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スポーツ指導者の資質能力向上のための有識者会議(タスクフォース)(第2回) 議事録

1.日時

平成25年5月15日(水曜日)17時~19時

2.場所

3F3特別会議室(東館3階)

3.議題

  1. スポーツ指導者の資質能力向上のための具体的方策
  2. 自由討議

4.出席者

委員

勝田隆座長、尾縣貢座長代理、眞藤邦彦委員、図子浩二委員、土屋裕睦委員、平野裕一委員

文部科学省

福井文部科学副大臣、義家文部科学大臣政務官、久保スポーツ・青少年局長、山脇大臣官房審議官(スポーツ・青少年局担当)、森岡スポーツ振興課長、杉浦競技スポーツ課長、今里スポーツ・青少年企画課長、田島スポーツ指導専門官

5.議事録

【勝田座長】ただいまからスポーツ指導者の資質能力向上のための有識者会議の第2回会議を開催したいと思います。
皆様におかれましては、御多忙の中御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
それでは、会議の開催に当たりまして、まず最初に福井副大臣から御挨拶を頂きたいと思います。よろしくお願いいたします。
【福井文部科学副大臣】本日は先生方、お一人お一人からプレゼンをしていただくということで、楽しみにして参りました。
先日、フランスのスポーツ担当大臣とお話をする機会があって、国家戦略として、フランスここにあり、スポーツでどうフランスを世界に打ち出すかということについての戦略を今、考えているんだということを伺いまして、確かにそうだなと思いました。日本ここにあり、我が日本国民ここにありということを、スポーツを通じて世界に打って出る、その世界戦略というものを一日も早く打ち出さなければならない。
この会議のきっかけは、確かに体罰、暴力ということだったんですけれども、ゴールはやっぱりスポーツで世界に日本を打って出させるということだと思いますので、そういう意味で、世界的なスポーツ指導者の在り方について、本日、各先生方からお話を聞かせていただいて、日本が世界にスポーツで打って出るための戦略の大きな要素であるというふうに考えておりますので、その要素を本日、お示しいただけると思いますので、ひとつよろしくお願い申し上げます。
ありがとうございました。
【勝田座長】ありがとうございます。
申し遅れましたが、座長の勝田です。よろしくお願いいたします。
本日は、義家大臣政務官にも御出席を頂いております。一言御挨拶をいただければと思います。よろしくお願いいたします。
【義家大臣政務官】政務官として、教育及びスポーツを担当しております。委員の皆様方には、会議に御協力いただいておりまして、誠にありがとうございます。
文部科学省では現在、学校の運動部活動の在り方に関する調査研究協力者会議を設置いたしまして、教育再生実行会議の第一次提言を受けた運動部活動のガイドラインの作成等を同時並行で進めているところであります。この中では、運動部活動における許されない指導と、あるべき指導に関する考え方の整理、また運動部活動の意義、役割、位置づけなどについて議論を行っておりまして、間もなく取りまとめに入るところでございます。
一方で、こちらのスポーツ指導者の資質能力向上のための有識者会議につきましては、福井副大臣の下で新しい時代のスポーツ指導者に求められる資質能力を明らかにし、暴力によらない指導という当然のことのみならず、より次元の高い指導者を育成するための具体的方策を御検討いただきたいと考えております。
本日、委員の方々から様々な事例や御意見をいただけると伺っております。積極的な御議論をいただければと思っております。
どうぞよろしくお願いいたします。
【勝田座長】どうもありがとうございます。
それでは、カメラ等の撮影の方は、申し訳ありませんが、御退出をお願いしたいと思います。
本日、配付しております資料につきまして、事務局から確認をしていただければと思います。
【田島スポーツ指導専門官】それでは、配付資料につきまして御確認をさせていただきます。
まず、資料1といたしまして、4月に開催いたしました第1回会議の議事録の案をお配りしております。資料2以降につきましては、委員の皆様方の本日の御発表の資料ということで、勝田座長、尾縣座長代理、眞藤委員、図子委員、土屋委員、平野委員の順番で資料をお入れしております。資料8といたしまして、今後のスケジュール(予定)をお入れしております。参考資料といたしましては、第1回の会議で御確認いただきました「審議内容の公開等について」をお配りしております。
乱丁・落丁等ございましたら、事務局にお申しつけいただければと思います。
【勝田座長】今日は、今、説明がありましたように発表が中心ということです。
議事録の確認を、まず最初にお願いしたいと思います。よろしいでしょうか。御意見等ありますか。
それでは、議事録を確定させていただきまして、議事に入らせていただきたいと思います。
本日は、スポーツ指導者の資質能力向上のための具体的方策について、各委員から10分程度ということで、10分でまとめるのは非常に難しいかと思うんですけれども、私がトップバッターですので、何かプレッシャーを受けております。私の資料は、資料2であります。
私は、資料に基づいて発表いたしますが、パワーポイントでちょっとわかりやすい概念図も用意させていただきましたので、併せてそちらの方を見ていただければと思います。
それでは、始めさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
私が皆さんにお配りさせていただいた資料ですが、国レベルといいますか、文部科学省を中心としたタスクフォースですので、ここでの議論がどういうものであったらいいのかという具体的な国レベルの方策につながるお話ができればと思っています。特にこの1番、検討に当たって共有すべきこととか、2番のタスクフォースでの検討の目的というのは、私がタスクフォース参加に当たって留意すべきと考えることを書いています。
指導者の資質とか能力向上の検討に当たっては、様々な視点があろうかと思います。医・科学に立脚したとか、あるいはグラスルーツ、コミュニティースポーツからトップスポーツだとか、スポーツの指導の立場というのは広範囲にわたります。これはこの後、委員の先生方がいろんなお立場から御発言をなされると思いますので、私としては、指導者の資質能力を向上させるのに重要と思われる方策について私的見解を述べさせていただきます。
一つ目は、指導する側の視点です。これは特に世界というか、社会から、特に国際的な、あるいは新しい社会、こういったところから求められるコーチングの資質というのはどういうものであるのかという、そういう視点からひも解くということが大切ではないかということです。我が国は少子高齢化、あるいは情報化など、様々な社会的な変化に直面しています。このような時代にスポーツがどんな役割を果たすのか、その中で指導者がどんな役割を果たすべきなのか、求められる指導者像をこの時点でしっかりと論議すべきだと思っております。
二つ目の視点は、「観客の質が役者を育てる」ように、指導を受ける側の質や求めるレベルが高まれば、指導者のレベルもあがるということです。指導を受ける側の視点からも考えるべきなのではないかなと思っております。
東京女子体育大学の阿江美恵子先生が日本体育学会に発表された論文の中で、女子体育大学の学生を対象としたアンケート調査に関するものがあります。この調査(1994年~95年調査)によると、「過去に指導者から暴力を受けたことがある」と答えた学生は、アンケート回答者596人中、37.4%に当たる223人であったと報告されています。この報告の中で、見逃してはならない点は、過去に暴力を受けたと回答した学生の約75%が「将来、指導者になったとき、『殴る』あるいは『殴るかもしれない』と答えていることです。これは、「負の連鎖」とも言えることで、こういった状況に対しても、しっかりと何らかの方策を立てていく必要があると思います。そういう意味で、指導を受ける側の資質の向上も併せて考えていくべきだろうということです。
三つ目の視点は、保護者へのアプローチも含めた、スポーツを「見る」「支える」側の視点です。これも指導者の資質能力の向上について検討を加える際に大切になると思います。    
次は、いろんな議論や検討、方策の実行などを通して、どういった将来像が見えたらいいのか、個人的なビジョンについて述べたいと思います。
1番は、「社会の目」というものがキーワードです。子供たちや社会人たちを対象に指導するということ、そのこと自体、社会的行為なんだということをしっかりと共通認識すべきだと考えます。社会全体の目が指導現場にしっかりそそがれていくことで指導現場の閉鎖性は開放されていく可能性があると思います。そういうシステムなり方策について考えるべきだということです。
それから、「質の向上」。これはただ単に養成方策とか向上方策を考えるだけではなくて、どういう指導者が「質」が高く「レベル」が高いのかということについても検討し、共通認識化すべきだと考えます。そのためには指標づくりも必要です。指標に基づいて指導者の資質能力「質」を共有化し、保証していくようなシステムも必要だと思います。
それから、質の高い指導者が活躍できる場、そういったものを創出していく方策も併せて考える必要がある。
1枚めくっていただきまして、それでは、具体的な方策にはどんなものが考えられるのか、個人的に考えていることを説明します。私は、この議論に当たって、危機的状況にあるという大臣のメッセージがあるわけですが、スポーツが歴史的な危機的状況にあるというこの認識が共有されているのかと思っています。スポーツ界の中から見た認識と、一般の人たちから見た認識と、それから国際的な視点で見た認識などの視点から、指標をつくって、今の危機的な状況をしっかりと把握する必要があると思っています。
2番目は、日本のスポーツ、あるいはコーチング活動を社会的な活動としてとらえた場合、日本のスポーツが健全な状況にあるのかどうかという調査をシステムとして行っていく必要性についてです。
資料1をめくっていただきますと、ASC(Australian Sports Commission)が行った調査があります。ASCは、プレーヤー、コーチ、オフィシャル、アドミニストレーター、いろんなところの人たちに、どういう状況や要因がスポーツの健全性や倫理を脅かすのかということを調査しています。アンケートの結果には、スポーツの倫理とか健全性を脅かす主な要因が示され、それぞれの深刻度が「高」、「中」、「低」で表示されています。このようなスポーツ活動の健全性に関する調査というのも定期的にやっていく必要があると思います。
課題3は、指導者の暴力問題などスポーツの健全性を損なうことによってスポーツ界が受けるダメージの程度を、指標を作って定点的に観測し、モニタリングしていく、そういう施策が必要なのではないかということです。
課題4は、指導者養成事業、あるいは認定事業、あるいは指導者そのものの質の保証というようなシステムの構築が必要ではないかという提案です。そのためには、質の高い指導者の基準づくりや、その人たちの活用に関する制度の検討も必要になると思います。
課題5は、指導者の再教育、再研修に関する提案です。資料には、クロスコーチングのOJTプログラムということを書きましたが、私が生涯一番大変だった指導は、英国の知的障害の子供たちをコーチングしたときです。タグラグビーの大会を目指して一つのチームを預かりコーチングをさせていただきました。これは私にとってとても貴重な経験でした。私の言葉もそうですが、これまで経験したことのないようなストレスを感じました。しかし、子供たちは、うまくいくと喜びます。勝てば大喜びして抱きついてきました。スポーツを楽しむことはみんな同じなんだなと改めて感じました。スポーツを通した異なった分野の体験をプログラム化することはとても重要なことで、これは様々な研修プログラム、教育プログラムのさらなる改善あるいは向上に必要だと思います。
