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福島県内で一定の放射線量が計測された学校等に通う児童生徒等の日常生活等に関する専門家ヒアリング(第2回) 議事録

1.日時

平成23年6月16日(木曜日)10時~12時

2.場所

文部科学省3F1特別会議室

3.議題

  1. 国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告を踏まえた「合理的に達成できる限り放射線被ばくを低くする(ALARA)」の理念による学校利用や日常生活の基本的な考え方について
  2. 現在の状況における学校生活と学校外活動の具体的な在り方について
  3. その他

4.議事録

 【平下学校健康教育課長】  それでは、時間になりましたので、ただいまから第2回目の福島県内で一定の放射線量が計測された学校等に通う児童生徒等の日常生活等に関する専門家ヒアリングを開催したいと思います。

 先生方におかれましては、本日は大変お忙しいところ、ご出席いただきまして、誠にありがとうございます。

 最初に、本日、出席されています方々のご紹介をしたいと思います。

 最初に、福島大学副学長の渡邊明様でございます。

 続きまして、独立行政法人放射線医学総合研究所放射線防護研究センター上席研究員の神田玲子様でございます。

 東京大学医学部附属病院放射線科准教授の中川恵一様でございます。

 千葉大学教育学部教授明石要一様でございます。

【平下学校健康教育課長】  なお、本日、大臣におかれましては、国会の関係で、欠席とさせていただきます。あらかじめご了承いただければと思います。

 それでは、笹木文部科学副大臣よりごあいさつを申し上げます。

【笹木副大臣】  おはようございます。先生の皆様方には、本当にお忙しい中をご参加いただきまして、貴重なお時間をいただきまして、誠にありがとうございます。

 本日いろいろご意見をいただきたいわけですが、福島県内の学校の校舎、校庭等の利用判断、ご存じのとおり、暫定的考え方を示しており、できる限り、可能な限り、児童生徒が受ける線量を減らしていくこと、この原則で対応しているわけですが、校庭・園庭について、毎時、1時間当たり3.8マイクロシーベルトを超えるところについては、屋外活動をなるべく制限することが適当であると、通知をしています。

 また、人も機材も、可能な限り投入して、いろんなモニタリングをやっておりますし、可能な限りの頻度で、その結果をホームページに掲載し、その他記者の方々に対しても配るなど、発信をしています。

 先月27日は、より安心して教育を受けられる環境の構築を目指して、1つは、もともと55の学校等に先行して積算計を配っていたわけですが、さらに加えて、1,750の学校等に、配りまして、福島県内のすべての学校にこの線量計を配って、先生にこれを携帯いただいて、学校にいる時間ずっと計測をしていただくという体制をとっているところであります。

 あわせて、校庭の土壌の上下置換、あるいは、1カ所にためて表面にあったものを地表の深くにやる方法と、二通りを示して、こういう方法でやると土壌から受ける線量を減らすことができると、それを示していたわけですが、毎時1マイクロシーベルト以上の学校については、災害復旧事業の枠組みで財政的な支援もする、国から財政的な支援をするということも通知しているわけでございます。

 こういうふうに、いろんな努力もしているわけですが、先日、福島に行って実際に被災者の方にお話を聞いたときに、非常に印象的なのが、悪いうわさは非常に速いスピードで広がる、しかし、いい情報はなかなか広がらない。そのときには具体的には放射線量のことで、何人かの現地の方が言われました。これは3月の時点のことでしたが、ぽんと数値がある町において上がった。次の日は平常値に戻っている。次の日は戻ったという情報はなかなか広がらない。ぽんと上がったということは、長く広く伝わる。これは、リスクに関わる発信とかコミュニケーションというのは本当に難しいというのを実感しております。

 今後、学校生活での受ける線量の低減策、科学的で、そして、国民の皆さんにわかりやすく伝える方法、あわせて学校生活、日常生活の在り方と心の健康、心身の発達等の関係、こうしたものを整理し、わかりやすく伝えることについてさらに努力をしていきたいと思っていまして、ぜひ先生方には、いろんな率直なご意見、ご指導を賜りたいと思い、お時間をいただきました。どうかよろしくお願いいたします。

【平下学校健康教育課長】  ありがとうございました。

 本日の配付資料ですけれども、先生方からご紹介いただく資料を、資料1から資料4まで用意しております。それから、事務局のほうで、机上資料としまして、さまざまな数値とか、あるいは、前回ご説明いただいた方の資料等々がございますので、適宜参照いただければと思っております。

 それでは、早速、渡邊様から、10分から15分程度でご説明をお願いできればと思っております。よろしくお願いいたします。

【渡邊氏】  おはようございます。私は気象学が専門ですが、今回は学校を取り巻く環境という観点から、とりわけ福島県の放射能汚染の実態と課題、それから、課題解決のためにどう考えたらいいかということをで資料を用いてお話したいと思います。私の資料を見ていただければと思います。

 まず、おなじみの図でありますけれども、福島県の中でどのように空間線量がなっているかというのが図1でございます。とりわけハの字の形に緑の領域が広がっておりますけれども、ハの字の右側のほうが、いわゆる国道114号線に沿った、浪江・飯舘ラインの空間放射線率のところでございます。それから、もう一つのハの字の左側でございますが、これが福島では通称中通り地方といって、非常に人口が集中しているところで、約130万人ぐらいが住んでいる領域でございます。不幸なことに、こういう都市地域が相対的に強い空間線量率を示す地域になっているのが今の実態でございます。

 なお、3.11から3月12、14、15日と爆発事故がございましたけれども、この空間線量率を決めているのは、基本的に3月15日、これは文科省のモニタリングポストでもそれを示していますが中通り地方の空間線量率が高くなったという理由は、私の一番後ろの6ページの資料にありますように、大変複雑な経路をとっています。いったん南西の方向に広がりながら、上昇して北東方向に向かって、そこでちょうど気圧の谷が通過しており、その気圧の谷の通過に伴う降雨とともに、いわばウエットデポジットですが,雨で沈着をしていう分布がで形成されたということでございます。

 輸送・拡散については、細かいことはいろいろありますけれども、こういう分布の中で、さらにスケールアップして、今度はグランドという、そういう小さな領域で見ますと、図2のように、これは附属の中学校のグランドと私どもの大学のグランドなんですが、第2図のところでは、2倍から3倍ぐらいの放射線のばらつきが見られます。これは基本的にはSPEEDIというモデルがございますが、ああいうモデルも基本的には沈着量は雨の強さに比例して沈着をするという形で、モデルが組まれておりますけれども、グランドの状況を見ますと雨の強さだけでなかなか決まるものではなくやはり沈着したものが降水等でかなり流動化しているという様子がうかがえるかと思います。

 なお、水平方向のこういう分布というものは、大きいスケールで見たもの、小さいスケールで見たもので異なっています。

今度は放射能の鉛直分布で,地中の方はどうなっているのかということですが。図2の左側の図でございますけれども、日本原子力研究開発機構と一緒に附属の中学校、そこで実証試験をしていただきました。そうしますと、5月7日のデータですけれども、ヨウ素については大体10cm程度まで浸透しておりますけれども、セシウムについては大体表層2cmぐらいでとどまっているというのがわかります。そういう意味では、5月7日の段階では表層にかなりセシウムの量がとどまっている状況です。

 それから、さらに今度はグランドの上の方なんですが、これは放射ゾンデというゾンデがございますので、大体成層圏の下部まで観測を15日ほどやりました。その1つの例が第3図でございます。なお、平均値については、やはり補足資料2のところに平均図が書いてありますが、そこは対流圏圏界面の下のところでβ線が非常に強いところが、人工的なものだと思いますけれども、存在しているというのが平均的な像でございます。

 今日お示ししました第3図というのは、4月19日の例でございますけれども、ピンクのものがβ線、グリーンのものがγ線になっています。そうしますと、一番下は見づらいかもしれませんけれども、地表付近に一本線が入っているのがわかるかと思いますが、大体cpsで3.2ぐらいのものがあります。このとき地上での空間線量率は大体2マイクロシーベルト/hぐらいの強さでございます。これは一般の観測ではない地上付近の強度です。それから、2キロ付近ぐらいにスケールアウトしている量がございますが、このスケールアウトしているものをスケールアウトしなような形で右図にあらわしますと、大体cpsでβ線が8000カウント、γ線が7000カウントぐらいのものが出ています。今回平均値の段階では基本的にはノイズとして処理をしておりますけれども、第4図のように、我々のグループの中ではモデルをやっている方もいらっしゃいますので、そういう大循環のモデルとも組み合わせて、これが本当に説明できるのかどうかということをやったのが、第4図でございます。これはちょうどゾンデの飛揚時間と同じ時の計算結果ですが,福島県付近に赤いところが見えると思いますけれども、数値モデルの相対的に非常に高濃度な領域と一致しています。今後さらなる吟味が必要ですがモデルの確かさと我々のゾンデの確かさというのは、一定程度整合性を持っていると思っています。

 それから、3ページでございますが、では一体その空中に飛散されたものがどのように処理されるのかということでありますが、基本的にホールアウトという形で、乾性あるいは湿性という形で降下をしてまいります。そこで私が大学の屋上で3月1日から3月30日と、4月1日から20日まで、それから4月21日から5月9日までという期間で採取し、その降水の分析をした結果が、3ページの第1表にございます。大体このぐらいの量が降下量として地表に落下しています。土壌剥離ということ、あるいは除去ということが行われている中で、これが新たに放出されたものなのか、あるいは再度いわば飛散しているものなのかという、この辺が非常に重要な問題になってきまして、沈着量を精度よく評価することが重要な課題になっています。

 なぜ沈着量を精度よく計ることが重要かと言いますと、こういうホールアウトをしている中で、学校が抱えている課題は学校の校舎の窓を開いていいかどうか、これが実はこの夏に向かって大変現地では重要な課題になっております。空中にどれだけ舞っているかによって、開いていいかどうかという判断もありますし、それから、マスクの着用とか、長袖とか、こういう問題と実は直接関わってくるものですから、非常に単純な問題なんですけれども、重要な課題だと思っております。

 まず、土壌剥離の問題ですが、第5図を見ていただきますと、土壌剥離の前後でどのぐらい変わったのか。これは附属中学校の例でございますけれども、見ていただきますと、3マイクロシーベルト/hぐらいあったものが、0.15、20分の1です。それから、2マイクロシーベルトあったのが、0.22という、10分の1ぐらいになっています。大変興味深いのは、空間線量の強いところで非常に低減率が大きいことです。これは実は、セシウムの先ほどの表土の問題と関わって、比較的上に浮いている部分がすっと取られたことに依存するものと考えられます。表土相対的に多くの放射性物質があると空間線量率も高くなりますけれども、表土に深く入っているところは、全体的には空間線量率が低くなります。それが剥離することによって、わりとホットスポットなんかがきれいに消えてくるという、こういう構造だろうと思います。そういう意味で、空間線量率というのが水平分布の差異というものをつくっているという事例でもあるかと思います。

 次の4ページをお開きいただきたいのですが、この4ページの中、これは福島市のモニタリングポストの観測値でございます。第6図の中には、福島の3月15日からの推移が描いてありますけれども、3月15日の午前中というのは非常に低くて、従来の空間線量率です。ところが、3月15日の18時40分に24.4マイクロシーベルト/hというのが出て、それから急激にずっと減っていくという形になっているんですが、減っていく様子と同時に非常に規則正しいぎざぎざが見えるかと思います。それを拡大したのが上の図ですが、4月15日から6月8日まで描いてありますけれども、こういう状況です。

