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今後の健康診断の在り方等に関する意見

平成25年12月
今後の健康診断の在り方等に関する検討会


 学校における健康診断は、児童生徒等の健康の保持増進を図り、学校教育の円滑な実施とその成果の確保に資するため、重要である。その内容については、平成6年に検査項目の大幅な改正が行われたものの、近年の児童生徒等の健康問題を踏まえ、今後の在り方について検討を行う必要性が指摘されたことから、本検討会が設置された。
平成24年5月から9回にわたり、専門的見地から広く今後の健康診断の在り方について議論を重ね、今後の健康診断の在り方等に関する意見を、以下のとおり取りまとめた。
 文部科学省においては、本検討会の意見を踏まえ、学校の健康診断の在り方について、更に所要の検討を進め、適切な対応を図られたい。

 

1 学校の健康診断の総論について


1.学校における健康診断の目的・役割

○学校保健安全法では、学校における児童生徒等の健康の保持増進を図るため、学校における保健管理について定めており、学校における健康診断は、この中核に位置する。また、学習指導要領においては、特別活動の中で健康安全・体育的行事として位置付けられており、教育活動として実施されるという一面も持っている。それらのことを踏まえると、学校における健康診断は、家庭における健康観察を踏まえ、学校生活を送るに当たり支障があるかどうかについて、疾病をスクリーニングし健康状態を把握するという役割と、学校における健康課題を明らかにして健康教育に役立てるという、大きく二つの役割がある。このことについて、学校関係者や保護者の間で、共通の認識を持つことが重要である。

○一般に、疾病のスクリーニングでは、その検査のみで疾病の確定診断を行うことを目的とするものは少ない。特に、学校における健康診断においては、学業やこれからの発育に差し支えの出るような疾病がないか、ほかの人に影響を与えるような感染症にかかっていないかということを見分けることがスクリーニングの目的となる。そのような観点からは、学校における健康診断では、細かく専門的な診断を行うことまでは求められておらず、異常の有無や医療の必要性の判断を行うものと捉えることが適当である。なお、子供の健康課題は、発達段階に応じて異なる側面を持つため、その点についても留意する必要がある。また、特別な支援を要する子供たちが、適切に健康診断を受診できるように工夫していくことも、今後の大きな課題である。


2.健康診断の実施体制

○健康診断は限られた時間の中で行うため、より充実した健康診断にするに当たっては、事前の準備が重要である。校(園)長の指導の下、保健主事、担任、養護教諭が連携し、学校全体として健康診断に取り組むことが求められる。

○学校医・学校歯科医がより効果的に健康診断を行うためには、担任や養護教諭等が事前に保健調査や学校生活管理指導表等で子供の健康状態を把握し、学校医・学校歯科医に伝えることが非常に重要である。家庭や学校の日常の様子など、健康診断の前に情報がまとまっていれば、学校医・学校歯科医としてより的確な診察を行うことができる。また、健康に関する情報を保護者に提供してもらうことが、保護者の問題意識と学校の健康診断とをつなぐ大事な架け橋になるとともに、学校においても、本当に必要な情報が何であるかについて、認識を深めることができる。その際には、既に診断されている疾患についても、併せて情報を共有することが求められる。

○健康診断の実施においては、感染症予防や、プライバシーが保護される状況を確保するための、環境整備が求められる。その一方で、学校医・学校歯科医による身体診察について、脱衣など診療上必要な事項は、プライバシーの保護という観点に配慮しつつも、子供や保護者の理解を求めていくことが必要である。安全で落ち着いた環境、そしてプライバシーが守られている中で、子供たちが安心して健康診断を受けられるようにすることが大事である。


3.関係者の連携と事後措置 

○健康診断において、事後措置は非常に重要であるが、学校における健康診断においては、スクリーニングされても、その後、適切に医療につながっていないケースがある。学校保健安全法では、保健指導において、保護者に対して必要な助言を行うことが求められていることからも、事後措置が適切に行われるような取組をすることが求められる。