6番目は、世界で活躍できる、世界に求められるコーチを育てるということです。冒頭、福井副大臣からも同じような御発言があったと思うんですが、やはり世界から、日本の指導者、是非来てくれよと、プログラムと一緒に、それを教えてほしいというような指導者を育てていくという、そういう方策と意志が必要だと思いました。
どうもありがとうございました。(拍手)
【尾縣委員】じゃあ、ちょっと準備の時間をお借りしまして、私は今までずっとコーチングを何十年もやっておりまして、今はマネジメントの方に移っております。日本陸上競技連盟で専務理事をやっておりまして、いろいろな今までの経験から、具体的にお話をさせていただきたいと思います。
では、始めたいと思います。私が頂きました課題というのは、スポーツ指導を行うに当たり必要なスキル。一つはスキルです。そして関係団体の連携。もう一つは、育成した指導者の有効活用、そしてスポーツ発展国であるドイツの指導者の育成の現状と課題ということでお話しさせていただきます。
一つ目ですが、まずPDCAの遂行ということで、これは、PDCAというのは、皆さん御存じだと思いますけれども、事業の生産管理などに使われている手法です。計画、実行、評価、改善というこのサイクルを回すことで、より効率を上げていくということです。これはコーチングの中では当たり前のことのように取り上げられております。
ここで大切なのは、改善、計画、実行というのは主観的にも行われるものですが、このチェックというものは、しっかりと冷静に、しかも客観的にチェックができないと、うまく回っていきません。そこで、このチェック、すなわち評価のところに科学を導入するということが非常に大切なことになります。ここで挙げていますのは一例なんですけれども、ボルト選手であるとか、日本の塚原、江里口という一流選手の100メートルのスピード曲線になります。
ここで、これはチェックなんですね。例えば江里口君というのは後半、一気に下がっているという評価をしたとします。そうしたときに、改善があって、計画があって、実行があって、これがまたぐるぐる回っていきます。これをオリンピック、あるいは国際レベルのところでは、マルチサポートを受けて、今回のロンドンでも入賞しております。走順を決めるときに、それぞれの選手のスピード曲線というのは非常に参考になりました。これを参考にしてオーダーを決めたということになります。あるいは、今回、桐生選手という高校生が10秒01で走りましたが、そのときのデータは、陸連の科学委員会がしっかりとっておりますので、それを評価として、今後のこのPDCAサイクルの中でいかしていきたいと考えております。
ただ、それ以下のレベルになると、なかなかこういった科学を導入できないような実情がございますので、指導者がPDCAを自分のスキルとしようと思ったときには、大学等の連携で対象を広げていくということが大切になってきます。
二つ目は、リスクマネジメントです。いろんなリスクがありますが、ここでは事故に焦点を当てます。事前に事故を防ぐ、あるいは事故発生後の対応というのが非常に大切になってきます。ここで二つの例を挙げたいんですけれども、一つはマラソンの例です。これは指導者ではないんですけれども、ある審判の方がいまして、その目の前で大衆の大型マラソンで1人の方が倒れてしまいました。そのときに、助力を、手を差し伸べると、その選手は、選手といっても市民マラソンランナーです、失格になります。どうしたらいいんだってなったんですね。普通は人命なんです。でも、もしかしたらこの選手は立って今から走り出すかもしれない。そういうリスクのマネジメントができないんです。
もう一つは、昨年、痛ましい事故がありました。広島で、投げたやりが体に刺さったという事故がありまして、リスクマネジメントはどうしたらいいんだ、ということで陸連にも問合せがありまして、急遽(きゅうきょ)そういうものを作りました。それが、陸連で作った市民マラソン・ロードレースの運営ガイドライン、これは2013年4月1日に作ったものです。そしてこちらは、やりの事故を受けて、すべての種目に対応できるように、安全対策ガイドラインを作りました。
これは、裏返せば、本当にリスクマネジメントに関する教育を受ける場がないということなんです。機会が少ないんです。ですから、事が起こってからばたばたしてしまいます。あるいは、参考にするマニュアルが本当にありません。これを見ればわかるというのがないんですね。日本は、こういうリスクマネジメントに関する教育が非常に遅れています。
もう一つ、最も憂うケース、これは訴訟になった例なんですけれども、これも陸上競技の例で、棒高跳びで転落しました。そして重い障害が残りました。これは顧問の教諭に責任があるということで、1億1,500万円の賠償を県に命じました。これは、公立の先生、教員であったので、こういう形で賠償責任は県が負ったんですけれども、地域クラブの指導者の場合はどうなるんでしょうか。これは恐らく個人の問題になってくるのではないかと思います。
そうしたときに、こういうのが1例でも出たときに、怖くて指導ができないんです。指導者で、けがをさせてしまって、賠償責任、自分が責任をとらないといけないとなったときに、本当に指導が怖くなります。ですから、クラブの指導者を守る手立てというのが必要になってくると思います。これは指導者保険の徹底であるとか、あるいは法の整備というのが必要なのではないかと思います。
そして三つ目は、リーダーシップです。自分の考えや指導内容を相手に正確に伝えることができる。そのためには、コミュニケーション、プレゼンテーション能力を高めることが必須になってきます。日本では職人技と言いますけれども、背中を見て育つとか、師匠の技を盗むということをよく言われますけれども、これはもう時代錯誤で、本当に時代遅れだと思っています。こういう考え方がありますから、日本ではなかなか自分の意思を伝えるということについて指導者が学ぶ場がありません。JOCナショナルコーチアカデミー、私も11日間にわたって受けましたけれども、ここではディベート、プレゼンというのを徹底的にやらされました。非常に役に立っております。
あるいはサッカー協会でもこれは取り入れられていると思います。ですからコーチの能力を高めるためには、コミュニケーション、プレゼンテーションの能力というのは非常に役に立ちます。もしうまく言葉で伝えられれば、暴力を振るうことも少なくなると思うんです。
続きまして、連携の話に移りますと、一つ提案というか、私が考えていることは、大学、JSC、JOC、日体協などが連携して作る指導者育成の場が必要であると。それぞれでやっていますけれども、本当にここが一致団結してやっているかというと、これはクエスチョンなんですね。本当に日本は狭いですから、限りある人材、あるいは限りある施設を活用していかないことには、人材を生かすことはできないと考えます。すなわち、国内の体育系大学間の連携というのは、これは非常に大切だと思います。
そして、その講義の内容を充実させようと思ったときには、JISSであるとかトレセンといった本当のトップの科学の場であるとか、あるいは常にトップアスリートが活動しているトレセンとの連携ということで、ここで教育、指導の実践をやっていかないといけないと思います。
あるいは各NF、JOC、日体協の連携も大切です。講師の派遣であるとか情報の提供というのは、こういったところから得られると思います。そして受講機会の拡大ということで、eラーニング。これはアメリカでは年間、陸上競技では3万人の人たちがインターネットを利用して基本的なところの指導者育成をやっております。
ちょっとこれは自分のところの紹介になってしまいますけれども、ナショナルリーディングコーチ養成プログラムが今年度から筑波大学の大学院で行われております。これはトップレベルの指導者養成を目的とした新プログラムで、文科省のスポーツキャリア大学院プログラム事業の成果として行われております。25年度は社会人選抜5名程度、条件としましては、コーチングスタッフとしての国の代表経験(監督及びコーチ)、JOCナショナルコーチアカデミーを修了、中央競技団体公認の指導者等々の条件があります。あるいは競技者としてフル代表経験があるということで、これはJOCナショナルコーチアカデミー、あるいはそれぞれのNFとの連携ということで、指導者を育成する場になっています。
そして、次は活用です。育成した指導者の活用ということで、スポーツ基本計画、立国戦略には、広域スポーツセンターであるとか総合型地域スポーツクラブで元アスリートを指導者として活用するとうたわれております。これには指導者の育成が条件となると思います。
そして今、日本陸連でJOCナショナルコーチアカデミーの修了者が13名いますが、ナショナルコーチ、あるいはJOC専任コーチとしての受給者は4名となっています。これが多いか少ないかは人によって考え方が違うと思います。
あるいは日体協のコーチ、上級コーチで1,046名います。サッカーは5,011名います。国体の都道府県チーム監督2名に資格を義務づけるということで、47都道府県あって、2名だったら94人なんですね。陸上の場合、10分の1がこれを活用しているけれども、それが割合としていいかどうかというのも、また疑問です。
取得することに大きなメリットを感じられないというのが現場の意見なんですけれども、しかしながら、逆に言いますと、これを義務として考えるのではなくて、すなわち資格講習を受けないと何かできないなという義務として考えるのではなくて、指導するに当たり、この講習を受けたい、この人の話を聞きたいという本当にすばらしい内容にすれば、黙っていても来るはずなんです。ですから、これは我々の任務かなと思っております。日本の講習会を充実させるということですね。
それから、今の話の延長ですけれども、取りっきりの制度は魅力がないために、何らかの差別化を図りたいというのは、やっぱり頭の片隅にあります。一つは、学校での運動部活動指導者の件なんですけれども、今、部活動指導者の不足ということが言われています。日本では、それを補うために外部指導者の活用を推進しておりますけれども、その外部指導者の方々の問題も明らかになっております。ここで簡単な資格を義務づけるというのも一つだと思います。
次は、陸上競技連盟の話ですけれども、小学生陸上の都道府県予選出場者は、16万5,000人です。全国大会は1,034人なんですけれども、この全国大会の引率コーチに指導者資格を義務づけることで、より小学校段階の指導を充実させられるんじゃないかと考えております。
これだけの指導者がいますので、報酬を与えることは、これは無理です。しかしながら、やりがいであるとか、その立場というのを尊重する必要はあると思います。オリンピックで勝たせたコーチだけがちやほやされる時代ですので、そうじゃなくて、例えばオリンピックで入賞した選手の小学生時代の指導者は誰なんだと、陸上に導いた人は誰なんだということで、きっかけをつくった指導者の表彰というのを日本陸連は昨年から行いました。競技者育成賞というのを作りまして、国体で表彰するという形をとっております。