 これが一体何に起因しているのかというのは、窓をあけることと関わって、大変興味深いデータだと思っています。要するに、これは飛散によって起こっているのか、あるいは再飛来によって起こっているのかという、こういう問題が非常に大きな課題になっているわけです。いろいろ調べてみたのですが、今のところ、実はわかりません。わからないという難しさをお話ししたいとは思っていますが、要するに、太陽放射とか宇宙放射とかという形で放射線が変わるということも当然ございますけれども、そういう規則正しいものでもなさそうですし,それから、観測誤差という意味で、ランダムな誤差かと思うと、そういうホワイトノイズの誤差ではございません。例えば気象学的にいう境界層の飛散みたいなもので、風と関係しているのかと思って調べてみますと、第7図のように、片方の縦軸のほうが空間線量率の変動率をあらわしたものなのですが、風速と関係を調べてみても非常にランダムだということで、証明ができないという状況です。こうした中で、不安感が募ってマスク、長袖を着用しながら、例えば保護者の方が、少しでも放射線を少なくするために、草刈りをやったり、除草をやったり、あるいは高圧洗浄で洗い流したりということが現地では行われているというのが実状でございます。

 最後の5ページでございますが、このような実態を受けて、私ども、どういうことが今重要なのかということを最後にお話ししたいと思います。とりわけ私たちは、多分、子どもの安定ということを考えるためにも、親のいわば不安というものをきちっと解消していくことが非常に大切な時期に来ていると思っています。とりわけ見えない不安というのでしょうか、1つは放射線が見えない、放射能が見えないという、こういう見えない不安がございます。それから、何よりも、今の原子力事故の収束の見通しが立たない。あるいは、原子力事故の収束の見通しが立たないと同時に、収束後の見通し、何年たったらこれがもとに戻るんだろうかという、こういう問題も実は見通しが立たない状況にございます。それから、こういう原発事故に伴って、経済的な不安といいましょうか、打撃を受けて、経済的な不安があります。大きくこの3つの不安が、かなり子どもたちに大きく影響していると思っています。とりわけ放射能の見えない部分については、見えるような形にすればいいということで、測ればいいという、先ほどお話がありましたけれども、線量計が大分普及してきましたので、見えるようになってきた。見えるようになってきますと、今度は逆に、先ほど述べたホットスポットの問題がどんどん出てきまして、それをどうするかという問題が出てきていると思います。

 それから、もう一つは、やっぱり環境として問題になっているのは、避難所とか学校とか仮設住宅とか、さまざまな状況がありますけれども、例えば仮設住宅、あるいは避難所等では、もう毎日が修学旅行になっています。そういう状況も含めて、やっぱり子ども支援、あるいは家庭全体の生活支援をしていくような、そういう体制がやはり重要なのではないかと思っています。

 それから、これから福島は非常に気温が高くなります。今でも27~8度、30度という日々続くような状況になっています。そういう中で、窓を開けていいかどうかというのは計測すると,増加する時,減少する時,変わらない時と三様ですので、その都度計ってみないとわからないという状況で、クーラー設置という問題があるわけですが、クーラーを仮に努力をして設置したとしても、今度は実は電気量消費削減ということが経産省から出ていて、一律15%削減しろということで、実はなかなかクーラーをつけられないという、こういう問題も出てきております。そういう意味では、省庁を越えた統一した体制づくりというのは非常に重要だと思っています。

 それから、特に土壌剥離の問題は、かなり今回の実験で有効だと私は思っています。ただ、これがやはり公共施設全体に実施されるということが非常に重要に思っています。例えば、私立の保育所、保育園、そういう問題も含めた、公共施設、これは文科省だけでの問題ではないのですがやはり環境全体を考えたときに、そういう統合したものをしていかないと、市全体、あるいは地域全体、自治体全体の安定というものにはなかなか結びつかないのではないかと思います。

 さらに、ちょっと中長期的な課題になるかと思いますが、やはり今回、私も大学もそうですけれども、リスク管理、危機管理能力の育成、それから、放射能に対するリテラシー教育といいましょうか、こういうものもやはり教育体系の中にきちっと入れておくことが、今後重要な課題になっていくと思います。

 それから、少し学校教育から離れて、研究領域になりますけれども、現在非常に困っている課題といいますか、さまざまな形でサイエンティストが支援をしていただいて、現地に入って、土壌浄化等々、あるいは水の観察等々をやっていただいております。しかし、実はその観測した結果が、その都度研究者によって発表され,基準とか、評価がないまま発表するために、その都度地域住民が右往左往するという事態が実は起こっています。そういう意味では、やはり研究成果、あるいは研究成果の評価ということをやっぱり一元化することが必要だと考えております。その意味では、学協会を超えて、学術会議等がそういう役割を担う必要があるのではないかと思いますが、現地本部等をつくって、そういうものをきちっと評価するシステムというのが必要になっています。それから、最後に、研究成果に基づく実用化という問題から言いますと、かなりいろんな実験がされておりますけれども、評価を一元化しないと、実際には実現化には向かないだろうと思っています。そういう意味では、やっぱりScientific Committeeというものをきちっと位置づけて、そこから情報をきちんと発信する。その意味では、今回、農水省、環境省、文科省で共同でやっている土壌調査というのは1つのスタディケースになるのではないかと思います。こういう形で一斉に、いわば全体的に実施して、一様にデータを出すということが、地域の安全とか発展にもつながっていくというふうに思っています。

 現地の願いはただ一つであります。早くもとに戻りたい。安心して深呼吸をしたいというのが現地の願いでありますので、そういう方向でぜひご支援いただければありがたいということで、私のご報告を終わりにしたいと思います。ありがとうございました。

【平下学校健康教育課長】  ありがとうございました。

 それでは、引き続きまして、神田様からご発表いただければと思います。

【神田氏】  放医研の神田でございます。

 私はJCOの事故のときに線量評価を担当いたしましたが、ご自身の被ばくの程度を知ることで安心される方が多くいらっしゃいました。こうした経験から、これまでに医療放射線や職業被ばくのリスクコミュニケーションにも携わってまいりました。前回のヒアリングで、低線量の放射線影響について科学的に確定できない状況下にあって、安心を少しずつ確立して適切な判断をしていくためにはどのようにしたらいいかという問題提起があったと伺っております。そこで、福島事故のリスクコミュニケーションについて、少しお話しさせていただきます。

 下のスライドをごらんください。リスクをどうとらえるか、これは誰もが同じではありません。行政や技術者は、リスクとは損害規模と確率で決まっているものと考えがちですが、一方で、社会的なプロセスの中でリスクはつくられたものだと考える人たちもおります。社会学者や一般の方に多い考え方だそうですが、そういう方にとって、ゼロリスクでないならば、リスクの問題の核心は、誰の決定のせいで被害をこうむるかにあるのだそうです。こうした考え方の異なるステークホルダーの間でリスクコミュニケーションが行われると、リスクへの理解が深まり、適切に知識が知らされていると、満足している状態になる、そして信頼関係ができると、教科書的には書いてあります。しかし、今回のように全国民がステークホルダーである場合は、こうした効果が即効で得られることはかなり難しいと言わざるを得ません。

 1枚おめくりいただきまして、リスクコミュニケーションは大きく3つに分類されます。時系列で見ますと、1つ目がコンセンサスコミュニケーションで、リスクについての社会全体としての意思決定を助けます。2つ目はケアコミュニケーション、科学的に明らかになっているリスクについての情報共有です。このように、平常時に行われるものでは、情報発信側と受け手の両方が理性的な判断力等を持つことが前提とされています。一方、緊急事態直後のクライシスコミュニケーションでは、情報の受け手が冷静な判断力を失っていることを前提に、最低限の情報が一方的に伝達されることがあります。これはリスクを回避し、社会的混乱を沈静化するためです。災害発生後のケアコミュニケーションは、平常時のコミュニケーションが順調で、放射線に関する誤解がない、あるいは関係者間に信頼関係ができていると、ここでのハードルは低くなります。福島事故後、コンセンサスコミュニケーションが必要なケースが相次ぎました。校舎・校庭の利用基準に関することも、ここに含まれております。

 下のスライドをごらんください。問題点について、まずは概要をお話しします。

 1つ目は、事故の収束が遅れて、クライシスコミュニケーションの段階が長期化した点です。全国規模で見ると、事故当初からケアコミュニケーションが必要でしたが、対象・内容とも多様なニーズへの対応に時間がかかりました。

 事故後のケアコミュニケーションでは、まず放射線に関する数値の意味がわからないこと自体が不安材料になっています。また、情報を発信する側と一般の方とで、安全の意味にずれがあるようです。さらに、低線量放射線の影響について、わかっていない部分も多くあります。そこで、規制では原則安全側に考えます。しかし、多くの方が、放射線影響の知見と放射線防護のルールを混同して受けとめておられます。地域によっては、ケアコミュニケーション段階からクライシスに逆戻りするような事例もありました。不安と不満が募っていますから、これもリスクコミュニケーションの障害となっています。

 そして、事故後のコンセンサスコミュニケーションでは、こうした問題点すべてが関わってきます。特に責任の所在という点では、規制値の設定に原子力安全委員会や多くの専門家が関わったため、決定者が誰なのかというのがわかりにくくなりました。校舎・校庭の利用基準については、参考レベルの意味、判断の根拠など、説明が不十分であったと思います。

 これから先は、もう少し詳細な説明をさせていただきます。1枚おめくりください。

 まず、マスメディアの報道で、「大丈夫」「安全です」といった一方的な説明が目立ったという批判がありますが、クライシスコミュニケーションとしては、この批判は当たらないと思います。しかし、このステージが長期間続いたことも事実です。空間線量率の急上昇、水道水や食品からの放射性物質の検出といったことが連鎖的に起こりまして、この一つ一つが、被災者や親御さんたちにとってはクライシスでした。

 下のスライドの図をごらんください。「安全だ」「大丈夫だ」というメッセージは届いても、安心できない方々は、さまざまなネットサイトや電話といった手段を通じて、自分や家族が安全かどうかというのを知ろうと努力なさいました。こうした相談の受け皿や情報発信の役割分担が、自然発生的にできてまいりました。

 もう一度上のスライドにお戻りいただきまして、一方で、ケアコミュニケーションへの対応はかなり遅れました。これは、市役所や保健所といった市民のほうから相談を受ける側でさえ、情報を求めるような状況だったことによります。4月に入って公表される数値が飛躍的に多くなり、この数値の解説が重要な意味を持ってまいりましたし、個人が必要とする情報を抽出することが大変になってきました。一方で、電子機器を使わない、あるいは使えない状況におられる方々には、細やかでリアルタイムな情報が伝わりにくくなってまいります。

 1枚おめくりいただきまして、現在、リスクコミュニケーションを担っている媒体には、こうしたものがございます。それぞれの特徴を生かした役割を担っておりますが、その中でも今後重要なのは、地方自治体をはじめとする地域のコミュニティからの情報発信だと考えております。放射線は見えないから怖いと言われておりましたが、今では放射線は測定して、その値をもとに予防を考えるというベースが一般の方にも定着してまいりました。今後、地域のコミュニティが情報発信の中心になると、自分が食べている野菜、飲んでいるお水といった、住んでいる環境に応じた身近なデータが効率よく伝わるのではないかと思います。

 続きまして、下のスライドをごらんください。事故後のケアコミュニケーションですが、放射線を理解するのに必要な知識というのが特殊ですので、事故前のケアコミュニケーションが不十分だと、数値の意味がわからず、それ自体が不安材料になります。そして、知識の習得以上に、平常時でないと難しいものに、「安全」とは何かという概念の共有があります。欧米においてはリスクの概念が古くから定着していますけれども、日本では、リスクフリーの社会は現実にはあり得ないと考える方が増えているとはいえ、緊急時にはリスクゼロでなければ安心できないという心理状態になります。では、どのレベルまでを安全と呼ぶか。これは個人によって異なるのでしょうけれども、一般的には10のマイナス5乗から10のマイナス6乗以下だと言われております。こうしたことからも線量限度が定められているのですが、緊急時の安全となると、どう考えればいいのかわからなくなっているというところだと思います。また、原子力事故のような非自発的なリスクは、もともと容認されにくいものです。心理面を考えますと、100ミリシーベルトのリスクが受動喫煙よりも小さくても、容認できないということは大いにあり得ると思います。

