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福島県内で一定の放射線量が計測された学校等に通う児童生徒等の日常生活等に関する専門家ヒアリング(第1回) 議事録

1.日時

平成23年5月31日火曜日14時~16時

2.場所

文部科学省3F1特別会議室

3.議題

  1. 国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告を踏まえた「合理的に達成できる限り放射線被ばくを低くする(ALARA)」の理念による学校利用や日常生活の基本的な考え方について
  2. 現在の状況における学校生活と学校外活動の具体的な在り方について
  3. その他

4.議事録

 【平下学校健康教育課長】  それでは、時間になりましたので、ただいまから第1回の福島県内での一定の放射線量が計測された学校等に通う児童生徒等の日常生活等に関する専門家ヒアリングを開催いたします。
 先生方におかれましては、本日はお忙しいところ、ご出席賜りまして、誠にありがとうございます。
 それでは、最初に、本日、ご出席の先生方のご紹介をしたいと思います。

 最初に、長崎大学名誉教授の長瀧重信様でございます。

 続きまして、社会福祉法人恩賜財団母子愛育会日本子ども家庭総合研究所副所長兼母子保健研究部長の衞藤隆様でございます。

 日本小児心身医学会理事長の田中英高様でございます。

 早稲田大学スポーツ科学学術院教授の友添秀則様でございます。

【平下学校健康教育課長】  なお、本日、髙木文部科学大臣は、国会の関係で欠席させていただきます。よろしくお願いいたします。

 それでは、最初に鈴木副大臣よりごあいさつを申し上げます。

【鈴木副大臣】  本日は先生方、お忙しいところ、お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。

 福島県内の学校の校舎、校庭等の利用の判断につきましては、ICRPInternational Commission on Radiological Protection)の勧告に従いまして、原子力災害対策本部の「暫定的な考え方」を文部科学省より現地の教育現場にお伝えをいたしているところでございますが、ご高承のように、年間受ける線量が1ミリから20ミリシーベルトの範囲の中で、今後、できる限り児童生徒の受ける線量を減らしていくことが適切であると。いわゆる、ALARAといいますが、as low as reasonably achievableという理念に基づいて、そうした通知を行っているところでございます。

 そして、実際に4月末以降、空間線量が高い上位の55校におきまして、教職員が積算線量計を実際に携行いたしまして、児童生徒と学校内において、ほぼ行動をともにしております教職員の方々にそうした線量計を携行していただいて、実測値を測定いたしております。

 最新の測定結果でございますけれども、これを1年間に学校において受ける線量に置きかえますと、年間0.5ミリシーベルト未満が48校、0.5ミリシーベルトから1ミリシーベルトが6校、1ミリシーベルト以上が1校ということになっております。55校平均では0.31ミリシーベルト程度と、現在までの線量計をもとにいたしますと、見込まれております。

 そうした状況下でございますが、文部科学省におきましては、このALARAの理念に基づきまして、多様な放射線モニタリングを実施強化いたしております。今申し上げました、教員の方に実際に積算線量計を携行して、実測値を測るというのもその一環でございますが、そうしたモニタリングの強化とともに、校庭等の土壌に関して具体的な線量低減策を教育委員会に示しているところでございます。

 さらに、先週の27日には、より安心して教育を受けられる環境の構築を目指し、新たな対応策をお示しいたしたところでございます。すなわち、福島県教育委員会の協力のもと、これまで55校に対しては積算線量計、携行できる携帯型のものを配付しておりましたが、福島県内のすべての学校等につきまして、約1,800に上りますけれども、線量計を全校配付いたしました。そして、実際に児童生徒の受ける積算線量のモニタリングを実施してほしいということ。

 2つ目といたしましては、今年度、学校におきまして、児童生徒等が受ける線量については、当面、年間1ミリシーベルト以下を目指すこと。

 3点目といたしましては、校庭、園庭の空間線量率が毎時1マイクロシーベルト以上の学校につきましては、設置者の希望に応じて、災害復旧事業の枠組みで財政支援を実施する。つまり、公立学校等々の場合では、国がその費用をほぼ全額負担をして、校庭の土壌改良の措置に対して財政支援をすると。この3つの点を示したところでございます。

 これに加えまして、さらなる取り組みの可能性があるのかどうかということを検討するとともに、あわせて、児童生徒の受ける放射線量の低減策と同時に、児童生徒の日常生活並びに児童生徒の心の健康、心身の発達等々の関係を整理し、合理的に達成できる限り放射性被ばくを低くすると。放射線防護の理念を踏まえつつ、まさに子どもの心身の健康、心身の発達、この観点を科学的かつ総合的に、それぞれの専門家の方々から情報をお伺いをし、そして、それを整理した上で国民の皆様方にわかりやすくお伝えしたい、こういう趣旨で今回のヒアリングを始めさせていただきました。今日はその第1回ということで、先生方にお集まりをいただいたところでございます。

