行われました諮問について御報告をさせていただくものでございます。今回御報告いたします専門職大学設置基準の制定等については,8月23日に行われました大学分科会で諮問が行われ,即日答申が行われたものでございますので,後ほど御参照いただければと存じます。
 配付資料につきましては以上です。

【北山会長】
 ありがとうございました。配付資料についてはよろしいでしょうか。
 それでは早速,議題(1)に入ります。まず,文化審議会からの審議要請を受け,今後の地方文化財行政の在り方について審議を行うため,地方文化財行政に関する特別部会の設置について御提案させていただきたいと思います。
 それでは,文化審議会での審議の状況などについて,事務局から説明をお願いいたします。

【高橋初等中等教育局長】
 初等中等教育局でございます。資料2‐1が,今,北山会長から御提案いただきました地方文化財行政に関する特別部会の設置についての案でございます。この部会を設置する背景につきましては,資料2‐2を御覧いただければと思います。こちらで簡単に御説明をいたします。
 現在,文化審議会におかれましては,平成29年,今年の5月19日に文部科学大臣より,これからの文化財の保存と活用の在り方について諮問がありまして,文化財の確実な継承に向け,未来に先んじて必要な施策を講じるための文化財保護制度の在り方について,現在,包括的な検討がなされております。その中でも,資料2‐3のとおり,文化審議会の文化財分科会の企画調査会が中間まとめを8月末に取りまとめております。この中間まとめの中では,文化財保護の所管は現在,教育委員会となっておりますが,景観まちづくり行政や観光行政など,他の行政分野も視野に入れて,総合的,一体的な取組を可能とするため,地域の選択で文化財保護行政について,首長部局も担当できるような裁量性の向上についての検討が必要ではないかといった問題提起がなされております。
 首長部局が文化財保護に関する事務を担当できるかどうかの検討に当たっては,これは地方教育行政の組織及び運営に関する法律の規定にも関係してまいりますので,文化審議会の検討と併せて,この中央教育審議会での御議論も必要になってくるという状況でございます。
 現在,文化財分科会の企画調査会においては,中間まとめ以降も議論を続けておりまして,間もなく中央教育審議会への審議の要請が予定されているという状況になってきておりますので,先ほど北山会長から御提案がありましたように,地方文化財行政に関する特別部会の設置について,本日御了承をいただけましたら,中央教育審議会への審議要請がなされた後に,速やかに特別部会を設置いたしまして,今後の地方文化財行政の在り方について,中央教育審議会としての御審議をお願いしたいと考えているという状況でございますので,どうぞよろしくお願いいたします。

【北山会長】
 ありがとうございました。
 それでは,今,高橋局長から御説明のあった経緯を踏まえて,中央教育審議会としても,今後の地方文化財行政の在り方について審議を行うため,地方文化財行政に関する特別部会を設置することが適当であると考えますが,委員の皆様,いかがでございましょうか。よろしいですか。
(「異議なし」の声あり)

【北山会長】
 ありがとうございます。それでは本件了承といたします。また,部会に属すべき委員等については,中央教育審議会令第6条第2項において,会長の私が指名することとされておりますので,私にお任せいただきたいと存じます。
 それでは,次に移ります。学校における働き方改革に係る緊急提言について御報告でございます。
 6月22日の中央教育審議会総会において,新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について諮問を頂きました。現在,この件につきましては,初等中等教育分科会に学校における働き方改革特別部会を設置し,審議を進めているところであります。
 8月29日の同部会において,学校における働き方改革に係る緊急提言が行われましたので,事務局から御説明をお願いしたいと思います。

【高橋初等中等教育局長】
 資料3‐1から3‐4が,今,会長から御提案いただきました働き方改革関係の資料でございます。
 資料3‐4,一連の資料の4枚目を御覧ください。これは今年の6月9日に閣議決定された,いわゆる骨太方針2017でございますが,この中でも,教員の勤務時間の厳しい実態に対して,政府としても閣議決定という重みのある文書で早急な是正を行うということが指摘されました。そして,年末までに緊急対策を取りまとめるというスケジュール感も示されました。
 この6月9日の閣議決定を踏まえて,先ほど会長から御指摘ありましたように,6月22日には,早速,中央教育審議会に緊急の諮問が行われ,小川副会長を部会長として働き方改革の特別部会が立ち上がり,7月11日から精力的な御審議をしていただいております。
 既に7月,8月で3回御審議いただきましたが,初回の会議で,ある委員の方から,学校の,教員の勤務時間に対する認識が,余りにも希薄ではないか。一般企業から見ると,そもそも管理職が勤務時間の把握すらしていないということが散見され,働き方改革の議論をするスタート台にも立っていないのではないか,そのような厳しい御指摘からこの議論は始まりました。そして3回の議論で出た総括的な意見を, 12月を待たずに,まず第1弾の緊急提言として打ち出すことについて,小川部会長を中心に多くの委員にも御賛同いただきまして,まずは資料3‐3にあります緊急提言が8月29日に取りまとめられました。これは,飽くまで3回の審議を受けて緊急的にまとめたもので,現在働き方改革部会では,教員の勤務状況,特に業務内容について一つずつ,本当に先生がやるべき仕事はどれなのかという深掘りした議論が続けられております。この議論は,12月までに取りまとめを行うことになりますが,まずは8月時点での緊急提言が行われたという経緯でございます。
 資料3‐1に概要がございますので,ポイントを説明させていただきます。提言は三つに整理をさせていただきました。学校現場で今すぐにでもできることだという観点から1番目として,校長や教育委員会が学校において勤務時間を意識した働き方改革を進めることでございます。例えば,ICTやタイムカードなど使って,勤務時間を客観的に把握する。残念ながら,まだ小中学校の現場では,4分1ぐらいしかできておりません。勤務時間の把握は現場の予算の少しの工夫でもでき,すぐに始められるということで,タイムカードというのは細かいというお考えもありましたが,むしろこのような細かいことをしっかりやっていただこうという一つのメッセージとして,提言いただきました。
 次に,勤務時間の短縮について,全国でいろいろなモデル事業が行われておりますが,例えば,夕方以降,留守番電話を設定することによって,すごく勤務条件が効率化されたという報告もございます。また,部活動の休養日を設定して教員,子供,それぞれに大変良い影響がある。さらに,お盆の時期など,思い切って学校を閉庁してしまうことによって,大きな支障なく先生方がしっかり休みをとれるなど個々の事例はあるのですが,なかなか学校は,長く続く学校文化を変えることには保守的でありますので,かなり具体的な提言を頂いております。そして,この提言を進めるためにも,校長,副校長,教頭の管理職が教員の役割分担を明確にして,しっかりマネジメントしていくことが大事だということで,管理職に関するマネジメント研修の充実などが1番目の柱でまとめられております。
 ただ,学校でできることは当然,限界がございますので,2番目には,行政が学校・教職員の業務改善の取組を強く推進していくということで,全ての教育関係者を対象とした提言,例えば丸1にありますように,教育委員会において,学校に対する業務改善方針・計画をしっかりと策定すること,丸2にありますように,統合型校務支援システムを導入して,ICTを活用した業務の効率化,丸3の学校に対する指示や調査などの精選は当然ですが,丸4にありますように,今,多くの学校では,口座振替が進んでおりますが,まだ学校給食の公会計化ができていない自治体もございます。徴収業務についても,教員の事務から行政の事務にしていくなど具体の指摘や,事務職員の活用による事務機能の強化といったことも御指摘を頂いております。
 そして,3番目は,1,2にあるようなことを進めるためにも,やはり国の財政的な裏付けが必要であるということで,特に概算要求を控えた時期でございましたので,文部科学省に対しては,早急に概算要求に盛り込む事項を3点頂きました。丸1は業務改善,丸2は教員以外のスタッフと教員の人員増に分かれております。
 丸3については,資料3‐2に,この提言を受けた文部科学省の概算要求の概要を作っております。資料3‐2の1番目は,業務の効率化を図っていくことを基本として, ICTを活用した支援システムの構築や学校給食の徴収・管理業務の改善といった予算を要求しております。
 さらに,先生だけではなくて,事務作業をお手伝いするスクールサポートスタッフの配置や,中学校では部活動が大変業務の中では大きなウエートを占めておりますので,すでに制度化されております部活動指導員を配置促進するための新たな補助金を作り,制度を広げていくために,それぞれ15億円の新規の補助事業も提案しております。
 ただ,何といっても,先生の本来業務の負担を軽減するためには,抜本的な定数改善が必要になります。特に,小学校では外国語を中心に,小学校3,4,5,6年生は週一コマ増えていきますので,指導要領の増加分に対応した小学校の専科教員2,200人をはじめ,今回は3,800人の定数改善を要求しております。自然減が3,000人ありますので,差し引いても800人の純増要求で,これは5年ぶりの純増要求です。こういった業務改善,サポートスタッフ,そして,本丸の定数改善などをパッケージとして,今回,概算要求をしており,今後,中央教育審議会の審議の深まりと,予算を獲得していくことで,しっかりと働き方改革についての審議を進めていっていただきたいと考えております。
 以上でございます。

【北山会長】
 高橋局長,ありがとうございました。
 林大臣が御到着されました。大臣におかれましても,就任後初めての中央教育審議会総会への御出席となりますので,ここで,質疑の前に大臣から御挨拶を頂戴したいと思います。林大臣,よろしくお願いします。