○歯科保健においては、実際に口の中が見えることを前提として、歯の状態に応じた磨き方や食物摂取の在り方等に関する指導を通じて、子供の自己管理能力を育てることができるなど、子供や保護者の健康教育にとって重要な役割を果たしている。その一方で、学校歯科検診では、むし歯だけではなく、歯周病、歯肉炎、顎関節や歯列咬合(しれつこうごう)なども留意することになっており、診るべき疾病が多様化している。現代の子供の口腔(こうくう)内の状態も大きく変わってきており、今後は、健康相談や保健指導の充実を図ることも課題である。

○健康診断に関する一連の流れにおいて、校(園)長、保健主事、担任、養護教諭、学校医、学校歯科医、保護者等の関係者間の連携が重要である。特に、教育の専門家である教職員と、医療の専門家である学校医・学校歯科医との関係の構築が重要である。そのような体制の中で、健康診断やその後の事後措置等について評価し、次の改善に生かすというPDCAサイクルがうまく機能することが期待される。PDCAを実施するに当たっては、校(園)長、保健主事、担任、養護教諭、学校医、学校歯科医等を含めて、役割分担を明確化しておくことが求められる。

○子供の健康診断の結果を踏まえて、学校全体の健康課題の分析や課題の抽出、それに対する取組、またその到達具合を検証するに当たって、学校保健委員会や健康相談の機能は重要である。学校、家庭、学校医、学校歯科医、学校薬剤師、地域等が連携して、健康課題に取り組んでいく必要がある。


4.健康に関する情報 

○入学予定校において、就学時健康診断の情報が十分に活用されていないという意見や、学校の健康診断の結果が卒業後に生かされておらず、貴重な健康情報が埋もれているという指摘がある。人生の各局面における健康情報は、一貫して管理され、個人に還元されることに意義がある。健康増進法に基づく指針においても、健康の自己管理の観点から、本人が主体となり健康手帳等を用いて健康診査の結果等の情報を継続させていくことが重要である旨が述べられている。健康に関する情報の重要性とともに、それを生涯にわたる健康情報として自ら活用することが非常に有効であるということについて、共通認識を持つ必要がある。

○健康情報の取扱いについては、例えば健康手帳や、電子媒体による伝達等が考えられ、その内容については、発達段階に応じた項目や、既往症や予防接種歴等に関する項目等が考えられる。

○子供の健康情報の活用については、保護者との情報共有も重要である。個人情報保護に留意しつつ、将来にわたって子供の健康を守っていくためには、子供や保護者の理解を得ることが必要である。これにより、保護者の健康観を育成することや、将来にわたって子供と関係づくりをしながら健康の度合いを高めていくことなども期待される。

 

2 学校の健康診断の各論について


1.個別の健康診断項目
学校の健康診断の項目については、子供たちを取り巻く環境の変化や健康課題の変遷等を踏まえ、時代に応じて適宜見直していく必要がある。今回、特に見直しが求められている4項目について検討した。


(1) 座高
○健康診断において計測したデータは、異常の発見や発育の評価によって、個々の子供に還元されるべきであり、身長曲線・体重曲線を作成し子供の成長を評価するなど、より積極的な対応が求められる。一方、学校の健康診断は、現状でもかなり厳しいスケジュールで行われていることから、効率化という観点も必要である。

○座高については、発育の評価に有用という側面があるものの、現状ではほとんど活用されておらず、学校現場からは座高測定は不要であるとの声も多い。子供の成長を評価する上では、座高より身長曲線・体重曲線の方がより重要であることから、身長曲線・体重曲線の活用を推進することを前提とするならば、座高測定は省略可能と考えられる。


(2) 寄生虫卵
○衛生状態の良い現代において、医学的・疫学的には、学校で寄生虫卵の検査をする意義はかなり乏しい。実際に、寄生虫卵の検査の検出率は極めて低く、ここ10年間、1%以下で推移している。また、学校現場からも、寄生虫卵の検査は不要ではないかとの声も多い。