 本日は、このような趣旨をご理解賜りまして、それぞれの第一人者の専門家の皆様方にお越しをいただきました。ぜひ忌憚のないご意見を伺えれば幸いに存じます。どうぞよろしくお願い申し上げます。ありがとうございました。

【平下学校健康教育課長】  本日の会議の進め方でございますけれども、4人の先生方に、それぞれ10分程度ずつ発表いただいて、その後に、まとめて質疑応答をしたいと思っています。終わりは4時を予定しております。

 配付資料ですけれども、先生方からご提出いただいた資料、資料1は長瀧先生です。資料2が衞藤先生、資料3が田中先生。資料312というのがございます。資料4が友添先生となります。

 それから、基礎資料としまして、事務局のほうで様々な、放射線関係の通知文とか、あるいは20ミリシーベルトの根拠とか、暫定的考え方にかかわるモニタリングのデータとか、放射線一般に関する資料、学校に関する資料等々ありますので、これについては適宜見ていただければと思っております。

 それでは、早速でございますけれども、長瀧先生から10分程度でお話しいただければと思います。よろしくお願いいたします。

【長瀧氏】 ご紹介いただきました長瀧でございます。私は、長崎、広島時代に、原爆被ばく者の治療あるいは調査、研究に従事してまいりましたし、同じときにチェルノブイリ原発事故の際には、その調査の初めから、ソ連邦時代からでありますけれども、最近の国際会議でのまとめまで20年以上にわたって携わってまいりました。したがって、放射線防護の専門家というよりは、防護されなかった被害者の治療あるいは調査研究に携わった専門家という立場でお話しさせていただきます。

 今日は、ご依頼の項目を、被害者の被害を最小にする、子どもたちの被害を全体として最小にするための専門家の役割、あるいは義務ということを、私の経験を中心にしてお話しさせていただきたいと思います。

 最初に、チェルノブイリ原発の経験でありますけれども、ちょうど最初に私たちが行きましたときは、事故から4年後の1990年でありまして、資料の新聞記事のように色々書いてございます。最後の2つだけお話しいたしますが、事故によって原発の中で数千人の方が亡くなったとか、放出された放射性物質で周辺の数万人が亡くなったというのが当時の日本の新聞の報道でありました。そして、多数の子どもに白血病が広がって、奇形の子どもが多い。人間のみならず、動物、魚、植物の奇形も増えているというような報道がなされていた時代でありました。

 その時代に最初の調査に参りまして、その次の写真がその時のものでありますが、先ほども話題になりました線量計を我々も持って参りまして、大統領府、あるいはソ連共産党本部でも歓迎されまして、一番右下は、今、もうなじみになっておりますセシウムによる汚染地図をここで拝見いたしました。

 そして、汚染されたという場所に視察に参りまして、病院を訪問したときの写真でありますが、たくさんのお子さんが新生児室におりましたけれども、我々が着くと、そのお母様方が来て、自分たちの子どもは大丈夫だろうか、本当に生きていけるのか、子どもの一生はどうなるんだ、そういう非常な恐怖に震えるお母様方に囲まれた印象があります。

 それから、右下の図は、バセドー病の患者さんでありますけれども、診察している間中、自分の病気も、周りの人の病気もすべてチェルノブイリ事故のせいであると信じておられまして、そういうことを新聞あるいは、その当時、周りにいる方たちが盛んに宣伝していたわけであります。

 その次の上の写真は、ちょうど我々が住民の方と話しているときにも、その横に外国の人が入ってきて、線量計を土の上に置いて、今もテレビで時々、こんな写真が出ますけれども、こういうふうな線量計で放射能を測りながら、ここも汚染されているということを住民の方に言って歩くという状況でありまして、住民が非常な恐怖を覚えていた時代でありました。

 その下は、私が持ってまいりました線量計の値を書いてございますけれども、一番汚染されたという地域にいても、私の胸のポケットに入れた線量計はほとんど動いていませんでした。空気中の線量はなくなりましたので、地面だけが汚染されているという状況のときであります。

 そこで支援として我々は何ができるかと、何をすべきかとして考えましたのは、やはり子どもの健康に対する恐怖に対応することが一番大切だということであります。計画として10歳以下の子どもをできるだけたくさん、そのときは10万人という目標を立てましたけれども、子どもたちの検査のために、我々が原爆で知っている甲状腺、血液、あるいは全身の被ばく線量の測定器というようなものを、すべてバスの中に積み込みまして、被ばく地を回って現地の子ども達を検査しようという計画を立てたわけであります。