【林大臣】
 御紹介いただきました,文部科学大臣の林芳正でございます。どうぞよろしくお願いいたします。着座で御挨拶をさせていただきます。
 今,会長からお話がありましたように,今回の総会は私が就任いたしまして初めての総会でございます。この中央教育審議会に出席させていただくに当たりまして,北山会長,小川,永田両副会長をはじめ,委員の皆様には,これまでの御尽力に感謝を申し上げたいと思います。また,委員の皆様方の御意見を踏まえ,全力で教育改革に取り組んでまいりたいと思っておりますので,どうぞよろしくお願いを申し上げます。
 私から申し上げるまでもなく,教育は人々の多様な個性,能力を開花させまして,人生を豊かにするということに併せまして,将来に対する国としての大事な投資でもあると考えております。今,政府全体としても,「人生100年時代を見据えた人づくり」をテーマに推進をしておりますが,一億総活躍社会の実現を図るためには,専門家の皆様方からの御提言を踏まえて,政策を一つ一つ丁寧に積み上げていく,これが大変重要なことであると考えております。
 本日の総会でも,学校における働き方改革に係る緊急提言,ここで,今できることは直ちに行うということについて教育関係者への呼び掛けとともに,国の早急な支援が盛り込まれておるところでございます。また少し中長期にわたりますが,第3期教育振興基本計画につきましては,人生100年時代,それからSociety5.0などの時代の転換期を見据えまして,今後の教育政策の,正に一番基本のところを決めていただく方針等に関するこれまでの議論をよく整理していただいていると承知をしておるところでございます。
 これからの教育,ひいては我が国の将来,未来を左右する重要な事項であると考えております。これまでの御尽力に対して改めて深く感謝を申し上げながら,引き続き積極的な御審議を賜りますよう重ねてお願い申し上げまして,簡単でございますが,私からの御挨拶にさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

【北山会長】
 大臣,ありがとうございました。
 大臣は公務がありますので,ここで退席されます。ありがとうございました。

(林大臣退席)

【北山会長】
 それでは,先ほど高橋局長から御説明がありました働き方改革の緊急提言に係る御報告に関して,何か御意見,御質問はありますでしょうか。
 学校における働き方改革については,先ほども申し上げましたように,引き続き,初等中等教育分科会,及び学校における働き方改革特別部会を中心に審議を進めていただきますので,よろしくお願いいたします。
 それでは次に,第3期の教育振興基本計画の策定に向けたこれまでの審議経過について御報告させていただきます。
 平成30年度から開始予定の第3期教育振興基本計画に向けて,平成28年4月に大臣より諮問を頂きました。その概要を資料4‐1としてお配りしております。その後,教育振興基本計画部会において審議を進めているところで,その部会長を私が務めております。その計画部会で,今年の2月には,計画を策定するに当たっての総論的な考え方を整理し,総会に,「第3期教育振興基本計画の策定に向けた基本的な考え方」として御報告させていただきました。その概要が資料4‐2でございます。
 その後,この「基本的な考え方」に対する皆様の御意見も踏まえながら,教育振興基本計画部会を中心に審議を重ね,9月19日の計画部会において,「第3期教育振興基本計画の策定に向けたこれまでの審議経過について」が取りまとめられましたので,本日御報告いたします。その概要が資料4‐3,本文が資料4‐5でございます。
 詳細につきましては,後ほど事務局から御説明いただきますが,これまでの審議経過においては,2030年以降の社会を展望した教育政策の重点事項を掲げた上,「5つの今後の教育政策に関する基本的な方針」を設定し,各方針の実現に向けた,今後5年間の教育政策の目標,目標の進捗状況を把握するための測定指標と参考指標,目標を実現するために必要となる施策群を整理したところでございます。
 また,その整理に当たっては,基本的な方針ごとに今後5年間の教育政策の目標,測定指標・参考指標,施策群の関係性をロジックモデルとして可視化しました。これが資料4‐4でございます。
 本日,委員の皆様からも御意見を頂き,さらに大学分科会将来構想部会等,他の分科会などからも御意見を頂きつつ,さらなる記載の充実を図っていきたいと考えております。
 また,今後,これまでの審議経過について,意見募集,関係団体ヒアリングを実施し,広く国民から御意見を賜るとともに,諮問事項の一つである客観的な根拠,エビデンスに基づく教育政策の推進方法や,資料4‐2の「基本的な考え方」における,「国民・社会の理解が得られる教育投資の充実・教育財源の確保」について審議を深め,政府が目指す年度内の計画の閣議決定に向け,中央教育審議会として「答申」を取りまとめる予定でます。
 それでは,これまでの審議経過について,事務局から説明をお願いします。

