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「学校事故対応に関する調査研究」有識者会議(平成27年度)(第4回) 議事要旨

1.日時

平成27年11月10日(火曜日)14時00分~17時00分

2.場所

文部科学省15階 15階特別会議室

3.議事要旨

<1>名古屋市柔道事故についてのヒアリングが行われ、御遺族及び教育委員会指導主事からの発表を行い、委員から意見・質問が出された。

(発表概要 御遺族)

※ この症例は、頭部を打った後に続く頭痛という脳震とうの症状があったにも関わらずスポーツを続け、再度の頭部打撲により架橋静脈が破断し、急性硬膜下血腫を発症したセカンド・インパクト・シンドロームであった。

※ 事故後の対応としては、事故後学校長の謝罪がまず行われ、学校の姿勢を示したことで、被害者との関係の悪化を防ぎ、後の原因究明がスムーズになされることにつながった。さらに、再発防止策の早い実行にもつながった。

※ 事故翌日には、大体の状況説明が行われるなど、被害者家族の気持ちを非常に重視した迅速な状況把握及び原因究明がなされた。家族の要求を満たす対応がなされたと思う。また、早い段階で日本スポーツ振興センターからの給付金の情報を伝え、家族の不安事項の軽減に努められた。

※ 入院中は、毎日、校長・教頭・顧問・担任が見舞いに訪れ、子供が亡くなるまでの家族のつらい時期に日々家族と接し、学校の姿勢を見せることにより家族が学校への信頼を失わないでいられた。

※ 学校が「卒業するまではS君は学校の生徒である」という考え方に徹し、子供の居場所を残したことにより、遺族が心のよりどころを持って過ごせた。卒業まで在籍させるという考え方は、他の症例でも是非考慮してほしい。

※ 再発防止策としては、柔道部の練習方法の徹底した見直し、災害状況の記録用紙の見直し、外部指導員の充実、安全指導講習会の実施、大外刈りなどの足技の禁止、部活動に関するリーフレットの作成など様々な対策がとられた。

※ 事故調査委員会は、開催前から委員名が全て家族に明らかにされ、会議は全て家族が傍聴でき、委員長がまとめた報告書を公表前に家族が一緒にチェックするなど、被害者家族に対し非常に透明性が高いものであった。ただし、事故調査委員会の設置までに8か月の間があり、これからは、委員会の設置の遅れは、場合によっては調査の結果に影響を及ぼすことがあり得ると思う。

※ この事故は,市立学校には即座に公表と注意喚起がなされたが,隣の県立学校や私立学校への注意喚起ができていないのが課題である。

※ 今後の事故対応・再発防止についての課題として次の七つが考えられる。

【課題1】第三者による事故調査委員会の速やかな設置 国が制度として確立させるべき。ただし、調査委員会の設置が逆効果になる場合もあることを考慮し、例えば、被害者家族も委員の人選に関与させてもらう、傍聴を全面認める、報告書のチェックに参加させるなどの条件付けが必要。

【課題2】重篤なけが、事故の文科省への届け出制度の復活 事故原因の一つに情報の共有ができなかったことが挙げられているが、事故情報を確実に提供できるのは文科省である。学校現場に浸透するよう繰り返し情報を提供していくことが必要。

【課題3】家庭への情報の提供 脳震とうと頭部外傷については、子供がその危険性を理解していないと親にも先生にも伝えることがなく、先生に幾ら知識があっても事故を防ぐことができない。

【課題4】全国内の情報交換 教育委員会同士が情報を提供し合う場を作り、同じような事故が隣のまちや学校で起こらないような体制づくりを行うべき。各教育委員会のレベルを上げて、全国で刺激して、隠蔽を行えない社会の風潮、体制を作ることが大切。

【課題5】予測不可能・予防不可能な事故への対策 行きすぎた指導による事故は、子供や親には防ぎようがない。指導者は、体が未熟な子供という弱い生き物を相手にしているということを肝に銘じて指導に当たるべきであり、決して感情に任せて暴力を加えてはならないことを,教育委員会を通じて各学校に発信してほしい。

【課題6】続けること 事故を風化させてはいけない。マスコミが取り上げなくなっても、人々が忘れても、一度始めた防止策は人が変わっても事実を伝え、確実に続けていくことが大切。