 たまたま日本がたくさんお金を出したということもありまして、WHOIAEAもかなり日本の意見が通りまして、結局、すべての国際機関の調査も子どもを中心とするということになりました。

 その下の図は、チェルノブイリの子どもでは甲状腺がんが唯一事故の影響として見つかった病気でありますけれども、それが発見されたときの説明であります。甲状腺がんが増加したという論文がNatureという科学雑誌に出版されますと、その次の月に、ヨーロッパのグループとアメリカのグループと20人以上が一緒になりましてミッションとしてミンスクの研究所を訪問し、患者さんを診せてもらいました。確かに患者さんこれは甲状腺がんであるということは確かめたのですが、その原因が本当に放射線のせいかどうかということがわかるまで、あるいは国際的な合意ができるまでに3年かかりました。

 その次のページの写真は、ちょうど10年目の会議のときに、これは、イギリス、アメリカ、日本(私)とロシア、ベラルーシの代表がみんな演壇に座りまして、ここで会議をしながら、本当に甲状腺がんが増えたのかということの結論が出たと記憶しております。

 その下は、チェルノブイリの原発のまとめでありまして、ここには10年目、特に20年目にはIAEAWHO8つの国際機関、3共和国が一緒になって発表した科学的なまとめ、合意、それから、今年の2月には、UNSCEARで同じく合意が発表されました。その両方をまとめたものであります。急性影響、これは原発の中でありますけれども、134人が急性の放射線被ばく障害を示した。その中の28人は亡くなったということでありますが、福島で例えますと、色々と原発の中のことが今問題になっておりますけれども、急性放射線障害を起こした症例は1例もありませんし、今後もこの症状が出てくる方はいないと思っております。

 それから、原発周辺で24万人が作業して、この方たちは100ミリシーベルト浴びておりますけれども、25年後の現在、まだ健康影響は認められておりません。

 それから、周辺の住民になりますが、直ちに避難した方が114,000人、この方たちは33ミリシーベルト被ばくと計算されております。それから、避難しなければいけないけれども、そこに住んでいたという方が27万人おりまして、この方たちは50ミリシーベルト浴びたことになっております。それから、あとは500万人がもっと低いところに住んでいた。この人たち全部を合わせましても、いわゆる放射線による健康の影響は認められなかったというのが25年目の国際機関の入ったまとめであります。

 ただ、問題は、ミルクによって子どもの甲状腺がんが6,000人できたということと、もう一つの大きな問題は、精神的な障害、これはsubclinicalという言葉で書いてございますが、最大の健康影響の問題であるということであります。

 これは次のページにも書きましたが、教訓の結果として、健康影響は今お話ししたとおりでありますけれども、実際にソ連邦は崩壊いたしましたし、経済は壊滅状態になりました。特に今日話題にしますのは、被ばくという分類された、避難、転地、補償の中から、先ほどはsubclinicalと申しましたけれども、またPTSDという表現もしてございますが、自立できない人が数百万人できた。それは精神的な影響が公衆衛生上の最大の被害であると、国際機関のまとめとしては結論してございます。

 もう一つの教訓としては、今お話ししました国際的な合意ができるまでの色んなプロセスの中の専門家の役割ということをお話ししたいと思います。20年目、25年目のそれぞれ国際機関のまとめは、世界の論文を世界の専門家が検討した結果で、その検討経過も示してございます。したがって、この合意に反対できる研究結果を持つ個人の研究者、あるいは合意に反対できる科学的な論拠を持つ専門家はいないと言ってよろしいと思います。十分に検討されていない個々の専門家の言動は、社会を混乱させるということを実際にチェルノブイリで非常に感じていました。

 議論するのは科学の場所で行って、やはり社会に対しては、科学者、専門家としては、科学的な合意を発表することが必要ではないかということを、チェルノブイリを通じて感じたわけであります。そして、その合意は、科学の進歩とともに当然変わりますので、数年の単位で、それぞれ国際的に、科学的には現在ではUNSCEAR(United Nations Scientific Committee on the Effects of Atomic Radiation)、あるいはそれに放射線の防護の原則と体系に関する勧告はICRPが代表的なものでありますが、合意あるいは勧告を発表しております。

 その次のページに、防護されなかった被害者の被害を最小にする、あるいは子どもたちの被害を全体として最小にするということが私たちの目的でありましたけれども、そのときの前提とすべき放射線の被害に対する国際的な合意といいますのは、現在でもUNSCEARは、科学的に影響が認められる最低の被ばく線量は100ミリシーベルトである。それから、100ミリシーベルト以下の影響は不明であるけれども、100ミリシーベルトの影響以下であるということは間違いなく言っております。