 1枚おめくりいただきまして、前回長瀧先生もおっしゃっていたと思いますけれども、低線量放射線の健康影響については、まだよくわかっていない部分が多くあります。そこで、低線量の影響については、幅広い研究結果を包括的に評価する必要があります。こうした評価は、弊所の理事長が国の代表を務めております国連科学委員会が行っておりますが、下のスライドをごらんください。少し例を挙げてご説明させていただきますと、上の表は、主だった疫学研究をまとめたものです。右のカラムに過剰相対リスクとございますが、これは放射線を受けていない集団に比べ、調査対象のがんリスクがどれだけ高まったかを示しています。この値がゼロに近ければ、結果はネガティブで、放射線による影響が見られなかったということですし、プラスならば、影響が見られたということを意味しています。そして、この6個の研究を見ますと、高自然放射線地域住民の調査ではネガティブ、その他ではポジティブという結果が得られています。しかし、その信頼区間を見ますと、研究の中でもその質といいますか、信頼性にかなりばらつきがあることがわかります。

 さらに、上から2つ目の研究は、15カ国の原子力作業者のデータをまとめて解析した研究ですが、比較的信頼性が高い6コホートの結果だけ抜き出したのが下のグラフです。そうしますと、有意にがんリスクが上がったとしているのはカナダだけで、このカナダのデータが他の14カ国のデータを引き上げています。このように、低線量放射線影響については、個々の研究の詳細な評価も、そして、総合的な評価も必要です。

 上のスライドにお戻りいただいて、図のところをごらんください。専門家の意見は、このような「放射線防護情報の流れ」のどこを立ち位置として発言するかによって変わってきます。確かに専門家が皆同じことを言えば安心感は得られやすいかもしれませんが、こういった受け身の安心は、誤った記事を読んだだけでも簡単に揺らぎます。むしろ、今はいろんな情報から取捨選択して、自分の受けている放射線を理解して、扱い方を身につけていくのを目指すステージだと思っております。もちろん、今全員がそういうステージではなくて、ただただ不安だという方も多くいらっしゃいますが、しかし、能動的なアクションをとることで徐々に解消される不安もあると思っています。

 1枚おめくりください。放射線防護では、科学的知見の不確実性や複雑さは、単純化して割り切ります。その割り切りの国際的なコンセンサスがICRPの勧告です。しかし、どこまでが科学で、どこからが割り切ったのか、これがわかりづらいんですけれども、これには理由があります。例えば食品中の化学物質の規制では、リスク評価のもとになるのは主に動物実験で、その実験結果からヒトの規制に適用するルールがあります。しかし、放射線の場合は、リスク評価もヒトの疫学データが中心なので、どの部分が割り切られたかというのがわかりにくくなっております。

 今後ですが、専門家の役目は、福島の方々の取組をサポートすることと、誤解の解消にあります。今後、一般の方の中には、みずから放射線測定をされる方が増えてくると思いますが、これ自体は大変いいことですが、特に機器の読み取り値がシーベルトであることで、さまざまな誤解を生むことが予想されます。

 下のスライドをごらんください。今度はコンセンサスコミュニケーションについてですが、事故対応には、国内法令に取り入れられていないICRPの新勧告が根拠になる場面が多くありました。特に「参考レベル」というのは、合理的に線量低減を行うための方策で、参考レベルを超える集団から優先的に線量低減策を講じていくための目安ですが、そのあたりが伝わらなかったかと思います。また、参考レベルが現行法令上法的規制力を持たない中、どの地域は収束後の回復期とみなして、参考レベルを適用して低減策を講じるのか、いつまでどこまで低減するのかといった明確なメッセージが見えなかったのも、事実上の線量基準の引き上げのように受けとめられたかと思います。

 1枚おめくりいただきまして、校舎・校庭の利用基準については、なぜ20になったのかという、その根拠はあまりオープンにはなりませんでした。しかし、20ミリシーベルトという領域は、リスクが小さいだけで説明がつく領域ではないと思います。例えば医療被ばくの場合ですと、CT検査を患者さんに説明する場合には、リスクの小ささのみではなくて、検査のベネフィット等を説明して、正当性、あるいは防護の最適化についてご説明します。そもそもヨウ素の半減期や生活の大半を家で過ごすことにかんがみると、毎時3.8シーベルトと年間20ミリシーベルトとの間に大きな飛躍があります。まして線量の低減を行うのであれば、毎時3.8シーベルトが1年間続くことはないはずですが、4月の時点ではそのあたりの説明も足りなかったのではないかと思います。

 市民は、決定責任者からタイムリーな説明を求めています。緊急時のコンセンサスコミュニケーションは、通常どおりと同じというのが無理だと誰もがわかっていますので、ホームページを利用するのも1つの手です。作業者の線量を引き上げたときには、放射線審議会が市民に向けてのメッセージをホームページに掲載いたしました。放射線の規制基準が、放射線影響からだけではなくて、社会学的な配慮からの総合的に判断されるという以上、判断の正当性は、意思決定のプロセスの透明性と説明責任の履行によって担保されると私は思っております。

 下のスライドでは、最後に私の考えるリスクコミュニケーションのあるべき姿をまとめてみました。

 以上でございます。

【平下学校健康教育課長】  ありがとうございました。

 引き続きまして、中川様からご発表いただければと思います。

【中川氏】  東大病院の中川でございます。私は放射線治療を専門とする医者であります。がんの臨床医であります。

 最初の1ページ目の上のスライドですが、利益相反なしと書いてありますのは、我々が学会発表のときに求められることで、私も実はよく御用学者、あるいは、東京電力から寄附をもらっているのではないかというようなことを言われるのですが、東京電力をはじめとする電力業界からは一切寄附を受けておりません。御用学者を言われるのも、ちょっと間尺に合わないところがあるんですが、「利益相反はなし」と書かせていただいています。

 ALARA、これは1ページ目の下に書いてありますが、社会的、経済的要因を考慮した上で、合理的に達成可能な限り、放射線被ばくを低く抑える、これは当たり前の考えでございます。というのは、被ばくを受けていない生き物は一つもないからであります。これは量を下げるということしかできないということです。そして、ご承知のように、放射線障害防止法では、現在、一般人の線量限度を1ミリシーベルト/年ということに定めております。

 めくっていただいて、ただ、ここでよく一般の方に誤解のある点を確認したいんですが、1ミリシーベルトに被ばく量を抑えるのではないということなんですね。自然被ばくは、世界平均で2.4ミリシーベルト、日本で1.5ミリシーベルト、日本は自然被ばくが少ない国でありますが、さらに医療被ばくがございます。日本人の場合には、平均2.3ミリシーベルト。つまり、ベースラインとして3.8ミリシーベルトがあるんだということ。これ以外を1ミリシーベルトにする。つまり、簡単に言うと、被ばく量を年間5ミリシーベルト以内にしようというのが現在の考え方であります。これは1ミリシーベルトではなくて、5ミリシーベルトということですね。よく国民の方に知っていただく必要があります。

 2ページ目の下は、日本の自然被ばくの分布でありますが、これ、実は西高東低なんですね。実は西日本のほうが多いのであります。一番少ないのが、実は東京、神奈川なんですね。これはなぜかというと、関東ローム層によって大地からの被ばくが遮へいされているから。つまり、東京から西日本に逃げていくべきではないということになるんですが。例えば岐阜と神奈川の間には、0.4ミリシーベルト/年の差がございます。例えば今の東京のレベルは、ローマやロンドンよりも低いということになります。

 次のページ、3ページ目でございます。医療被ばく、これは私どもが直接関わる領域でありますが、私の専門の放射線治療では、多くの場合、1回2シーベルトを照射します。前立腺がんの場合には、38回で76シーベルト、つまり、7万6000ミリシーベルトを人体に照射する。それも外来通院で行われるわけです。つまり、コントロールされた被ばくというのは問題にならない。日本は年間2.25ミリシーベルト、これは実は世界で最も高いんですね。世界のCTの実に3分の1が日本国内に保有されています。そして、CTスキャンでは、1回7ミリシーベルト程度の、これは装置や検査法にもよりますけれども、7ミリシーベルト程度、つまり、3回受けると20ミリシーベルトに到達するわけです。

 つまり、この1ミリシーベルトという公衆の被ばく限度は、自然被ばくと医療被ばくの上乗せでありますから、被ばく量全体で見たときには、医療被ばくということも含めて、全体として考える必要がある。そして、実は、その下のLANCETの論文が引用されていますが、ここでは日本のがんの3%以上が医療被ばくによって発生するというふうに記載されています。この論文の考え方に問題がないとは言えないんですが、こういった指摘もあります。ともかく、医療被ばくは日本が世界一であることを指摘しておかざるを得ません。例えば、現在、法令では、会社員の方は、20歳であっても毎年レントゲンを撮るわけでありますが、これは我々臨床医から見ていると、やや疑問であります。何を目的にしているのか。おそらく結核を発見するということですね。しかし、ご承知のように、結核の罹患率、死亡率は大変低くなっておりますので、これを機会に、医療被ばくに対する見直しを含めた議論がなされるべきだろうというふうに思います。

 次のページをめくっていただきまして、ALARAの考え、簡単に言いますと、放射線による被害と、防護に伴う被害、これをバランス、最適化していく必要があるということなんですね。放射線による被害とは、これは発がんリスクの上昇であります。確定的影響が一般公衆に起こるということはあり得ません。ですから、放射線による被害というのは、発がんリスクの上昇ということになります。放射線の防護による被害というのはあります。学童の場合には、避難、あるいは集団転校、あるいは日常生活の制限などであります。適切な発育を妨げるということにあります。福島県では「最初で最後のプール」という報道もあります。福島市では、屋外のプールの使用が制限されているために、限られた室内プールをさまざまな学校が利用する結果、この夏、各校1回しかプールに入れないという事態も起こっています。これはやはり学童の適切な発育を妨げる可能性があります。

 その下、放射線リスクのとらえ方ですが、ここを今日最も指摘したいんですが、3つの側面があると思います。1つは、放射線の人体に対する影響の「科学」、そして、この防護に関する「哲学」、あるいは「倫理」と言っていいかもしれません。そして、プラスマイナスをバランスをする際の「価値判断」、この3つが絡み合う問題になります。

 次をめくっていただきまして、確定的影響と確率的影響、これは皆さんご承知のとおりで、ヒトの場合には、確率的影響というのは発がんと置きかえてよろしいと思います。遺伝的影響が、これまでのヒトに関するデータでは指摘できないからであります。そして、この確率的影響、つまり、被ばく線量と発がん率との関係についてのデータは、先ほど神田先生のご発表にもありましたが、およそこの3つ、広島・長崎の被爆者のデータ、そしてチェルノブイリなどの原発事故のデータ、そして原発作業者のデータなどであります。