【塩見文部科学戦略官】
 それでは,失礼いたします。第3期教育振興基本計画の策定に向けた検討の状況については,ただいま,会長から経緯と現状について御説明頂いたとおりでございます。私からは, 9月19日に教育振興基本計画部会において取りまとめていただきました審議経過について,概要を御説明させていただきます。資料4‐3を御覧ください。
 冒頭にございます,本報告の位置付けですが,今後5年間の教育政策の目標や,それを実現するために必要な施策群について現時点までの検討の状況をまとめたものでございます。2月の総会で報告し,御審議いただきました基本的な考え方を踏まえ,基本計画部会を中心に御議論いただいた内容の現時点までの成果ということで取りまとめていただきました。
 また,この報告については,資料4‐5が本体でして,3ページの「はじめに」にも記載がございますが,今後,初等中等教育分科会,大学分科会等の関係の部会,あるいは様々な議論も踏まえながら,更に充実を図っていくことが予定されている段階のものということで御理解いただければと存じます。
 資料4‐3に戻っていただきまして,概要は全体としては,第1部と第2部で構成されております。まず,第1部においては,我が国における今後の教育政策の方向性について記載がされております。
 ローマ数字の1ですが,教育の普遍的な使命でございます。この教育振興基本計画は,改正教育基本法に基づく計画ですので,改正教育基本法の理念として,第1条あるいは第2条に規定されている理念を踏まえ,その実現に向け,更なる取組を進める必要があるということでございます。
 それから,こうした理念を踏まえた教育の目指すべき姿ということで,個人と社会についてそれぞれ整理しております。個人については,自立した人間として,主体的に判断し,多様な人々と協働しながら新たな価値を創造する人材の育成でございます。また,社会については,一人一人が活躍し,豊かで安心して暮らせる社会の実現,社会の持続的な発展,成長が掲げられております。
 こうした普遍的な使命を踏まえ,いかに取り組んでいくかを考えるに当たって,ローマ数字の2ですが,教育をめぐる現状と課題がございます。教育振興基本計画は第1期,第2期と策定しており,それに基づいて施策を進めておりますが,第3期の策定に当たって,PDCAサイクルをしっかり回すという観点から,第2期計画のフォローアップについても行っていただいております。
 それを踏まえてのこれまでの取組の成果と課題ですが,成果として,初等中等教育段階における世界トップレベルの学力の維持,学力の底上げ,大学における三つの方針の策定・公表等の進展,学校と地域との組織的な連携・協働の進展,学校施設の耐震化等がございます。
 一方で,課題として, PISAにおける読解力の低下,若者の自己肯定感が諸外国と比べて低いこと,体力の向上や,健康の確保,社会人の学び直し,海外留学の促進や大学の国際的な評価の向上がございます。
 また,社会の現状や2030年以降の変化等を踏まえ,取り組むべき課題として,人口減少・高齢化の進展,急速な技術革新,グローバル化の進展と国際的な地位の低下,子供の貧困など社会経済的な課題,地域間格差などの地域の課題がございます。
 こうしたことを踏まえながら,第3期の計画をどのように考えていくかという点について,右側のローマ数字3の部分ですが,2030年以降の社会を展望した教育政策の重点事項として記載しております。
 この点に関しては2点ございまして,人生100年時代を豊かに生きるためには,若年期における教育に加え,生涯にわたる学習や能力向上がますます必要という点。超スマート社会(Society5.0)を生き抜くための能力の育成が必要という点でございます。これらに関しては,ICTを主体的に使いこなすとともに,人間ならではの感性や創造性を伸ばすことが今後のSociety5.0の中でも一層重要になり,人間の「可能性」の最大化を目指すものでなければならないこと,また,幾つになっても学び直し,新しいことにチャレンジできる環境をつくることができるよう,一人一人の「チャンス」を最大化する必要がある点についても記載しております。こうした一人一人の「可能性とチャンス」の最大化を,今後の教育政策の中心課題に据えて,様々な施策全体を通じて取り組む必要があるということでございます。
 これらを踏まえての今後の教育政策に関する基本的な方針でして,2月時点の「基本的な考え方」において御指摘いただいた5本の柱でございます。「夢と自信を持ち,可能性に挑戦するために必要となる力を育成する」は複雑で予測困難な社会を生きる上で必要な,基本的な力を育成していくということでございます。2点目として,「社会の持続的な発展を牽引(けんいん)するための多様な力を育成する」がございまして,1の方針によって育成される力を基盤とし,さらに優れた才能や能力を伸ばす,そして新たな価値を創造する力を育んでいくことでございます。3点目でございますが,「生涯学び,活躍できる環境を整える」でございまして,人生100年時代を見据えて,誰もが生涯を通じて学び,活躍できる環境を作っていくことでございます。4点目でございますが,「誰もが社会の担い手となるための学びのセーフティネットを構築する」でございまして,家庭の経済状況や地理的条件に関わらず,誰もが等しく質の高い教育を受けられるようにするということでございます。そして最後,5点目が,1から4の方針の基盤となる条件整備でございます。
 こうした五つの基本的な方針ごとに,具体的にどういった施策に取り組むかということが第2部となっております。第2部において,今後5年間の教育政策の目標と施策群ということで,30年度からの5年間を対象として,教育政策の目標,目標の進捗状況を把握するための測定指標及び参考指標,目標を実現するために必要となる施策群を整理しております。
 なお,先ほど,会長からの御説明にもございましたが,今回の審議経過においては,こうした方策面を中心に整理しておりまして,諮問事項の二つ目でございます客観的な根拠に基づく教育政策の推進や,国民・社会の理解が得られる教育投資の充実・教育財源の確保に関しては,今後更に検討していくことになってございます。
 第2部の具体的な内容について,御説明させていただきますが,資料4‐4を御覧ください。五つの基本的な方針の下に今後5年間の教育政策の目標を掲げ,それを実現するための施策群を記載してございます。また,その下に教育政策の目標を評価するための測定指標候補,参考指標候補を記載しております。現在の水準等を踏まえ,改善の方向を明記することが必要かつ適切であるものを「測定指標」として設定し,大きな数値変動の有無を確認すれば足りるものや,今後水準を把握していくものについては,「参考指標」という位置付けで整理しております。
 なお,各指標については,目標の達成状況を測ることができる程度は異なり,指標のみをもって目標の達成状況に係る全ての要因を評価することは困難であると考えておりまして,計画の実施状況のフォローアップに当たっては,指標の推移に加え,様々な関連する情報を含め,多角的な評価を行うことが重要であるということが本体の34ページにも記載されております。こうした前提で指標を御覧いただければと思います。
 具体的な点を何点かだけ御説明させていただきます。まず,基本的な方針1でございます。1については,今後5年間の教育政策の目標として,主として初等中等教育段階において,確かな学力の育成,豊かな心の育成,健やかなか体の育成,多様なニーズを持つ者への教育機会の提供が掲げられております。
 そして,確かな学力の育成に関する主な施策群としては,幼児期における教育の質の向上,新学習指導要領の着実な実施等の施策群が掲げられており,測定指標の候補としては,OECDのPISA調査等の各種国際調査を通じて世界トップレベルの維持や,参考指標候補としては,学校における学習指導の改善の状況などが記載されております。
 また,豊かな心の育成に関しては,施策群として,子供たちの自己肯定感の育成,道徳教育の推進といった施策群,また,測定指標候補としては,自分はよいところがあると思う児童生徒の割合の改善などが記載されております。
 また,健やかな体の育成に関しては,学校保健・学校給食,食育の充実等,子供の基本的な生活習慣の確立に向けた支援などの施策群,測定指標候補としては,子供の体力水準を平成33年度までに昭和60年頃の水準まで引き上げるなどが記載されております。
 また,次のページを御覧いただきますと,こちらも基本的な方針1に関することでございますが,主として高等教育段階として,問題発見・解決能力の修得という目標の下に,高大接続改革の着実な推進,学生本位の視点に立った教育の実現などの施策群がございます。また,測定指標候補としては,授業の予習・復習時間の充実等,学生の学修に対する取組・態度の改善などが掲げられております。また,生涯の各段階における教育政策の目標として,社会的・職業的自立に向けた能力・態度の育成という目標があり,そのための施策群として,各学校段階における産業界とも連携したキャリア教育・職業教育の推進などの施策群が掲げられております。
 また,もう一つの教育政策の目標として,家庭・地域の教育力の向上,学校との連携・協働の推進がございまして,家庭の教育力の向上,地域の教育力の向上,学校との連携・協働の推進といった施策群が掲げられております。
 次のページを御覧いただきますと,二つ目の基本的な方針でして,社会の持続的な発展を牽引(けんいん)するための多様な力を育成するという点でございます。
 今後5年間の教育政策の目標として大きく三つ,グローバルに活躍する人材の育成,イノベーションを牽引(けんいん)する人材の育成,スポーツ・文化等多様な分野の人材の育成がございます。それぞれにつきまして,主な施策群として複数の施策が掲げられており,測定指標候補,参考指標候補がそれぞれ記載されております。
 更にページをめくっていただきますと,三つ目の基本的な方針がございます。こちらについては,教育政策の目標として,人生100年時代を見据えた生涯学習の推進,人々の暮らしの向上と社会の持続的発展のための学びの推進,職業に必要な知識やスキルを生涯を通じて身に付けるための社会人の学び直しの推進,障害者の生涯学習の推進がございます。そして,主な施策群,指標の候補という形で構成されております。
 次に,四つ目の基本的な方針の下に,二つの教育政策の目標,家庭の経済状況や地理的条件への対応,多様なニーズを持つ者への教育機会の提供があり,こうした目標を実現するための施策群,指標の候補がございます。
 次に最後の五つ目の基本的な方針でございます。基盤の整備に関する部分ですが,目標として,新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導体制の整備等がございます。これは先ほど御説明がありました教員の働き方改革の関係も多く含まれる部分でございます。それから,ICT利活用のための基盤の整備,安全・安心で質の高い教育研究環境の整備,次のページですが,児童生徒等の安全の確保,持続的な高等教育システムの構築,日本型教育の海外展開と我が国の教育のグローバル化という目標がございまして,それぞれ施策群がございます。
 なお,その中で,先ほど申し上げましたように,現在,関係する分科会等でも議論いただいている部分については,まだ十分な記載になっていないところもございまして,特に持続的な高等教育システムの構築につきましては,現在,大学分科会の将来構想部会において,具体的な検討を進めていただいており,その結果を踏まえて,さらに記載を充実することになっております。
 以上,こうした形で審議経過を取りまとめていただいたところでございまして,今後,関係団体の皆様からのヒアリングや,国民への意見募集なども行いながら,さらに具体的な議論を行い,答申に向けて審議を進めていただくことになっております。

【北山会長】
 ありがとうございました。
 それでは,1時間ほど時間を取りますので,御意見のある方は名札を立てていただければと思います。参考資料1‐1と1‐2として,横倉委員から意見書が出ておりますので,まず,お願いします。

【横倉委員】
 本日は資料提出の機会を頂き,北山会長に感謝申し上げます。
 8月22日の初等中等教育分科会で,私から3点意見を申し上げ,総会で資料を基に改めて説明させていただきたい旨を申し上げておりました。また,当日,発言した内容につきましては,小川分科会長より教育振興基本計画部会に御報告を頂き,本日の資料4‐5にも盛り込んでいただきました。この点につきましても,感謝申し上げます。今回,案に盛り込まれた内容を踏まえて,さらに盛り込んでいただきたい内容を申し上げます。
 参考資料1‐1,1‐2及び参考資料2を御覧ください。学校保健の現状と課題です。参考資料1‐1の1ページ上段に,学校保健の体系図をお示ししました。学校保健は保健管理と保健教育から成り,さらに組織活動が加わります。下段はそれぞれの構成要素の中に,どのような学校保健の課題があるかをまとめたものです。それぞれ多岐にわたる課題があることを御理解いただけるかと思います。
 次に,第3期教育振興基本計画への追加要望項目です。追加要望は2点です。教育基本法の第1条に,教育は,心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならないとあります。子供が健康であることこそ,子供が教育を受ける上での一番の基盤であることを確認しておきたいと思います。
 参考資料1‐1の2ページを御覧ください。追加要望の一つ目は,「子供の健康を守る仕組みの構築と拡充」として項目を独立させ,「児童生徒の健康を守るという同じ目的のために連携する仕組みを構築すること」を追加すること,教員の働き方改革に関連し,学校現場で保健管理の中核的な活動をする養護教諭の複数配置基準の見直しと研修体制の拡充等による質と量を確保することです。具体的な内容は3ページのとおりです。子供を取り巻く環境が変わり,新たな健康課題が出てきたときに,各学校単独での対処には限界があると思います。子供の健康を守るため,恒久的な連携の仕組みを構築することが,子供に安心して教育を受けてもらえる一番の基盤です。
 参考資料1‐2の1ページを御覧ください。これまでも文部科学省においては,食物アレルギー対策やがん教育において連携の仕組み作りを進めてこられました。しかしながら,個別課題の連携だけでは必ずしも十分とは言えないと思います。恒久的な連携の仕組みの構築については,参考資料1‐2の2ページ,及び参考資料2にあります日本医師会学校保健委員会答申に挙げております。こちらは目新しいものではなく,今までの個別の連携の枠を広げたものと考えていただければと思います。今回,資料4‐5の27ページ,「新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導体制の整備等」の三つ目の丸,及び39ページ,「学校保健・学校給食,食育の充実等」の中に入れていただきましたが,やはり基盤の一つとして独立した項目を設けていただければと思います。
 また,参考資料1‐1の1ページ下段の左上にあります文部科学省や教育委員会の課題として,養護教諭の問題を挙げておりますので,それについても述べさせていただきます。学校現場で保健管理の中核的な活動をしている養護教諭ですが,ほとんどの学校では学校に一人しか配置されておらず,養護教諭の負担が大きな課題とされております。現在,養護教諭の複数配置基準は,小学校では児童数851人以上,中学校では生徒数801人以上と定められています。
 養護教諭の複数配置については,根強い希望が全国の都道府県の学校保健会から日本学校保健会に毎年寄せられています。日本学校保健会はそれを受けて,養護教諭複数配置基準の見直しについて,文部科学省にほぼ毎年要望を続けておりますが,なかなかこの基準が見直されることがありませんでした。これは教員数の定数が決められているためと理解しています。教職員の働き方改革にも直結する教職員定数の改善を早急に行い,併せて養護教諭複数配置基準を引き下げることが必要だと考えます。また,養護教諭の研修は他の教員研修に比べ,研修機会が少なく,養護教諭研修の拡充も喫緊の課題と考えます。よろしく御検討いただきたいと思います。
 続いて,参考資料1‐1の4ページを御覧ください。追加要望の二つ目は,学校健康診断の結果をまとめる学校保健統計を,具体的な疾病や異常を詳細に分析できるよう,健康診断の項目,診断票様式,データ収集・保管の方法の見直しなどにより,科学的なエビデンス構築が可能な体制にすることであります。具体的な内容は,5ページのとおりです。
 参考資料1‐2の3ページのとおり,現在の学校保健統計は,国が行っている児童生徒の発育及び健康状態に関する事項を把握する唯一の公的な調査であり,国の基幹統計として重要です。しかし統計項目は,身長,体重などを除き,具体的な疾病や異常がどの年齢ごとに多いのかが集計されておりません。そのために,学校での死亡事故等につながる食物アレルギーやアナフィラキシーの児童生徒や危険な不整脈を持つ児童生徒がどれぐらい,どの年代にいるのかも分からないのです。
 参考資料1‐2の4ページのとおり,総務省の統計委員会の国民生活・社会統計ワーキンググループが,学校保健統計調査について審議をしているところです。文部科学省は,ワーキンググループに対して研究会を立ち上げて,早急に検討すると回答されています。この検討会に学識経験者や養護教諭に加えて,学校統計調査の課題に詳しい学校医等の学校保健関係者,医療者を加え,学校保健統計調査がより有効に活用でき,海外にも科学的エビデンスとして発信できるようにしていただきたいという要望です。
 以上,よろしくお願いします。