【課題7】全ての学校長が意識してほしいこと (Sの高校の)校長が教育の場に持って臨んだ二つの強い信念、○学校は預かったお子さんは絶対に預かった状態のままで返さなければならない、○隠さず、全て誠実に対応する、を意識してほしい。南部さおり著「部活動の安全指導」を、先生方の事故対応マニュアルとして全国の教育委員会へ配信し、道義的な責任と法的な責任は異なることを全教師に伝えたい。理想的な事故対応と再発防止のステップは以下のとおり考えられる。

(1)学校側からの心からの謝罪

(2)第三者による公正な事故調査、原因分析

(3)事故原因を真摯に受け止め,被害者家族への真実の報告

(4)被害者家族を交えての再発防止策の検討

(5)再発防止策の継続と全国規模での集約。情報の共有化

<2>(発表概要:教育委員会)

※ この事故は、関係者に脳震とうの知識が周知されていれば防げた事故であった。本事故で亡くなったS君が前に何度か頭を打っていたという事実が顧問を含め学校側に適切に伝わっていなかったことが、この事故の発生を予防できなかった大きな原因だと思っている。

※ 調査委員会の報告書で、この死亡事故の原因は、家庭と学校・学校内・病院と学校などでの必要な情報の共有化、体格差や技能差などに応じた練習計画、安全指導に関する講習制度、安全指導のマニュアルの徹底周知など、柔道の安全指導に関する大切な要因が複合的にシステムエラーを引き起こしたことが推測されると分析されている。

※ 調査委員会は、事故再発防止及び改善策について、様々な観点から提言を打ち出しており、提言を受けた市の対応としては、以下の取組を行っている。

(1)柔道だけを取り出したシラバスの発刊  ・適切な運動部活動マニュアルの作成  ・生徒・保護者用の「初心者のための柔道」リーフレットの作成

(2)柔道部のある中学・高校に巡回指導の実施

(3)武道における安全指導講習会の開催

(4)マット・ドクターによる試合後の振り返り、危険場面を再現させての指導

(5)部活動顧問派遣事業の実施

事故というのは突発的なものではあるが、学校側がなすべきことは、まず保護者に誠実に謝罪することではないか。起こったことは起こったこととして、一回しっかりと事実を確認し、保護者と情報を共有することを忘れてはならない。この事故を風化させないように、今後とも市と御遺族がタッグを組みながら事故防止に向けてまい進していきたい。

(質疑応答)

【委員】 二つお伺いしたいことがある。1点目は、事故発生当初から8月の終わり頃までは事故を公表しないとおっしゃっていたのが、12月に入ってから公表されるということになったのはどうしてか、2点目は、公表することになってから調査委員会を立ち上げるまでに、教育委員会との間でどういう議論があったのか。そのあたりをお伺いしたい。

【御遺族】 家族から公表しないことを伝えたのは事故当日である。校長が謝罪をしたときに、「マスコミが入る可能性がありますけれども」と言われたが、子供が生きるか死ぬかというときに「それは絶対嫌です」と答えた。 今では考えが変わったが、当時は一般的な考え方で、マスコミというのは遺族に平気でマイクを向けるというイメージしかなかったので、「そっとしておいてほしい、知られたくない」ということを学校に伝え、学校も理解してくれて、市立学校内の公表のみとしてくれた。 これは、相手の生徒さんも知識がなくて投げてしまった、本当の事故だと思っている。事故は被害者を二つ作ると思っていたので、相手の生徒さんを守らなければという気持ちもずっとあった。 この事故を知らせなければ駄目なんだということに気がついたのは、11月になって、初めて被害者の会のシンポジウムに参加していろいろなことを勉強してからである。そんなときに取材の声がかかり、学校に取材を受けると伝えたのが12月になる。

【委員】 その後、実際に委員会を立ち上げる間でどのような交渉が行われたのか。

【御遺族】 調査委員会というものを知らなくて、周りでもそういうことをやっていることを聞かなかったが、武道における安全指導講習会に参加したときに、講演された先生から、調査委員会をやるべきだと教えていただいた。やってもらえたらいいなと思っていたが、自分からこうしてほしいとか積極的な動きはしなかった。その後、市の前任の指導主事の方から調査委員会をやることになりましたと教えていただいた。

【名古屋市教委】 調査委員会というと、事故の原因を調査して報告するという、勘ぐられたイメージで社会的には見られているが「名古屋市柔道安全指導検討委員会」という名称で行った。御遺族の意向も受けて、二度とこういう事故が起こらないように、今後どうしていったらいいのかということも踏まえて行ったという経緯があり、事故を追及しながら、原因を明らかにし、これからこうしていきましょうということが受け継がれている。 【委員】 現場の校長主導の迅速な対応が必要であるということと、教育委員会の対応という二つをお話しいただいたが、事故調査委員会の速やかな設置というのはどういう形で進められるのが望ましいと思っているか。

