「学校事故対応に関する調査研究」有識者会議(平成27年度)(第3回) 議事要旨

1.日時

平成27年9月25日(金曜日)14時30分~17時30分

2.場所

文部科学省3階 3F2特別会議室

3.議題

  1. 学校事故対応に関する遺族からのヒアリング
  2. その他  ○事故遺族団体からの要望書 ○今後のスケジュール

4.出席者

委員

大泉委員、児玉委員、酒井委員、住友委員、園部委員、藤田委員、美谷島委員、望月委員、山中委員、渡邉委員

文部科学省

山本大臣政務官、和田学校健康教育課長、吉門安全教育調査官、中出学校安全係長

5.議事要旨

5.議事要旨
(1)宮城県私立日和幼稚園事故の御遺族からのヒアリングが行われ、御遺族からの発表を行い、委員から意見・質問が出された。

 (発表概要)
○ 防災マニュアルの作成と職員への周知徹底、防災マニュアルに基づく避難訓練の充実を求めたい。事前に訓練に訓練を重ね、訓練の結果を踏まえた上で防災マニュアルの改正・改定をしていってほしい。
○ 環境や立地条件、地域性にあった避難訓練の実施を保証するために、最低限年に一度は、幼稚園や学校に自治体担当者が出向き、防災訓練の様子を見た上で指導を徹底してほしい。さらに、幼稚園や小・中学校の教諭の資格試験において、防災教育を必須科目としていただきたい。
○ 子供の命にかかわる問題については、公立と私立を区別せずに対応できるような法整備をお願いしたい。
○ これらの要望は、守ってもらえたはずの命を奪われた私たちの子供たちが,二度と繰り返さないでと叫んでいる声を親として聞き取って出しているものであり、国や自治体に要望したいことである。
○ 石巻市内の幼稚園では、海岸付近の幼稚園では管理下での事故、死亡はなかったにも関わらず、なぜ、安全であるはずの高台に位置する幼稚園でこのような事態に陥ったのか。自らも調査・事実確認を行い、以下の事実を知ることができた。
[問題点1]危機管理意識の欠如
  震災前、地震の際の避難訓練は机の下に隠れるのみで、バス送迎時の有事の際の対応は話し合われていなかった。幼稚園のマニュアルには、災害時は保護者の迎えを待つとの記載があったにもかかわらず、そのマニュアルは職員に周知されず、存在自体も知らなかったため、バスを発車させ、保護者の混乱を招き、事故被害にあった。
[問題点2]情報収集・共有
  かつて経験したことのないような状況の中で、職員間で、これからどうするかなどの話合いを一度もしておらず、指示体制や職員の役割分担が全く機能していなかった。
[問題点3]子供の安全配慮義務
  尋常ではない地震の後にバスを発車させ、職員がバスに追いついたのに、職員だけ高台へ続く階段で園に戻った。また、運転手は無事に幼稚園に戻ったが、誰にも正しい被災現場を報告しなかったために、子供たちは誰にも気づかれず救助されなかった。
[問題点4]保護者への説明責任
 保護者に知らせることなく、日常的にバスの2便目と3便目を一緒に送迎していたが、誰かの指示でもなく、なぜそうなったのか誰も分からないまま行われていた。また、運転手が園に助けを求めに行っても、園長は職員に知らせることもなく、安否確認も救助活動も行わなかった。被害児童を迎えにきた保護者にも正しい被災場所、状況を教えることはなかった。
○ 幼稚園側は、このような重大な事故が発生しながら事実を隠しており、真実を知るためには、近隣住民などに遺族が自ら足を運んで聞き取りをするしかなかったが、そのことにも限界があった。
○ 県などの行政にも、事故の調査や検証等、事故に関する情報の開示を求めたが、私立幼稚園ということで、行政は一切関与できないとの一点張りであった。私立幼稚園で重大な事故や事件が発生しても、前提となるのは私学の独立性であり、遺族はたらい回しにあった。
○ 子供たち4人の遺族は、守れた命であったのではないかと思い、幼稚園側に心からの謝罪と真実を求め、そして、学校や幼稚園の管理下で二度とこのような悲劇が起こらないようにとの一心で提訴した。
○ 仙台地裁の一審判決では、園と園長には安全配慮義務違反の債務不履行責任及び賠償責任があるとして、合計1億7,700万円の損害賠償を命じたが、これは、子供を預かる立場にある保育園、幼稚園、学校の重い責任に自覚を促すものであり、とても意義のあるものであった。
○ 和解条項の中で、園側は法的責任を認め、なおかつ、自然災害が発生した際に子供の生命・安全を守るためには、防災マニュアルの充実及び周知徹底、避難訓練の実施並びに職員の防災意識の向上など、日頃からの防災体制の構築が極めて重要であること、園において津波に対する防災体制が十分に構築されていなかったことを認めるに至った。
○ 和解条項に付された前文には、裁判所より二つの考えが示されている。園側は、園児らの死亡について、一審判決で認められた内容の法的責任を負うことは逃れ難く、今後このような悲劇が二度と繰り返されないよう、訴訟終了後も被災園児らの犠牲が教訓として長く記憶され、後世の防災対策に生かされるべきと、一審判決以上の踏み込んだ内容のものを示してもらった。また、和解文を読み上げた後には、裁判長より重ねて、この悲劇が二度と繰り返されることなく今後の防災体制に生かされますよう望みますとの前例のないメッセージをいただいた。
○ 子供を預かる学校関係者には、是非この和解に込められた裁判所や遺族の思いを受け止めていただき、防災訓練や緊急マニュアルの整備,職員への研修、防災教育などを十分に行い、子供たちの命、未来を守っていただきたいと願っている。
○ 遺族=親と思われがちだが、遺族の中には残された兄弟がいることを忘れないでほしい。