 それから、ICRPの場合は、放射線防護という観点、あるいは放射線はできるだけ浴びないほうがいいという観点から、100ミリシーベルト以下も影響があるという仮説を採用いたしました。その説で、防護という面から、平常時には公衆被ばくは1ミリシーベルト/年を線量限度とする。ただし、緊急時には、公衆被ばくとして20から100ミリシーベルトの被ばくを参考レベルとする。あるいは、現存被ばく状況、これは後で申し上げますけれども、このときは20から1ミリシーベルトを参考レベルとする。これが国際機関による合意のまとめであります。

 あとは、これを実際に書いてありますという証拠だけですから簡単に参りますが、その次のUNSCEAR2010年には、100から200ミリシーベルト以上がわかると書いてございますし、その次のページの上の段は、原爆の被ばく者の要覧からとったものでありまして、これが現在、世界のゴールドスタンダードと言われているものであります。この原爆被ばく者につきましては、下の1シーベルトのところを上げますと0.5に一致しますが、これは過剰リスクが1シーベルト、1,000ミリシーベルトのときに0.5であるということを示しておりまして、その次の下に模型で書いてございますが、1,000ミリシーベルトのときに、原爆ではがんが1.5倍、ICRPの急性の被ばくの場合には、生涯、がんで死亡する可能性が10%増える、あるいは慢性の被ばくの場合には5%ということになります。ですから、100ミリシーベルトで左に書いてありますが、これは直線関係ということで言いますと、100ミリシーベルトで急性被ばくで1%、あるいは慢性被ばくで生涯がんで死亡する可能性が0.5%増えるということが、現在、国際機関として科学的にまとめられている被ばくの影響ということになります。

 その次が、先ほど、防護という意味からのICRPのものでありますけれども、これも本の中からとっただけでありますが、100ミリシーベルトを下回る線量においては、直線しきい値なし仮説、またはLNTモデルに根拠を置くということでありまして、これは防護という考え方から、こういうことを考えるということであります。そして、この次にあります計画被ばく状況というのは、先ほど申し上げました正常状態でありますけれども、その次の緊急被ばく状況、あるいは現存被ばく状況というのが事故の際の考え方でありまして、その下に書いてありますのは、緊急の被ばくのときは右下にございますが、状況に応じて20ミリから100ミリシーベルト/年ということが参考レベルとして勧められております。

 それから、その次のページの現存被ばく状況といいますのは、現存被ばく状況の参考レベルは、予測線量を20ミリシーベルトから1ミリシーベルトのバンドに通常は設定すべきである。これは今の状況に非常に近い説明でありますが、そして、その場合には、関係する個人、学校の児童生徒は、被ばく状況に関する一般状況、これは線量をちゃんと測るようにということでありますけれども、それと一緒に線量の低減手段を受けるべきだということでありまして、このステップで言いますと、現在の状況は20ミリシーベルト、一番右側のステップ3でございます。ほとんど超える人はいない。そして、さらにそれをもっと低くしようという努力をしている。先日の文部科学省の発表にあった、できるだけ年間1ミリシーベルトを目指すというのがこの図ではないか。そういう意味では、国際的な合意の線に従って、今動いているという印象を持ちました。

 それから、子どもの場合ということは非常に話題になります。子どもの具体的な、感覚的に怖いということはどなたもおっしゃいますけれども、実際に調べてというデータは非常に少ないんですね。それから、ICRPの基本的な考え方の中には、これは年齢も性も全部ひっくるめてそういう線が出ておりますので、別に子どもがというわけではない。ただ、言葉の上で、子どもには気をつけなきゃいけない。だけど、ここでは小児期早期の被ばく後のリスクと同じで、最大でも集団全体のリスクのおよそ3倍ぐらいだろうというのがICRPの合意として書いてあるところでございます。

 これが最後のページでありますけれども、私が最後に申し上げたいことは、放射線の影響と防護のための影響のバランスを考えるのがALARAであろう。放射線による具体的な影響というのは、先ほど申し上げました国際的な合意でありますし、合意の範囲の放射線の影響と、防護のための具体的な被害、一般の場合には、上の段に書きました避難、退避などが、子どもの場合には避難、集団転校、状況によって、児童生徒等の日常生活の制限がございます。この放射線の影響と放射線を防護するための具体的な被害とのバランスを考えるということでありまして、実際に未曾有の緊急事態、事故がまだ収束していないという状況も念頭に置かなければいけない。緊急事態の各段階においてきめ細かくといいますのは、例えば、夏休みになれば、また改めて線量によって対応を考える。そして、周辺住民の被害を最小にするということが最大の目的である。冷静に対応を考える。そして、情報の開示と説明、住民とのきめ細かい対話がその根本として必要ではないかということであります。あとは、希望でありますので、時間が参りましたので、ここで終わらせていただきます。どうもありがとうございます。