【御遺族】 調査委員会を行う事故の重篤さの程度は、まだ検討していかなければならない。国の方針としてやるべきだと制度化してしまえば、やる・やらないでもめることなく、教育委員会が動かざるを得ない状況になる。 事故直後は、家族がそういうことを考えられない状態にあると思う。パニック状態が落ち着いた頃にでも、教育委員会、できれば学校の先生を通じて、段階を踏んで上手に説明していただければ、被害者家族は納得しすぐに始められると思うので、そういう流れを作ってもらいたい。

【委員】 今回のこの事故は、校長先生が非常に適切な対応をされたということだと思うが、校長先生や管理職に対する、事故への対処法については、例えば研修などを市で行っていたのか。

【名古屋市教委】 校長研修の中で、危機管理については、常に1年目の研修、2年目の研修で行っている。ただ、具体的にいろんなパターンが危機管理にはあるため、具体的なことはやっていないが、一般的な危機管理についての対応、指導はしている。

【委員】 他の学校で同じような事故が起きないように対応する、防止のために情報を共有するということがうまくいかないところだらけだが、そこはどうしてうまくいったのか。市内だけでも情報共有できたのはうらやましいと思ったが 教えてほしい。

【御遺族】 市内というか市立学校である。やはり県より市の方が単位が小さく、学校数も少なくて教育委員会の目の届く範囲にある。高校の事故なので、まず、高校の校長会で伝え、段階を踏んで小・中学校にも伝えるというシステムがしっかりできているのではないかと思う。

【名古屋市教委】 うまくいったというか、それが普通なのかと思っている。今あるべき情報をきちっと学校長に流していくということは、やはりこの次の事故を防ぐための大きな力となるものであり、必要な取組をしたのかなと思っている。

【委員】 事故直後の現場にいた部員の生徒の中には、いわゆる加害者に相当する生徒がいたり、部活動の仲間が目の前で倒れたのを目撃した生徒がいたりするが、その生徒たちから筆談で事実を把握する際に、ケアの体制や仕組みなどは何か取られていたのか。

【御遺族】 事故直後からメンタルケアはしていて、一人一人部員を呼んで、その子その子で受け止め方が違うので、それぞれに適切なケアが行われていたと聞いている。聴き取りも、いきなり生徒たちを集めて聴くのではなく、まず親御さんを呼んで、校長から聴き取りの理由を説明している。 生徒への聴き取りも、ふだん話をしていない校長先生が直接聴くことはすごく心の負担になるため、教頭先生が中に入ってうまく聴き取り、心を波立たせないように行っていた。それでも難色を示した保護者の気持ちも聞き、私たちの希望も聞くために、校長先生が考え出したのが筆談だった。2時間くらいかかったが、早い段階での聴き取りであったにも関わらず、問題は生じず、うまくいったのではないか。

【委員】 道義的な責任と法的な責任にかかわらずということを全教師に伝えたい、そんなふうに思われた理由を教えてほしい。

【御遺族】 学校の事故に限らず交通事故でもそうだが、謝ってしまうと自分が負けるみたいな考えは誰でもまず生じると思う。自分を守るため、裁判に持って行かれないように、絶対に謝ってはいけないということを多くの人が思っていると思う。でも,こうやってしっかりと区別されていることが分かれば、謝ることはこの後の自分に悪い影響を及ぼさない、相手の家族にとっても,自分にとってもプラスになることが分かる。学校管理下において発生した事故であれば、最初に謝罪することは当然ということを徹底して、全ての学校の先生に知っていただきたい。一回知ってしまえば一生理解して過ごせるので、これから何があっても疑問を抱かず正しい行動が取れるのではないかと思う。

【委員】 事故後、保護者から学校に対して、原因究明や他の部員への配慮以外に、学校側に何かリクエストしたものはあったのか。

【御遺族】 子供が受けた中間テストの結果が出ていて、個人懇談の時期であったので、懇談を担任の先生にお願いして、子供の病室で子供に聞こえるところで、成績表を見せてもらって懇談をした。 その都度思いついたことは聞いていたと思うが、特に今、思い出すような要望などはなかった。