 (質疑応答)
<委員>
今の話を非常に重く受け止めている。二度と起こさないためにも、今の話をこれからの指針に生かしていきたい。

<委員>
私立の学校・園での事故・事件を見ていて思うのが、私学行政、何をやっているのかということ。学校保健安全法で、学校安全計画を作るとか、危険発生時の対処マニュアルを作るとかは、私立の学校でも当然それを負っているわけだが、きちんと実行されているかどうかというのは誰も点検していないのではないかということを改めて感じた。

<委員>
やはり施設ごとに組織的な対応というのが必要で、全教職員の誰であっても対応できる力をつけておくということが非常に大事なのだということを胸がさけるような思いで聞かせていただいた。

<委員>
この事件の後、文部科学省は防災マニュアルを作った。私自身はなかなかよく考えて作られていると思うが、皆さんの方から御意見があれば伺いたい。もう一つは、文部科学省に尋ねたいが、この平成24年の手引き以前にはどのような啓発活動が行われていたのか、国公立の学校と私立の学校・園への普及は同じレベルで行われていたのか、教えていただきたい。

<御遺族>
震災後、作成手引きとかガイドライン、マニュアル等をいろんな形で目にすることはあるが、果たしてこれを作ったら終わりでいいのかという、そこがすごく大事なところではないかと思う。幼稚園では全国の約6割が私立幼稚園であり、公立に関しては,文科省から通達が行くが、私立に関してはどこが所轄なのか誰が指導監督しているのか分からない。

<文科省>
震災前に作成して配布していた資料は「学校防災マニュアル作成の手引き」の38、39ページに記載されているが、当然、教育委員会だけでなく私学担当部局に対しても送付し、資料の活用を促していた。私立学校に対してどのように周知していくかはこれからの課題である。

<御遺族>
マニュアルや手引きを策定して、これがどこまで、実際に置いているかという確認は取られているのか。私は初めてここで見た。災害は待ってくれないので、このようなマニュアルや手引きを策定したからには、早めの対処を取ってもらって、子供たちの命を無駄にしないようにしたい。
できれば、今日一日だけで終わりではなく、何回か協議し、形あるものを残して、子供たちの未来を守っていきたいと思っている。