そして、活用のもう一つです。これはまだ計画段階ですけれども、日本陸上競技連盟では、地域を幾つかに分けて、そこにコーディネーターを置きたい、しかも何らかの資格を持った人を活用して、タレント発掘、講習会のコーディネート、講習会講師をやるとか合宿の支援、県陸協との連携、運動部活動指導などを役割とします。このために、連携では、日本陸連、体育・教育系の大学、都道府県陸協、教育委員会、NTC等の連携を密にしながら、もちろん有給でやっていきたいという構想を持っております。
そして最後ですけれども、ドイツの教育・スポーツ現場の現状ということです。ドイツは地域クラブを基盤に発達してまいりました。ただ、最近になって学校スポーツへ移行しております。本当に皮肉なものです。日本がまねをしようとしたドイツなんですけれども、逆になっております。これはなぜかというと、学校半日制が全日制になりつつあるからです。半日制のときは、午後は地域スポーツクラブで活動していました。今、聞くところによると、加入率30%ぐらいで、その結果として、運動能力の低下が言われています。日本と同じように。学力の低下も言われている。そして共働き家庭が増加したということで、是非全日制にして、午後も子供を預かってくれということになっています。
午後に何をやるかというと、宿題、スポーツ活動、文化活動等々なんです。このスポーツ活動の指導は、ほとんど地域クラブの指導員がやっています。ここは後で読んでいただきたいんですけれども、エッセン市の例を挙げております。
そして次は、ドイツ陸上競技界の現状と課題ですけれども、これは実際にヒアリングをしてきた結果です。全日制へ移行し、そこで強化育成をクラブ制度だけでは維持できない状況になっているということです。二つ目は、指導者の世代交代の時期。ドイツは、非常に強い時期がありましたが、その時期の指導者が高齢になって、ノウハウの継承が必要であるということが課題になっています。あるいはクラブの有給コーチの減少。これは日本と同じで、膨大な施設管理費用が要ったり、スポンサーからの収入が減少するので、クラブの有給コーチは減少しています。
次も日本と同じなんです。ライセンスのない指導者が強い選手をいっぱい育てている現状があります。そうすると、ライセンス制度の運用が難しくなるということがあります。ちなみに、ドイツのクラブのコーチの約60%はコーチライセンスを取得しております。
次です。簡単に言いますと、トップの指導者、ドイツ陸上競技連盟の有給のコーチは27名いまして、その下の育成選手の指導はほとんどボランティアコーチ、無給コーチになっています。
コーチ取得のための講習、ドイツと日本の比較になりますが、日本は主な講習であるナショナルコーチと日体協のコーチの講習時間を挙げてまいりました。ドイツの場合は、レベル1、レベル2、レベル3、ナショナルコーチと積み上げていきますが、恐らく陸上では有給で働いているのはすべてナショナルコーチです。
ここで、日本と比べて違うところは何かというと、2年に1回の更新に30時間、30時間、40時間の時間を費やしているということです。ですから、常に新しいものを頭に入れて、新しい指導をしようとする心構えがあるということになります。
そして、ナショナルコーチは国家資格、ケルンでの2年間の講習を経て、国家試験を受けてパスしないとなれません。そういう厳しさがあります。あるいはドイツでは専門の修士課程を修了すれば、ケルンの2年間に該当するということで、国家試験を受ければ、ナショナルコーチになれるという制度があります。
ドイツと比較しましたところ、ドイツでは「日本の学校体育制度いいですね」と、私は実際に言われました。逆に我々は、「ドイツの制度はいいですね」という。ですから、結局は本当にヨーロッパ型は理想であるけれども、日本のいいところもあるので、うまく複合して、日本独自のものをつくる必要があるんじゃないかと。もう世界の情報は十分に入っています。本当にたくさんあるのですけれども、じゃあ、それをどのように日本型に変えていくかというところが課題かと思います。
そして最後、陸上競技部が中学で設置されている割合を見ましたら、福島87%とか、このような数字が出てくる。少ないところでは、山口県は10.6%なんです。日本でこれだけの差があります。私はこのデータを見たとき驚いたんですけれども、87%ある福島のそれぞれの中学校で指導している方はどういう方なんだろうか、管理だけやっている顧問なのかという心配があります。片や、少ない地域での心配は、陸上部がほとんどないのに、陸上専門の人は何やっているんだろうかなという心配があります。それぞれで様々だなということです。
学習指導要領、私も関わりましたけれども、総則に部活動が取り上げられていて、学校教育の一環とうたわれているんです。学校教育の一環でありながら、本当に学校の運動部活動に重点を置いているのかなという疑問もたまに感じることがあります。
あとは、スポーツ基本法、この赤で示しているところは、私が今日、話したようなことと関係のあるところです。次はスポーツ立国戦略でも関係のあるところを赤で示しております。これを見ると、本当に立国戦略もスポーツの基本計画もすばらしい内容になっておりますので、これが本当にきちっと実践できれば、国策としてのスポーツの推進というのはできるんじゃないかと思います。
以上です。(拍手)
【勝田座長】ありがとうございました。
では、続きまして眞藤委員からお願いしたいと思います。
【眞藤委員】失礼します。眞藤です。よろしくお願いします。
今回、与えられたテーマはこの三つです。指導者資格制度の充実、研修内容の最適化、指導者ネットワークの構築ということなんですけれども、その際、まず私自身が考えたのは三つあります。一つは、暴力を用いての指導をしない、させない、そして許さない環境をどのように作り出せるのかということ。二つ目は、何よりも子供、選手の将来を見据え、高い視座で選手の今を大事にした指導ができるようにするためにはどうしたらいいのかということ。そして三つ目は、選手の大きな夢をかなえるべく、よきパートナーでもあり導き手としての指導者としての在り方についてということを、まず念頭に考えながら、今回のこの三つのテーマを考えてみました。
今回のこのテーマは、そうは言っても三つは互いに関連し合うものなので、少し話すのも分類が難しくて重複するような形になるかと思いますけれども、御容赦いただければと思っています。
まず一つ目のテーマに入る前に、一番考えておくべきことは、目指すものを明確に持っておくことだと思っています。例えばサッカー協会では今、皆さんにお配りしている青いものですけれども、これですが、そこには理念、ビジョン、そして2005年宣言の約束が載っています。この目標に向かって、仲間が、指導者がそこに向かって何かをしていこうというような形のものがここにあると思うのですが、その目標に向かって、短期、あるいは中長期のロードマップを作成していく必要があり、理想を求めながらも、やはり現実の課題って難しいものがたくさんあるといったときに、立ち返るところがここの理念になるんじゃないかなと思っています。これを見直して、もう一回現実の難しさから、新しいエネルギーを持って、そこを打開していくような形が必要じゃないかなということで、皆さんに資料をお配りいたしました。
そこから、この三つのテーマに入っていきたいと思っています。最初は、資格制度についてです。この内容で、この三つを挙げていますけれども、すぐにやらなければならないこと、短期にやっていく必要があることは、一つは、暴力を用いての指導をしない、させない、そして許さない環境をつくるためにも、やっぱりプロモーションというかキャンペーンは大事だと思っています。既に体操協会等はポスターを出したりしていますけれども、各競技団体に任せるのももちろんよいんですが、国がやっぱり大々的に、後ろの資料の2にあるようなものを作成して、本当にインパクトのある言葉を用いて、常に目に触れるような工夫をしながら、現場の指導者がそういうことを起こさないような許さない環境をつくる中で、指導者に向けての啓発につながればと考えています。もちろんホームページ等も活用していく必要はあると思いますが、やはり日常において、目に触れていくことがすごく大事かなと思っています。
時には体罰も必要だというふうに考えている方はたくさんいらっしゃいます。そこにどうアプローチしていくかということは、私自身も今、サッカー協会でいろんな課題にぶち当たっていますけれども、やっぱりその中で、スポーツの本来の意義に立ち返って、時間をかけてでもこの三つの提言をやっていくことが大事なのかなと思っています。
その中で、資格制度の充実でありますけれども、一つに、本来のライセンスとは別に下位ライセンスの立ち上げ・充実をサポートできないだろうかと考えます。その中で、まず一つは指導者に頼らずとも展開できる、先ほどありましたeラーニングです。こうしたものを立ち上げてはどうかなと思います。こちらはイングランドの取り組みなんですが、同じような形で日本もできないかなと。大人や学生、あるいは保護者向けに、例えば文科省が作成をして、指導の目覚めを促し、本当に暴力を用いての指導はしない、させない、許さない環境を作り出す多くの仲間をつくっていくことが大事かなと思っています。
これは3分ですけれども、すごく作り込んでいて、俳優さんが演技をした中で、それをクリックして、30~40分でできるようなものを作っているんですけれども、こういうような取り組みで広げていくことってできないだろうかなと思っています。
そして、そういうことの中から、指導への目覚めを促し、上位ライセンスへの誘導もできるのではないかなと思っています。これによってスポーツに対するよい理解者を増やすことになればと思っています。代表強化が急務と言われがちですが、一部の優秀な選手を選んで強化するだけなら、やっぱり限界があります。そういう中で、総合的に取り組み、大きくしていくことが大事なんですが、その中で、スポーツの発展を考えたときに、やはり子供たちの年代が外遊びを通してスポーツと出会い、できるような仕組みを我々大人が作り出していけたらなと思っています。
サッカー協会では、独自のプログラムで展開していますけれども、これは特定の競技団体だけじゃなくて、共通のプログラムをここで作り上げて、開発して、全国展開できないかなと思っています。その担い手は、大学生かなと思っています。実際に大学生が地域で子供たちと触れ合っている事例をたくさん見ますけれども、そういうものを展開できたらなと思っています。
これもサッカーなんですけれども、裾野を広げながら、どんどん高みを目指していくということが大事かなと思っています。どんな施策をするにしても、最終的にはそういう人を育てていくための指導者やインストラクターの役割は大きいと思います。だからこそ、各競技団体が独自でプログラムを組み、そのためのインストラクターを持つことを目指す方向で取り組む必要があるのではないかなと。そのような促し方ができないだろうかなと思っています。なぜなら、やっぱり量の確保と、理解者、仲間を増やすことということがすごく大事なので、そういうところに取り組んでいったらどうかなと思っています。そしてそのときに、自競技の発展をトータルでデザインしていくこと、独自性を尊重していくことが、つくり上げていくものにつながっていくのではないかなというふうに思っています。
そのプログラム作成に当たっては、まずは各ライセンスの養成目標をしっかり立てることだと思います。自立しているところは、更に発展させて取り組むことを促し、これから取り組もうとしている、取り組んでほしい競技団体には、何らかの支援ができる体制ができたらと思っています。その辺の具体的なことはわかりませんが、例えば補助金なり、あるいはプログラム作成についての研修会をやっていくなりするようなことじゃないかなと思っています。