【北山会長】
 横倉委員,ありがとうございました。御意見を踏まえてさらに検討を進めていきたいと思います。
 それでは,篠原委員,お願いできますか。

【篠原委員】
 今,横倉委員からの要望の部分はこれからでしょうから,この部分を除いて,本日出された一連の基本計画における審議状況全体のベクトルについて申し上げます。基本的にこれでいいと思いますが,一つだけ指摘させていただきたいのは,資料4‐3に,2030年以降の社会を展望した教育政策の重点事項の中に「ICTを主体的に使いこなすとともに,人間ならではの感性や創造性を伸ばす」とあります。これは私流に解釈すれば,デジタルっぽい人間を育てるのではなくて,アナログ的な要素をきちんと身に付けて両立させていくということなのだろうと思うのですが,これは大変難しいと思います。子供たちを見ていて,ICTを非常に使いこなしていく人間で両立させている子もいるのですが,つい,デジタルっぽく物を考える癖を持つ傾向が多く見られます。
 人間性の問題について,よほどリカバーしていかないと,うまく両立できないのではないかと思います。やはり人間社会で生きていくためには,アナログ的な人への思いやりなど,人間性の部分というのは非常に大事だと思うので,そことICTの使いこなすということをどう両立させていくのかということの議論を,是非教育基本計画部会で深めていただきたいなと,この1点でございます。よろしくお願いします。

【北山会長】
 ありがとうございます。
   それでは,山田委員,お願いできますか。

【山田委員】
 よろしくお願いいたします。先ほどの働き方改革,そして,今回の教育施策の目標を見ていったとき,我々,現実に現場で抱えている問題と少し何か違和感があるなという感じがしております。そして,その後の,これから説明があるのですが,平成30年度概算要求主要事項を見ていても違和感があるなと思うのは,何かと申しますと,すごく表現が,良く言えば上品,悪く言えば,何が一番問題になって,これから進めていったらいいのかということについて直接触れていないのではないかという感じが全体的にいたします。
 つまり,今の学校現場の状況を見ますと,本当に気の毒なぐらい大変な状況になってきております。特に一つには,経済的な支援を要する子供たちが,京都でもこの20年間で3倍ぐらいに増えてきています。そうすると,正に生活習慣から食事の問題,そして,一人一人の子供の問題があり,この問題への対応は非常に厳しいことです。そして,また一方では,支援教育が必要な子供たちの数,通級指導も特別支援学校もこの10年間で倍になってきています。このように今大変な状況があって,その中で働き方改革の話が出てきているのですが,この状況下で教育という労働集約型産業を考えたときに,一番先に来るのは,予算の方でも言っていたのですが,学校の先生を根本的に増やさないことにはもうどうしようもない状況になっているのではないかと思います。それが5年間の方針であっても,基盤のところに書いてあるものであっても,指導体制の充実強化ぐらいの表現になってきてしまっていて,ここはもう少し危機感を持って学校の体制を強化していかないと,この5年間で学校自身が崩壊してしまうのではないかということを感じます。それは先ほどの働き方改革も一緒でありまして,そこのところに,正にICTを利用していくというのですが,ICTで本当に業務の負担が軽減できるかということは,私はもろ刃のやいばだと思っています。
 実際問題としまして我々の世界では,ICTが広まって仕事が楽になったという感じは全然しないんですね。なぜかというと,ICTの特徴として双方向性があるため,時間的,場所的な制約がなくなりますので,いつでもどこでも仕事ができてしまうわけです。ICTを活用すればするほど,子供たちに対して深く対応できるようになるかもしれない,個別に対応できるかもしれない。しかしそれは教員の皆さんにとっては,業務負担軽減どころか,かえってメールなどで子供たちの相談に答えなければならない状況が生まれてきます。ICTが広まりますと,恐らくタブレットの使用も広まってきて,一人一人の子供にタブレットが配られる状況が出てくると思うのですが,そうなってきたときに,本当に業務の負担がICTで効率化できるかといったら,私は多分逆の方向に進むのではないかと思います。
 そうした体制も含めてやっていかなければならないという現実を,もう少し危機感を持って書いていった方がいいし,そして,働き方改革について,これは大変な数の学校の先生が倒れており,ほかにも産休代替などの必要があり,講師が増えてきてしまっていて,学校現場自身が非常に荒れてきている現状も踏まえて,厳しめに表現をしていただきたい。平成30年度の概算要求を見ていましても,一番初めに定数改善が来ていて,その後に特別支援教育をはじめとしてやっている。これは本当に学校現場の危機感に基づいて予算要求をされていると思うのですが,それとどうも働き方改革やこちらの5か年計画が合っていないなという,感想で恐縮なのですが,思いを持ちました。

【北山会長】
 ありがとうございます。9月19日に開催された特別部会でも,教員の働き方改革に関して,より踏み込んで書き込むべきではないかといった御意見がありました。今,初等中等教育分科会で議論を行っておりますので,その審議経過も踏まえて,また,この基本計画にどうやって反映していくかを検討していきたいと思っております。
併せて高橋局長から,基礎定数や加配定数などに関して,来年度を踏まえて,また少し中期的に見たお考えについて,お伺いできますか。

【高橋初等中等教育局長】
 この後も概算要求の説明がありますが,現在9年計画,去年10年計画というのを打ち出しましたので,今回は9年ぐらい先を見越した定数改善の計画的な要求をしていこうと考えております。もちろんなかなか財務省は計画的な要求というのは認めませんが,我々としては9年ぐらい先を見通して,例えば前半3年間は,まずは指導要領に対応するための小学校の専科教員などにウエートを置いて,それから,9年間平均して,中学校の生徒指導などには一定の数の教員が必要であると考えております。それは先ほど横倉委員から御指摘がありましたような養護教諭にも目配りが必要だということで,9年ぐらいを見越した上で,まず初年度分ということで要求しているという考え方をしております。
 今回,5か年計画の中には,中期の視野が入るべきであるという御指摘はもっともでございますので,今後,働き方改革の特別部会の議論を踏まえながら,本日の計画への落とし込みはまたさらに詰めていきたいと思いますので,よろしくお願いいたします。

【山田委員】
 文句を言って申し訳ないのですが,これは財務省が認める,認めないの問題ではないと思います。教育に対して何が必要かということをしっかりと主張するのが中央教育審議会の役割なので,計画的にきちんとした定数是正も含めて,そうしたものを訴えていくというのが,中央教育審議会というものの役割ではないかなと私は思います。

【北山会長】
 その点は十分踏まえたいと思います。教育振興基本計画は閣議決定されるものですので,中央教育審議会で意見をまとめたあと,他省庁とのすり合わせというプロセスが存在するということは,申し上げておきたいと思います。

【山田委員】
 ここが行かないと,もう上にも行きませんよ。

【北山会長】
 それはおっしゃるとおりかと思います。以前に,篠原委員からも同様の御指摘を頂きました。

【高橋初等中等教育局長】
 今,知事会の会長から大変強い応援を頂いたのは本当に心強く思いますので,今の御指摘はしっかりと受け止めたいと思います。よろしくお願いいたします。

【北山会長】
 それでは,無藤委員,お願いできますか。

【無藤委員】
 一つ,それほど大きいわけでもないのですが,基本的な方針1に関連する,子供の教育といいますか,もう少し広い意味での学習に関わる,学校以外の学習の機会ということで,ここでは家庭と地域の教育力などが出ております。この計画というのは,文部科学省の教育政策の範囲でしょうから,適当かどうかは分かりませんが,現在,例えばICT環境が非常に広がって,大人だけではなくて子供にとっても,学びの機会というものが爆発的に広がりつつあります。これからの5年間で相当広がると思うわけです。その多くは必ずしも学校の補習や延長ではないと思いますが,その辺りについての目配りが必要ではないかということです。その中には,従来の塾や予備校,通信教育も入ると思うのですが,それ以外のもう少し広い意味での学習,例えば英語を含めた外国語の学習,去年,今年辺りですと,プログラミングの学習などは,学校の勉強や補習などを超えて,まだまだ一部の子供ではありますが,広がってきています。
 それ以外のことについても,学校で必ずしも指導すべき教育課程に入っていないですが,将来の多様な力という意味でのベースとしての学びの機会が増えていくだろうと思いますので,その辺りについて,ここでは地域と呼んでいるのは,多分学区ぐらいの狭い範囲だと思うのですが,もう少し広い意味でのICTの動きというのをこれからの10年間を見通して,位置付けを考えてはどうかと思いました。
 以上です。