<委員>
4点お聞きしたい。(1)実際にお子さんが亡くなられた後の幼稚園側からの説明会の様子について、もう少し具体的に教えてほしい。(2)行政との関わりについて、もう少し詳しくお聞きしたい。(3)いろんなことが分からない、見えない状況の中で、知りたいことを知るために、どういう形で独自の調査をされたのか。(4)成立した和解の中の再発防止策は、当該幼稚園だけでなく、宮城県内、さらには全国の幼稚園の今後の防災対策に役立てていかなければならないものの、これが広がらないのではないかと皆さんももどかしく感じているのではないかと思うが,実際のところどう思われているのか。

<御遺族>
園からの説明はほとんどない状態で、何も話していただけず、口を開いても「分かりません」「覚えていません」しか言わない。説明会は3回ほどやっていただいたが、もうやりとりをやっても無駄な状態であった。

<御遺族>
説明会は、園長先生が一人で全てを仕切るという感じで、我々としては、その場にいた先生方、職員の方からも話を聞きたかったが、それすらなかなか容易にはできなかった。

<御遺族>
3回目の説明会のときに、園長先生からは「若い先生たちには未来があるから」というふうに言われた。子供の未来を絶たれた私たちに対して、そのような言葉を投げかけられた。

<御遺族>
2番目の行政との関わりについては、石巻市や市教育委員会からは担当部署ではないというので、担当を尋ねたら、宮城県の私学文書課が担当していると伺った。私学文書課に私立幼稚園に対して指導や監督をしないのかと尋ねたら、権限がありませんという内容の回答であった。
真実を、その経緯を少しでも知りたいと思い、県に開示請求の手続をしたが、出てきた書類は全て真っ黒で、黒塗りされていて正直何も言えず、苦しい思いをした。

<御遺族>
3番目の独自調査については、自分たちで近隣住民に聞き込みを始めた。裁判を起こす前は、協力的で、結構教えてくださる方もいたが、裁判を起こした時点で口をつぐまれ、なかなか私たちが思うようなことが聞けなくなった。幼稚園側が、同じ幼稚園に通っていた他の父兄に対し、幼稚園を援護射撃してくださいということを言っていたみたいである。

<御遺族>
和解したことによって、今回のこの事故が、一幼稚園の、私立幼稚園の失敗例というか不祥事だったから他の幼稚園とか教育の現場は関係ないんだみたいな、、そう感じ取れた部分は、私自身は正直ある。我々が求めていた心の謝罪という部分、これは絶対判決では得られないだろうと思い、苦渋の決断で和解という道を選び、さらに、裁判所には、風化させることなく後世に教訓として残されるべきだというような感じの前文までつけていただいたが、なかなか広がらないということについては、正直歯がゆく思っている。

<御遺族>
判決も出たということで、やはり謝罪が欲しかった、でもそれはなかったということでよろしいか。今一番心の中で知りたいことは、園長はなぜ海に向かってバスを走らせたかということと、私個人は思っていますが、そういうあたり何かあったら教えてほしい。

<御遺族>
園長は、子供たちを一刻も早く親元に帰そうと思ったみたいだが、早く手放したかったのだと思う。子供たちを幼稚園に置いていたときに何か起こったら大変だから親元に帰した時点で幼稚園の責任はそこで終わりになるので一刻も早く帰したかったのではないか。残念ながら、その場にある命を守ろうという体制に、私たちの幼稚園はならなかった。
本来であれば、教育機関、幼稚園や学校は、まず、そこにいる子供たちの命をどう守るかで行動してほしかったし、どうしてそこにいる子供たちの命を手放すことができたのかということを、私たちはやはり知りたい。