【御遺族】 南部先生の冊子を読んだ方は皆、こんな学校もあるのかと驚かれるが、これが当たり前の社会になってほしい。こういうことができる学校もあるしできない学校もあるが、どこが違ったのか、どこが違うとその後々がどうしてこんなに変わってくるのかということを考えていただきたい。事故は起きない方が良いが、起こった場合に同じような対応ができる学校が増えていくようお願いしたい。

<3>いじめ自死等遺族団体からのヒアリングが行われ、遺族団体を代表して、NPO法人ジェントルハートプロジェクト(以下「GHP」という。)及び全国学校事故・事件を語る会(以下「語る会」という。)からの発表を行い、委員から意見・質問が出された。(発表概要:GHP)

※ いじめ自殺遺族という立場であるが、学校事故被害者の皆様と共通する部分が大変多い。事件や事故が起こってしまったとき、被害者家族は、悲しみや驚きの思いとともに、なぜこの事態が起きてしまったのかという大変大きな疑問を持つ。この疑問に答えるために、学校が真摯に対応し初動調査を行ってくれることと、調査で分かった情報を互いに共有してくれることの2点を強く望む。

※ 親が我が子の身に何が起きたのか知りたいという思いの延長線上には、せめて今後二度と我が子のような子供の事故を生み出してほしくないという切実な再発防止の願いが込められている。遺族の立場から申せば、また同じ事故が起きるということは、我が子の死が無駄になってしまったということになる。

※ 当法人が実施した教師アンケート結果からは、先生がいじめを知る一番多いきっかけは、中学校では、他の生徒・本人・親からの報告で90.3%を占めている。先生方は多くの子供たちから情報を得ているのであり、現場で様々なことを見聞きしている子供たちの持っている情報が大変重要であることから、初動調査では、まずは、児童生徒へのアンケートの実施が重要であることを御理解いただきたい。

※ 学校が最初に行う調査は、警察捜査に学べば簡単なことで、目撃者捜しであると感じる。情報を一番持っているであろう、その現場にいた子供たちの聴き取りを優先するのは当然のことで、この調査の実施は、お金もかからず、明日からでもすぐにできる簡単なことだが、今までほとんど実施されていない。

※ いじめ、事故にかかわらず、多くの学校に事実に向き合う積極的な姿勢を感じることができない。そして、情報は学校内部に偏り、その情報のコントロールが学校と教育委員会のさじ加減でどうにでもなり、隠蔽も可能になる。

※ 真実がうやむやにされてしまい、真実に向き合うことを阻まれた被害者は、真実を知りたいというその一点のために民事裁判等へ追い詰められていってしまう。この問題を放置することが、不毛な民事裁判を生み出す大きなきっかけとなっている。

※ 初動調査が事実を知る上で大変有効であることは、既に実証されている。真実を知りたいという願いがかなえられないことにより、民事裁判や第三者調査委員会の立ち上げへと、望ましくない方向へ移行してほしくない。不毛な戦いは、お互いの時間とお金と労力と信頼関係、その他大切なものを奪う。

※ 調査委員会の立ち上げについては、調査委員の力量は保証されていないし、公平な委員選出についても確立されていない。そのため、不本意な調査委員会の結論に苦しむ被害者を生む可能性がある。

※ 初動調査の確立とその情報の共有について、有識者の皆様のお力添えと、文部科学省にはリーダーとしての決断を心から望む。

※ 事故対応の問題点を、事前、事後、外部調査委員会の三つに分けてみた。共通するキーワードは、記録・情報共有・遺族を含む当事者の参画の三つである。

※ 事案発生後、調査に着手して初めて浮かび上がってきた課題として、記録の不備がある。背景調査の面談の中で、「覚えていません」や「忘れました」の回答が多く、保護者と学校関係者の言い分が異なることも多くあるが、このときに、生徒の保護者からの相談や生徒指導の記録が作られていないということが、事実調査や事実認定の大きな壁となった。

※ 事後対応においても、情報の共有不足と説明不足がある。組織防衛のために不十分な調査が行われ、当事者に説明をしない、意見を聞かない、情報を開示しないということが行われている。学校や教育委員会が行うアンケートは、情報が上がりにくい質問内容にしたり、信ぴょう性や個人情報を盾に公表しないようにしたりしてきた。また、近年は、学校、教委がアンケートの内容を要約して遺族に伝える方法が多く採られ、書いている内容を曲解されたり、重要な記述を隠されたりしている例も後を絶たない。