【平下学校健康教育課長】  ありがとうございました。

 それでは、引き続きまして、衞藤先生からお願いいたします。

【衞藤氏】  それでは、資料2に基づいてご説明いたします。何分、準備の時間がなかったので、内部に関しては、もしかしたら若干の認識の違いがあるかもしれませんが、お許しください。

 最初の3行は、私が臨床の小児科医の出身で、研究者となって、母子保健、学校保健というものを研究し、それから15年ほどは東大の教育学部で健康教育学を教える仕事をして、現在の職についているということを書いてございます。

 乳幼児期から青少年期、子どもと言われる年代、特に思春期なども含めて、子どもの健康、安全の推進、健康教育等に幅広く関心を持っております。放射線医学等に関しましては、放射線そのものに関しては専門家ではございませんが、子どもの健康問題とか子どもがみずから日々の対処を考える力をつけることを目指す健康教育であるとか、健やかな成長・発達の支援という立場から本日の主題をとらえて発言したいと思います。

 3つのことを申し上げたいと思います。

 1つ目は、児童生徒や保護者を含め、地域で暮らす人々は正確な情報を求めているということを申し上げます。これまで地震と津波が発生して、福島第一原子力発電所事故から現在に至るまでに日本で起こっていることは、少なくとも記述されている歴史上、日本では経験したことのない、一般地域の住民が放射線の被ばくということが問題になるという意味で、もちろん未曾有のことでございます。人々に健康への影響への懸念や地域の環境汚染への心配等を引き起こしていることは疑いがないということかと思います。

 以下、放射線に関する私の理解を記述してありますので、これは少し飛ばしますけれども、1970年代に公害問題が非常に華々しく議論されたころ、そこで私は大学生でしたので、そのときに環境基準であるとか、環境に存在する有害因子をどのぐらい許容する、許容量とか、そういう考え方を学んだ時期がございますが、そのときにモデルとなったのは放射線の問題であります。放射線の健康影響に関しては、かなり早くからこういったことがきちんと理論的にも整理されていたということを記憶しております。

 そのときに、ICRPだったと思いますけれども、先ほど、長瀧先生のご説明がありましたけれども、あくまで量と健康影響というのは比例関係にあって、ここまでなら大丈夫ということはなかなか言えないんだということを覚えております。

 あと、日々、私たちは放射線を全く浴びてないかといえば、そんなことはなくて、宇宙線であるとか、あるいは医療を受ければ、X線の撮影、あるいはCTスキャンということで被ばくすることはあるわけですけれども、日々の生活の中で、そのリスクといいますか、それが健康に影響するということは、心配しない程度のことであるとして日々の生活を送っております。

 今回の事故は、そういった日々の生活の上に加えて起こってきたことでありますので、いわば不必要に付加されたことでございますので、これは限りなく少ないほうが望ましいという原則に立つべきであることは言うまでもないかと思います。

 本来浴びる必要のなかった放射線がどの程度発散していて、日々の生活空間の中にどのぐらい達しているのかということを、人々は本当に切実に知りたいと思っているはずです。それがわかったからといって不安が去るわけではありませんけれども、少なくとも正確な事実を知るという権利はすべての住民の方が持っていらっしゃると思います。文部科学省のホームページを見ますと、トップページに全国放射線モニタリングデータというのが掲載されておりまして、都道府県別に見ますと、福島県以外は非常にあっさりとした内容になっておりますけれども、福島県のところを見ると、非常に詳しく空中線量の最新のデータが表示されています。しかし、それは急遽つくられたことだと思いますけれども、その中身は数値が並んでいるだけで、一般の方がすぐにわかりやすい状況にはまだなっていない。天気予報のようにというのは、まだ難しいことであるかもしれませんけれども、一般の人にわかりやすい表示になるようなさらなる改善を望みたいと思います。

 2番目のポイントは、人々はみずからの健康や家族の健康とどうかかわるのかということを知りたいということでございます。これまでに日本の政府から発信された色々な放射線の環境影響に関する内容を見ますと、例えば、先日、文部科学省から出されました児童生徒が1年間に受ける線量の暫定的な目安として何ミリシーベルトというような発表がございますけれども、こういった公表を受けて、受けとめる人々の理解に必ずしもすぐつながらない発信の仕方になっているということがやや気になります。人々は、この暫定基準をもとに何を考え、日々の生活の中で何をすればよいのかということが果たしてすぐにそれが実行できるんでしょうか。この点をやや疑問に思っております。