<御遺族>
謝罪をしますという上で和解をしたのであれば、どこかの機会でやはり謝罪していただきたい。

<委員>
お話を伺って一番印象的だったのは、裁判をしても一切、新たな事実は見つからなかったということ。皆さん方は必ず、何が起こったか真実を知りたいと、二度と起こらないように再発防止をと言うが、裁判をやったからといって、再発防止なんて保証は何もない。
既に欧米では、法律で18歳未満の子供が死亡したときには、関係者が全部集まって検討する委員会が自動的にできるようになっている。日本でもそういう検討できるシステムを強制的に法律で作らなければならない。

<御遺族>
文科省に伺いたいことがある。震災後すぐ、4月25日と27日の二日間にわたって、幼児教育課長が宮城県と福島県の被災した私立幼稚園を訪問したという記事を見たが、日和幼稚園にもいらっしゃっている。このときに幼稚園にどのようなことを聞かれたのか教えていただきたい。

<文科省>
確認させていただく。

<御遺族>
最後に要望書を渡したい。今回ヒアリングだけでは伝えることが難しい、バスが停車していた小学校から幼稚園の位置関係、幼稚園から被災現場までの位置関係、幼稚園から見える海までの距離や高低差などを見て、幼稚園の建物の安全性や立地条件などを一緒に見て考え、後世の防災対策の教訓としていただきたく、現地視察を要望する。なお、今回のヒアリングで終わることなく、今後の再発防止、教訓となるよう、今後もヒアリング継続をお願いする。最終的ヒアリング終了後、有識者会議でどのような話合いで、どのようにしていくかまとめて文書をいただきたい。


(2)宮城県石巻市立大川小学校事故の御遺族からのヒアリングが行われ、御遺族からの発表を行い、委員から意見・質問が出された。

 (発表概要)
○ 私たちの願いは、事実を受け止めるためにも、事実を知りたい,分かっている事実を教えてほしい,我が子の死の様子を知りたいということ。それから、原因を明らかにしてこそ教訓だと思っているが、事実を曖昧にしたまま収束させようという事後対応が続いている。
○ 遺族の方を向いた対応がされていないので、再発防止ができず、理不尽な事後対応によって二重のダメージを受ける結果となっている。
○ 市あるいは市教委のこれまでの対応は、たくさんの子供たちが犠牲になったことに正面から向き合っているとは言えない。重く受け止めているという言葉が大変軽く聞こえる。説明会の案内は、必ず、「遺族の要望により説明会を行います」と書かれているが、市の責任において説明会を開催するのではないかと思う。
○ 説明会に出席した市長が、「この事故は自然災害の宿命」という発言をした。これくらいで済まそうとした初期対応のまずさが、この問題のかなり大きな部分を占めている。
○ 学校、教育委員会は信頼されなければならない。責任を持っているのではなく、責任を明らかにして対応すべきであり、うそをついてはいけない。今すぐ事実を明らかにすべきだと思っている。また、閉鎖的あるいは今までもそうだったからという前例踏襲の姿勢は改めなければならない。
○ 検証委員会は、市教委が事実を認めず曖昧にしている状態を打開するために設置されたはずだが、途中で事実の解明を放棄し、ほとんど成果を上げることなく終了した。委員と事務局の選定で、血縁関係は避けるべきであり、学校事故の検証なのに学校関係者がいないことも問題であった。
○ 現地の感覚がない方々が、事故から2年以上たってから検証を行っても検証委員会は機能しない。また、検証委員会の聞き取りに対し、教育関係者は、「忘れました」「分かりません」を連発していたが、明らかにごまかし、うそを言っているにも関わらず、検証委員会では何も明らかにされなかった。
○ 検証委員会の設置は遺族が望んだわけではなかった。遺族は話合いを望んでいた。いつまでも遺族対市教委という図式ではなく、子供の命をみんなで考える、そういう丸くなった話合いをしていく方向性が示されたのに、突然、第三者に丸投げの検証委員会が市議会に提案された。
○ きちんとした知識と手法を踏まえた委員が、権限を持ち、本気で検証に取り組むために、学校事故に対処する機関、コーディネートする機関を常設する必要がある。あるいはシステムを確立する必要があるのではないかと思う。
○ 本事故の検証は、しかるべき機関なり人が検証を継続すべき。あれだけの事故があって、教訓にさえしてもらえないのは残念で仕方がない。
○ 不十分な事後対応を行うと、その後、いろんな文書、通達、あるいは会議やマニュアル作りに追われて、子供が見えず、手を差し伸べられないという、教師が本来担うべき役割を果たせない環境を作ってしまう。そうすると、また事件、事故が起きてしまう。
○ 事態の改善につながらない形式的な通達や調査がたくさんあるが、そうしたことを抜本的に見直し、学校現場とタイアップできるような仕組みや方針をしっかり示していくべきである。
○ 生き残った子供たち、兄弟を亡くした子供たちに対するケアが、余りにもおざなりになっている。深刻な状況であり、早急に手を打つべきである。
○ しっかり事件・事故に向き合う姿勢というのは、被害者はもちろんだが、学校や行政に対してのサポートも必要だと思っている。子供の命が無駄にならない方向に導いてほしい。