ここでちょっとドイツの例を出しますけれども、その中のライセンス制度なんですけれども、ドイツは上を、上・下はないんですけれども、プロのライセンスを目指すコースがありながら、段階を踏んでやりながら、でも自分の指導対象に合わせたライセンス講習会というのもあります。資料の後ろの方には、イングランドのものも載せていますけれども、選択して受講できる仕組みもできています。そういうようなものも、作り上げていくときに、その競技団体の目指すところに合わせて作っていけたらなと思っています。いずれにしても、自競技の発展のために望まれるピラミッドを構築して、よい指導者を増やすことにつながっていけばと思っています。
それで、2番目の柱です。研修内容について述べたいと思います。まずは目指したいものからやっぱり逆算して積み上げていけるような体系づけが大事だと思っています。そして、その体系的・普遍的なものは、ライセンス講習内容に組み込まれていくと思いますし、また再教育、リフレッシュ研修としては、適時性や強調トピックを入れながら、学び続ける環境をセットすることが大切かと思っています。
例えば今回の暴力根絶に向けての取り組みは、やっぱりそういう強調トピックになると思いますが、これもすぐさまライセンス講習の中に入れていく必要があると思っています。サッカーの方でも、今年度も組み込みました。そしてリフレッシュ教材も今、作成中です。そうしたことをやっていく必要があるかなと思っています。
いずれにしても、学ぶ意欲をしっかり引き出しながら、多くのことを学び、現場で目の前の子供、あるいは選手に合わせて指導できるようにしていけるようなプログラムを作っていけたらなと思っています。
最後の三つ目の柱です。ネットワークの構築です。ちょっとここは難しかったんですけれども、やっぱりここはまずは多くの仲間が同じビジョンで同じ方向性で力を結集していくことが大きな力を生み出すことになると思います。そのベクトルの共有が様々な方法でなされていくことが鍵ではないかなと思っています。
具体的には、そうした中で、登録メリットにつながると思いますが、競技団体から情報を提供できる、そして有資格者とつながりを持つような形というのを作っていく必要があるかなと思っています。
そして再教育の重要性です。取りっきりではなくて、その中で自らが学び続けられるような環境をこちらが提供できるようにすることで、受け身ではなくて、主体的に仲間と交流しながら、日々悩んでいることや困っていることの解決の場を作り出すことは、その指導現場の閉鎖性を取り除くことにもなるのではないかなと思っています。
振り返る機会を作るためにも、身近なところで仲間が集う講習会を持つことは大切だと思います。しかも質の高い講習内容が計画的・継続的に提供できるようにしていくことが大事ではないかなと思っています。そういったときのインストラクターというのが鍵だと思っています。先ほどから言っていますけれども。
そして、仲間がつながっている感を持ってもらえるようにしていくことが大事じゃないかなと思っています。これはアイデア出しですけれども、リスペクトF.C.というのをサッカー協会でやっているんですけど、こういうようなもののホームページの開設もあってもよいのではないかなと。それでつながっているところ、仲間というところを作り上げていったらいいかなと思いますし、コーチスクエア、これは日体協でやっておられますけど、自競技で取り組めればもっと効果的にいろんな広がりができていくのではないかなと思っています。
あと上位ライセンス取得者の活用を考えてみてはと思っています。ここはチューター、メンター、モニターと書いてあるんですけれども、チューターというのは、前期講習会、後期講習会の間に指導実践を自分のところに帰ってやっていくときに、それを見てもらえるような人とか、そういうようなことで、上位ライセンスの人たちにそういう役割を持ってもらう、あるいはこういう人たちがそういう研修をするような集まりも作っていくような形でネットワークづくりができたらなと思っています。
今、そういう中で、サッカー協会ではS級、A級の上位取得者の人たちに、C級、D級のコースを増やしていくためのインストラクターになってもらうような講習会をしようと思っていますし、そうした人たちがもっと大学や専門学校へ展開して、指導者への誘導ができたらなというふうなことを考えています。そういう中で、下位ライセンスの講習を多く開催できるようにしていくことで、多くの仲間づくりができたらと思っています。
最後に、そうした育成年代の指導者の地位の向上のためにも、何らかの形で表彰ができたらなと思っています。このブルーペナントというのは、今日持ってきましたけれども、こんなもので、代表に入った選手から聞いて、育成のところでどの指導者にお世話になったと、そういったときに、その人にこれを贈るんですけれども、ちょっとまだサッカー協会としては贈りっきりなんですが、これを何かアワードじゃないですけれども、そういうような表彰で、育成年代だから、あるいは大人の指導をしているからいいとかじゃなくて、どの年代であってもやっぱりいい指導をしている指導者が認められていくような形が作れたらなと思っています。
こうしたものができたらなということで、今回のこの三つのテーマを考えさせていただきました。ということで、ありがとうございました。(拍手)
【勝田座長】  どうもありがとうございました。
続きまして、図子委員、よろしくお願いします。
委員の先生方には一通り御発表いただいた後に、再度、ここを強調したいとか、あるいはここのところを補足したいとか、簡単に振り返っていただく時間も少し得たいと思います。それから最後に副大臣、それから政務官にも御感想、御意見等を頂いて、今日の会議を締めたいというふうに思います。非常に短い時間ですが、それぞれの御発表においてキーとなるようなところをもう一回、お考えになっていただければ有り難いと思います。
【図子委員】それでは、筑波大学の図子です。よろしくお願いいたします。
私は筑波大学の陸上競技部の監督をしておりまして、毎日学生と一緒にグラウンドに出ています。それからまた大学のコーチングとか、指導者をつくる授業、アンダーもマスターもドクターも持っておりまして、実質的に指導者を筑波大学から輩出している当人だという観点から、お話をしていきたいと思います。
それで、体罰を根絶する二つの方向性というのをちょっと私なりに考えて、先に結論みたいなものを言いますが、まず、一つは今から指導者になる人材ですね。つまり、小学校ぐらいから競技を始めて、一流になっていって、シニアになってリタイアする、そしてそこから指導者の道を歩むとすれば、今、競技を行っている最中の人間たち、つまり大学・大学院でいいますと、指導者の専門教育課程、つまり大学の4年間、その後のマスターの高度教育の2年間、もしかするとドクターもありますが、今から指導者になる人材に教育をきちんと行って、暴力、体罰を使わないコーチング、あるいは指導をきちんとやらせるような人材をつくるということです。
もう一つは、現在、スポーツの道を、もう既に指導者として歩んでいる人たちについてはどうすればいいかというと、一つは、先ほどから先生方がおっしゃっているような形で、対症療法的に監視システムや調査システム、現在もたくさんやられていますが、罰則、取締り等をやるということですね。それから、そういうことが行われたときに選手を保護できるようなシステムをつくる、そういったものを学校や教育委員会やNFなどでやるということです。これによって、一つは防げる。現在、スポーツ指導者の道を歩んでいる人材の犯している間違いを是正することができるということですね。
もう一つは、先ほど来から先生方言っているように、再教育システムをきっちりと作る。それからDVDを作成したり、政府広告などによって、国民全体の教育とか、絶対してはいけないということをきちんと普及させるということが重要だと思っております。
それからさらに、体罰容認というのは、日本の歴史や文化とも関連があるというふうに、たくさんの新聞等にも書かれておりますから、日本国民全体の意識を変えていく、つまりスポーツ指導者が真ん中におりまして、保護者やマスメディアや地域社会や地方公共団体等の、もっとほかにもあるかもしれないんですけれども、こういう人たちが指導者をちゃんと見ているというような姿勢をつくりまして、国民全体でそういうものをなくしていくという方略をどうにか考えるということがすごく重要だと考えております。
それで、まず私は指導者をつくっている立場なので、第1の方略、つまり今から指導者になっていく人材をどのように養成していくかということですね。それを考える前に、まずはスポーツ指導者は何を行っているのか、つまりコーチはどういう仕事、行動、思考を体系化していっているのかということをいつも考えて、それに見合った資質や能力を高める授業を展開しようといつも思って、やっております。
それで、どういうことをやっているかというと、端的に言いますと、人、組織や情報やお金や物をうまいこと動かしながら、パフォーマンスを上げるための組織を作ったり、様々なことをやっているということです。
それからもう一つは、例えば技術トレーニング、技術練習をするためには、アーティスティックな能力も必要ですし、それに見合った科学的なものもいろいろと使わないといけないし、あるいは今回の暴力のような形で、教育者的な視点も持っていないといけないし、先ほど尾縣先生が言っておられましたように、法的なこともある程度、知っておかないと、自分を守れないというようなこともありますし、スポーツ医学的な視点も必要だと。それから、お金を管理、組織を管理する契約者的な視点も必要だというたくさんの能力が本当はスポーツ指導者には必要だということなんですね。なので、まずこれを理解する必要があるということです。
それで、更にコーチの中で起こっていることと、選手の中で起こっていることと、もう一つ重要なのは、コーチと選手の相互関係性のところも一つの非常に重要な要因になってくると考えております。
そういうことを考えていきますと、コーチはどういうコーチング行動をとらないといけないのかというようなこと、これは授業でやっているんですが、まず一つは指導行動という、これは皆さんもよく御存じで、コーチ、指導者がやっていることですね。つまり専門種目の知識や経験やスキルを、高いスキルを持って、例えばサッカーだったらサッカーを高度に教えられる、陸上競技だったら陸上競技を高度に教えられるということ、そういったことは非常に重要だと。指導行動をきちんとやる。
それに伴って、トレーニング、一般トレーニングの基本的な知識とかスポーツ科学の知識とか、もっと後でちょっと出てきますが、問題解決型の思考がちゃんととれるようになれば、非常に指導行動自体はプロフェッショナルにできるようになるということで、そういう授業を一つは展開しています。
もう一つは、ここが非常に重要で、育み育てる行動ですね。これは指し示し導くという部分ですが、育成行動という行動基軸です。これは、人間として一流選手になっていく過程で、競技力がつくと同時に人間力もつけないといけないということなので、それをきちんと行動としてコーチはやらないといけないということです。そうなると、ここに必要なものというのは心理学的な知識や経験やスキル、コミュニケーションの必要性、カウンセリングとか教育学的なものも必要だし、自分の感情をコントロールするということ、そういったことをどうすればいいのかみたいなものも必要になって、こういったものをきちんと教えれば、育み育てる行動自体をきちんととれる指導者になれるということです。