 めくっていただきまして、しかし、チェルノブイリ、今回の福島第一原発の事故を含めますが、原発事故においては、線量と発がん率との関係は非常に不明確であります。というのは、ホットスポットなど、先ほど最初のご発表にありました、学校のグランドの中ですら、実は極めてモザイクである。そして、人々がどこをどのように通ったかというのは、内部被ばくもそうですが、これはわからない。つまり、原発事故においては、個人の被ばく線量は、線量計を持ち続けない限りわからないのであります。これはチェルノブイリでもそうですね。ですから、原発事故のデータは実はあまり有用なデータにはならない。そして、原発作業者、これは先ほど神田先生のお話の中でもありましたが、しかし、実は原発作業者の方、生活習慣がどうなのかということを見てみますと、これが下の論文でありますけれども、これは日本の原発作業者の生活習慣を見た論文であります。めくっていただきまして、男性作業者、これはほとんど男性なのでありますが、原発の作業者の喫煙率というのはかなり高いんですね。これは想像できるかもしれません。そして、実は被ばく線量と喫煙率というのは、下のスライドのように、相関関係があるんですね。多く被ばくされてきた方というのは、実は喫煙率が高い。めくっていただきまして、実は飲酒もそうでございます。これが今回の福島第一原発に当てはまるかどうかわかりません。しかし、過去の原発のデータでは、そういった情報が出ております。原発作業者に関しては、実はもう少し生活習慣を洗い直して、それによって、交絡因子と我々は言っておりますけれども、被ばく以外の要素を正確に把握すると、実は精度のいいデータが出てくる可能性があります。

 一方、広島・長崎での原爆被爆では、これは線量評価が非常にできるわけです。これは、言葉が悪いかもしれませんが、「ピカドン」でありますので、そして、残留放射線がないわけではないんですが、原爆による放射線被ばくのほとんどが、実は一瞬の被ばく、ガンマ線と中性子線であります。したがって、これは炸裂した爆弾からの距離によって決まります。距離二乗に反比例するわけですが。ですから、「あなたはあの爆発のときにどこにいましたか」と聞けば、これは個人の被ばく線量が決定される。そして、その方々に「がんになられましたか」「がんで亡くなりましたか」と伺えば、そして、これはがん登録によって行われていますが、線量と発がんの関係に関する最も正しいデータが得られるということになります。

 ただし、1点難しいのは、これが一瞬の被ばくであるということなんですね。通常、原発事故の公衆の被ばくというのは、低線量率被ばくということになります。年間で20ミリシーベルト、これは10年間浴びて200ミリシーベルト。一瞬の200ミリシーベルトとは全く違うんです。この換算は、実はdose and dose-rate effectiveness factorという長ったらしい係数なわけですね。この係数は、実はICRPでは、2から10の間と見積もっております。2から10、5倍違うんですね。これは安全のために、今、2を使っております。つまり、一瞬の100ミリシーベルトに対して、徐々に被ばくした場合は、200ミリシーベルトが相当するという考え方。逆に言うと、今の原発作業者の方が短時間に、例えば1時間程度に250ミリシーベルト浴びるということは、実はこれは低線量被ばくで考えると、少なくとも2倍の影響があるということ。ですから、私、実は作業者の方については、かなり心配をしております。

 さて、次のページをめくっていただきたいんですが、そういう線量率効果はともかくとして、広島・長崎でどれくらいの被ばく量からがんが増えたかというと、100ミリシーベルト以上であります。100ミリシーベルトを超えますと、直線的に発がんが増えていくということであります。下に書いてありますが、100ミリシーベルトで、がんによる死亡率が0.5%程度上昇する。これが我々が知っているすべてであります。

 これより下の線量、次のページをめくっていただきますが、100ミリシーベルト以下で発がんが増えるかどうか、これはわかりません。なぜわからないのか。その前に、この100ミリシーベルトからゼロまでをどうつなげるかということは、わからないですね。ホルミシスなどという考え方があります。これは、低線量被ばくによって人体にプラスの作用がある。これは下のグラフの横軸の下に行っている、つまり、発がんリスクが下がるということですね。あるいは、その上の、低い線量ではゼロであって、それがあるところから増える。これはしきい値があるということですね。しきい値があるという考え方です。人によっては、低い放射線のほうががんが増えるという方もいます。これは直線の上側です。しかし、これは多分ないだろうと多くの方が考えています。そして、わからないんだけれども、念のために直線で引いてしまおうという考え方、これがlinear non-thresholdモデル、直線しきい値なしモデルです。これは科学ではありません。このように考えることにしようという哲学であります。

 私は個人的には、より低い線量になると発がんが増えない可能性もあるのではないかなと想像しています。これは想像です。というのは、生き物というのは39億年間放射線の中で進化してきましたので、この低線量の被ばくには常にさらされていますので、これを修復する仕組みがあるからであります。今これを論ずるつもりはありませんので。ただ、このつなげてしまうLNTモデルというのは、科学ではなく、哲学に属します。

 なぜわからないか。100ミリシーベルト以下ではわからないか。これは次のページをめくっていただきますが、これは国立がん研究センターの津金先生がお出しになったデータですけれども、放射線の全身被ばくと他のリスクとの比較したものです。100ミリシーベルト以下では検出不能、がんが増えているというデータはありません。野菜不足が200ミリシーベルト程度、受動喫煙が100ミリシーベルト程度、例えば運動不足、塩分とりすぎも200ミリシーベルト以上、毎日2合お酒を飲む、私などがそうでありますが、これは1000ミリから2000ミリシーベルトに相当、たばこを吸うと2000ミリシーベルトを超える。放射線被ばくを容認する立場で私はありませんが、つまり、他にも多数のリスクが存在する。そうすると、100ミリシーベルト以下では、このような個人の生活習慣の差の中にすべて埋没してしまうわけであります。だから、わからないというのは当然なんですね。広島・長崎の方に、一人一人、「あなた、野菜が好きですか」「塩分をとっていますか」「奥さん、ご主人はたばこを吸っていますか」ということを聞いているわけではないということなんですね。

 次のページをめくっていただきます。その結果、このしきい値が仮にあったとしても、多数の誤差要因があるので、ばらつきが大きくなる。この上の2つのグラフの右のようになってくる。右のようになってくるということは、実はこれは直線化仮説と同じことなんですね。したがって、下のグラフのように、これは非常に低いところについては、いろいろデータをとってもわからないんですね。つまり、100ミリシーベルト以下についてはわからない。わからないけれども、考え方として、哲学として、姿勢としてつなげようというのが今の考え方であります。

 次、めくっていただきまして、これもしつこいんですが、ICRPのPublication 99の結論はこうなっています。放射線発がんに関するしきい値は、存在することは完全には否定できない。しかし、ユニバーサルなしきい線量が確実に存在するとも言えない。だから、防護の考え方としては直線につなげようということであります。で、この下の直線しきい値モデルというのが、現在採用されているわけなんですね。

 次、おめくりいただきまして、したがって、100ミリシーベルト以下の部分を「科学的」に使うことは間違っています。つまり、科学ではなくて、哲学ですから、例えば100ミリシーベルトで0.5%ですが、これ、直線につなげますと、1ミリシーベルトを100万人が被ばくしても、100ミリシーベルトを1万人が被ばくしても、これは両方とも50人のがん死亡が上乗せされるという計算になるわけです。100ミリシーベルトを1万人のほうはまだいいんですね。これはデータがあるから。しかし、1ミリのところは、これはつなごうというのは哲学であって、科学ではないので、こういった計算をしてはいけないというのがICRPの考え方であります。ともかく、この直線しきい値なしモデルは哲学だということを、再度繰り返しておきます。

 次をめくっていただきまして、安全か危険か。上のほうの棒グラフ、これは確定的影響ではこういうことが言える。つまり、しきい値があれば、そのしきい値より少なければ安全、それよりも高ければ危険というふうに言えます。しかし、先ほど申し上げたように、直線でつなぐということは、下のように、純白から純黒まで、常にグレーであるということ。要するに、0ミリシーベルト以外はすべて完全に安全とは言えないということなんですよね。純白は0ミリシーベルトだけだということになります。したがって、実はこの安全基準というのは、社会がつくるしかないんですね。というのは、どんなにやったって、先ほど申し上げましたように、自然被ばくと医療被ばくを含めると、4ミリシーベルトというのがベースにある以上、完全な純白というのはどこの国にも存在しないからであります。

 したがって、ICRPも、こういった原発事故については、目安を社会が決めるべし。例えば、現在の状況が、緊急期なのか、復旧期なのか、私が判断する立場ではないんですが、目安は緊急期から復旧期にはやや下げていく。緊急期には20~100ミリ、復旧期には1~20ミリシーベルト、平時は法律上の1ミリということになるんですが。しかし、これを3つに分ける理由もないんですね。もともとグレーですから、白から黒まで常にグレーですから、これは社会が段階的に決めていいというふうに私は理解しております。

 次、めくっていただきまして、単一の基準は存在しないんですが、しかし、平時においては、リスクがとても十分低いレベル、これが1ミリシーベルトであります。しかし、今、このとても十分に低いということを実現するには、あまりにもコストが見合わない状況であります。したがって、合理的に十分低いというレベルまで少し上げるというのは、ALARAの考え方であります。

 次、めくっていただいて、しかし、それを十分に低い、そして、最終的には、もとのリスクがとても十分に低いところまで段階的に下げていくというのが、ICRPの立場、そしてALARAの姿勢であります。

 次のスライドを見ていただきたいんですが、しかし、基準値を4ミリに、つまり、医療被ばく、自然被ばく以外をゼロにするということは、これはコストが甚大になりますので、見合わない。あくまでもこのバランスということになります。

 さて、現在、1ミリ、20ミリ、さらにこれを1ミリに戻すというような議論があるようですが、私は、この3段階説にとらわれるのはちょっと難しいのではないか。人の心は、やはり一気に20倍、そして、一気に20分の1というのは、ちょっとそぐわないような気がします。私は、一たん10ミリという基準が仮にあってもいいような気がしております。

 次、めくっていただいて、実際にICRPのPublication 96では、表3.1というような表が掲げられております。極低線量、約10ミリシーベルト以下(実効線量)、この線量では、「大きな被ばく集団でさえ、がん罹患率の上昇は見られない」と記載されています。ICRP勧告にこう明記されているので、例えば、こういった数字を使うというのも一考に値するのではないか。最終的には、これは利益関係者、特に住民が、どの目安を使うか決めるというべきだと思います。そして、そのようにICRPの勧告でも定められております。

 最後のページになりますが、この直線しきい値なしモデルというのは、実は非常に哲学的なものなんですね。そもそも基準などというのはあり得ない。しかし、人々の心に安心を与える目安というのは必要だろう。しかし、その目安をどう設定するかは状況によって変化する。したがって、社会がつくるべきもの。そして、この合意形成に住民が十分参加する必要がある。

 最後に、"純白"は存在しないということ。「目安」というものはあったとしても、しかし、これをさらに下げることができるならば、リスクは下げたほうがいい。目安のところでも純白ではないからであります。しかし、このリスクの低減のみに社会が特化するならば、ほかのリスクが大きくなる、あるいはリソースの浪費になります。そして、このバランスは、社会が決定すべきである。したがって、日本人にやや見られる、白か黒かの「二元論」というのが、実はALARAの考え、あるいは、この直線しきい値モデルに大変そぐわないという問題があります。

 そこで、最後にもう1枚ありましたが、学校で教育を行う必要があります。私はがんの臨床医ですが、日本の一般市民が、がんのことを非常に知らないことによって損している。これは当たり前ですね。敵を知らない戦争というのがどういうことになるのか。日本は世界一がんが多いんですね。2人に1人ががんになるにもかかわらず、やはり学校の中でがんの教育はなされていない。そして、唯一の被爆国にもかかわらず、放射線教育はなされていない。広島・長崎の被爆者の方が大やけどをされた、あるいはケロイドができた。ここに放射線は一切関係していません。4シーベルトの全身被ばくでヒトの50%が60日後に亡くなりますが、その際の皮膚の温度上昇は、1000分の1度であります。したがって、やけどと放射線は一切関係ありませんが、多くの国民は、放射線によってやけどが発生していると誤解しております。こういったことをやはり教育していく必要があると思いまして、余談的になりますが、『放射線のひみつ』という本を出版したり、「がんちゃんの冒険」といった、がんの教育のアニメなどを作成しております。