 (質疑応答)
<委員>
これは委員全体の意見ではないが、私は事故が起こった後、五つ大事な問題があると思っている。まずは、被災者と寄り添う気持ち、二つ目が事実の解明、三つ目が事故原因の分析、四つ目が再発防止策の提案、実行、五つ目が補償の問題。こう五段階に分かれているというのが私の見解である。
今どこに不満があるのかを聞いていると、事実の解明がされていない点と原因が解明されていない点、この二つが中心になされてきたと思うが、これらをやっていくために何が必要なのか、どういう解明機関をつくるのが望ましいのか。
皆さんがお考えになっている、事実の問題はよく分かった、検証時期が遅くなったということもよく分かった、メンバーの問題もよく分かった。しかし、基本的にはどういうことが必要なのか、問題点があちこち飛んでいるというふうに見えるので、どのようにお考えなのかを一度、文書ベースで御提示いただきたい。
第三者委員会の運営の仕方が問題だったという点については、第三者委員会には基本的に強制力がない。警察の捜査と違い任意の調査になるので、口を閉ざされてしまうとそれ以上進められないという問題がある。そこのところをクリアするためには、どういう制度を作ったらクリアできると考えているのか聞きたい。
それから、この問題は、市だけの問題なのか、もっと広い問題、国や県レベルでどうすべきことなのか、レベルを整理した上で、是非お考えをお知らせいただきたい。
同じように、予防の問題についても、皆さんの意見を少し整理していただいて、今日でなくて結構なので、ペーパーベースでいただければと思う。

<御遺族>
この問題は非常に多面的だと私も思っていて、どこを切り口にしても大きな問題である。今お話しされた五つの、被災者に寄り添う、事実解明、原因分析、再発防止、補償については、何一つされていない。被災者と寄り添うというのが、多分最もできていないが、それは事実解明が目的ではないからである。できるだけ事実を解明しないようにしている、そこが問題である。
この問題については、今、ガイドラインとか、仕組み、体制づくりというのが、私はなされていないと思っている。もしかすると、そういう機関なりシステムがあるのかもしれないが、少なくとも当該事故や今回ヒアリングを受けているような遺族の事案に関してはなかった。あるいは機能しなかったと思っている。
学校管理下で子供が死にすぎていると思う。そして、対応のまずさとか出てきているが、これは仕組みの、組織の問題だと思っている。

<委員>
皆さんは話合いを望んでいたが対話拒否が続いている。それを打開していくためにもコーディネーター的な役割の人が必要だという話になってくると思うが、具体的なコーディネーターのイメージがあったら、それを出していただきたい。
検証委員会が立ち上がった後も、皆さんが望んでいた検証と実際に進められていた検証との間で、かなりずれが出てきたが、その間を調整してくれるコーディネーターにはどういうことをしてほしかったのか。
事実と向き合うことをサポートしてくれる専門家について、今現在皆さんが、つらい数年間の御経験の中で、こんな人がいてくれたらよかったのになと思う人のイメージを教えていただきたい。