あと、次に必要なのは、事故防止・安全対策行動がちゃんととれるということです。これも非常に重要で、スポーツ医・科学的な知識や経験、スキルがある程度あって、しかも救命救急に関する知識等があれば防げるものもたくさんあるのではないかと思われます。それは体のところなんですが、もう一方では、今回の事件のケースもあると思うんですが、何かを言ったときに、ポジティブにとらえられる選手もいる一方で、すごくネガティブにとらえて、それがある種の危機状態をつくり出すというようなことも考えられますので、言葉一つとっても、心にどういう影響を与えてしまうのかというような臨床心理学的な心への安全対策とか事故防止対策みたいなものもある程度、知って、それを行動に移せるということが非常に重要だということです。
それからあとはマネジメント行動ですね。これも非常に重要だし、トップアスリートのコーチになればなるほど、国際性に対応できる語学や他文化への理解や日本文化への深い理解、これがないと、諸外国の方が、日本人だなということで、独自の話をしてもあんまり役に立たない場合がありますので、日本文化への深い理解と国際性に対応できる行動みたいなものが要求されるということです。
というようなことで、かなり多面的にコーチング行動をとらないといけないというのが、今、望まれているプロフェッショナルな専門職業人としてのコーチ、つまりスポーツ指導者の在り方だと考えております。
それで、そういうふうなことを考えますと、先ほど尾縣先生がちょっとお話をしていましたが、こういうクラフトマン的な、職人、つまりアーティスティックなクラフトとしての、自分がすごく、何かやっていて強いから、そのままその競技を教えると、うまくいくというケースもやはりスポーツの世界ではあります。そういうものには、先ほど言ったこの五つのコーチング行動はとれません。つまりプロフェッショナルな専門職業人としてのスポーツ指導者というのを、大学、あるいは大学院、それからNFなどがいろいろな訓練とか再教育をしていますが、そういうところで必要な指導者としては、こちらのプロフェッショナルな能力をつけてあげないといけないということです。
筑波大学の体育専門学群は国立で二つしかない体育の専門学群ですけれども、そういったところでは教育制度の中で体系的な手順にのっとって、この五つのコーチング行動の理解を促して、それをきちんと使えるように学ばせて、プロフェッショナルをつくり出すというような作業をきちんとやるということがすごく重要になってくるのではないかと思っています。
それで、もう一つは、その五つの行動はあるんですが、大まかには、指導行動というのと育成行動という二つの行動基軸、つまり競技力というものに対してする行動、それから人間力を向上させるということに対してする育み育てる行動、この二つの行動が非常に重要だと考えています。選手とチーム優先、アスリートファーストということを考えますと、当然、競技力だけを高めるということでも問題がありますし、人間力も同時に高めないといけないということなので、勝利と人間力の双方を高めるコーチングを目指す必要があるのではないかということを考えております。
それからもう一つは、選手は成長するということですね。初心者から中級者になって、そして中上級者になって、上級者になっていくという過程を選手やチームはとります。どういうことかというと、初心者の段階では指導行動の基軸と育成行動の基軸、このモデルはリーダーシップ論の、1966年に出た理論なんですけれども、これがすごくコーチングに合っています。どういうことかというと、指導行動基軸を横軸、育成行動基軸を縦軸にとりますと、初心者の段階というのは、何も知らないので、サッカーだと、サッカーの基礎を教えるという指導行動をきちんととれば、育成行動自体は、モチベーションもかなり高いので、うまくいくということです。
やがて、かなり能力が上がっていきますと、次は中級者の段階に選手やチームが移動すると。そこでは指導行動も、それから人間的にも少しいろいろな問題があったりするケースがありますので、育成行動も最大限にやるということ。
そのうちに選手たちはこちらに移行して、かなり中上級者になってくると、いろいろなことがもう分かってきますので、今度は指導行動は少なくして、質を高めて、ちょっと見守って、育成型のコーチングスタイルをとるわけですね。中上級者、大学生にもたくさんいるんですけど、すごく能力は高いですけど、自分をコントロールできないとか、うまく実際に心の、自分のコントロールができないとかいうのがあるんですけど、そういったのをきちんとコントロールして、競技力はかなり高いという選手には、育成行動をとれば、最後に人間力も競技力も高まる上級者への道が開けて、そこでは育成行動も指導行動も下げて、質を高めていくパートナーシップ型のコーチングスタイルをとれるようになったときに、選手というのは双方ダブルゴールを達成することができるというような理論なんですけど、これは非常に重要じゃないかなと思っています。だからいつまでもずっと教え続けるとか、なだめたり何とかし続けるとかいうことは、選手の発育・発達等を阻害することになってしまうというような考え方です。これはすごく私は重要だと思っております。
そういうことを考えますと、競技力と人間力というのはすごく重要で、競技力が上がれば人間力も上がるようだったらいいんですが、競技力ばっかりを上げようとすると、ややもすると勝利至上主義になってしまって、競技力だけを上げて、例えばアスリートファーストの姿勢を忘れてしまった指導者になると、自分が見ている3年間のうちに、とにかく強い選手をつくって、自分は有名になりたいみたいなことが起こり出すと、競技力ばかりになって、やがてドーピング問題が発生したり、早期専門化とか、ややもすると、バーバリアンアスリートをつくって、それがまたコーチになっていくとかいう悪循環をつくり出していますので、この二つのコーチング行動をきっちりとるということですね。いろいろなカリキュラムを見てみても、どちらかというと、指導行動はすごくあるんですが、育成行動が余り重視されていないというのが、一つの大きな問題ではないかと考えております。
それで、今回のいろいろな事件が起きるケースなんですけれども、ここの育み育てる育成行動の中に、褒めたり叱ったりする行動があるんですが、褒めるという行動は勇気と自信を与えるというプラスで、非常によくて、余りやり過ぎると、マイナスな、甘えの増長とか正確な判断が停止したりするんですね。叱るというのは、これはブレーキなので、反省や努力、改善を促す。やり過ぎると、萎縮、やる気が減少するというような、アクセルとブレーキの双方の役割で、プラス・マイナス両方ともあるということなんですけど、この二つをきっちりやらないといけないんです。この叱るという行動の本来の目的は、選手に考えさせて期待する方向への変化を促すということですね。目標に対して、エラーの修正ということなんですが、これが選手を叱る、その延長線上で、体罰をする、更に暴力で抑えつけるというようなことに至っているケースがかなりあるのではないかと思っております。
この叱るというコーチング行動の延長線上に、体罰が来ると考えますと、例えば叱るということでも、ここに叱ると怒ると書いてありますが、叱るというコーチング行動でも、自分が頭に来て、その選手が憎いという関係で叱るというのと、よくしてあげたいという修正行動として叱るというのでは随分違うということですね。そして何か叱るという行動を与えたときに、それを受けて努力・改善し、人間力が向上するという選手もいて、それはパフォーマンスが向上して、よかったなということになるんですが、これを、同じことをやったとしても、失望し、人間力が減退して、つまり危機的な状態に陥ってしまって、この延長線上に、もしかしたら命を落としてしまうようなことが起こっているということです。
なので、この叱るということのコーチング行動自体、非常にリスクを持っているんだということ。つまりこういうリスクを理解する知をコーチがどれだけ持っているかということが非常に重要で、これを知らないでやってしまっているというようなことがいっぱいあるんじゃないかなと思います。それが今の悲劇を招いている元凶になっているということなので、こういったことを知識として、知性として知っておくと、大分違うんじゃないかなと。つまり、そういうことを教えないといけないと思っています。
叱る際の注意事項みたいなものも、選手だけが悪いのではなく、その責任は自分にあるんだよというようなことも理解しながら叱るとか、全人格的に絶対叱ってはいけないとか、いろいろなことを教えますが、こういったことを理解しながら、叱るというコーチング行動は当然必要なんですけれども、とるかとらないかで、危険な状態に行くのか良好に行くのかというのは決めることになるし、同じことを言っても、そういうことが起こってしまうということを考えながら、叱るか叱らないかという判断をきちんととれる指導者を育成する必要があると思っています。
というようなことで、言いたいのは、競技力を上げるということもありますが、人間力、つまり育成行動をきっちりコーチングの分野の中に定着させるということが非常に重要になってくると思っております。
そして、競技力の方は、ちょっと時間がないので、ここはちょっと飛ばしますが、競技力向上のための、指導行動の中には、専門種目の、例えばサッカーだったらサッカーとか、バレーだったらバレーとあるんですが、それ以外に、サッカーにもバレーにもバスケにも共通するような非常に重要な意味でのトレーニング学があったり、様々なものがあります。そういったものをきちんと教育の過程で理解させるというのは、この指導行動をよりよくするためにもすごく重要だということです。
トレーニングの話とか、スポーツ科学がどのような状況になっているかということで、大学では、こういうところに全部授業が展開されているということです。それから、そういうものを使って、問題解決をブラックボックス化しないという、必ず現場で起こった問題はエビデンスベースで結果を出して、それは必ず言葉にできて、選手になぜだというのを伝えることができるようにしないといけないんだよというような話もしています。つまりコーチというのは、問題解決をするためのプロでないといけないというような話もしています。
トレーニングというのも、体力トレーニングでちょっと筋力トレーニングして、マッチョになったらいいんじゃないのみたいな考え方があるかもしれないんですが、これもパフォーマンス構造論や目標論や手段論や方法論、計画論ってたくさんの領域で体系化されているので、これら全域を理解することによって、かなり良好な問題解決ができるようになります。体系はこういうことになっています。
というようなことで、こういう五つのコーチング行動をとれるような人材の育成、あるいは再教育が非常に重要になるんじゃないかなと思っています。
あともう一つ、非常に重要なところなんですけれども、今のコーチング行動の話につながるのですが、この背景というか、もっとベースにあるのは、正しく適切な倫理観や哲学観をスポーツ指導者が持っているかということが更に重要だということです。これについては、筑波大学の体育系では、この体育・スポーツ指導者の倫理宣言というものを作っております。
まとめてみますと、一つは、個人の尊厳と人権を尊重しますということですね。相互の例えば信頼と尊重の関係を基本とした全人的な指導を行います。人権を尊重し、その侵害を許さない。問題や紛争を人権に配慮して解決するというような、この人権、これがすごく重要で、こういうことが理解できて初めて、暴力の話やハラスメントの話やドーピングの話に展開していくことができると思っています。暴力も絶対にやりません。ハラスメントもこういうことはやりません。それからドーピングを防止し、薬物乱用を根絶します。それから安全を確保し、事故防止を徹底します。それから、規範を遵守し、倫理観の醸成に努めますというようなことで、フェアプレーとか、こういうようなものをつくっていますので、こういったものをしっかりと、これから指導者になる人に教える、あるいは再教育するというのがすごく重要で、それができると、ここの上に乗っかるコーチング行動のベースとなる正しい倫理観や哲学観を強く持った指導者をつくっていくことができるんじゃないかなと思っています。