【北山会長】
 ありがとうございます。
 それでは,山野委員,お願いできますか。

【山野委員】
 先ほどの山田委員の御意見にも関連するのですが,資料4‐4の2ページに記載の,家庭・地域の教育力の向上,学校との連携・協働の推進に関する指標と,それから,5ページに記載の,家庭の経済状況や地理的条件への対応に関する指標についてです。特別部会の提言も見せていただいて,一つは先ほど山田委員がおっしゃったように,非常に切実な喫緊の課題が現場にはたくさんありますので,先ほどのお話で明確にはなってくるのかなと思いましたが,働き方改革においても見通しを持って,10年後にあるべき姿,そこは抽象的な形になるかもしれないですが,もっと喫緊に,具体的にどう変わっていくのかという点でも流れが見える形を作っていただきたいと思いました。先ほどの2ページや5ページの指標で,どれぐらい地域と連携しているのか,あるいはスクールソーシャルワーカーや福祉機関などの,地域にあるいろいろな外部機関に対してどれぐらいSOSを出せたのかなど,教師の働き方を考えていくためには,教師が問題を抱えないで,地域にあるいろいろな資源を使って,外部に投げてしまえる環境が必要だと思います。どうしても教師が問題を抱えてしまうという,学校文化の大きな課題もあると思うので,どれぐらい外部機関に投げているのかいうこともチェックして見ていけるような指標があった方がいいのではないかと思いました。
 最初に,勤務時間の把握がベースラインとして必要であるとおっしゃっていたのは,そのとおりだと思うのですが,同じようにどれぐらい外部に投げているのか,SOSを出して協働しているのかということが見える指標があったらいいなと思いました。文化を変えるためにはなかなか時間も掛かると思うので,3年後にはここまで、5年後にはここまでというような長いスパンで見通したイメージを作れるようなプランが必要ではないかなと思いました。
 以上です。

【北山会長】
 ありがとうございます。
   それでは,寺本委員,お願いします。

【寺本委員】
 5か年計画の中身を見せていただいて,個々の一人一人の学力という点や,全体に幼児期から大人,社会に出てまでの育成という点でしっかりと書き込まれているなと思うのですが,ここで書きづらい部分があるかもしれませんが,それぞれの育成をしていった結果,どのような人になるのかということは,個々の話が出ています。しかし,今一番社会に必要なのが,コミュニケーション能力です。コミュニケーションがなかなかうまくいかないから,いろいろとトラブルが起きることが,ネット上はもちろん,社会の上においてもそういうことがよく散見されます。
 そうすると,コミュニケーションの時間がないのか,能力がないのか,もしくは,両方かもしれませんが,このコミュニケーション能力をきちんと持った人間として育てていかないと,それぞれが一個一個,先ほどのICTの話で篠原先生から,機械のこともたけていて,しかもアナログ的なという表現もありましたが,そういう能力を持っている人がいたとしても,一人だけが持っていても駄目で,やはり社会とつながるために必要な,コミュニケーション能力をきちんと養い,また,そ実際にそれを活用できるような人材育成をしていくために,これからどのような進め方がをすればいいのかというところを,何らかの形で表現できないのかなと思います。
 唯一この中で,2ページ目にある家庭・地域の教育力の向上,学校との連携・協働,ここで初めて「連携・協働」という横のつながりの言葉が出てきますが,あとはありません。これ以外のところでも,コミュニケーションが大切であるということをどのように子供たちや,また大人に対しても教えていくのか,実践していくのかというところも,具体的な書きぶりはお任せするとしても,何かその部分を表現できないものかなと思います。また,そういったコミュニケーション能力を持った子供たち,大人が育っていくようなことにならないかなと思いますので,よろしくお願いいたします。

【北山会長】
 第2期に続き,第3期も,自立,協働,創造という3つのキーワードを掲げています。この中に,いわゆる非認知能力,今おっしゃったコミュニケーション能力なども含まれますので,そういった要素はいろいろなところに盛り込まれているとは思います。また,学力の3要素といった切り口でも関係してくる論点ですので,それらの書きぶりについても検討してみたいと思います。
 それでは,善本委員,お願いします。

【善本委員】
 本日,御議論いただいていることについては,現場の校長として大変責任を強く感じているところでございます。特に冒頭の,夢と自信を持ち,可能性に挑戦するために必要な力を育成するということについては,学校でやるべきことが大変多いなと感じています。また,特に子供たちの自己肯定感が諸外国と比べて低いというところは,私たちも課題意識として持っているところなのですが,現場で過ごしている感覚として感じますのは,今,学校現場では,発生する可能性が非常に低いものも含めて,様々に起きる危機管理の部分にエネルギーを費やすということが大変多いように思います。ですから,例えば,子供の歩く道の100メートル先に小さな石が落ちていたら,それを取り除いておくことが学校に求められたり,あるいは子供たちに対して,あそこに石があるからこの道は歩かないでおきましょうねというように指導したりするといったことが,現場でこの三十数年過ごしてまいりまして,私は非常に多くなってきていると思います。
 ただ,私が今,校長として現場で教職員に話しているのは,教育というのは理想に向かっていくものだから,学校は必ずポジティブな空間でなくてはいけないということです。子供たちにチャレンジを求めて,途中で失敗していろいろな小さなけががあるかもしれないが,学校現場をとにかく前向きな,ポジティブな空間にしていきましょうということをいつも話しています。ただ,そこが非常に難しいというか,それ以外のところにフォーカスせざるを得ないような環境があるということで,それは様々な文部科学省なり教育委員会の御指導も含めて,改善していくべき必要があって,とにかく学校現場をポジティブな空間にしていくことが,子供たちの自己肯定感を高めていくということにつながっていくのではないかなと思っています。
 もう一つ,私ども校長の責任でしっかりやらなければいけない働き方改革の部分にも関連しますが,先ほどから,ICT利活用について随分御議論いただいておりまして,もちろんしっかりとやっていかなくてはいけないと思っていますが,現場の実態として申し上げれば,ICTの活用スキルに教職員によっても相当差があるというのが実態でございます。例えばテストの平均点や度数分布点などは,エクセルに簡単な関数を書けばあっという間にできるのですが,それを使わずに電卓をたたいている教員がまだ多くいるという実態があると思います。
 ですから,基盤を整備しても,それを使えるようにする能力育成は,今個々の教員のモチベーションに頼っているような現状がございますので,必ずその基盤が使えるようにしてあげることが,教職員にとっても大変幸福なことだろうと思います。私はいつも言っているのですが,機械ができることを人間がするなと。人間は人間しかできないことをやるべきだと。だから,そういった意味での利活用の能力を高めていくということが,大変重要なことだと思っておりますので,お考えいただければと思います。
 以上でございます。

【北山会長】
 ありがとうございます。
 次に天笠委員,お願いできますか。

【天笠委員】
 失礼いたします。全体の方向性やまとめ方については,特に異を唱えることはありませんし,多くの方の御尽力によっておまとめになられたことについて,敬意を表させていただきたいと思います。
 その上で, 2030年ではなくて,これは来年度,平成30年からの5年間の取組と受け止めたときに,本日資料として示された部分についてなのですが,現実的には直近のものであるのに,若干リアリティーに欠けているような印象を持ったというのが正直なところです。例えば,この段階でしたら,工程表として表記するというやり方も一つあったのではないかと思います。本日の場合ですと,政策の並列という表示の仕方をしているのですが,時間的に少し先の時点でならば,このような表記はあり得ると思います。しかし,現実的に来年から5年間というならば,平成30年にはこの中の何がどういうことだとか,31年にはという表し方,示し方をしてもいいのでははいかと思いました。
 現在,既に進行中なのですが,例えば学習指導要領の着実な実施ということがこの中に言われているのですが,この表記の仕方からすると,様々な施策の一つのように位置付いています。しかし,現実的には,これから少なくとも最低3年間,正に5年間,学習指導要領の着実な実施ということで,いろいろな手が打たれていくはずであるかと思います。そうしたときに,政策間の相乗効果や,相互の関連性,重点化などをもう少し表記していただけると,よりリアリティーが出てくるのではないかと思うのですが,その辺りは随分後ろに引いてしまって,大変平板な表記の仕方をしていることが,現実の実情と示されていることの間の距離が,出ているのではないかなと思います。
 ですから,一つは,工程表という表し方を御検討いただけないかどうか,もう一つは,政策間の相互の関連と捉えたときに,果たして測定指標はこういう指標になるのかどうか。学習指導要領の着実な定着を考えたときに,下欄に絡めている指標が,もう少し精査されなくてはいけないのではないか。あるいは個々の政策と,ここでいうところのそれを捉える測定指標との間の距離感を少し縮めないといけないと思ったところですが,どうぞ御検討いただければと思います。
 以上です。