 長くなりました。以上です。

【平下学校健康教育課長】  ありがとうございました。

 それでは、明石様からご発表いただければと思います。

【明石氏】  千葉大の明石でございます。

 大きく2つのことを申し上げたいと思います。1つは、中長期にかかわることでありまして、2番目は、具体的にどうすればいいかという具体的な提案でございます。

 1番目が、新たな教育発想の大転換をしたいと思っております。例えば、16年前の阪神淡路大震災が残した教育的な遺産がございます。1つは、ボランティア活動が市民権を得たということですね。ボランティア・コーディネーターという言葉が生まれました。ボランティアセンターという言葉も、阪神の遺産から出たと私は思っているのです。これは第1点。

 2点目が、兵庫県で「トライやる・ウイーク」が始まりました。中学校2年生の職場体験活動です。約3億5,000万円かけてやっていると言われます。それで、1週間の体験をすると、不登校の生徒の3分の1が学校に復帰しております。文科省も予算をつけて、全国で「トライやる・ウイーク」の全国版が出てきております。これがいわゆるキャリア教育と今進んできている段階でございます。

 2つ目は、10年前の大阪教育大の池田小学校での事件から、「安心・安全」という教育が叫ばれました。「スクールガード」とか「8・3運動」、午前8時に散歩しましょう、午後3時にもう一度犬を散歩しましょうという、地域の方々が地域の安全を守っていきましょうということですね。

 今後、今回の東日本大震災でどんな教育遺産を残すかということをやらないと、国民は納得しない。そこで、それを本気で考えていきたい。

 1つが、中・高校生――阪神では学生と若者のボランティアは多かったんです。今回、報道を見ますと、中学生、高校生が、部活動を中止して、ボランティアをやっています。これは非常に元気をもらったということなんですね。そういう意味では、もう少し中高生のボランティアを普及させることが可能かなと思っております。

 2番目が、元気が出る・勇気を持てる「言葉」の収集。春の選抜野球がありました。あのキャプテンの選手宣誓というのは、非常に国民にいい勇気を与えましたね。それから、立教の志木高校の卒業式のときに、校長先生が高校3年生に祝辞を述べております。これも非常に元気が出る言葉。順風満帆にいきませんけれども、困難に出会っても、頑張る言葉を発しています。

 3番目が、「とっさの判断ができる」とか、言い伝えがあります。「とにかく裏山に逃げろ」。残念ですけれども、石巻の大川小学校、108名いまして、68名の方を亡くしております。非常に悔しいのです。あの先生の避難訓練は間違っていないのですよ。校庭に集まって、並んで点呼して、これまでの防災のマニュアルどおりやってきたのです。それで、残念ながら、尊い命を失った。それが、とにかく裏山に逃げるという小学校は、多くの方が助かっているのですね。漁師さんたちの「とにかく沖に出ろ」、こういう言い伝えもばかにできないのです。そういう日本人の知恵を残していくという、また、伝えていくという活動が要るかなと思います。先ほども中川先生のご発言を伺いまして、がん教育と放射線教育というのは、私は、この東日本大震災を受けて、ぜひこれは残していきたい、と思います。非常に目からうろこという感じがいたしまして、そういうものを残していきたいと思っております。

 具体的に、子どもたちは、もう日常困っております。そこで、まず放課後子ども教室を充実させる。これは文科省がやってくれておりますけれども、これをもっと徹底させる。特に屋内、教室や体育館、廊下がありますね。もうちょっと廊下文化を見直してもいいと思うのですけれども、そこでの生活体験を豊かにする。具体的には、午後3時から午後7時までの学校の屋内での遊び空間を保障する。「伝統遊び」、手遊びとか口遊びとかありますね、こういう遊びをたくさん用意して、選択してもらう。それを誰が担うかというと、NPO・ボランティア等に遊びの世話を頼んで、これを有料のボランティアにする。雇用促進でやったらどうか。次は一番大事なんですけれども、歩数計を子どもたちに貸与して、1日に1万5000歩歩く運動量を保障する。実は東京都が、文科省の体力測定で、全国平均を下回ったのです。教育委員会が本気で、小学生に1日に1万5000歩歩きましょうというガイドラインを設けたんですね。それで体力増進運動を東京都はやっております。特に福島とか、屋外に出られませんから、屋内だけでも1万5000歩の歩数を確保しましょうという運動を起こしていきたい。次は、体育館で「くじけず、元気が出て、勇気をもらえる」名画を上映する。例えばNHKのBSで、山田洋次監督名画100選をやっておりますけれども、ああいう映画を見て元気が出る、これを体育館で上映する。多分、50歳以上の方は知っているのですよね。昔、グランドで幕を張って、16ミリで映写しましたね。ひとりで見たらだめなんですよ。やっぱりみんなで見ることによって、共通な体験をしていくということが必要ですよね。当然ながら、おやつも用意する。おやつは宅配で、NPOにお願いしていくとか、そういうことがすぐできるかなと思っています。

 2つ目は、夏休みや土曜・日曜日に学校単位・地域子ども会単位で青少年施設でのキャンプなどを体験する。ほかの子どもとの交流をする。やっぱり海彦と山彦の交流をたくさんしていくということが大事になる。

 それで、土曜日・日曜日には中学生・高校生のボランティアを募り、小学生と一緒に遊んでもらう仕組みをつくるということも必要になる。

 4番目が大事なんですけれども、夏休み短期「山村留学」をして、農業体験・漁業体験をしてもらう。簡単に積算しますと、5泊6日の三食付きで、約1万円弱でできるんです。そうすると、もう福島の小学生全員に、夏休みに5泊6日の短期山村留学、漁村留学でもいいんですけれども、そういうのを保障していくという。だから、日常的には1万5000歩を保障し、長期の休みでは、こういう5泊6日の、または1週間程度の短期山村留学をしてもらうという、それを政府が責任持って行うというのです。

 最後なんですけれども、7月と8月を、東日本を中心とした体験活動月間にする。それで、体験活動カードをつくり、夏休みのラジオ体操を経験しましたけれども、体験したら判押ししてもらい、ここまで到達すれば元気になるんですよという目安を作り、子どもの行動空間を広めていくのです。それで、結果としてストレスの解消につながるということがあるかと思っております。

 以上、提案いたしました。

【平下学校健康教育課長】  ありがとうございました。

 それでは、ここから質疑応答に移りたいと思います。よろしくお願いいたします。

【笹木副大臣】  まず、渡邊先生のお話の中で、学協会を超えたScientific Committeeを設置し、統合・統一した確かな情報の発信が必要、評価の一元化というお話もありました。本当にそのとおりだと思うんですが、いろいろ研究者の方とか学会の構成員の方でも、かなり意見が必ずしも一致していない。そんな中で、先ほど現地対策本部で何らかの発信をというお話があったと思いますが、ここをもう少し詳しくお聞きできたらなと思います。

 それと、神田先生は、こちらからの説明で、例えば、時間とともに3月以降、どんどん線量が減っていく、こうした説明とか発信が足りなかったのではないかというお話がありましたが、大臣以下、記者会見とか、あるいはホームページ等で、そこら辺はかなりやっているつもりなんですが、同時に、なかなか届いていないというのも自覚しており、具体的にこういうことをやったらいいんじゃないかと、そういうようなアドバイスを頂ければありがたいと思いますが。

【渡邊氏】  では、私のほうからコミッティの話を少し追加させていただきたいと思います。

 これは学校環境を守るという意味でも、先ほど私、気象学的な観点から、実はいろんな問題があって、なかなか一元化できないというお話をいたしました。とりわけ現在コミッティの重要性を考えているところというのは何かといいますと、例えば土壌浄化に関わった問題です。これはチェルノブイリの実験なんかも踏まえて、ヒマワリとか、そういうものが植えられていますけれども、それが本当にどの程度の効果があるのか。私は生態のプロではありませんけれども、ああいう大径木を育てることによって、今表土2cmぐらいのところにのみ集中して存在するセシウムが本当に取れるんだろうかというのは、素人考えでも非常に難しい問題だと思うんですね。ところが、やっぱり1つの運動といいましょうか、そういう形でものが動いています。地域の自治体というのは、ある意味で藁をもつかむ思いで今おりますので、いろんな方たちとコネクションしようというのが今の実態であるわけです。そういう中で、サイエンティストが先進的に入ってこれれて、現地を支援するのは良いことで,ある意味でボランティア精神でやってこられる方がたくさん今福島におります。それはすごく評価いたします。

 ただ、それを本当に今農家の人が受け入れて、土壌浄化をして、作物をつくっていくときにどれだけ役立つのか。これはきちんと評価をしないと、実践的に使用できないと思います。そうした観点から評価というものをきちんとやれる組織というのが必要です。、農水省がやります、環境省がやります、文科省がやりますという、こういう体制の中では、なかなか地元には、先ほど幾つかお話をしましたが情報が錯綜して、決して改善にはつながらないと思います。

 私は、もし提案がお許しいただければ、やはり今のコミュニティを守るという点から言うと、農家の人に実証試験をやっていただきたい。科学コミッティが、例えばクローバーをやるとか落花生をやるとかという、いろんな雑草も含めた、実証試験を農家の人にやっていただくことによって、農家の人を雇用しておき、あるいは、そこの現地をまもっていただく。そういう形で、いわばその成果についてコミッティが判断をして、これがいいぞという形で一元化をしていく。それが非常に重要な時期に来ているというように思います。これは決していろんなサイエンティストが福島に入っていろいろ実験をやる、あるいは、いろんな省庁が入って実験・観察をやるということを阻止しているわけではありません。そういうものは非常に地元としてありがたいんですが、評価はがやっぱり一元化しないと、実践にはならないだろうと思います。

 むしろ、逆に言いますと、今福島では、私の大学もそうですが、日に二、三件ぐらい、いわゆるまがい商法が入ってまいります。要するに、この土だと、埋めると70%放射線が低下しますのでグラウンドに入れてくださいという、廃棄物業者から、遠心分離器で、お金はただで結構です、ただし東電から取りますので、これでセシウムが分離できますとか、そういう形で、まがい商法が実はもう現地にはびこっているという状況がありますので、こういうことの不安から解消するために、できるだけ早く学協会、省庁を超えたような、そういう組織づくりというのが非常に重要になっているのではないかと思っております。

 以上です。

【神田氏】  主に4月の時点でのご説明内容について申し上げさせていただきたいんですけれども、放射線ヨウ素につきましては、半減期が短いので、線量が1カ月でがたんと下がったというのは、皆さんおわかりいただけたのではないかと思うんですけれども、その先、放射線セシウムが中心になってからですと、自然に任せてというのであれば、なかなか減衰しないだろうということで、そこを具体的にどういうふうに低減するのかということに関しては、やはり説明が求められたのではないかと思います。

 それから、3.8マイクロシーベルト毎時ということを出した根拠も、やや説明が難しい、いろんな仮定のもとに考えられたというのも少しわかりにくかった。

 そして、最も重要な点は、事故収束がいつなのかわからなくて、あとどれだけの被ばくがこの先あり得るのかというのがわからないことです。子どものことを考えるときに、学校だけの被ばくを考えるわけではありません。このぐらいまではがんのリスクの上昇が比較的小さいということがわかっていても、今がどこまで被ばくをしていて、この先どのぐらい余裕があるのか、それは学校だけに限らない、食べ物からの内部被ばくも全部含めてですが、そういったことが見えない中で、不安が大きかったということだと思います。

【中川氏】  渡邊先生にお尋ねしたいんですが、先生の資料の中で、放出される放射性物質が減ってきたけれども、ゼロではないというような。これは5月9日が最後になっておりますが、現在はかなり少ないのではないでしょうか。