○現在、ほとんどの学校で、寄生虫卵検査としてぎょう虫卵検査を実施しているため、寄生虫卵検査を考えるに当たっては、ぎょう虫卵検査について検討することが妥当であるが、ぎょう虫は、通常の衛生教育で十分に対応できる病気とされている。現状の寄生虫の状態を鑑みると、手洗いや清潔の保持という基本的な衛生教育を引き続き徹底することにより、寄生虫卵の検査を省略してもよいと考えられる。

○しかしながら、寄生虫卵検査の検出率には地域性があり、陽性者が多い地域もある。それらの地域においては、今後も検査の実施や衛生教育の徹底などを通して、引き続き、寄生虫への対応に取り組むべきである。また、寄生虫についての基本的な知識をまとめた資料等が必要だと思われる。


(3) 運動器に関する検診
○現代の子供たちには、過剰な運動に関わる問題や、運動が不足していることに関わる問題など、運動器に関する様々な課題が増加している。これらの課題について、学校でも、何らかの対応をすることが求められており、その対応の一つとして、学校の健康診断において、運動器に関する検診を行うことが考えられる。その際には、保健調査票等を活用し、家庭における観察を踏まえた上で、学校側がその内容を学校医に伝え、学校医が診察するという対応が適当である。そこで異常が発見された場合には、保健指導や専門機関への受診等、適切な事後措置が求められる。

○運動器に関する検診の実施に当たっては、担任、保健体育の教諭、養護教諭、学校医等に対して、整形外科医等の専門的な立場から、研修等によって助言を得る機会を積極的に設けることが重要である。


(4) 血液検査
○近年、子供の肥満や痩せ、生活習慣に関する課題が多く指摘されており、健康に対する意識の啓発などが求められている。それらについて、学校単独での取組には限界があるため、地域住民の理解を下地に、地域全体として健康教育に取り組むことによって、子供の健康により良い影響を与えることができうる。

○生活習慣病や鉄欠乏性貧血などの発見のために、血液検査を実施するという方法もあるが、血液検査を全国一律に学校で行うことは困難であるため、例えば、身体測定等を活用して健康教育を進めるという方法もある。ただし、身体測定や血液検査等によって、肥満や痩せ、検査値の異常などが指摘された子供に限らず、健康についての教育や指導は全員に必要とされる。現在でも生活習慣病についての教育は行われているが、今後、更にそうした取組を進めることが重要である。


2.健康診断における各分野の課題

 学校における健康診断は、大きく、身体全体、眼(め)、耳鼻咽頭、歯と口腔(こうくう)の領域に分けられる。今回、特に、眼(め)、耳鼻咽頭、歯と口腔(こうくう)の領域について、個別の分野が抱える課題を整理した。


(1) 眼(め)の領域
○学校での健康診断において、色覚の検査が必須項目から削除されてから約10年が経過した現在、自身の色覚の特性を知らずに卒業を迎える子供が増加している。色覚による就業規制がある職業もあるため、子供たちが自身の色覚について知っておいた方が良い。色覚の検査については、保護者や本人の同意のもとで行うことが極めて重要であるが、中には、色覚に関する知識が乏しい家庭もあることから、色覚検査の基本的事項について、積極的な周知を図ることも必要ではないか。なお、実施体制については、学校医との相談の上、適切な体制を整えることが大事である。

○コンタクトレンズの不適切な使用により、眼(め)の感染症などのトラブルを起こすケースが増えている。就学期からコンタクトレンズを使用する場合も多いため、適切な使用法の周知が求められている。


(2) 耳鼻咽頭の領域
○耳鼻咽頭領域は、高い専門性を有するため、その専門性にたけた医師が健康診断を行うことが適当。他方、医師不足等の問題も深刻であるため、学校所在地の医師だけでは対応が困難な地域もある。今後は、地域内にとどまらず、地域を超えての連携も重要な課題である。