<御遺族>
コーディネーターについては、自分がそれをやろうと思っていたが、果たせなかった。私が幾らコーディネーターとかパイプ役と思っていても、どうしても教育委員会の方では、遺族の一員みたいな感じで思われたところがあったし、教育委員会に何度も話合いにいったが、その話合いが検証委員会の打合せのように議会で言われ、簡単に利用された。
遺族、被害者と加害者というわけではないが、利害関係が違うというのも事実であり、双方にコミュニケーションが取れるコーディネーターは必要だと思う。学校事故の場合は、必ずしも教職経験者とは限らないが、学校文化あるいは学校の言葉を語れる人が必要だと思う。
検証委員会の事務局には、一生懸命情報を提供したが、取捨選択され、検証委員に伝わっていなかったことが多々あった。事務局がうまくコーディネートしてくれるかと思っていたが、それは果たせなかったと思う。私たちの感覚では、事務局が検証委員会の中に入ってしまって、事務局が一緒に検証してしまったという感じがあり、どうしても検証に偏りがあったように思えてならない。
最後のサポートの話については、無事だった先生は実質校長一人だが、孤立してしまった校長に、教育委員会は何らサポートをせず、現場にいなかった校長が一人で対応しなければならなかった。このような対応というのは、教員は慣れていないし、教員に全部求めていいのか。遺族や被害者のサポートも必要だが、それを受け止める、耳を傾ける方の教員であるとか、そういった人たちに対するサポートも必要だと思う。

<委員>
検証報告書は、責任追及というものではないので、限界があったということは確かだと思う。
独特な学校文化の中で、やはり常設の独立した調査機関というのが、必要だと私自身は思っている。
それと同時に、やはり心のケアがとてもおざなりにされていたような気がする。事後対応が悪かったために遺族感情がどうしても大きくなってしまったということを考えると、事後対応の在り方を検討することがとても大事じゃないかと、今こそそれを検討していかなければいけないなと思っている。
御遺族の方は皆さん、生存教員の証言を聞きたいと言っているが、その心理は先生を責めたいのではなく、むしろ一緒に亡くなられた子供たち、先生たちの様子を聞きたいとおっしゃって、生存された先生がお話ししてくださったら、先生の苦しみもきっと楽になるんじゃないかと思っていらっしゃると思うが、真実を知りたいということはそういうことじゃないかと思っている。

<御遺族>
学校管理下でのあれだけの死亡事故なので、責任の所在は明らかであると思うが、検証委員の先生の中に免責制度が必要だと言われる先生もいた。事実を解明すれば責任問題になるということを明らかにしているようなものである。免責制度とかがなければ正直に言えないのか。特に市の教育委員会の先生たちは明らかに分かっている。それを誰も指摘できず、何らおとがめもなくまかり通っていること自体がおかしいと思っている。
私たちは声を上げ続けてきたが、裏を返すと、遺族が声を上げなければもみ消されてしまうような状況がどうかと思う。多分、遺族が声を上げなければ、学校で70人以上の子供が亡くなっていながら何事もなかったかのように進んでいたかもしれない。
学校は子供を預かり、守る組織であるので、避難行動をとる基準は、一般の人よりもギアは一段も二段も上でなければ駄目だと思っている。

<委員>
皆さんもこの件について、調査・検証を継続してほしいという願いをもっておられると思うが、こういう調査を引き続きやってほしいとか、あるいは、調査という形ではなくて、例えば対話拒否ではなくて対話をずっと継続して何かを明らかにしてほしいとか、これから先、こういうことを続けてやってほしいということがあったら、再度お聞きしたい。

<御遺族>
第三者委員会は強制力がなく、話をしてくれない。資料を出してくれないから最終的に報告書なんか作れるわけがない。けれども、あたかも調査しました、検証しましたといって報告書を出している。できないのなら白旗を上げればいいし、なぜできない、分からないと言えないのか。できていないのにあたかもできたようにやっていることが悔しい。