【北山会長】
 ありがとうございます。
 それでは,次に中田委員,お願いできますか。

【中田委員】
 既に幾つか御指摘いただいている点とも関わるのですが,資料4‐3でローマ数字の3が今後の重点事項と示されて,ローマ数字の4と流れていくわけですが,超スマート社会に向けて,人生100年を見越しながら多様な力を身に付けていくということが書かれております。
 それを見ると,点線で囲まれている部分が一つの要約だと思いますが,そこには「ICTを主体的に使いこなすとともに,人間ならではの感性や創造性を伸ばす」と書いてあって,ICTの話と人間性の話を両立させていくことが示されていますが,その両立は簡単ではないという御意見が最初にもありました。よく見ると,ICTを利活用するということだけではなくて,主体的に使いこなすということも書いてあるわけです。ICTを主体的に使いこなすということは,自分にとっての課題,暮らしの課題や社会の課題,生活上の課題,地域の課題,それと向かい合って,その課題解決のためにICTをどのように使えるのかという話でもあります。それは,単にICT利用技術の獲得の話ではありません。「ICTを主体的に使いこなす」ことは,地域課題や社会の課題を乗り越えていくために人と協働しながらその解決に向かっていくときにICTが活用されることで,初めて可能となります。つまり課題解決にむけた協働性ということが獲得されるなかで,ICTが「主体的に」活用されることにもなるわけです。連帯した社会や共生社会が実現されていくという構造の中にICTを位置づけていくことになると思うのですが,その関係構造を示す説明がやや弱いのではないかなと思います。
 さらに主体的にということと協働性ということをつなぐのはアクティブ・ラーニングや実践的な社会の課題に向き合う学習だと思います。その協働的なアクティブ・ラーニング等の介在により,ICTと主体性は両立するのではないかと思いますので,そうした関係をきちんと示せるような補足をしていただければ有り難いと思います。
 それから,ICTというのはSociety5.0という社会に極めて重要でありますが,それに関連する能力を身に付けていくときに,義務教育段階で基本とすることは何か,各発達段階で何を基本とするのかをまず踏まえ、その上でICTをどういう形で活用していくのかを,識別しながら整理しておくことが必要ではないかと思います。協働社会を成立させるという意味では,発達段階が低い場合は,義務教育段階でも,友達,クラスで何か協働的にやることの喜びをまずつかみながら,人と一緒に自分の課題に向かい合っていくときにICTを使うというような,そういう発達のプロセスが大事ではないかと思います。
 加えて,現状,社会の状況を見ると,子供の貧困ということも叫ばれる点は多々ございますので,教育投資力の差によってICTの能力獲得に格差が生じないようにということも大事だと思います。
 全体として,ICT活用を進めていけば教員の質的な能力に関しても新たな能力の養成が必要とされていきますので,そういう能力を獲得する上で時間的確保ということも大事です。教員のさらなる人的確保・財源確保も改めて必要になるだろうと考えております。
 これからは地域社会との協力関係というのも必要になっていくはずで,広い意味でのチーム学校という観点は大事だと思います。ただ地域の教育力の活性化という点で言うと,ボランティアの活用など,地域の社会教育施設を民間の財源を使って新たに展開させるということがところどころに示されているのですが,地域の教育力やそれを支える社会教育を活性化させるビジョンというのは抽象的で弱いと思います。
 以上でございます。

【北山会長】
 ありがとうございます。ここで,宮川政務官が公務のために御退席でございます。

【宮川大臣政務官】
 申し訳ありません。引き続きよろしくお願い申し上げます。

【北山会長】
 ありがとうございました。
   次に,室伏委員,お願いします。

【室伏委員】
  全体を拝見しまして,これからの文部科学省の施策として非常に大事なことが並べられていると思いますし,こういったことが実施されればとても良い教育が実現できるだろうと思います。ただ,1点気になりますのは,先ほど寺本委員の話にありましたが,連携・協働ということがここで余りはっきり見えていないということでございます。もちろん,教育は文部科学省が主導していくものではございますが,やはり社会全体が,子供たち,若者,高齢者まで,いろいろな方たちの教育に責任をもっていくというのが最も大事だろうと思っております。先ほどから話題になっております地域もそうですが,企業等の方々が教育に協力,支援するということを更に推進した方がよろしいのではないかと思っています。また,企業でも,子供たちの教育,大学などの教育についてかなり興味を持って,一緒にやりたいと言ってくださっているところがありますので,企業との協働も推進できると良いのではないかと思います。
 また,他の省庁との連携についてももう少し強くしていっても良いのではないかと思っています。他省庁のいろいろな方々とお話をすると,やはり多少,文部科学省に遠慮しているところがあって,教育に口出しをするのは少しはばかられるというようなお考えの方もあるようなのですが,やはり教育は国全体としての課題であると思いますので,全ての方々が教育に協力する,教育を支援するという意識を持っていただく方がよろしいのではないかと思っています。
 海外でいろいろと様子を見てまいりましても,大学に幾つかの企業が多額の寄附をされて学生たちの教育のために努力をされることも見聞きいたしましたし,初等中等教育に様々な人材を派遣したり,あるいは地域でリタイアした方々が,活発に子供たちの教育に関わっていたりするということがございますので,それこそ人生100年という時代に,高齢者から子供たちまで,皆が手を携えて生きがいのある社会を作っていくためにも,様々な連携協力体制をもっと強化していったら良いのではないかと思います。
 以上です。

【北山会長】
 ありがとうございます。
 それでは,生重委員お願いします。

【生重委員】
  どれ一つとっても全て本当に重要なことばかりなのですが,今,お二人御発言ありましたが,連携・協働というところがやはり見えづらいなというところと,今,働き方改革の中でも議論されているように,これは,どこが,誰がやるのか。それと,困難な経済状況に置かれている家庭はピックアップされて書かれているのですが,今,家庭教育,地域社会の中で子供を育てるのに有効である家庭教育支援チームの施策なども是非推進していただきたいというところが強くあります。その支援チーム,それから家庭教育の重要性みたいなことが,そういうところで培われた学びの意欲こそが,地域における困難を抱えた家庭や子供たちを救っていき,地域での子育ての仲間作りなどにもつながっていきます。やはりそこにPTAも絡んでいただきたいし,そういう重要なところで地域の一番土台になる部分を,是非,家庭教育及び家庭教育支援チームのようなことも入れていただけるといいなと思います。そして,連携・協働コミュニケーションの重要性ということで,ここを,誰が,どこが,どのように関わりながら,これからの課題を一緒にやっていくことになるのかということが分かりやすく表記されるといいなと思います。よろしくお願いいたします。

【北山会長】
 ありがとうございます。
 それでは,伊藤委員,お願いします。

【伊藤委員】
 私も連携・協働の話になるのですが,第2期の教育振興基本計画のフォローアップの中で,先ほど,成果として学校と地域との組織的な連携・協働の進展が挙げられていたかと思います。コミュニティ・スクールの導入状況,これは本当に目標達成ということで大きく広がりを見せ,全国で3,600校に達しているとお伺いしています。私どもも地域学校協働活動と併せて取組の充実に努めているところですが,そうした中で多くのシニア世代が子供の育成に関わることで元気になり,やりがいを持ち,お互いのつながりを強め,さらに地域の活性化にもつながっているといった状況が見られるようになりました。
 本県,山口県ですが,県内のある調査では,コミュニティ・スクールになったことで,平成27年度から28年度に掛けて,県内小中学校の来校者の総数は約1.2倍に増加し,地域住民の6割強が学校のために役立ちたいと考えているという結果も報告されています。地域の方々からの声も届いているのですが,子供との交流によって気持ちが元気になるとか,子供たちからお礼の手紙が来るとうれしい,何か役立っていると感じることで活動の励みになるとか,子供たちのために頑張らねばという責任が生活の張りになるとか,子供のためにと思ってやっていることが,実は自分のためになっていると感じることがあるといった声も届いています。
 本校でも,毎日のように保護者世代から70代,80代ぐらいまでの人が来校され,学習支援や挨拶運動,見守り活動,環境整備,あるいは自分たちの生涯学習の場としても学校を活用していただいていますが,皆さん,子供たちの声が聞こえる空間でこれまで学んでこられた経験,あるいは学んでこられたことを生かしながら,御自分のペースでいきいきと活動をしておられる様子がうかがえます。そして,子供たちから元気をもらっているとよく言われています。学校のためにと思って始められたことが,実は御自身の生きがいややりがいになっていると。そこには子供たちとの触れ合い,あるいは人と人との触れ合いというものがあるからだと思います。
 そういう意味で,基本的な方針の3番,生涯学び,活躍できる環境を整えるの中の,地域学校協働活動の推進は,今,障害者の生涯学習の推進のところに位置付いていますが,次世代の学校地域の創生プランの下で,これからますますこの取組は全国的に広がり,さらに充実したものになっていくものと思います。子供たちの育ちや学びへの支援は,もう一方の側面から見ますと,正にそれまで学ばれたことや経験されたことを生かしながら活動していただくという学びと活動の循環であり,今後も高齢者を含めた様々な年齢層の活動の舞台として広がっていく。そしてまた,そのために学ぶということが起こってくるのではないかと思います。
 ですから,この地域学校協働活動の推進は,例えばこの目標(10)や(11)辺りにも関係してくるのではないかと思いましたので,少し私どもの事例を紹介させていただきました。
 以上です。

【北山会長】
 ありがとうございました。
 それでは,亀山委員,お願いします。

【亀山委員】
 はい。2‐4‐2の社会の持続的な発展を牽引(けんいん)するための多様な力を育成するという項目の中の,グローバルに活躍する人材の育成という定義の在り方なのですが,その中に,やはりリスクに強いと言いますか,精神的なタフネスを備えた人材という要素は,特に2010年代以降は重要なのではないかと思います。やはりフェーズが変わってきていると思いますので,もし文言上の訂正がある程度可能であれば,例えば,異文化理解能力に優れ,リスクに強いタフな精神性を備えたなど,そのような文言があるといいなというのが一つです。また,主な施策群として,英語をはじめとした外国語教育の強化とありますが,全体としてグローバルに活躍できる人材にとって必要なのは,外国語能力と教養ですよね。私の場合は世界教養と呼んでいるのですが,世界の諸地域の多元性,多文化性に立脚した幅広い教養の在り方というものを,もう少し何かここに書き込めればいいと思うということと,それが指標というところに,どうやってその世界教養を具体的な数値として出せるかと言うと難しいところもあるのですが,例えば,英語をはじめとした外国語というところで,多言語,あるいは多文化といった,若干言葉は古びている印象はあるのですが,そういった文化的な側面での文言を入れていただけると,この具体的な施策群を記した部分の味けなさを救うことができるのかなと思います。