○耳鼻咽頭領域の検診では、鼻、耳、咽頭の検査以外にも、聴覚異常や言語異常などのコミュニケーション障害を発見するという可能性もある。耳鼻咽頭領域の検査は、子供たちが検査の指示にきちんと従うことが非常に重要であり、例えば、聴力や発語の検査など、子供自身の協力が必要不可欠である。そうした協力が得られにくい子供の検査については、特段の配慮が求められている。


(3) 歯と口腔(こうくう)の領域
○歯科検診におけるむし歯や歯肉炎等の結果を踏まえ、歯と口腔(こうくう)の課題だけではなく、子供の健康そのものの保持増進を図るという取組が必要になってくる。すなわち、生活習慣病の予防という観点にも注目し、健康相談や保健指導と関連させながら、歯科検診の更なる充実を図ることが必要となる。歯科検診は、「疾病発見型のスクリーニング」ではなく「健康志向(健康増進)型のスクリーニング」であることに意義がある。

○今後は、歯列咬合(しれつこうごう)及び顎関節についても大きな課題となってくる。これらは、「食べ物を取り込み、食べる」機能、「表情をつくり、話す」機能及び「運動を支え、体のバランスをとる」機能等に直接関わっており、生活の質に関係してくるため、学校歯科医はもちろん、教諭、養護教諭をはじめとする教職員にも、その重要性の共有が求められている。

 

3.いわゆる「学校病」について
○いわゆる「学校病」の制度は、法律上、感染性又は学習に支障を生ずるおそれのある疾病について定められており、具体的には、授業を受けられないほどに重い症状であるにも関わらず、医療にかかることができない子供に対しての援助という主旨で始まったと言える。そのように「学校病」が制定された当時と比べると、現在の子供の衛生状態等は飛躍的に改善していることから、「学校病」という制度自体を再考すべきという意見もある。しかしながら、「学校病」の制度を利用している子供が現に存在しているのであれば、現時点において制度の中止はすべきではないと考えられる。

○現在「学校病」に指定されている疾病について、現状では、学習に支障を生じているとは想定しにくい疾病や、対象者が非常に少ない疾病も含まれるが、「学校病」として利用されている実態を考慮すると、現在指定されている疾病を削除することは望ましくないと考えられる。例えば、「学校病」で最も多い齲歯(うし)については、現在では歯が痛くて授業が受けられないといった重い症状の子供は多くはないが、一方で、子供たちの中でいまだにり患者が多い疾病であることを考えると、「学校病」から齲歯(うし)を削除することは望ましくないと言える。さらに、これらの疾病について、より具体的には、健康診断又は健康相談、保健指導などにおいて、学校医・学校歯科医その他の医師が疾病を診断した場合に、「学校病」の対象になるものとする。また、このような「学校病」の制度や主旨について、学校現場や医療関係者が正しく理解できるように、周知を図ることも重要である。

○近年の子供たちにみられる生活習慣病などの健康課題の中には、授業を受けられないほどに重い症状であるという疾病は少なく、「学校病」の制度の主旨からすると、これらの疾病は「学校病」にはなじまないと言える。他方、これらの課題に対しては、学校として何らかの形で取り組むことが求められている。疾病によっては、学校生活管理指導表などで統一した対応を図っているものもあり、例えば歯周病や歯肉炎についても、そのような形での対応を検討することも一案。生活習慣が密接に関わるような疾病については、日々の生活の改善が重要であるため、その達成のための方策を探るべきである。
なお、子供たちの健康課題については、「学校病」に限らず、健康診断によって異常を指摘された場合には、まずは医療機関に適切につなげることが重要。きちんと医療機関を受診することや、その後も治療終了まで通院することなどが大事であることについての理解を得る必要がある。例えば、歯科保健に重点的に取り組むことで、子供や保護者の健康全体への関心が高まったという事例もあり、そのような取組を通して、子供や保護者の健康への意欲を高めていくことも大事である。

 

お問合せ先

スポーツ・青少年局学校健康教育課

電話番号:03-5253-4111(内線:2918)

(スポーツ・青少年局学校健康教育課)

-- 登録:平成26年01月 --