【渡邊氏】  はい。少ないと思っています。ただ、先ほどちょっと申し上げましたように、このグラフをどのように見るかということなんですが、福島のモニタリングシステムのぎざぎざした変動、これが再飛散なのか,新しい輸送なのかということについては、ちょっと今判断がつきません。ただ、ヨウ素なんかが出ているところを見ますと、新しい輸送ということも考えられるのではないかということがあるものですから、そういう意味で、子どもたちがマスクをしたり、多分ご存じかと思いますけれども、非常に暑い中、マスクをしたり、長袖を着て登校している、そういう現状が起こっているということなんですね。

【中川氏】  東京でもやっぱりマスク、長袖は多いようですよね。

【渡邊氏】  逆に先生にご質問したいんですが、やっぱりALARAという、今,やろうとしているこの政策は、大変私はいい政策だと思っているんですけれども、例えば、この論理、必ずしもリーズナブルではないのかもしれませんけれども、個人に適用したときに、やっぱりALARAといいますか、可能な限り少ないほうがいいということになってくると、子どもたちを、屋外であれ、屋内であれ、運動させようとすることと逆な方向に、個人のALARAというのは動いていくのではないか思います。要するに、個人でも、被ばくを少なくしようと思うと、マスクをしますし、屋外より屋内の方が被ばく量が少なければ外に出ないしということになるのではないでしょうか。

【中川氏】  ALARAというのは、低くしようではないですね。合理的に低くしようということで、逆に言うと、被ばくは常にありますよということであります。繰り返しですが、1ミリシーベルトというのは、4+1=5ミリシーベルトであるので。医療被ばくはゼロにできますね。これはもうレントゲンも全く受けないということをすれば。しかし、日本は世界一放射線被ばくが多いというものの、世界一の長寿国です。それを達成する中で、医療のフリーアクセスというのは大変重要な役割をしているのも確かなんですね。

 神田先生がお話しになりましたが、インド、中国では10ミリシーベルトを超える。そういうところが確かに多いわけで、東京から岐阜に行けば、それで年間0.4ミリシーベルトですので、あるいは、ニューヨーク・成田間で0.2ミリですね。7回往復すると、日本の年間被ばくになってしまうわけです。ちなみに、今、「きぼう」に向かっている古川聡さんというのは、東大の外科の先生で、私も一緒に仕事をしましたが、あそこの環境だと、1日で1ミリシーベルトになります。ですから、5カ月余りで帰ってくる。150ミリになりますので、そういうことなんですが。

 つまり、もちろん減らしたほうがいいんですが、しかし、まずゼロを目指して減らすといっても、実はゼロではないんですね。それを考えると、どれだけ減らすべきかということは、やはり繰り返しですが、社会が決めるしかないです。そこにやはり住民がどう考えるか。私、2度飯舘村に伺いましたが、やっぱり住民の方は減らしたいと思うものの、しかし、生活もある。これはまさにALARAの考えなんですよね。私は何をもって避難をするか、それはやはり最終的には住民が決めるし、あるいは、個人レベルでの議論もあっていい。飯舘の村役場の隣に老人ホームがあるんですね。飯舘ホームという。ここは平均年齢が84歳なんです。当初、そういったものも含めて、全村避難というご指示でしたけれども、それが、あそこのホームは残すことになった。これは大変よい判断だと思います。というのは、発がんリスクの上昇といっても、すぐにがんができるわけではなく、固形がんだと10年以上かかります。84歳ですからね。正直言って、少なくともお子さんや妊婦さんとは比べものにならないですね。ですので、ALARAの考えの中には、一様にすべてということではなく、ある意味、個人が、その立場でどう考えるかの判断も含まれます。

 しかし、先生おっしゃるように、少しでも減らそうということが間違っているというわけではないんですよね。ですから、もう極端に言えば、福島を離れたいという考え方を否定するものではありません。つまり、実は非常に哲学的判断だということ。そして、残念ながら、日本はゼロリスク社会なんて言われますが、そういった戦後、確かに徴兵制も戦争もなく、リスクが見えにくくなっている。しかし、リスクがないわけじゃないですね。人は常に死ぬわけですから、リスクがあるに決まっているんです。ただ、そのリスクというのが見えない社会にずっと暮らしてきた日本人の弱いところを突かれたという気は私はします。

【清水事務次官】  中川先生にお伺いしたいと思っているんですけれども。つまり、今、ALARAも含めて、いわゆる放射線量について非常にナーバスな中で、各住民の方々も、それぞれの地域、生活圏域の中で、いろいろ線量をということになる。そうすると、長期化するに従って、例えば避難区域、あるいは警戒区域の中でも、放射線量、あるいは土壌の線量も含めて、非常にまだら模様になってきている。そうすると、そこの、ある時期に、まだ収束を見ていないという状況下ではあるけれども、長期化すればするほど、そういうまさにベネフィットとコストの問題というのはもっと先鋭な形で、放出が停止したときにはもっと先鋭な形で当面せざるを得ないだろうというふうに思っているんですが、そのあたりどうお考えですか。

【中川氏】  今、もうほとんどセシウムだけです。放出されている放射線量というのは、ほとんど少なくなっている。当初の万分の1。要は、土などに存在するセシウムからの被ばくがほとんどです。ですから、今、収束したとしても、被ばくがあるんですね。セシウムには134と137がありまして、大体1対1の比率です。134は半減期2年。ですから、こちらのほうはわりと短期間。137は30年ですね。逆に言うと、半分のものが2年で半分になるということは、2年すれば4分の3ぐらいになるというイメージです。5年すれば自然に半分になるというイメージです。しかし、我々が生きている間は、ある程度のセシウムの中で暮らしていかなければいけない。ですから、長期的に考える必要があります。ですから、ALARAについても、長期的に考えていくしかない。

 答えはないんですよ。これはもう哲学の領域と価値判断ですから、それはやはり最終的には政治ということになるんです。ただ、ステークホルダーといっても、東京と福島ではやはり状況が違います。住民の方の意見というのはやはり十分に反映する。東京で、確かに皆さん大変ご心配されている。しかし、現実に東京で発がんのリスクが上がるとは思えません。ただ、東京でのご心配や意見がどうしても全体の価値判断、あるいは政治的判断の中に反映されてきます。東京の意見も価値判断の中に入れていくべきです。しかし、やはり一番直面している福島の方々の意見というのを十分に聞いていただきたいなと思います。

【金森文部科学審議官】  学校の教室の窓のことについてちょっと教えていただきたいんですが、学校の教室の窓を開けても必ずしも線量が増えるわけではないというようなことを聞くんですけれども、それだったら閉じてしまわないで、新鮮な外の空気を教室の中に入れるほうが、子どもたちにとって気分がいいのではないか。また、もともと教室の中にある空気と外の空気は、もともと一緒だったんですから、実験室みたいにクリーン環境を整えるならともかく、ただ窓を閉めてもそんなに違わないような気がするんですけれども、なるべく子どもを外に出さないで、建物の中でいろんな活動をさせようというのが一方であるんですけれども、本当にそれで子どもの気持ちや体力の面でいいのかどうか。それは住民の方の気持ちも考えないといけないとは思うんですけれども、その辺をどのように考えたらいいのか、それぞれの先生に教えていただきたいと思います。

【渡邊氏】  精神的な面は、神田先生にお願いできればと思いますけれども。実態を申しますと、やはり特に福島の場合は、今、体育館の中とか、教室の廊下を使うという、先ほど申し上げましたけれども、そういうことをしている学校というのはたくさんございます。

 それで、窓を開けたらいいじゃないかという話は、まさにその通りなんですが、そこが実はきちっと科学的に分かっておりません。これは、要するに、先ほど申し上げましたように、やっぱりある程度再飛散というのが1つはあるのではないか。先ほどの福島のデータを見ても、これは本当にもう0.01マイクロシーベルト毎時ぐらいの変動ですけれども、基本的にはそういう変動があるというのは何かということなんですね。これはいろいろ調べてみますと、学校というのはいろんな木がありますので、そういう木が揺れることによって例えば入ってくるとか、そういう飛散も含めて、学校の環境によって違ってきます。例えば体育館の場合には、廊下を渡って子どもたちが行きますので、逆に窓を閉めておくと、濃度が上がるんですね。ですから、開いていただいたほうが放射性物質の濃度が下がります。したがって被ばく量が減るという、そういう測定結果も出てまいりますし、校舎の場合も、私、幾つか関わりましたけれども、周りに木があったりすると、そういう木に付着したものが風によって飛ばされたりする場合もございますし、樋とい水路、そういうものに集積している場合もあり、かなりその様相というのは複雑です。

 ですから、それは決して新しいものが飛散していないから窓を開いていいんだということにはなりません。また,学校自体が一元化してあけるというところまで統一がとれていない、統一できていないということもあると思います。ですから、この辺も、そういう意味で、詳細に実態を示して、大丈夫だよと言ってあげることが非常に重要だと思います。私、気象学をやって、そういう飛散のことをやっていても、定性的に答えられない問題です。個別の一つ一つについてでしか実は答えられないという、こういう現状があると思います。

【神田氏】  本当に先生がおっしゃったとおりで、やはり数値がないとなかなか言えない。事故が終わってから、まだ少しずつではありますが、放射性物質が出ているという状況で、環境がどういうふうになっているのか、同じ学校の中でも、雨が降ったり、水が流れていたりということが起これば、分布が変わったりしていますし、また、万が一また何かが起こったらというところの懸念がぬぐい去れない中で、なかなか一様に開けていいですという結論を導くのは難しいことだと思います。

【中川氏】  大気中の放射性物質はほぼないわけですから、私は開けていいような気がします。しかし、測定することも大事ですよね。どんどん測定をされて、公表していけば、おそらくいいんだろうと思います。これは福島や伊達で子どもさんの線量計を配布するという話がありますよね。これも学校だけじゃなくて、様々の形で行っていただきたい。例えば学校だけで測定する子もいてもいいかもしれない。24時間の方もいてもいいかもしれない。帰宅後だけ測定するのもいい。それによって学校での被ばく、家庭での被ばくなどのデータがどんどん集まってきますから。僕は当初、あまり無駄な測定をするのもどうかなと思ったんですが、例えばALARAには精神的、心理的な面もあるんですよね。ですから、出ない出ない出ないという結果になるかもしれないが、しかし、それを公表することによって、親御さんが安心されるというのは非常に大きいと思いますね。

 それと、もう一つ、私、この問題が起こる前に、がんの教育に非常に関心を持って取り組んできたんですが、そこでわかったのは、子どもさんから親への教育なんです。つまり、中学生になると放射線被ばくの問題も大体もうわかります。学校でこんなことを習ったんだということを親に伝えますね。先ほど少し紹介した「がんちゃんの冒険」というアニメ、これはDVDで生徒さんに配りたいと思っていますが、これをクラスの中で見た夜に、家で見てほしいと言ってあります。子どもたちのほうが知識を持って、「お父さん、たばこはやめたほうがいいよ」ということです。「がんの原因の3分の1がたばこだよ」。同じことを放射線の教育でも行うべきです。ですから、学校の中で子どもたちに教える。そして、それで親の教育につながる。親が子どもによって安心する。そういう仕組みをちょっとご検討いただきたいと思います。

【森口文部科学審議官】  先ほど来議論に出ていますけれども、3.8マイクロシーベルトのところなんですけれども、我々の説明がなかなか十分でなかったというふうには思うんですけれども、机上資料の1ページをごらんいただくと、まず最大の誤解が、20ミリシーベルトを許容しているわけではないということはもう何度も言っているんですけれども、これはもう何度言ってもなかなか理解されない。20ミリシーベルトまで許容しているわけではないというのはまず1点で、よく読んでいただければわかるように、1~20ミリシーベルトの範囲で、できるだけ下げると言っているわけなんです。