【北山会長】
 ありがとうございます。
 それでは,五神委員,お願いします。

【五神委員】
 私は,昨年9月から官邸で開催されている「未来投資会議」に民間議員として参加しています。そこの議論をもとに6月に閣議決定された未来投資戦略2017がまとめられました。その中心はSociety5.0に向けた未来投資という内容になりました。この会議のスタート時点では,Society5.0というもののイメージはやや茫漠としていましたが,議論を通じてかなり明確になりました。その議論を少し皆様とも共有させていただきたいと思い,意見を述べさせていただきます。
サイバー空間に蓄積されてきたデータが,ある臨界値を超えビッグデータを形成する中で,AI技術などの活用によって,従来とは違ったテクノロジー群が生まれつつあります。さらに,人だけでなく物もインターネットに繋がるIoTが進むことで,物から自動生成されたデータもビッグデータに加わるようになります。これらのデータをつなぎ,リアルタイムで解析し,活用する時代もすぐそこまで来ているのです。そして,それが,産業を含め社会や経済の仕組みを不連続な形で変えつつあります。その先に来る社会がSociety5.0だというのです。
これによって,産業は旧来の1次,2次,3次といった分類によらず,あらゆる分野が,遠隔,分散,連結が鍵となったスマート化に向かいます。
日本や先進諸国が経験した,工業化を主体とする経済成長は,労働集約から資本集約への移行の中で生産性を高めるというモデルでした。この成長モデルは定着し,浸透していますが,今私たちが迎えるのは,これとは異質のものです。知恵や情報やその連結体が中心的な価値を担うというもので,いわば知識集約型の社会経済です。この知識集約型への転換が新しい成長モデルとなるわけですが,これは,旧来の資本集約に向けた成長モデルの延長ではなく,不連続な転換,つまりパラダイムシフトなのです。
重要なことは,遠隔,分散,結合が鍵となるこの転換は,地方と都市の格差の解消をはじめとして,SDGsが掲げる「インクルーシブな社会」の実現を可能とするチャンスにもなるということです。中央教育審議会では,日本の教育システムに関する最高レベルの審議の場として,この社会変化を正しくとらえた上で,これからの社会を支える人材をどう育てるか,それを通じて,世界に先駆けて,日本がどのように人類社会に貢献していくのか,具体的な戦略を提示するべきだと思います。
こうした知識集約型社会は,高度な知を活用する社会です。これから初等中等教育を受ける子供たちは,彼ら彼女らの人生において,今までの世代に比べ,はるかに変化の大きな世界で生きることになります。ですから,そのような世代の人々が身につけておく力としては,何事にも前向きにポジティブにチャレンジする力と気力が大事で,それを鍛えるべきです。そのためには,出る杭を伸ばし,励ます文化を高めることが不可欠です。
この新しい社会への転換は大仕事です。しかもスピーディに対応せねばなりません。それを,これから育つ若者だけに押し付けるわけにはいかないのです。そのために大人がまず,率先して,大きな変革に立ち向かい,自らチャレンジし,その姿勢を若い世代に見せることが重要です。日本の場合,高度な知と人材のストックは,経済が強かった時代に育てた人たちの中にあります。すなわち,30代,40代,50代,60代以上の世代のストックの活用が必須です。大学は,こうした人材がさらに活躍するための場としても重要な役割を担っています。リトレーニングなどの機会の充実や,産学協創の推進はそのためのものだとも言えます。
中央教育審議会として,これからどのような教育を行っていくかという戦略を立てる際は,タイムスケールを意識し,スピード感のある取組を具体的に検討し,提示をしなければなりません。知識集約型の社会への転換に向けた取り組みは,待ったなしです。例えば,日本では,2025年に団塊の世代が後期高齢者になります。今後の労働人口の推移を踏まえると,日本が活力を維持しているためには,2025年において,後期高齢者となる団塊の世代の方々の多くが生産活動に加わっているという社会になっていなければならないのです。私たちに残された時間はあと8年間しかありません。それまでに今の社会の在り方を変え,シニア世代にいかに活躍してもらうかという検討を行う必要があります。このように,若者からシニアまで,全世代が一緒にチャレンジすることをエンカレッジするための教育システムの全体設計が必要です。
また,中央教育審議会は国の教育の在り方を審議する場ですので,日本にとって何が必要で,それを実現するために,国として何に投資をしなければならないかをしっかり提言しなければならないと思います。2030年,2025年からバックキャストして,今投資すべきことをきちんと具体的に絞り込む議論を行うべきです。その際に重視すべきポイントとしては,例えば,日本が独自に築いてきた文化や学術は,人類社会全体の多様性という観点で重要な役割を果たしているということがあります。それに加え,数学力をはじめとする優れた教育実績を活用し,世界に展開するということなどが考えられます。
以上です。

【北山会長】
 ありがとうございました。
 時間ですので,本日はこれで終わりといたしますが,追加で御意見があれば,文部科学省の事務局に御提出いただければと思います。
 委員の皆様から頂いた御意見も踏まえ,また,パブリックコメント,関係団体ヒアリングや,ほかの分科会,部会等で頂戴した意見を踏まえ,引き続き,計画部会で審議を進めていきたいと思っております。
 それでは,議題3,平成30年度文部科学省の概算要求,それから税制改正要望事項について御説明をお願いしたいと思います。
 まず,柿田会計課長,お願いします。

【柿田会計課長】
 それでは,資料5‐1によりまして平成30年度の概算要求につきまして御説明いたします。
 今回の概算要求におきましては,対前年度5,283億円増の5兆8,380億円を要求しております。その中で文教関係予算につきましては3,308億円増の4兆4,265億円を要求しております。既に本日のこれまでの議論の中で貴重な御意見を頂いているところでございますが,こちらのポイントといたしましては,1点目といたしまして,学校における働き方改革を進めるということで,特別部会から頂きました緊急提言等を踏まえた学校の指導運営体制の構築でございます。
 2点目といたしまして,これからの時代に対応した高等教育改革を加速する国立大学法人の基盤的経費,あるいは私学助成の充実であります。
 3点目に,全ての人に開かれた教育機会の確保に向けた大学等奨学金事業の充実,これらをはじめといたしまして,人生100年時代を見据えた人づくりの強力な推進です。
 2ページをお願いいたします。社会を生き抜く力の養成として,新しい学習指導要領の円滑な実施と学校における働き方改革,これをしっかりと進めるということを目指しまして,チーム学校を実現するために教職員定数の改善,専門スタッフや外部人材の配置拡充,それから業務の適正化,これらを一体的に推進しまして,指導運営体制の強化充実を図るということを目指しております。
 まず,教職員定数の改善でございますが,義務教育費国庫負担金につきましては,少子化に伴う自然減がございますので,金額としては60億円の減額の要求になっており,内容といたしましては,まず小学校の専科指導に必要な教員の充実や中学校における生徒指導体制の強化による指導体制の充実,また,校長,副校長,教頭等の事務の軽減による運営体制の強化,それから,先ほど養護教諭の御意見も頂いておりますが,複雑化・困難化する教育課題への対応を図るため,全体といたしまして,幾つか要素がございますが,合計3,800人の定数改善の要求をいたしております。
 3ページをお願いいたします。専門スタッフ・外部人材の拡充でございます。まず,教員に代わってプリント等の印刷などを行うスクール・サポート・スタッフの配置,また,公立中学校におきまして部活動を担当する教員の支援を行うための部活動指導員配置促進事業の新設を要求しております。また,学校現場における業務の適正化に向けまして,業務改善アドバイザーの派遣でありますとか,統合型校務支援システムの導入に取り組むこととしております。
 続いて,地域と学校の連携・協働の推進のため,本年4月1日に施行されました改正社会教育法におきまして,地域学校協働活動が位置付けられているところでございます。それを受けまして,その核となる地域学校協働活動推進員の配置拡充などに取り組むこととしております。
 4ページをお願いいたします。教育の情報化の推進でございます。小学校におけるプログラミング教育をはじめ,新学習指導要領における情報活用能力の育成に向けた取組を推進するほか,新たに小規模校における遠隔授業システムの導入支援に取り組むこととしております。また,特別支援教育の生涯学習化推進プランといたしまして,障害のある方の生涯を通じた学びを支援する観点から,関連施策を総合的に推進いたします。
 5ページをお願いいたします。道徳教育の充実を図るとともに,いじめ・不登校などへの対応のために,スクールカウンセラー及びスクールソーシャルワーカーの増員に加えまして,新たにSNSを活用した相談体制の構築を図ることとしております。また,高大接続改革につきましては,平成32年度からの大学入学共通テストの円滑な実施に向けまして,これまでもプレテストを実施してきておりますが,30年度におきましては10万人規模でのプレテストを実施する等の内容の要求をしております。
 6ページをお願いいたします。未来への飛躍を実現する人材の養成でございます。国立大学等へ継続的かつ安定的に教育研究活動を実施できるように,まず基盤的経費であります運営費交付金等の充実,それから若手研究者の安定した教育研究環境の確保に取り組むこととしております。また,私学の振興につきましても,教育の質的転換や,若手研究者への支援などを重点的に推進する内容でございます。
 7ページでございますが,国立高等専門学校につきましても理工系大学等との共同教育課程の設置など,教育の高度化や,海外展開と国際化の一体的な推進に取り組むこととしております。
 8ページをお願いいたします。Society5.0の実現に向けまして,卓越大学院プログラムの新設をはじめ,セキュリティ,あるいはデータサイエンス分野における高度技術人材の育成,また,大学における工学系教育の改革を促進するほか,リカレント教育・職業教育に取り組む大学・専修学校への支援を充実することとしております。
 9ページでは,初等中等教育段階におけるグローバルな視点に立って活躍する人材の育成に向けまして,小中高等学校を通じた英語教育の強化などを実施するほか,大学等における留学生交流の充実のために,日本人留学生の派遣,外国人留学生の受入れの双方におきまして,支援の強化に取り組むこととしております。
 10ページをお願いいたします。学びのセーフティネットの構築でございます。幼児教育の無償化,これにつきましてはこれまでも段階的に進めてきておりますが,来年度におきましても,対象の範囲,あるいは内容等につきましては予算編成過程におきまして検討するということで,こちらにつきましては事項要求という形での要求をしております。また,高校生等の奨学給付金の充実に取り組むとともに,平成29年度に先行実施しております給付型奨学金制度につきましては30年度からの本格実施に向けて,新たに2万人への給付を実施するための予算を要求しております。さらに,無利子奨学金の希望者全員に対する貸与を着実に実施するために貸与人員を4.4万人増員するほか,授業料の減免にも取り組むこととしております。
 11ページは,学校施設の関係でございます。公立学校の教育環境の改善,また,イノベーション創出に向けた機能強化など,国立大学等の施設整備,それから私立学校や認定こども園の施設整備を推進するための予算を充実させるための要求をしております。
 以上が教育関係でございます。
 12ページ以降にはスポーツ,文化芸術,科学技術の関係の要求内容を記しておりますが,時間の都合もございますので説明は省略させていただきます。
 以上でございます。