※ 文部科学省の「子供の自殺が起きたときの背景調査の指針」では、児童・生徒へのアンケートや聴き取り調査の前に、保護者の同意を取るよう求めているが、同意書の必要性は再考してほしい。

※ いじめ防止対策推進法ができて、外部調査委員会が設置されることが非常に多くなったが、ある程度遺族が納得するような調査委員会ばかりではない。

【設置の問題】 当事者の要望を学校、教委が受け入れず、設置までに1年以上費やすケースがある。

【調査委員の選出の問題】 公平中立性を保つために職能団体から推薦するのがよいとされているが、事前に短期間で外からメンバーの公平中立性を判断することは不可能である。外部調査委員会の設置自体が、学校や教委の不信から始まっていることを考えれば、委員の半分は当事者推薦とすべきである。

【事務局の問題】 多くは教育委員会や行政職員が事務局を担っているが、民事裁判になれば、いずれは相対する側の人間であることから、調査への影響は少なくないと考えられる。

【調査の問題】 実際に幾つもの調査委員会では、疑問に思う調査や結論が出されている。不十分な調査や情報開示のなさが疑念に拍車をかける結果となっている。

※ 事後対応が一歩先んじていると見られている自殺事案の外部調査委員会が立ち上がった事例でさえ、いまだに様々な問題を抱えているのであり、今回の事故対応の検討の対象に、いじめや自殺問題も外さないでいただきたい。

※ 事故対応の様々な課題を打開するための提言と要望を書いたが、キーワードは,記録,情報共有、当事者の参画の三つである。そして、大きく集約すると、要望は次の二つとなる。

(1) 再発防止に生かすという視点から、記録、調査、情報の開示、保存のガイドラインを作ってルール化してほしい。

(2) 誰よりも事実解明に強い意欲を持ち、厳しい評価の目を持つ当事者が、自分の子供の情報にアクセスし、内容をチェックできる仕組みを積極的に作ることが、事後対応の適正化につながると思う。学校事故も、被害者の立場に立って対応してこそ、多くの事実が洗い出され、再発防止に生かされると思う。

<4>(発表概要:語る会)

※ 9月16日付けの要望書では、適切な事後対応の指針を明示してくださいということと、現場対応の具体的な方策をその中に書き込んでくださいということを要望した。

※ 学校で事故・事件が発生すると、学校は事実を明らかにしないまま、事態の沈静化に終始してきた。その中で、何があったのかを解明していないので実効性のある再発防止策ができていなかった。それから、そこで起こったことが、被害者遺族に深刻な社会不信、人間不信を起こしてきた。

※ 20年前から同じことを言っているが、当時は誰もこんな話を聞いてくれなかった。でも、今やっと遺族が声を上げ始めて、社会的にも事後対応の問題が知られるようになってきた。

※ 学校による事実解明が困難な理由は幾つかある。学校関係者は責任を問われる立場にいること。過失があっても賠償責任を果たす財源や権限を持っていないこと。どう対応したらよいかの指針がないこと。対応の能力や経験もないこと。学校には通常の学校活動を維持するための最低人員しかいないこと。これらの理由から、学校の教員にそれをやりなさいと言ってもできるはずがない。

※ 遺族や被害者が、事実解明を行って誠実に対応してほしいというのは当然の要望だが、学校にしてみれば、できないことをやれと言われているのに等しく、はっきりしたいことは、今の学校、教育委員会では、学校事故・事件の現場対応はできないということ。

※ 全国で第三者委員会が立ち上がること自体が、今の学校、教育委員会では、いわゆる現場対応ができないことの一つの表れじゃないかと思うが、第三者委員会自体も現場対応の能力や権限を持っていないため、事実調査がうまくいかず、協力してもらえない。また、せっかく良い提言を出しても出しただけで、そこから一歩も進まない。

※ 事後対応の在り方としては、被害者の二次被害を防ぎ、又は最小限にとどめ、被害者参加の再発防止を実現することとなってほしい。そのために、まず初めに大切なのが、現場対応のコーディネーターが必要だということ。適切な現場対応を行うには、調整機能を持った、専門職としての、いわゆるコーディネーターが必要である。

※ 事実解明と再発防止については、いろいろな分野で事故調査委員会の考え方が入ってきているため、それを参考に、どういう調査をすれば良いのか。その中から、どういう手法を用いてどういう再発防止策を構築したら良いのか学んでほしい。心的被害については、今までにひな形がないため、他の精神的な分野も参考にしながら、独自に作っていかなければならない。