 その上で、この3.8を導き出す計算というのは、ここにあるように、3.8マイクロシーベルトのグランドに8時間毎日365日立ち続けて、それで、その上にある木造の建屋に残り16時間ずっと居続ける、そういう前提で計算しているわけですから、現実にはあり得ないということですから、3.8ということ、これをある別の計算で後から公表して、これも公表が若干遅れたという問題はあったんですけれども、現実のシナリオで計算すると9.9ミリとか、それぐらいであると。そういうご説明はしているんですけれども、これは何度言ってもなかなか理解されないんですね。

 ですから、アドバイスいただきたいのは、そこはどうすべきだったのか、あるいは、どう説明すべきだったのかという点ですね。これは、20ミリシーベルト浴びる子どもはかわいそうみたいな報道がなされて、ある先生も言われて、そういうことがかなり影響しているとは思うんですけれども、もうとにかく20ミリシーベルト浴びるものだという前提になってしまったということで、これはもう口を酸っぱくして言ってもなかなか理解されない。そこをどういう形で説明すべきだったのかと。

 ですから、極端に言うと、例えば、これはいい例かどうかわかりませんけれども、ある橋をつくったときに、通常は5~6トンの車しか通らないんですけれども、念のため20トンでも大丈夫なような橋をつくったら、これは20トン通るから危ないんだと、そう言われたようなものだと思うので、そこはどういう説明の仕方をすべきだったのかという点について、アドバイスがあればぜひお聞きしたいと思いますが。

【神田氏】  多くの方は、こういう情報をテレビなり新聞を介して知るわけですけれども、4月19日の新聞を見ますと、やはり3.8マイクロシーベルト/時というよりは、20ミリシーベルトを大きく取り上げた、このあたりがやはり大きく影響しているのではないかと思います。ご説明のときに、当然3.8を出した根拠は何ですかということは言われると思いますし、20がベースであることもわかりますし、私ども、参考レベルといった時点で、もうここから下げるんだなというのもわかりますけれども、やはり一般の方、参考レベルという言葉を聞いても、それと線量限度なり基準値なりという言葉の区別をしてお聞きになるわけではありません。新聞によっては、これを限界線量というような表現を使った新聞社もございましたようですので、そこがうまく伝わらなかった理由の一つとも考えられると思います。

【森口文部科学審議官】  あと、関連というか、実際に先生に線量計をつけていただいて、学校での線量を2週間ごとにまとめているんですけれども、比較的高い線量であった学校の平均の線量は低減傾向で、大体年間のミリシーベルトに換算しますと0.28ミリシーベルトで、そんなものなんですね。ですから、これであれば、要は1ミリよりもかなり低いわけですけれども、それでも、現在学校でどうなっているかというと、25校(園)が体育・部活動の屋外活動を1~3時間に制限、ほかの30校はすべて屋外活動を行っていない、そんなような状況で、もちろんそういう心配をされるのも理解できるわけですけれども、そういう状況になっている。こういう点についても、どうすればいいのかなという、これもアドバイスをいただければと思います。

【中川氏】  私、御省が出されている環境などの放射線量、あれ、毎日出されていますよね。あれをいつも見ているんです。多くの方はあれを見ておられるんですね。ただ、もうちょっとサマリーをつけていただいて。あれ、全部数字を評価する方というのも難しいですね。ですから、そのサマリーをつけていただく。

 多くの方は、もう疑心暗鬼になっているんですね。モニターカーの数字が本当かなどと言って、住民の方が自分で行かれるんです。そうすると、違ったりするともう大変なんですね。実は我々が飯舘に行ったときに、モニターカーについていって、計られた後に、同じところで計って、それが同じだということを公表したりしたんですね。そういうことをしなきゃいけないんですよ、もう。ですから、こういったものをぱっとわかるように、どんどん掲載していただきたいなと思いますね。そういうことをしていかないと、やっぱりもう落ち着かないという状況になっています。

【合田科学技術・学術政策局長】  今のお話のとおりで、我々としてできるだけ情報発信をしようとしているんだけれども、なかなか伝わらない面もあるし、工夫が足りない面もあるし、残念ながら、政府の発表は信用できないみたいなふうに見られている部分もあるし、そこをいろいろ工夫していかなきゃいけないということもあると思うんですけど。

 同時に、今日明石先生からいろいろ具体的にご紹介いただきましたように、一方で、現場レベルでいろんな工夫が行われていて、そういったような情報が、もちろん、我々がこういうやり方がありますよというふうにお伝えをするということも必要だと思うんですけど、横に水平展開するというか、お互いに自分たちの工夫を共有するといったようなことが、もっとそれぞれの教育委員会とか、そういうレベルで活発に行われるようになると、つまり、自分たちの問題としていろいろ知恵を出していこうといったようなことがもう少しファシリテートできるような環境づくりみたいなことができるといいなというふうに思うんですけど、その辺で何かお気づきのこと、アドバイスなどをいただけると大変ありがたいです。

【明石氏】  私、中川先生のご発言を受けまして、非常に刺激を受けました。やはり文科省が出すデータをサマリー化するというのは、非常にわかりやすいです。ちょっとした報道で右往左往する親御さんたちがいます。基礎データと、それをどう解釈するかというか、まとめてくれることが必要になります。そうすると、今、合田局長がおっしゃるように、福島とか宮城とかで、こういう学校で体育館を使って子どもの運動量が保障できましたよという情報を、教育委員会からいただいたのを文科省でまた発表するという仕組みを作ればよいのです。確かに疑心暗鬼はありますけれど、ハンディキャップをアドバンテージにするような、ちょっと元気が出る事例を出していかないと、ますます閉塞状況が増えてまいりますよね。だから、金森文部科学審議官がおっしゃったように、窓ガラスをあけてもいい場合と、ここは閉めたほうがいい場合というのを、例えば渡邊先生の知恵をおかりしながら、2つぐらいのケースを出してくれると、学校長がまず安心します。うちのケースは、これは閉めたほうがいいんだとか、うちはあけたほうがいいとか。小学校は全国で約20000校ありますけれども、みんな違うんで、そのケースの事例を出していって、少しコメントしていただけるといいのではないでしょうか。それしか多くの方は納得しないかなと思います。最後は社会が決定するという、それは大事なご発言だと思います。

【中川氏】  先生方に対しての情報提供というのも大事かなという気がするんですよね。それはやっぱり先生が心配になっちゃうと、子どもに影響がいきますし、先生方への教授資料のようなものを作っていただきたいなという気がしますね。

 それと、明石先生おっしゃったように、データベースを御省の中でぜひどんどん積み重ねていただいて、一般の方も見ていただけるようなものが必要です。学校向けのそういう資料をつくるのは、私、結構なれましたんで、もしご用命があれば、学校の先生、あるいは生徒さん向けのものもやります。

【渡邊氏】  私はもうちょっと長期的に考えていく必要があろうかと思っている点がありまして、今日、私の資料の一番後ろに、実はこれはハイスプリットモデルというモデルで、毎日朝5時ぐらいに起きて、自分のホームページに、今日はこんな方向に動きますよということを公開しております。今日で135回分ぐらいになるんですけれども、1日2回出したこともございます。

 実は、これ、最初は、ある防災本部だけにお知らせするような形で始まりました。それは原発事故がさらにあったときに、要するに、その方向に集中し避難してしまいますので、これを知らせるということが本当にいいのかどうか非常に不安になりました。それで、避難指示する行政なり災害本部は、これをちゃんと見ておかなければいけないということがあったものですから、災害対策本部に通報してきました。

 多分皆さんご承知だと思いますけれども、浪江のかなり大きい空間線量率の領域というのは145号線周辺ですが、このときの避難命令が15日です。15日の11時ぐらいに、この一番高い空間線量率のところを、浪江の皆さんが渋滞で長時間かけて避難をして、福島のほうに避難するという、こういう最悪のシナリオが実はあったわけです。その意味で、SPEEDIのモデルがどの程度役に立ったかということが問われているわけです。

 ですから、そういうことを考えると、先ほどちょっと申し上げました、まだ不確定でございますけれども、今行われている、例えば天気予報のようなモデルというのは、かなり精巧にできていると思います。ですから、排出源がかなり明らかになれば、どの程度の濃度がその日どちらの方向に動くかということは、新しい放出については表現することができる科学技術を持っていると思っています。

 ただ、例えば、私の資料で第4図を見ていただいたときに、皆さん、どういうふうにお感じになるか。これはもう日本全国中汚染されているんじゃないかというふうに見る人もいるし、放射線が一度集まると幾ら上がったって10のマイナス5乗だよ、こういうふうに見る方もいると思いますやっぱり基礎的な力といいましょうか、そういうことが訓練されていないと安心してこのデータは見られないと思います。そういう意味では、先ほど幾つかお話がありましたけれども、やっぱりこういう問題についての基礎的な力、放射線の問題も含めまして、一定リテラシーをきちっとしないと、情報はあっても出していいかどうかということを迷う、そういうことに実はつながっていくと思います。

 ですから、情報を出し、一定コメントを出し、見方について記載しても、どうしても現場では不安感というのがなかなかぬぐえないという状況になってきて、サイエンスのデータも、なかなかそのまま出していいかどうか。要するに、不安をあおる材料になっては困るわけですね。そういう点で、この間、難しさというのは非常に痛感いたしました。

 やっぱり私、地元にいて思うのは、いかにサイエンティストなり、国なりが、そういう被災地の人たちに寄り添って、一緒に考えてくれるか、こういう姿勢を常にどう見せるかということだと思います。その点から言うと、文科省がやっている、例えば数値だけを公表しただけでは、「あ、数値が出ている」としか思わないで、誰も考えてくれないと。やっぱり今の国のやり方も、本当に被災地を忘れているんじゃないかと思えるような行動が中央であるものですから、我々福島はもう忘れられているんじゃないかと思えるような、そういう実態があって、不信感につながっていると思うんですね。

 ですから、福島が何かを求めているわけでは決してなくて、いかに自分たちでそれをいわば浄化をし、もとに戻すかということで、もう必死になっているわけですけれども、そういうものに、例えばサイエンティストなり、あるいは国なりが寄り添っているという姿勢が、やっぱりコミュニティを守るという意味でも非常に重要ですし、安心感を与えるという意味でも非常に重要なのではないかと私は思っています。非常に抽象的ですけれども。

【常盤科学技術・学術総括官】  1つお伺いしたいんですが、先ほど来いろいろお話を伺っている中で、今回の放射線問題について、先ほど渡邊先生が冒頭に話されましたけれども、いろんな方がいろいろ測定してばらばらに公表されるという問題と、それから、放射線の水準ということについての評価も、また科学者の方によってその価値づけというか、そういうものがかなりばらばらになっていることがあって、それをやはり統一的に示していくことが大切だというご意見もあったと思うんですが、行政でなかなかそれを統一していくというのは難しい部分があると思うんですね。特にこういう緊急的な場合においてはですね。となると、すぐお答えをいただくというのはなかなか難しいのかもしれないんですが、どういう方向性を持って研究者の方々の意見の統一化というものを考えていけばいいのか。それで、多分、そこには通説というか、多数説みたいなものと、そういうものがあっても、独自の主張をされる方ももちろんいらっしゃるとは思うんですけれども、どうやってその通説、多数説を形成していくのかということについてのアプローチについて、何かお考えがあれば教えていただければありがたいなと思うんですが。