これは朝日新聞の5月12日の記事です。お配りした資料にはないんですけれども、推薦入試がたくさん入るような私立の大学3校の500人ぐらいにアンケートをとったんですね。それで、こういうふうに小、中、高の時代に体罰を受けたことがあるのかというと、「ある」33%、「ない」59%で、先ほどの1970年代と同じぐらい。それで、「ある」と回答した人に、体罰はあっていいと思うかというと、やはり73%が「いい」というんですね。それで体罰を使うのかというと、時によって使うと容認しているのが54%、半分ぐらいいるというのが現状だそうです。
それから、受けたことがないという人にとっても、体罰はあっていいかという問いに、57%、そして体罰を使うのかというと、42%ぐらいが使うと。これはかなりの状況で、これはまずいんじゃないかなと思っています。何でこういうふうになっているかということをまずは考えないといけないということです。
それで、私の授業の中で、しつこく体罰のこととか、今の話をやった後の、これは結果です。188名に、体罰や暴力を受けたことがあるか、ないかってまずアンケートをとると、「ある」というのがやっぱり30%ぐらいあるんです。そして「ない」というのが70%ですね。それで、「ない」と答えた人のうちで、必要だと思うかというと、全く必要ないというのは、93%。私もほっとして、体罰をコーチングに使うかというので、「絶対に使わない」というのが94%でした。ああ、これはやっぱり教育の賜物(たまもの)かなと思ったのですが、体罰を受けたことがあるという人にとっては、あれだけ私がしつこく授業をやった結果でも、「時には必要」が30%、「必要とみなしたときに利用」が20%いて、かなりこれは私はショックなんですけど、言っていてもこれぐらいの状況です。
なので、今後、体罰を根絶していくということになれば、正しい授業をきちんとやって、これからの人たちに絶対こういうことをさせないということを教育の中で教えるということですね。それで、受けたことがないという人がもっと増えていくと、体罰を必要としないと考える人も増えますので、受けたことがあるというのが減っていかないと、やっぱり駄目だと思いますので、今の多分、教えている人たちがやるので、「受けたことがある」が増えたわけですから、これから出ていく人たちは、絶対やったら駄目だよということを理解して、哲学も倫理観も強く持てば、これからの人たちは「受けたことがない」が増えますので、根絶できるのかなというふうに思っています。やっぱり教育が非常に重要なんじゃないかなということで、私は授業を行っています。
ちょっと長くなったんですけど、適切な倫理観や哲学を醸成するような授業とか講習を行ったり、再教育をする、それに伴って、ここの上の五つのコーチング行動をきちんとやるための資質や能力を教育の中で培っていく、再教育の中で培っていくということが非常に重要なのではないかという話で終わりたいと思います。ありがとうございました。(拍手)
【勝田座長】ありがとうございました。
土屋委員、お願いいたします。
【土屋委員】皆さん、こんにちは。このような場でお話をさせていただく機会を得まして、非常に光栄に思います。よろしくお願いいたします。
新しい時代におけるスポーツ指導の在り方ということで、私はスポーツ選手の心理相談を担当していて、スポーツカウンセリングの現場からということでお話しさせていただきます。
簡単に、スポーツカウンセリングの現場で起こっていることを事例としてお話しさせていただいた後に、事務局から、アメリカの事情なども踏まえてというようなことがございましたので、ちょうどスポーツ心理学が少し日本より進んでいた時代に学んだ者として、北米の事情を少し紹介したいと思います。そしてスポーツ指導環境の改善のために、今どんなことができるかということについてお話しします。
スポーツカウンセリングというのは、スポーツに関わる様々な人々、アスリートだけではなくて、家族とか、あるいは、実はコーチからの相談も非常によく受けます。コーチが指導の現場で悩んでいる、そういったお話を聞くこともかなりございます。
特徴は、選手、あるいはコーチの方が来てくださったら、一対一でお話を聞くと、そんなのが特徴になるかなと思います。なかなかアスリートがこういった心理相談に来るというのはためらわれる、敷居が高いということがあるので、こういった相談室のパンフレットなども作って、相談においでというようなことでやっています。常設の機関ですと、こういったところが中心で、あるいはチームに帯同して相談活動を行うということもまたします。
相談でどんなことが多いかとよく聞かれるんですが、一番最初に、主訴というか、「どんなことでいらっしゃいましたか」と聞くと、やっぱり対人関係に丸をつけるのが非常に多いんですね。例えばなんですが、コーチとの関係ということで相談にいらっしゃった学外クラブに所属する女子の選手の事例を紹介します。
詳しくは、そちらの文献によるんですけれども、簡単に概要を説明すると、コーチとの関係でということでいらっしゃったんですが、お母さんと一緒にいらっしゃいました。小学校からずっとその男性コーチと二人三脚で、非常に競技成績も上がってきたと。ただ、大学に入学が決まって、コーチの推薦もあってということなんですけれども、そのコーチが今度は男女の関係を求めてきて、本人からの訴えというよりは、お母様が彼女の身体的な不調を不審に思って、あれこれ調べる中で発覚したということです。家族がいたからこそ、そういった非常にクローズドな世界がこういう相談の場面に持ち込まれたという事例かなと思います。
こういった事例、幾つかあるんですけれども、選手対コーチの関係が非常に特殊であること、あるいは競技環境が非常に閉鎖的であること、これはスポーツ心理によらず、いろんな分野の専門家の方からも指摘されているところなんですが、このあたりをどう風穴をあけていくかというのがポイントかなと思います。
特に役割関係から個人的関係へと、行ったり来たりするんですね。例えば今の例ですと、コーチからすれば、小学校からずっと、見ている。それこそコーチ対選手というソーシャルなリレーションよりは、非常に感情交流も起こるし、もう少しパーソナルな関係になったりするんですね。当然、そこではお互いの競技成績が上がることで利害関係が一致したり、あるいは時に不一致になったりということがあったりします。ですから、ここでスポーツ指導者の資質をどう向上させていくかというところが課題になっていると思います。
一方で、先ほど来、話題になっている勝利至上主義とか、あるいは早期専門化の問題ですね。あるいは、我々よりもちょっと上の年代の人たちのコーチに、今、最先端のスポーツ科学の知識が、先ほど図子先生がお話しされたような内容がどれぐらい届いているかという情報の欠如、こういったところで、スポーツ指導環境をどう改善するか、この二つがポイントになるかと思います。
最初のスポーツ指導者の資質向上について、一つ目は、スポーツ指導の基本原則をしっかり確認しておきたいと思います。ただし、そうかといって、「体罰は犯罪ですよ」みたいなスローガンだと、非常に苦しいのではないかという第1回会議のときに平野先生から御指摘がありました。コーチがやっぱりやりがいを持って臨めるような、そういうものを組んでいかないといけない。そしてその中で、どんなスキルが求められているかということを一度、全員で確認する機会が必要だろうと。
事務局から北米の情報をということでしたので、幾つかメジャーなシステムを御紹介したいと思います。一つは、アメリカのスポーツ・エデュケーション・プログラム(ASEP)、それからUSOCがやっている数々の方略、それからThe Institute for Sport Coaching、この三つを順番にお話ししたいと思います。
このレイナー・マートンという人なんですが、今はHuman Kineticsの社長さんですが、非常に有名なスポーツ心理学者です。彼が「athletes first、 winning second」というフィロソフィーを打ち出して、このことがアスリートファーストの哲学のもとになっています。このASEPでは、ボランティアコーチとか、それからプロフェッショナルコーチの教育プログラムを持っているわけですけれども、70年代後半、80年代に、『コーチのためのメンタル・トレーニングマニュアル』という本が中京大学の猪股教授のもとで翻訳され、これはスポーツ心理学を我々がちょうど学んでいた時代ですけれども、非常に革新的な内容でした。
なぜかというと、第1章がコーチングの哲学から入るんですね。つまり、なぜあなたはスポーツ心理の勉強をして、コーチングを学ぶのか。コーチになったときに、あなたはどんなコーチを目指すのかというところから、つまりコーチに何が必要か、どういう勉強をしたらいいかの前に、なぜあなたはコーチを目指すのかという1人の人間としての哲学が問われるというのが非常に印象的です。その後、動機づけ、リーダーシップのスキル、コミュニケーションのスキル等々と、コーチに必要なスキルに行くのですが、まずその土台の部分として、なぜあなたはコーチを目指すのかと。前回、平野先生も野球のお話をなさっていたと思うんですけれども、この考え方を取れ入れた種目別のものもあったりするようです。
日体協も、やっぱりテキストで指導者の役割ということ、理想とするスポーツ指導者とは、あるいは生涯スポーツ社会の実現のためにというところで、こういった章を一番最初に割いていますが、これは非常に重要なことだと思います。
このレイナー・マートンの後に、ロビン・ヴィーリーさんという人が応用スポーツ心理学会の会長を務めるんですが、この方も非常に世界的に影響力を発揮しました。『Coaching for the Inner Edge』という本を出されて、非常に分厚い本なんですけれども、日本でも『コーチングに役立つ実力発揮のメンタルトレーニング』という邦題で翻訳されています。
彼女は、師匠であるレイナー・マートンの哲学を引き継いでいて、プラスアルファで、競技成績、それから成長があるんですけれども、このバランスをとることが大事だと言っています。競技成績も大事、それから個人の成長も大事で、アスリートファーストですから、個人の成長が優先されるんだけれども、そのコーチングの場では、更に「経験」が非常に重要になると。そこが例えば楽しい経験であったり有意義な経験であったり、達成感を得る経験でないと、それはコーチングの意味をなさないんだという、そういった考え方を出しています。
これは競技成績か個人の成長かどちらが大事だという理念を越えて、もう少し実践に役立つ哲学を目指そうとしています。このプラクティカルというのは、例えばけがをしている選手がいるとして、このけがをしている選手でも、出せば恐らく80%の確率でチームは勝てるだろうと。しかし出したら、この選手は20%ぐらいの確率でもう一度再発するかもしれない。さて、あなたはコーチとして、この選手を使うだろうかといったプラクティカルな命題から、この章が展開されるということがあります。
二つ目、USOCのお話をしたいと思います。やりがいの創出というところでいうと、いろんな教育プログラムを提出したり作成したりするのですが、私が興味深いと思っているのは、このAmerican's best coachesという顕彰制度です。顕彰制度のお話は、先ほど眞藤委員からブルーペナントでしょうか、非常に興味深いお話がありましたが、例えばここだと、科学とかテクノロジーを使ったコーチの表彰ですね。あるいは、そういうトップレベルだけではなくて、ボランティアコーチの表彰、こういったものをやることで、非常に多様性に富むコーチの表彰があって、やりがいを生むのではないか。