【北山会長】
 次に,岡村政策課長,お願いします。

【岡村大臣官房政策課長】
 資料6‐1,6‐2で御説明させていただきます。文部科学省全体の平成30年度の税制改正要望でございます。
 6‐1の方に全10項目を書いてございます。10項目中4項目,スポーツの関係の4項目が前年に引き続き要望させていただいているものでございます。
 6‐2の方を御覧ください。まず,教育,科学技術イノベーション関係でございます。(1)は日本が学生支援機構に対する法人からの寄附の税制優遇措置について,新たに創設いたしました給付型の奨学金も対象に追加いたしまして,これまでの貸与型の奨学金と同様に,法人側に全額損金算入できるようにするものでございます。
 二つ目でございます。私立学校等に対する寄附金の控除につきまして,年末調整の対象とするものでございます。これによりまして,寄附者の手続を軽減し,寄附のインセンティブを高め,寄附文化の一層の醸成を図りたいと考えております。
 2ページ目を御覧ください。(3)は内閣府との共同要望でございます。公益法人等に現物寄附を行った場合,みなし譲渡所得税の非課税措置を受けるためには国税庁長官の承認が必要でございますが,国立大学法人や国立研究開発法人などがこの承認を受けやすくなるように,承認の要件を緩和する等の特例を設けまして,寄附の一層の促進を図るものでございます。なお,既に私立学校,学校法人等には当該の承認の要件を緩和する特例が設けられてございます。
 続いて,3ページ目を御覧ください。スポーツ関係でございます。
 一番上はゴルフ場利用税の廃止です。ゴルフは昨年のリオデジャネイロオリンピックから正式にオリンピック競技として復帰しております。こうした中,いろいろございますスポーツの中でも,唯一ゴルフのみが課税されている現状がございます。これを解消しまして,生涯スポーツ社会の実現を目指すべく,引き続き,本税制の廃止を求めていくものでございます。
 二つ目はたばこ税の引上げでございます。たばこ税につきましては,毎年度,厚生労働省が健康増進の観点から増税の要望をしておりますが,2020年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けまして,スポーツによる健康増進を図るに当たり,たばこの消費抑制はその基盤となること,また,青少年による喫煙の抑止にもなることから,昨年に引き続き,当省も共同で要望しております。
 4ページを御覧くださいませ。(3)は2020年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会の関係の要望でございます。IOCからの要望を踏まえまして,この競技大会のために来日する関係者を対象として,本国との二重課税を排除する措置を講ずるものでございます。
 四つ目は2019年に開催されるラグビーワールドカップ大会関係の要望でございます。大会の円滑な実施のために,大会主催者であるラグビーワールドカップリミテッドに対して,日本のラグビー協会から支払う大会保証料につきまして,国内源泉所得の対象とならないよう,措置を講ずるものでございます。
 五つ目は,引退後のアスリートに対する経済的支援に関する要望でございます。引退後のアスリートに対しては,所属企業や協賛企業による奨学金等の支援の仕組みの構築を,ただいま検討してございます。この場合,当該資金に係るアスリートであった方が受けるお金につきまして,所得税の非課税措置を要望するものでございます。
 最後に文化関係が5ページにございます。
 一つ目は美術館・文化財に係るものございます。公開された美術館や保存活用計画が策定された文化財につきまして,相続税の納付猶予の特例を設ける要望でございます。これにより,美術館等の次世代への確実な継承,それから,広く皆様への公開・活用を推進してまいりたいと考えております。
 二つ目は,障害者に対してバリアフリー対策を行っている劇場・音楽堂に対しまして固定資産税の特例措置を行うものです。これによりまして,国民が障害の有無にかかわらず文化芸術に親しむ環境の整備に努めてまいりたいと考えております。
 以上が当省の平成30年度の税制改正要望でございます。要望の実現に向けまして,鋭意取り組んでまいりますので,どうぞよろしくお願い申し上げます。

【北山会長】
 柿田課長,岡村課長,ありがとうございました。
 本件に関し,質問などはありますか。
篠原委員,お願いします。

【篠原委員】
 確認です。今回初めて知ったのですが,ゴルフ場利用税の廃止のところで,その下に全国のゴルフプレー料金の比較が書いているのですが,宮崎では1,962円でできるのですか。

【岡村大臣官房政策課長】
 全国の平均としてはこういうデータでございます。

【篠原委員】
 宮崎ではプレー料金のうちゴルフ利用税の割合が非常に高いということになりますね。これは間違いない数字ですか。東京のプレー料金は1万2,126円と書いてあるのですけど。

【岡村大臣官房政策課長】
 調べた結果,このようになっております。

【篠原委員】
 分かりました。

【高橋初等中等教育局長】
 本日スポーツ庁は来ておりませんが,前職がスポーツ庁でしたので代わりにお答えします。これは各ゴルフ場の平日のカントリー利用をするキャディーなしの料金でございます。ゴルフ場利用税は標準税率800円ですが,実際にはプレー料に応じて250円や300円などございまして,上限1,200円ですので,おおむねプレー料金が高くなると標準税制を超えて高くなり,安いところでは安く取っているという形で,過大な配分にはならないような配慮はされているようでございます。

【北山会長】
 他によろしいでしょうか。

【横倉委員】
 たばこ税引き上げに是非御尽力ください。私どもは,健康増進法で受動喫煙防止を強くお願いして,今年5月に署名活動を行い,1か月で260万人以上の署名が集まりました。受動喫煙防止には,たばこ税を引き上げるということが非常に有効であり,私どもも厚生労働省に強く申し入れておりますので,よろしくお願いします。

【岡村大臣官房政策課長】
 厚生労働省とともに頑張らせていただきたいと思います。ありがとうございます。

【北山会長】
 ほかには,よろしいでしょうか。それでは,本日の議事はこれまでといたします。
 冒頭,文部科学省の人事異動の御紹介の際にはおられませんでしたが,中央教育審議会を担当されておられます常盤生涯学習政策局長が後でお越しになられたので御紹介します。

【常盤生涯学習政策局長】
 常盤です。よろしくお願いいたします。

【北山会長】
 それから,義本高等教育局長です。よろしくお願いします。

【義本高等教育局長】
 義本でございます。

【北山会長】
 山田委員,どうぞ。

【山田委員】
 遅れてきて,最初のところで何も言えなかったので,私のミスで大変申し訳ないのですが,地方文化財行政に関する特別部会のところで,一言だけ発言させていただきます。
 これから文化審議会の方でまとめがされると思うのですが,その中間まとめを見ますと,総合的な支援に立った地域における文化財の保存が市町村になっている。しかし,これは今まで都道府県が文化財保護活用に対して蓄積を持ち,努めてきたものを全く無視しておりますし,市町村といっても500人から300万人までいろいろある。そしてさらに,これから活用の面では,観光や伝統産業,コンテンツ関係などは非常に広域的な問題として取り扱わなければならない点,これを全て市町村の方でやって,都道府県は意見を聴取する体制となっているという形でやられると,非常に地域の実情を知らない報告ではないかと思いまして,是非ともこの特別部会においての審議の中で,こういう意見が中央教育審議会の委員からあったことだけはお伝えいただきたいと思います。

【北山会長】
 それでは,事務局となります初等中等教育局の方,よろしくお願いします。ありがとうございました。
 それでは,最後に次の予定をお願いします。

【氷見谷生涯学習政策局政策課長】
 次回の中央教育審議会総会でございますが,12月22日金曜日,15時から17時を予定しております。書面においても御連絡をさせていただきたいと存じますが,場所は文部科学省第二講堂を予定しておりますので,よろしくお願いいたします。

【北山会長】
 それでは,以上で本日の総会を終了いたします。ありがとうございました。

―了―

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生涯学習政策局政策課

政策審議第一係
電話番号:内線:3458