【渡邊氏】  チェルノブイリについては、この会議の中でも出されていると思いますけれども、UNSCEARという会議がございますね。ICRPのもとの委員会ですけれども。要するに、チェルノブイリについても、被災者があったり、死亡者があった、たくさんいろんな意見があり、論文もたくさん出ているわけです。私たち大学の中でも、UNSCEARの意見を示したり、ICRPのデータを出しても、「いや、その論文ではない。こういう論文だってあるじゃないか」というのがたくさん出ているのが大学ですから。だけども、それは本当に論文としてどういう評価をされているのというところが、UNSCEARの1つの役割だったと思うんですね。今必要なのは、やっぱりそういう意味での役割というものを、きちっと総合的な意味でのコミッティをつくるという、そういうことが非常に重要なのではないか。

 そうすると、いろんな方がいろんな形でお話をするのはいいんですが、例えば測定値の問題についても、例えばガイガー=ミュラー管でやるのか、Nalシンチレーション管でやるのか、全然値が違うんですね。ですから、飯舘村なんかの場合、まさにその典型ですけれども、ある大学が入って、まず調べた。それで、どうも住めないという論文といいますか、レポートを書いてしまった。そこで住民が混乱をする。それから、その後に今度は別な大学が入って、水が飲めないという話をした。その後、IAEAが入って、これまた別な組織で、多分、ガイガー=ミュラーカウンターと思いますけれども、測器も,測定の高度も違う結果で退避すべきだという議論が出て。そのたびに村民は揺さぶられたわけです。

 あの村というのは、当然、本当に残って、自分たちの村を、コミュニティを守ろうということで早くから村長さんが、危ない方については外へ出して、あとは残ろうという形で、そういう選択をした村なんですが、最終的には計画避難ということになりましたけれども、やっぱりそういうところの村の行政も考えないで研究成果が公表されているわけです。

 私たちは、自分たちでこういう図1のような測定を早い段階で、地元だからやりましたけれども、全部これは市町村に持っていっています。こういうデータが出た。その結果として、このデータをお使いくださいと。特に問題だったのは、ここの浪江町ですけれども、これは20キロから30キロ圏内の中にホットスポットがあり、実は70マイクロシーベルト程度がありましたが,浪江町の町長さんがそのデータを見て、ここは実は屋内退避圏なので、逃げる必要がないと言ったが,このデータを持って、福島大学が観測してくれたので、説得したという、話がありますけれども、そういうことに使っていただいたというような経緯がございます。

 ですから、私たち、科学者として、もちろん即データを出したい、争って出したいという気持ちは分かりますが今回の放射能というのは、単に天気でいう気温とか湿度とかというデータではありませんので,皆さんが一喜一憂、あるいは死活問題に関わるような、そういうデータですので、そういう意味でも、やっぱりコミッティが必要なのではないかと思います。そういう努力をされるということが、今、多分、現地でも、これはこれからの実証試験という、そういう段階でも望まれているというふうに私自身は思っています。

【中川氏】  補足をいたしますと、私、申し上げたように、この問題、放射線のリスクというのは、サイエンスだけでは済まない、哲学や価値判断があるんですね。しかし、サイエンティスト、科学者にも哲学や価値判断があって、それまで開陳されてしまいます、皆さん。そうすると、「私は20ミリは容認できない」とか、というふうになってしまうんですね。しかし、それは容認できないというのは、個人の哲学と価値判断なんです。本来は、我々はここまでわかっている。そして、ここからはもうわからない。だから、どう考えるか、あるいは、どう価値判断するか。これはもう住民、国民と考えようというふうに本来言うべきなんですよ。簡単に言うと、過去のデータでは、100ミリシーベルトを超えると直線的に発がん率が上がる。それより以下はわからない。わからないから、あとは皆さんと考えましょう、というふうに本来は言うべきなんですね。

 それで、どうするか。これはいろんな哲学を開陳されている先生方を含めて、やはり何らかの組織で研究会、学会のようなものをつくって、そして、もう議論を闘わせるしかない。そして、できればIAEAなどの――チェルノブイリの後にいろんなそういう学会、シンポジウムが開かれましたね。ああいったものを日本でなるべく早い時期にやっていただく。そうすると、そこの議論を国民が見ていただいて、最終的に価値判断は国民がすべきなので、それは、その議論をわかりやすく伝えていただきたいと思うんですけれども。

【清水事務次官】  今、渡邊先生、中川先生が言われたことと関連して、今度7月1日に学術会議のほうでシンポジウムを東京でやられるということを聞いております。当然のことながら、何を恐れ、何を恐れるべきではないかという、この問題に関連したシンポジウムというふうに承知しております。

 それと、9月11日、12日、これは福島で国際シンポジウムを、これは日本財団が今企画・構想しているということで、ICRP、国連科学委員会、WHO、IAEA等々の、チェルノブイリ以降の成果を4つのテーマのもとに集約した形で、そういう関係者に集まっていただいてやろうと。こういうふうなことが、私どもが今の段階で承知していることであります。

 こういう動きが、例えば、それぞれの学会のレベルで、あるいは学術会議のシンポジウムもそうですけど、むしろ学会それぞれのレベルでしていただく。そして、はっきり言えば、サイエンティストとしての矜持と節度が一番、はっきり言えば、必要なんだろうと私は思っているんですけれども、そこのところをぜひ期待したいなと思っております。

【中川氏】  大変すばらしいと思います。ただ、チェルノブイリなどに関連したシンポジウムなどはたくさんあるんですが、報告書ってものすごく厚くて、一般の方はとても読めるものではないんですね。ですから、うまくダイジェストを出していただくのと、国民にわかりやすいような形の、学会の中で、市民公開講座なども行っていただきたいと思います。

 それから、私などは、冒頭申し上げたように、御用学者とか、東電からお金もらっているだろうとか、事実と反する悪口雑言を受けております。病院に電話がかかってきたりいたします。もう慣れましたので私はいいんですが、慣れていない先生には大変怖く見えるんですね。つまり、放射線は危険であると申し上げたほうが、学者としては「安心」なのであります。ですので、今の矜持ということにつながるんですけれども、でも、なかなか今の風潮ですと……。私も安全と言っているつもりはないんです。ここまでわかっていて、ここからはどうしようと言っているだけなんですが、ただ、それを言うだけでも、大変「風評被害」に遭うというか、なかなかサイエンティストが動きにくい状況であることはご理解ください。ですから、サイエンティストが話しやすい、安心して話せるような場も、そんなこと関係なく発言しなきゃいけないのかもしれませんけど、やっぱりそういうご配慮もいただくといいような気がいたします。

【有松スポーツ・青少年総括官】  まだお時間があるようですので、2つほどお伺いしたいと思います。

 中川先生に。子どもの影響の件なんですけれども、先ほど来お話いただいたことでよく理解したつもりなんですけれども、ALARAの考え方、あるいは100ミリシーベルト以下では、大人も含めてはっきりしたことはわからない。それでも、現実には、避難するときに子どもや妊婦を優先するということはとられている。そのことの意味と申しますか、感受性が高いから、そもそも20を10にすべきだという意見があったことに見られるように、それと一緒になった形であらわされたりするんですけれども。配慮すべき事柄として、子どもについて、感受性も含めて、何か対策として特別なことをさらに加えるべきなのかということが1点。

 それから、これは神田先生が先ほどおっしゃった中で、全然別のお話なんですけれども、11ページのあたりで、今後いろんな人がデータをちゃんと受け取っていく中で、みずからデータ収集するというか、計るというようなお話の流れだったと思うんですけれども、聞き間違いでなければ、シーベルトであることでさまざまな誤解が生じるおそれもあるのではないかとおっしゃったんですけれども、それはおそらく、これからいろんなところでいろんな人がそういう測定をする際の留意事項にもつながるのかなと理解したものですから、もしそういう点があればお教えいただければと思います。

【中川氏】  では、私から。いわゆる子どもの放射線感受性というか、同じ、例えば10ミリシーベルト被ばくしたときの発がんリスクの上昇というのは、2~3倍と考えていいと思います。ざっくり言いまして。これは細胞分裂のときのDNAの複製失敗などというのは、やはり新陳代謝が多いほど起こり得ますし、それから、老人ホームのところでお話ししたように、どれだけ生き得るかということによるんですよね。例えば、もう100歳の方は、10年後のことってあんまり考える必要がない場合も多いわけだから。子どもというのはやっぱり長く生きることが期待されます。そういう意味では、やはり子どもを優先するのはいいんですね。

 この20ミリについて言うと、飯舘などの計画的避難区域の設定で、この20ミリという言葉が出て、比較的近い時期にやはり学校での、20という数字が出たわけです。現地に行きますと、一番心配されているのはお母さんなんですよね。一番この問題に悩まれているのは。ですから、なぜ大人と子どもも同じ20なのかという声が上がったのだと思います。

 ただ、私の資料のちょうど真ん中ぐらいに、ページが振っていないのですが、ICRPの復興に向けた線量、20~100を1~20にする、そして1にする。この中で、子どもも大人もないんですね。これは、逆に言うと、子どもを見た数字ということなんです。もうこの時期に、さすがに子どもも大人も区別できないだろうというのがICRPの考えなんです。しかし、私は、これは、机上論だと思っています。ICRPが今回のことを経験したわけではなく、人の心、お母さんの心などを含めて、人類が初めて経験するフィールドワークなんです。そこでは、やはり3段階は無理だろうと申し上げました。そして、同じように、大人と子どもを同じにする議論というのは無理があるんだろうな。ですから、例えば、間に10を入れるなんていう提案をさせていただきましたと同じように、やはり大人と子どもを区別するような――ICRPというのは、私も非常によくできた勧告書などを書かれていると思うんですが、机上論とは言いませんけれども、やはり机の上で考えてきた、ある意味、概念なんですね。実際やってみたら、やはり3段階では難しい、あるいは、大人と子どもは別にしなければいけない、そうは思いますので、これをベースにして、日本が人類史上初めての対策、対応をとっていくべきだろうと思いますね。

【神田氏】  今、いろんな機器がございまして、その読み取り値も、シーベルトでないものを選べるタイプもあるようですが、おそらくもうシーベルトという単位がここまで定着いたしましたので、ご自分で計られる方はそれをお使いになると思うんですけれども。精度や、校正をしているかどうかとか、計り方でいろんな数値が出てくる。そうしますと、専門家がやったほうが測定としては正確でしょうけれども、実際に計った方にしてみたら、それが一番事実として重い数値ですので、専門機関が出した数値よりも、これに24時間かけて365日かけて、多分年間の線量を推定したりというところに直結してしまうのではないかというのが1つの懸念。

 もう一つの懸念は、高自然放射線地域の住民の被ばく線量のときにも、線量計を持っていただいて測定したんですけれども、実際には24時間つけっぱなしかどうかはわからなくて、実は放射線がたくさん出てくる壁の上にかけていて、すごく高い数値が出たりとかいうケースがございましたので、線量を測定する方が増えれば増えるほど、ちょっと特異点といいますか、かなり高い数値が出てくる可能性はある。その理由がわかればいいんですけれども、何カ月も前にやった行動によるものだとすると、その理由がわからないので、高い数値と不安だけが残ってしまうのではないかという懸念です。

【平下学校健康教育課長】  そのほかご質問などございますでしょうか。ないようでしたら、この辺りで閉じさせていただきたいと思います。

 それでは、どうもありがとうございました。

── 了 ──

5.出席者

渡邊明氏(福島大学副学長)、神田玲子氏(独立行政法人放射線医学総合研究所放射線防護研究センター上席研究員) 、中川恵一 氏(東京大学医学部附属病院放射線科准教授) 、 明石要一氏(千葉大学教育学部教授)

お問合せ先

スポーツ・青少年局学校健康教育課

電話番号:03-5253-4111(代表) (内線 2706,3489)
メールアドレス:gakkoken@mext.go.jp

(スポーツ・青少年局学校健康教育課)

-- 登録:平成23年06月 --