 以下は、私どもの日本健康教育学会であるとか健康教育に関する専門の学会で、新進の学徒である蝦名玲子さんという方が、『公衆衛生情報』という雑誌の4月号に緊急時短期連載で「災害を生き抜くためのヘルスコミュニケーション」という記事を書かれていまして、それを参考にお話しすることでございますけれども、今回の震災や津波、原子力発電事故に伴う放射性物質拡散汚染に関する問題というのは、人々の恐怖感情を引き起こすという意味では2つの条件を満たしている。人々は、やっぱり恐れということがぬぐい去れないので、なかなか次の行動を起こせないところがあるので、その2つの条件というのは、危険への感受性が高いということと、ひどさのレベルが高いということでございます。

 危険への感受性が高いということは、私は危険にさらされていると感じさせやすいということです。ひどさのレベルが高いということは、もし被害を受けたら、その害はとても大きなものであるに違いない、取り返しのつかないようなものであるに違いないと感じさせる、そういったようなことであるということです。このため、事実をそのまま客観的に伝えたとしても、恐怖感情を引き起こしやすいということが今起こっていると考えられます。

 この状況になることを避けるためには、情報を伝える際には、ただ生情報を伝えるのではなくて、情報提供の目標を明確にし、その目標を達成することを意識して伝える必要がある。これがヘルスコミュニケーションという立場に立った考え方だそうでございます。

 どのような災害時であっても、情報提供により、人々が次のような状態になることが理想的と考えられます。1は、「把握可能感」という言葉を使います。把握可能感が高まり、冷静かつ迅速に行動するための判断基準ができるようになる。把握可能感とは、下のほうに書いてございますけれども、自分の置かれている状況を理解できているとか、または、今後の状況がある程度予測できるという感覚、そういうことが高まりますと、冷静であり、かつ迅速に行動できる可能性があるということです。2番目は、情報提供者への信頼感が高まり安心できるという状態が理想的だろうと思います。

 人々が関心あるのは健康への影響でして、今回測定された値は、いかなる健康問題を引き起こすのに必要な値よりも25倍低いものであるという。これは、実際にアメリカのある場所で発信された情報ですけれども、健康問題にどのくらいつながる距離があるものなのかという、この数値は自分にどういうふうにかかわり得るものなのかというふうに情報が出てくれば、もう少し受けとめやすいということだと思います。

 情報の受け手である住民の最も関心のある点に焦点を当てて、具体的に情報を伝えるほうが受け入れやすいと考えられます。しかし、人々が抱く恐怖をおさめるためには、最新のデータをもとに正確な情報をわかりやすく提供するだけではまだ不十分で、恐怖をおさめるには、効果があると考えられ、個人が状況をコントロールするために現実に実行できる行動の内容を伝えることが重要だということで、これは反応効力感を高めるということになるんだそうですけれども、かくかくしかじかの状況だけれども、こういうことをすればこういった危険は回避できるというようなメッセージを伝えて、そうしますと、その人が、じゃあ、自分は何もできないのではなくて、何かできるのではないだろうかとか、こうすれば対処できるんじゃないかと、そういった気持ちを起こさせることができる、これが反応効力感を高めるということになる。こういったような働きかけというのが、同じようにメッセージを出す場合にも、工夫をするということが大事じゃないだろうかと思います。

 3点目は、時間がないので簡単にいたしますけれども、子どもが健やかで元気に育つことを可能な限り保証しなければならない。今、やはり放射線の危険ということで、校庭では遊ばないとか、プールで泳ぐということに関してもちゅうちょしているところが非常に多いと思います。どんなに大丈夫だよと言われても、実際にはしていらっしゃらないところが多いと聞いております。今、そういった多くの困難な状況がございます。放射線被ばくの影響が最小限となるように配慮しつつ、なおかつ、現在育ちゆく存在であるということに変わりありませんので、その子どもの生活環境を考えていかなければならない。ただでさえ、現在、身体運動する機会が少なく、外遊びをする機会が少なく、子どもの体力・運動能力が低下しているということが、今まさに進行している、その中でやはり考えていかなければいけない。積極的に身体運動に親しむ機会とか環境を、今のこの困難な状況の中でどうやって提供できているかということに関しても留意しなければならない。これは非常に抽象的な言い方で申しわけないんですけれども、具体的にこういうことってなかなか言えないんですけれども、こういった状況であるからこそ、そのことにもぜひ配慮していかなければならないと思っております。