※ 事後対応の学校の不誠実な対応がどんどん明らかにされていくと、国民の学校教育に対する信頼や子供の大人に対する信頼がどんどん損なわれていくことになるため、早急に国民や子供の信頼を得られるような、事後対応の指針や施策を作り実施していかなければならない。

※ 事後対応の問題は、1年や2年では解決できず、10年15年もかかると思う。国の責任で一刻も早く取り組まなければならないが、事実を明らかにする、明らかになった事実に誠実に対応する、被害者・遺族を支援し、その権利を保障する、この程度でスタートしてはどうか。最初からたくさんの制約をかけると、今でさえまともにできていないのに、現場対応が一層困難になるだけではないか。できないことをさせようとすれば、更にひずみが生じ、問題を一層複雑化させるので、やりながら考えていく、充実させていくということが必要ではないか。

※ 被害者や遺族だけでなく、学校や教育委員会も、ある意味では困っている。国の支援が必要であり、事故・事件が発生し、学校、教育委員会から国に現場対応の要請があった場合、国は現場にコーディネーターを派遣し、現場対応に当たること、国は派遣したコーディネーターに対し、現場対応に関する助言や支援を行うことを提案したい。

※ 国の支援のメリットは5点ある。(1)現場対応を国が行うことによって、学校、教育委員会の負担が軽減する。(2)国は事後対応の実態を把握することができる。(3)コーディネーターの養成につながる。(4)国は責任を問われる立場ではないので、被害者、遺族から信頼を得やすい。(5)国は派遣したコーディネーターから現場対応に関する情報を得て、それを基にして事後対応の改善に向けた条件整備を行える。

※ 現場の実態を無視した性急な改革は、問題を一層複雑化させる危険がある。時間がかかっても、コーディネーターから得られる現場からの情報を大切にして、事後対応の改善に向けて取り組んでいくことが大切だと思う。

※ 被害者や遺族が、学校で何が起きたのか事実を知りたいと思っても学校が教えてくれないことが結構あり、事実を知るために裁判を起こすと、世間からの誹謗中傷を受け、いわゆる二次被害を受けることがある。

※ 校長先生は、30年、40年と仕事をしていても、自分の学校で子供が死亡する経験をしている人はほとんどいないため、実際に死亡事故が起きたとき、どうしたら良いか全然分からない。何とかしてくださいと言っても、対応できる人員もおらず何もできない。第三者委員会で調査することになっても,事故が起こった直後や事故から一週間くらいの間に,学校がしっかり調べていないと,調査委員会で調べることも困難になってしまう。教育委員会や学校では限界ではないかと思う。

※ 被害者家族や遺族は、教育委員会や学校等、いろんな人と話をしたい、再発防止策を考える場面にも参加したい、自分の子供の事故・事件の話をして、同じようなことを繰り返さないようなことをしたいと思っているが、それを断ち切られてしまうことが多い。

※ 各地の教育委員会や学校に無理があるのであれば、国が何とかして、被害者家族・遺族や重大事故の後遺症の残った人たちを,支援する、救済する、そういう役割を果たしてほしい。

(質疑応答)

【委員】 両団体に対して2点、語る会に1点お聞きしたい。両団体にお聞きしたいのは、1点目は、事故の場合といじめや自死の場合の対応は非常によく似ているところがあるが、対策は別の部署で決められている。皆さんの目から見て、なぜ分かれてきたのかということをお聞きしたい。もう一つは、皆さんにとって、刑事、民事の訴訟、あるいは教員の処分について、どう考えておられるかお聞きしたい。もう一つの語る会への質問は、コーディネーターと呼ばれる人は、どういう人を想定しているのか、例えばどういう役割を果たせる人、どういうスキルを持っている人、資質的にはどういう人か、お聞きしたい。

【GHP】 事故とか自死、基本的にはそれほど分けて考えなくても、なぜこんなことが起きたのかという、本当にシンプルな真相究明というのを望んでいるだけである。 先生の処分や加害者への処分という部分も、それほど処分を望んでいるわけでもないし、子供たちに心からの謝罪の思いというものを抱いてほしい、こんなに傷つけちゃったんだねという気づきが欲しいのであって、先生をこういうふうに処分しないといけないとか、遺族に対する補償とか、そういうところは個人的にはなかった。