しかし一方で、USOCはこんなことも推奨しているんですが、バックグラウンドチェックをしようと。組織としてコーチを認定したり推薦する以上、そのコーチがどんな背景を持っているコーチであるかということについては、必ずチェックをしておく必要があるのではないかというような提言もしています。身辺調査というんですか、背景の調査。今までに例えば体罰等の問題を起こしたことがあるのか、ないのかとかですね。
それからもう一つ、Quality Coaches、 Quality Sports、これはInstitution of Sports Coachingのところにあるんですが、これが非常に面白いのは、こちらもまたPhilosophy and Ethics、哲学から始まるんですが、この八つの内容が、コーチに求められるスタンダードだと、ナショナルスタンダードだと定めているところが非常に興味深いと思います。我々のこういう議論、他の専門家、あるいはヒアリングなどを通じて、スタンダードはこういうものだと、これはナショナルなスタンダードだというものがもし確立できれば、更にそこにフィロソフィーもしっかり確立できれば、体罰の一掃につながるような、そういう方針につながると期待しています。これがこのスタンダードと書いてあるリーフレットなんですけれども、Quality Coaches、 Quality Sportsということで、非常に心に響く言葉で書いてあります。先ほどの八つの領域というのはこっちに載っています。先ほど図子先生がおっしゃったファーストエイド(救急救命)なんかも、やっぱりここに書いてあります。
最後に、スポーツ指導環境の改善のところについてお話ししたいと思います。三つあるかなと思うんですが、アスリートの意思が反映されるような仕組みをどう作って、そしてアスリートファーストの実現をどのようにするか、そこでスポーツ医・科学の専門家と言われる我々がどんなことができるかということについて考えてみました。
私自身は、束ねてみると、このサポートネットワークをどうつくるかと。アスリートを取り巻くソーシャルサポートのネットワークをどう構築していくかということです。ソーシャルサポートのネットワークというのは、人がいると、選手がいると、ここにはいろんなことを手伝ってくれるコーチがいたりトレーナーがいたりということで、実は選手というのは、こういったネットワークの中に守られ、そして育まれて育っていくという、そういう考え方なんですけれども、先ほど見ていたアスリートがいてコーチ・指導者、ここが例えば非常に閉鎖的な環境にあるとしたら、ここにうまくサポートのネットワークが構築できれば、この閉鎖的な環境が打破できるのではないかと。先ほど言った三つの方針があると思います。
一つ目なんですけれども、アスリートを取り巻く例えば学校、地域には、いろんな資源があります。更にもう少し広げると、ライバルの選手がいたり、そこにはお医者さんがいらっしゃったり、あるいは競技連盟の指導者等々がいたりします。ここで、例えば競技者の意思が反映されるような仕組みづくりを考えたときに、やはり、欠かせないのは、公的あるいは法的な相談の窓口。冒頭の事例では、家族が見つけて、そこでこういう相談の窓口につながったわけですけれども、こういった相談の窓口を、できれば、各連盟にということでもいいんですけれども、ここに相談すれば大丈夫というようなものを一つつくる必要があるのではないかなと。
全柔連の女子のケースでも、最初に彼女たちはどこに、誰にどういうふうに相談したらいいかというのを非常に迷ったというお話を聞いています。こういったものが一つできていれば、アスリートの意思が反映される仕組みづくりに近づくのではないかなと思います。こういったものがスポーツ医・科学の専門家なり、あるいは競技連盟、あるいは指導者のネットワークにつながっていけば、専門家による検証が行われて、予防策も検討されるでしょうし、そこでは例えば先ほどあったバックグラウンドチェックのようなことも連盟のところで取り入れられやすくなるのではないかなと思います。
二つ目のアスリートファーストの話ですが、やっぱりスポーツ指導のやりがい向上ということで、先ほどコーチ・オブ・ザ・イヤーというのがありましたけれども、そのジャパン版ができていくといいなと。もう既に幾つかの団体では実践されているようですが、こういったものが定着していくことが必要かと思います。
さらに、スポーツ医・科学の専門家が貢献できるところとして、スポーツ指導者の資質探究。先ほどナショナルスタンダードと言いましたけれども、そういったものが恐らく日本固有の、今の現状に合ったもの、あるいは日本のこれまでのいいところ、フェアプレーとかチームワークとか、そういったものを取り入れた形でスタンダードができると、いいのではないかなと思います。
最後に、スポーツ医・科学の専門家をどう活用するかということなんですけれども、もうスローガンがいろんな団体で啓発活動の一環として起こっているようですが、そういったものを例えば公募して、国レベルでそういった意識の醸成、スローガンを作ることが目的ではなくて、作るまでに、その現場を巻き込んで意思統一を図っていく、そんなことがいいのではないかと思います。
体罰撲滅の宣言がいろんな団体でなされています。例えば日本体育学会もそうですし、スポーツ心理学会もそうです。各大学も行っていると思いますが、そういったものがお互いに連携をし合って、それを双方に乗り入れるような、そんなものができていくといいかなと思います。
それから、競技団体による憲章のお話も、第1回の会議のときにありました。私が好きな剣道では、九州での外部指導者による中学生への暴力の画像を、ソーシャルネットワークがあったからこそですけれども、皆さんが見るに至りました。剣道の憲章というと、剣道は何かという定義を、剣道連盟は、剣道の理念とは、剣の理法の修錬による人間形成の道であると。人間形成の道であると言っているんですね。ですから、この憲章に照らせば、どんな理由があったとしても、あの行動というのは許されないということははっきりわかるわけですね。ですので、競技団体による憲章をもう一度見ていくことが、実はスポーツの哲学の確認につながるのではないかなと。こういったことが相互に連絡を取り合ってやっていくと、このアスリートを取り巻くサポートネットワークが充実していくのではないかなと思います。
これが最後のまとめになります。自己紹介にかえてということで、スポーツカウンセリングの現場のお話をさせていただいて、そして北米に幾つか参考になる取り組みがありましたので、それを御紹介しました。最後に、スポーツ指導環境の改善のために、アスリートを取り巻くサポートのネットワークをつくっていく、そういう方向性をお示ししました。このようなことができたらなと考えております。
以上です。ありがとうございました。(拍手)
【勝田座長】ありがとうございました。
最後に平野委員、よろしくお願いします。予定の時間は7時までですので、平野委員の御発表が終わりましたら、副大臣と政務官にも御発言を頂きたいと思います。
【平野委員】それでは、とりを務めさせていただきます。私のタイトルは、スポーツ指導者の資質能力向上のための具体的方策についてということでございます。
今日の話は、対象は絞らせていただきたいと思います。小学生までの子供の競技スポーツの指導者ということでございます。私の考えとしましては、子供の指導者の地位を高めたいということがございます。一番報酬を支払ってもいいんじゃないかと思っています。また、子供の主体性ですよね。正しいこと、合理的なことをきちんと判断できるとか、自分の思っていることを主張できるとか、そういう子供、選手をつくりたいというところで、こういう話になりました。
前回、対症療法的にいくのか、それとも根治療法的にいくのかという話があったんですけれども、今日の話は恐らく少し後者の方、根治療法的な話かなという気がしています。その分、少し効果があらわれるまでには時間がかかるかなということがあります。将来への波及効果を狙ってということであります。
まずスポーツ医・科学に立脚した指導者というものをちょっと考えてみました。ここに指導者がおりまして、ここに選手が生まれたわけですね。選手のパフォーマンスというのは、昔からこんな式で記されてきたと。すなわちモチベーションの関数として、エネルギー、体力的なところが発揮されて、それが集められて、技術的なところを介して外に現れていくというわけなんです。
それぞれの要因というのが恐らく、時間軸をこういうふうにとりましたけれども、子供から大人になっていくに従って、変えられるものとして、いろんな時期の発達、発達する時期がこうあったりするわけでありますから、そういうものにどうやってわかっていて、働きかけをするかということが一つありますし、それから、選手以外のところでも、周りの環境、指導環境から影響を及ぼすものがあるんですね。自然環境であったり、人工、用具とか、あるいはウェアとかそういうものですね。あるいは社会環境、家庭とか、それから学校とかそういうところもやはり影響を及ぼすわけですね。ですから、こういうところをとらえて、これはどういうふうになっているんだというところを、スポーツ医・科学のところからやりとりしてもらってくるということを指導者はしまして、指導をやっていくということになろうかと思います。そういうことができるというのが、スポーツ医・科学に立脚しているということになると。
もう一つ、実はこれがすごく大事だと思うんですけれども、どういうふうに指導するのかとか、どういう中身を指導するのかというところも、コーチング学の役割だと思うんですけれども、そういうところからもやっぱり知見を引っ張り出してきて、指導者としては指導していくということになります。当然、そこではどういう目標を立てるかとか、どういう計画で行くかということが頭にはあるというわけです。
こういうことをやっていくのがスポーツ医・科学に立脚した指導者だと考えるんですけれども、そうすると、新しい時代の指導者に求められる資質能力としては、このようなことが、挙げられると思います。指導内容・方法がわかっている、それから子供の心身の変わりゆくもの、これは自然に発育・発達するものもありますから、それと変えられるもの、発達の可能性みたいなものがわかる。それから、そのスポーツにとっての心身のあるべき姿、目標とでも言うべきものがわかっている。それから、運動の成果に影響を及ぼすような環境のことがわかる。こういうことを理解して、指導する能力が求められると思います。
前回、私は、指導はスポーツ医・科学が全てではないという話をしました。ここで書いている書き方は、理解して指導するということで書いています。もちろん、指導者は熱意が必要ですし、叱咤(しった)激励も必要ですし、ある程度、ちょっと無駄だと思うことの繰り返しも必要ですし、それから集団ではなくて個に応じた指導ということも求められるということがあるかなということであります。
長期的視点に立った指導者の顕彰の在り方というものをここで考えてみますと、子供の指導においては、成績ではなくて、先ほども出てきましたような目標と計画性を評価するということになるのかと思います。ただ、成績で評価される今の環境をすぐに変えられないということがありますし、誰がどのように目的と計画性を評価するのかということを考えると、具体的方策は少し難しいのかなと感じています。