 後ろには、蝦名氏の「災害を生き抜くためのヘルスコミュニケーション」を資料としてつけてございます。

 以上でございます。

【平下学校健康教育課長】  ありがとうございました。

 それでは、引き続きまして、田中先生からよろしくお願いいたします。

【田中氏】  私は、日本小児心身医学会の代表として、今日、お話しさせていただきます。この日本小児心身医学会といいますのは、子どもの心が体に与える影響、あるいは体が心に与える影響というのを研究し、治療法を開発することを目的にしています。放射線の専門家ではありませんから、今日は、何が心身に悪影響を及ぼすのか、心身相関の医学的なお話と、それから、学校での現場の対策の2点についてお話ししたいと思います。

 タイトルは、資料31にございますように、「震災や放射線が児童生徒への心身に与える影響について」ということでございますが、この影響を与える因子というのは、放射線だけではなくて、それ以外に様々な心理社会的な因子があります。そして、子どもたちを考える上においては、それらすべての心理社会的因子を考えていく必要があるわけです。

 ただ、今日は放射線ということに焦点が当たっておりますので、放射線のことを少しお話しいたします。原発が解決していない現状を考えますと、放射線のことを心配しなくてもいいということでは決してございません。しかし、必要以上に過剰に心配することは、子どもの心身に悪い影響を与える、と思われます。これは、今までの科学的なエビデンス、証拠があります。資料3-2に書いてございます。最近の論文などもつけて、1999年から2011年までのチェルノブイリの最近の研究データをまとめていますが、一言で申しますと、25年間の研究によって明らかになったことは、胎児期に放射能汚染された子どもの場合、神経学的にも心理学的にも障害されているとする論文もありますが、研究結果が一致してないというのもありますが、その障害の程度は、保護者の教育の状況、あるいは保護者の不安度との関連性が非常に強かった、とされています。これは統計学的に証明されていまして、被ばく度との関連性は証明されなかったということがございます。したがいまして、チェルノブイリの研究では、放射能の低濃度では汚染度よりも日々の生活における心の状態が健康維持には重要であると結論されておりまして、特に下にあります3番目のBeehlerの論文などは、その辺が詳しく書いてございます。アブストラクト、抄録をつけております。資料32にありますので、またご覧ください。

 子どものストレスを考えていく上において重要なことは、先ほども言いました、すべての心理社会的因子を考えていかないといけないんですが、ただ、子どものストレス反応を必要以上に心配すると、かえって心身の不調が悪化するということは、これは心身医学、あるいは精神医学でもかなり常識的なことになっておりまして、既にそこにあるように記載がございます。厚労省の心の診療医専門研修テキストでは、「親自身が不安を減らし、子どもとのかかわりの自信を持てるように導いていく」、これが専門医の役割でありますし、「青春期精神医学」には、「くり返しストレスを感じることで様々な身体症状や精神症状を生ずる」との記載がございます。

 実際に、震災が起こったときに精神的ストレスが子どもに与える影響はどのようなものがあるかといいますと、その下半分に列記しています。心身症・身体化障害、睡眠障害など、ずらっとありますが、このように数多く色々あるわけなんですね。この中で最も多いのが心身症、身体的な症状、あるいは睡眠障害です。これ、1つずつ説明するととても時間がありませんので、皆様方、ぱらぱらとめくって、後でまたご覧いただけたらよろしいかと思いますが、1枚めくっていただいて、強迫性障害の下にあります、「もっと強いストレスでは」とございますね。もっと強いストレスとはどういうことかというと、通常、子どもたちがちょっとしたけがなんかをするよりももっと強いストレスということですが、とても怖い目に遭ったり、自分ではどうにもできなかったという体験は、心の傷として薄れていきにくくなることがある、これがトラウマというんですね。この場合、通常の生活で起こるストレス反応よりも症状の程度が強くなりますが、トラウマに対する反応としては一般的です。つまり、強いストレスを受けたら、どんな子どもでもストレス反応が出てきて、そこに体の症状というのがありますね。いつまでも怖い夢を見て眠れない、朝が起きられない、息苦しい、吐き気、食欲低下、腹痛、頭痛とあります。行動面では、ちょっとしたことで怖がる、イライラ、怒りっぽいとかいうことがありますが、非常に怖い経験をするとこのようなことがあるわけですけれども、この子たちがすべてPTSDになるわけではございません。

 1枚めくっていただきますと、心的外傷後ストレス障害とありますが、これはきちんとした医学的な診断基準がございまして、そこに3つあります。何か災害があると、すぐPTSDの話になるんですけれども、実際になっていくお子さんはそれほど多くありませんで、圧倒的多くは通常のトラウマ障害で、だんだんと改善していくのが多いんですけれども、うまくいかないお子さんではこういうふうなことも出てくる。ただ、あまりにもPTSDが話題になりますので、念のためにここでは出しておりますが、震災ストレスイコールPTSDでは決してございません。様々な身体症状や精神症状が通常は起こってくるということです。