【GHP】 いじめや自死とその他の学校事故の一番大きな違いは、いじめや自死は原因が非常に見えにくく、学校事故の方が、けがをした、障害が残ったという、現象としては非常に見えやすいと思う。ただ、その見えやすさゆえに,直前のことしか取り上げられず、背景調査のところをすっぽりと切り捨てられて、この直接の事故がなぜ起きたのか、その日のその時間だけに絞られてしまう傾向にあるので、いじめや自死と一緒にやることの意味は非常に大きいと思う。 二つ目の加害者責任については、学校は社会に出て行く子供たちを一人前の大人になるために教育する場なので、社会において犯罪と言われることが学校の中で起きたら、子供の場合は守られるべきと思う。しかし、大人であれば、社会で人を殴ったらそれは犯罪になるのに、学校の中で先生が生徒を殴っても、それは教育的なこととして刑事事件にもならない。そして、子供の場合は、保護者が民事裁判で負ければ損害賠償を払うのに、大人、特に公務員の場合、本人は責任を取らなくてよい。学校の先生が悪いことをしても国が払ってくれる。その後処分されることもない。これって本当に教育的なことなんだろうかと思っている。

【語る会】 事故といじめ・自殺が、なぜ行政で分かれて対応されているのかというと、簡単に言うと、法的な問題だと思う。しかし、要望書の中にも書いているが、それは賠償責任の問題だけである。他のことに対しての被害者の権利とかは共通のはずである。 2点目について、最初から裁判なんて考えたわけではないが、学校が、関係ない、管理外の事故だとしてその事実を認めようとしないため、抑えようとした気持ちがかきむしられてしまう。 民事裁判も刑事裁判も、非常に強い処罰感情を持つのは、事件そのものではなく、その後の対応によってそうなっていくんだということを、まず知ってほしい。 3点目のコーディネーターについては、難しい。絶対に、最低必要なのは、遺族の実態、実情、それからその支援、その後のことについてある程度の理解がある、そういう人が参入してほしい。コーディネーターとなる人には幾らか研修をする必要もあると思う。恐らく大変な作業だと思う。どっちの話も根気よく聞き、その中で、一歩一歩進んでいく、打たれ強い方。やはりこうありたいという理念でやっていく人がふさわしいと思う。

【委員】 コーディネーターという話には、私も同じような発想を持っている。基本的にどんな小さな県でも最低2名くらいは専門家を、大きな市にも県に準じた形で専門家を置くということで、基本的には、学校の指導主事の先生を育てるという方向が一番実情に合っているのではないかと個人的には思っているが、どういう枠を作ればよいのかということを、もう少し御意見を頂きたいというのが1点。 事故後の対応というのは、事故の捜査をするだけではなくて、次の事故を予防するということを含んでいる。前にあった事故にきちんと対応していれば、その後の同様の事故は防げるはずだが、これだけ同じ事故が起こってきたということを考えなければならない。 いじめ問題なんかで暴力があったとか,いじめられたという程度の話であれば,自殺というところまでいかなくても,基本的には学校が調査をしてきちっとした報告を合議している。そこのところと本当に大きな事故が起こったときは分けて考えなければいけないのではと思うが、文科省はどういう意見なのか。 もう一点、文科省に聞きたいが、今日の講演の報告を見ていると、学校は保護者の同意なんてもらわなくて、全部、生徒から事情聴取をしているが、先ほどジェントルハートさんからは、大分チェックが入っているという話であった。文科省としてはどういう方針を出しているのか教えてほしい。

【GHP】 文科省がどのような対応をしているかというと、いじめ、自殺に対する調査研究協力者会議で出した結論としては、調査をする前に親御さんの承諾書がなければ、その子供を調査してはならないとなっており、これは、親によって逆に情報がコントロールできてしまうという、全く矛盾なやり方なので、この初動調査の部分での文科省の決定は大きな問題だと思っている。

【GHP】 初動調査については、やはり人に頼るのは危険だと思っている。きちんとガイドラインを作って、それを遵守する人をコーディネーターとして充てないといけない。特に学校指導主事は元教員の方がほとんどなので、教育長や校長が元同僚であったり上司だったりすると言いたくても言えなかったというような事件が実際にある。 調査をするときの保護者の許可については、レジュメの参考の最後のところに「児童懲戒権の限界について」という昭和23年のものだが、いまだに学校の懲戒処分のときには、この回答が生きている。 それなのに、重大事故に関しては、文科省の指針の中に承諾書の例まで挙げられている。そのために、この子が一番よく知っている、若しくは被害者側からこの子からいじめられていたという情報が上がっても、保護者の承諾が得られないので、学校はこれ以上聴き取りできませんでしたということが現実に起きている。そこは是非変えていただきたい。