<御遺族>
まず、分かっていることをきちんと正直に話してほしい。マニュアルの備えが非常に不備だったことは誰が見ても明らかであったが、防災マニュアルがあれだけずさんであったのなら、他の学校経営についてもどうだったのか、そこにメスを入れなければ駄目だと思う。

<委員>
想像になってしまうが、こういうことが本当の原因ではないかとお考えになっていることがあれば、是非教えてほしい。

<御遺族>
あそこまで津波が来るはずがないと思っていたのは分かるが、もっと内陸の学校でも高台に逃げている。そこではどういう議論が校庭でされたのかをもっと調べるべきである。50分もあったのに議論ができなかった要因を考えていくと、ふだんの学校経営にあるとうかがい知れる。あとは、教員であることが原因で、学校の先生が陥りやすい状況にあったのだと思う。それが足かせの一つになったはずである。

<委員>
こういう大きな災害発生後の対応を学校に課した場合、もしかしたら背を向けてしまう学校が出てくるかもしれないことを危惧している。事後対応を前向きに、ポジティブに取り組んでもらうためには何が必要だと思うか。

<御遺族>
私たちはつらくても、苦しくても、悲しくても、この船からはずっとおりられないと思っている。難しいが、多分乗り越えなければならないことだと思う。

<御遺族>
遺族に向き合ってもらいたいということが第一だと思う。なぜ子供が死んでしまったのか、その理由を聞きたかっただけだが、学校に掛け合っても、校長はなぜ私の子供が亡くなったのか、その理由を説明してくれない。何が起きたのか、子供がどうして死んだのか、本当に向き合って話を聞きたかった、学校も教育委員会も検証委員会も、なかなか私たちの話を聞いてくれる場所がない。それが私たちの考えてもらいたいことである。

<御遺族>
生き残った先生に真実を語ってもらいたい、彼を助けるために、今日にわたって裁判までさせてもらっている。彼は全部知っていて、本当のことを語りたいはずだが、それを語らせようとしない組織がうごめいているのは間違いない。
我が子を亡くし、残った息子が一生懸命証言しても、こういう扱いを4年半にわたってずっとされ続けている。ここまで我々が来てこんなことをしなければ、何も正しいことができないのか。
検証委員会が始まる前の円卓会議のときに話していたが、検証委員会なんか必要なく、この円卓会議をずっとやっていればいいんじゃないか、当事者同士が、市教委、県教委、遺族、総務課長、いろんな有識者を招いて話をしていけば、本当に何かという部分が見えてくるのではないかと思う。
本当は検証委員会の委員に遺族を入れてほしかった、市教委ももちろんということが本音である。

<御遺族>
私たちとしては、今回の一回きりのヒアリングではなく、2回・3回実施いただき、それに是非協力させていただきたい。


(3)事務局より、本有識者会議あてに提出された要望書について、報告を行った。

<委員>
これだけまとまった資料を出されていて、事故対応の指針を具体的にこんなふうに作ってほしいという要望も出されているので、もう一組、この団体もヒアリングの対象に加えていただきたい。

(4)最後に、事務局より、今後のヒアリング実施予定について説明を行った。

<委員>
これまでヒアリングをしたところについて、総括的な形で、こちらが想定している論点について、それぞれ文書でもって、もう一回整理をして回答してもらうと、ヒアリングの際の議論が充実したものになるのではないか。整理する手法は座長に一任するので、何か方法を考えていただきたい。

<委員>
この有識者会議に十何人も委員がいるので、今までのヒアリングの中で、どういうことが大事だと思われたのか、逆に私たちから何が大事なところだったのか。ペーパーを出していくぐらいの作業をしなければならない。

 


 

お問合せ先

初等中等教育局 健康教育・食育課

(初等中等教育局 健康教育・食育課 (スポーツ青少年局 学校健康教育課))