それで、私は野球が専門ですので、先ほど土屋先生が紹介してくれました本を少しひも解いてみました。『COACHING YOUTH BASEBALL』、アメリカの本ですけれども、それをひも解いてみますと、指導に関していろんな章立てがなされて、書かれています。詳しくは資料を御覧いただければいいと思うんですけれども、眺めていきますと、コーチとしての四つの資質はこんなものだということが書かれています。そこでは必ず、困ったときにどうするという、その相談先が書かれているんですね。あるいは、コーチとして必要なツールはどういうものですかと。「COACH」なんてうまい語呂合わせでいろんなことを示して、そこでも自己採点ができるようになっているんですね。
それから、子供とのコミュニケーションをどうしたらいいのかということも書かれていて、そのチェックリストもある。それから、どのように技術を指導するのかというのも、なかなかうまい言葉を使っているんですね。
それから、安全についても当然書かれていまして、もしものときの救急法も記されています。全体として、野球の理解というのはどうするのかということも、「PARK」なんていう言葉でうまく説明したりしています。技術的なドリルも、誤りの発見の仕方と修正の仕方みたいなのを対比して書かれています。これはすべきこと、これはすべきでないことみたいなのも、うまく表になっているんですね。
野球はチームプレーですから、戦術のためのドリルも紹介されていて、付録には、障害を持つ子供の指導について、わからなかったらこうだよ、連絡先はということも記されています。あるいは初心者のシーズンの計画例も示されています。
これは総じて見まして、楽しさとか安全性とかコミュニケーションなどの指導のエッセンスを明らかにして、語呂合わせとかセルフチェックとか対比表などで印象づけられて、わかりやすいということです。それから相談先とか、機会は均等にすべきだとか、周囲への配慮、ドリルの提示など、視野は広められるし、クローズドな環境にしていないというようなところがあって、これをうまく使って、具体的な方策はできないのかなというふうにして考えてみたのが最後であります。
能力があれば与えられる資格、教員免許とか運転免許というのがありますけれども、ここで提案したいのは、能力を向上させるために与えられる資格であります。これはステータスが指導者を育むと考えて、初めから資格(ID)を与えるというやり方をします。それで、ただ与えるだけじゃなくて、当然、エッセンスをわかりやすく記したパンフレットなどを同封して、一緒に送るということ。
そのIDの例としては、例えば議員バッジみたいなものを見ると、あ、議員さんだなとわかりますし、最近だと、招致バッジをつけていますが、招致を一生懸命やっている人だなということがわかる。矜持(きょうじ)と言われているもの、あるいは外に開かれているというようなところを狙って、こんなことをやってはどうかということです。
大事なところは、スポーツ医・科学のところでの企てを少し考えること。もらったIDで参加できるイベントをつくりまして、そこでスポーツ医・科学に触れるということにしますと。講習会とかプレゼンとかVTRとか、先ほどから出ていましたeラーニングみたいなもの、これは例えば総合型みたいなところで考えてもいいかと思いますけれども、30分ぐらいのわりとコンパクトなものでいいと思います。eラーニング、ネット配信のところは、地域差をなくすということで、非常に使い出があるんじゃないかと思います。
「わかる」というところは、評価はしない。その代わり、そのIDを使って指導する。わかっていなければ、そのことを使えませんから、そこでわかっているということを確認するということになります。帽子でもバッジでもカードでも何でもいいんだと思うんですけれども、あ、この人はこういう資格に参加しているんだろうなということがわかるようなものをつくる。
イベントに何回も参加すると、ゴールドカードをもらえるみたいに、回数で色が変わって、ああ、あの人はちゃんとやっている人だということがよくわかる。それを繰り返していくと、うまく指導者としても顕彰されているということになって、採用とか報酬までうまくいくかどうか、これはわかりません。しかしながら、ステータスを持って指導ができるのではないかなと考えた次第です。非常に性善説に傾いているということは承知しているわけですけれども、こんな試みもできるのではないかなと思います。
最後に、スローガンですね。どこかでスローガンができないかという話なんですけれども、指導者の思うようにいかないとか、それからせっぱ詰まっているという、そういう思いを救ってあげるようなスローガンじゃなきゃいけないと思います。
ちょっと考えているんですが、実は日本スポーツ振興センターのスローガン、御存じでしょうか。「未来を育てよう、スポーツの力で。」というスローガンです。それをちょっと拝借してきまして、「輝く選手を育てよう、その指導の力で。」みたいなもの、そういうので救えるんじゃないかなと考えた次第です。
以上です。ありがとうございます。(拍手)
【勝田座長】ありがとうございました。
委員の皆さんから御発表のポイントになる点を再度伺いたいとお話をさせていただいていましたが、時間の関係上、御発表に関する議論はここで終了とさせていただきたいと思います。今日はそれぞれ委員の皆さんから、テーブルの上にいろんな考えとかを一挙に広げていただいたということで、この後の会議の中で御発表の内容を論点整理にいかしたり、また、取りまとめに向けての御議論に反映させていただきたいと思います。
では最後に、政務官と副大臣からそれぞれ御意見、御感想などを頂きます。最初に、政務官、よろしくお願いしたいと思います。
【義家大臣政務官】委員の皆様、本当に多角的な視点からの非常に熟した提言、頂きまして、ありがとうございます。
私自身も、皆さんのお話を聞きながら、様々なことを考えながら、この2時間ずっと集中して聞いていたんですが、思うに、やはりプロとアマ、この部分の何か違いというのもあるかなというのをすごく感じたんですね。例えばアマレスリングの潔さとプロレスリングって全く別ものですよね。あるいは体罰ではなくて、暴力って考えたら、プロ野球やプロ選手の場合、乱闘騒ぎがありますけれども、アマチュアの中では全くないですよね。
しかしスポーツアスリートの成功のあかしは、プロでたくさんの収入を得ることみたいな状況になっていると、なかなかそういう体質というのは引きずるようになっていくのかなと。きれいごとの世界と、現実のトップはまた違うんだみたいなことですね。
それから、日本の場合、諸外国と違うのは、アマチュアのトップアスリートになったとしても、収入というものがかなり限定されていて、欧米であったら、アマチュアのトップアスリートなんていったらかなりの収入みたいなものもついてくるんでしょうけれども、日本はなかなかそうはいかない。私も福祉大でずっと教えてきたんですけれども、ゴルフの松山君、彼はずっと優勝してもアマチュアにいたわけですけれども、逸失した賞金なんていうのはとんでもない額で、このたびプロになりましたけれどもね。この辺のアマチュアスポーツ界をめぐる日本と諸外国の違いというのも、一方で考えていく必要もあろうかなと思います。
私は今、指導者じゃなくて、別の観点からお話ししましたけれども、是非ともそれを深めて、先ほど尾縣委員からかな、世界を参考にすることも大事だけれども、日本発のアスリートのつくり方。契約社会ではない日本が世界に発信する誇り高き指導方法というのを、委員の皆様方と是非知恵を出し合いながら発信できたらと思っています。
本当に意義のある議論、ありがとうございました。
【勝田座長】どうもありがとうございました。
それでは、副大臣お願いいたします。
【福井文部科学副大臣】本当にありがとうございました。最後に平野先生から、前回お願いしたスローガンを出していただきました。前回お願いしたスローガンというイメージは、コーチと選手のコミュニケーションをコントロールする何かスローガンがないかなと、そういう意味で、要するに暴力にかわる、いや、かわるというか、暴力がない、存在し得ないコミュニケーションというのは、どういうスローガンのもとで行われるべきかという命題で、前回お願いしましたので、また今日の議論と、それから次回、教えていただければと思います。それから、これも前回申し上げた自由と平等という相矛盾する世界を飲み込んで、そのまま全人格的に受けとめて、政治というのは進んできている、その矛盾しているということをむしろ強調して、あるいは矛盾をつくって、それで政治というのは自由の時代、平等の時代、自由の時代、平等の時代というふうに進んできたので、それをこのスポーツの世界でも応用できないかというふうに前回、お話をしたところ、今日は地域スポーツと学校スポーツというまさにドイツと日本のものの関連性であり、逆性でありというところがあったので、そこから先にバイナリーチョイスがあって、学校と地域とを足して2で割ったのを、あと100年続けるという選択と、あるいは今までずっと学校でやってきた、そしてサッカーで地域が勃興(ぼっこう)してきたので、しばらく地域を中心に日本ではやっていくという選択をするのかということだと思うんですよ。
今後、地域の時代があと30年続く。それで、その次の時代はまた学校というストレスを置いていくという、そういう時代の進め方、スポーツ立国の戦略というのは、足して2で割ったものを100年続けるのか、学校の時代、地域の時代、学校の時代、地域の時代というふうに歩いていくのか、その辺の戦略をちょっと先生方に作っていただければと思います。
ずっと聞いていて、まさに政治の世界と一緒で、そのHow to do、What to doという時代はもう既に終わっていて、やっぱりWhyなんですよね。何でやねんというような、Whyというのに応えない政治というので今、ものすごい、これは世界中、不満が、不平があるわけで、やっぱりなぜスポーツをするのか、なぜスポーツ立国なんて言っているのか、なぜコーチがいるのか、なぜ自分がいるのかという、まさに哲学そのものだなと。これはもう感想だけなんですけど、本当にそういう意味で、新しい分野が、もう先生方はいらっしゃるんですけど、やっぱりこの分野がもっと広まって、足腰の強い、何十万人、何百万人というステークホルダーがいて、トップアスリートがいるという、そういう分野が、今はまだないということですよね。
なので、早くつくらないといけないので、資格制度もそうだし、役所の方もそうだし、それから都道府県、市役所、地域のスポーツにかかわっている皆さん方もそうだし、全ての人々をどうやって統合するかというのも行政に課せられた課題だと思いました。次回、また現場へお運びいただきますが、本当に大きく歩み出せるタスクフォースにしていただいて、まだもちろん結論は出ていませんけれども、途中でもお礼を申し上げたいと思いますので、今後ともよろしくお願いしたいと思います。
ありがとうございました。
【勝田座長】どうもありがとうございました。
スローガンに関する新しいタスクもまた副大臣から頂きました。次回また場所を変えて、いろいろとお話ができるのかなとも思います。
時間になりました。本日は本当にありがとうございました。終了させていただきまして、バトンを事務局にお返しさせていただきたいと思います。
【田島スポーツ指導専門官】次回は、来週24日金曜日10時から、国立スポーツ科学センター及び味の素ナショナルトレーニングセンターにて現地視察、それから外部有識者のヒアリングをさせていただきたいと考えております。
詳細につきましては、追ってまた御連絡をさせていただきます。
以上でございます。
【勝田座長】では、本日はこれにて閉会ということになります。ありがとうございました。
―― 了 ――


 

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