【語る会】 最初は、こうあるべきというのも分からないので、ともかく国が支援に入ることからスタートしていく。その中で事実を明らかにして、やり方や理念を定着させていく。その中で、やがてはいろんな学校の団体、私学も含めて、そういうことをやることが正しいことなんだという理念の中で、組織を最終的に作り上げる、そのアプローチの方が,現状に即しているのではないかと思う。 保護者の同意というのは、警察の取調べに準じているのではないか。子供の聴き取りには保護者の同意が要る。つまり、そういう内容を含む内容ですよと。学校では無理だというのは、例えば、昔、京都の亀岡で自動車が子供をばーっとひいた事故があった。そのときに、教頭先生か誰かが、加害者の父親が謝りたいから被害者の連絡先を教えてくれと言われて、教えたということが問題となった。これは、学校だとよくありそうなことで、謝罪するのが何で悪いんだと。これが、いわゆる学校でやっている教育の中の現場の感覚と、実際の事故での感覚の差ではないか。だから、教育委員会の指導主事に任せると言っても、できないと思う。ひょっとしたら、学校でも教育をつかさどる部門と事故に対応する部門が違った感覚というのになるのではないか。その関係性をどういうふうに持っていくのかという、新しい課題もある。そういう議論をしていかなければいけないんじゃないかと思っている。

【委員】 事故も災害も犯罪も、被害者は一緒だと思っている。 皆さんがおっしゃるように、心のケアとか生活支援と事故の調査や補償の組織は別だと思っている。その両方が一緒に進んでいかなければいけないと思う。先ほどのコーディネーターは、専門家でないと、心のケアも含めて無理だと私は感じている。 国がその事故調査機関並びに被害者を支援する機関、事故も犯罪も災害も被害者は一緒だと思う。被害者は社会的な弱者なので、その弱者を守っていくのは国の責任だと思っている。その点について、先ほどおっしゃっていたコーディネーターという考え方はちょっと弱いのではないかと私は思っている。

【委員】 お話の中で情報を共有し、裁判には至らないケースもあるというようなことをおっしゃっていたが、たくさんの事例に接しておられて、被害者の心を癒やしながら再発防止、癒やしにつながり、再発防止に少しでもつながるような対応とそうでない対応の違い、どういうところにポイントがあるとお考えか、御経験から伺いたい。

【GHP】 一番苦しいのは、なぜ我が子が死んでしまったのか、そのプロセスを全く知ることができないこと。方や向こうは全部調査して知っているという、この知ることができる立場と全く情報から遮断されてしまう立場、ここは大きなかい離があるというのは御理解いただけると思う。 私たちが語るときには、必ず頭に「せめて」がつく。せめて我が子の苦しみが何だったのかを知ることによって、心からつらかったねという思い、子供と同じ苦しみは体感はできませんけれども、知ることによって、もう一回、次、生き直すということのきっかけにもなるのではないかというふうに思っている。 ですから、癒やしという表現かどうか分からないが、生き直しのきっかけが欲しいなというふうには思っている。

【GHP】 今、事実を知ることができた本人が来ているので、なぜ裁判を起こさなかったかを話させてほしい。

【GHP】 私どもは、2010年6月に子供を自死で亡くしている。いじめが関係していたと思っている。 直後から市の教育委員会が中に入り、学校を先導して事件の調査をしてくれた。その事実を私たちに毎週毎週のスタンスで報告をしてくれた。私たちが知りたいと思っていた事実というのも明らかにしていただいた。そのことで息子が何に苦しんだか、なぜ死ななければいけなかったかということが一つ一つ分かってきて、自分たちが、ああ、そうだったんだ、こんなに苦しい思いをしてたんだということを分かるにつれ、我々は人を恨むということよりも、我々がこの先どうして息子の思いをつないでいかなきゃいけないかという立場に実際になって、裁判ということは全く考えていなかった。 誰かに責任をとってくれとか、そういうことじゃなくて、誰かをつるし上げたいためにということでもなく、我々がこの先どう生きていかなければいけないかという自信を与えてくれたということで、調査委員の方々に感謝している。

最後に、事務局より、今後のスケジュールについて説明を行った。

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初等中等教育局 健康教育・食育課

(初等中等教育局 健康教育・食育課)

-- 登録:平成28年03月 --