 その次に、「子どもの心の問題の現れ方」というのがあります。子どもは実際、どのようなストレスを感じるのでしょうかということです。それは年齢段階によって変わります。乳児期、生まれたときは、母子関係、あるいは親子関係でしょうし、幼児期になると、兄弟間葛藤が出てきますし、あるいは夫婦関係の問題もありましょうし、学校に入ると、学校での集団生活、友達関係、教師との関係もございます。大きく分けますと、子どもには家庭ストレスというのと学校ストレス、その両方がかかってくるということです。これがストレスの原因です。

 じゃあ、子どもにストレスがかかると、全部子どもがストレス反応をあらわすかというと、そうではありませんで、次のページに3つあります。真ん中のところに、「ストレスを自分一人で抱え込むまじめな性格」、こういう方は病気(心身症)になりやすいわけで、この子たちはとても真面目なお子さんが多いので、この子たちに適切な対応をしていく必要があるということです。

 では、子どもの心の問題が出ないようにどうすればいいのかということですけれども、その1つが、ストレスの反応を和らげるものを考えていくということです。そこにラクダの絵をかいていますが、これ、子どもだと思ってください。ちょっとラクダに例えるのはよくないんですが。子どもに学校ストレスがかかる、家庭ストレスがかかる。これに加えて、今回の震災やら放射線の不安が加わるということになりますと、ラクダの荷物が重くなってくるわけです。

 ところが、子どものラクダの足を支える部分があるわけですね。これは何かというと、家庭の保護機能ですね。もう一つはソーシャルサポート。どういうことかというと、家庭保護機能は親です。ソーシャルサポートというのは、学校の先生であったり親戚であったりご近所、こういう地域のサポートがしっかりしていれば、それだけ子どものストレス反応が和らげられるということになるわけですが、次のページをめくっていただきますと、その学校ストレス、家庭ストレス、色んなストレスが強くなってくると、ラクダの足が折れちゃうということですね。そうすると、起こってくるのが、黒で書いています「ストレス反応」というやつです。このストレス反応には、体の異変、これが心身症、行動上の問題、これが非行やパニックとなるわけです。

 このように、ストレスがかかると、あるいは心配事があると心身の不調を起こす。これは医学的にどう考えたらいいのかというのが、その下の図です。ストレス反応がかかると大脳皮質で感じるわけですが、その命令を大脳辺縁系、その奥に伝えていきます。そうしますと、大脳辺縁系が反応して、イライラする、ぼーっとする、引きこもるなどが起こりますし、もうちょっと奥にまで命令がいくと、視床下部の反応が出てまいりまして、脈が速くなる、食欲がない、眠れない、頭痛や腹痛、微熱が出たり排尿の失敗、あるいは高血圧や低血圧になるということになります。そしてより分かりやすく、心と体はつながっていますよということを、その次の簡単な絵で子どもたちや保護者に伝えていただくといいかと思います。

 さて、その下に、「各発達段階の気になる症状」というのがございます。年齢別に、幼児期、学童期、思春期という表がありますが、これは年齢によって心身症の種類が変わる。つまり、体にあらわれる症状が変わるということで、数多くあります。またご覧になっていただけたらいいかと思います。では、日本の子どもたちはこのような体の反応をどのように起こすんだろうかということですが、起こしやすいかどうかなんですけれども、その次のページを見ていただきますと、「日本の子どもは、体調不良で精神不安定である」と書いてあります。これは、日本とスウェーデンで私どもがやりました調査です。ここには中学生のデータが出ていますが、例えば、朝起きにくく午前中調子が悪いですかと質問したときに、日本の中学生は赤線、スウェーデンの中学生は緑色ですけれども、日本はスウェーデンに比べて数倍心身症状が多い。下のほうを見ますと、よく死にたいと思う子は2倍ぐらいいます。家でストレスを感じる、学校でストレスを感じる子どもは日本では数倍いるわけです。この調査は普通の一般学校でやっているわけなんですけれども、健康そうに学校に通っている子どもであっても、スウェーデンと比較すると、日本の子どもは大変ストレスがかかっているということですね。そういう状況で、また震災などでさらにストレスがかかってきたら、実際にどのように子どもに対応したらいいのか。学校現場ではどう対応したらいいのかということを、現在、我々は一生懸命考えていまして、学校の先生方や学校医の先生にもお力を貸してもらえないかと考えています。

 その次のページに、「心身に問題のある子どものパターンと、早期発見とトリアージ」とございますが、学校のクラスの中の気になる子どものパターンというのが長四角に書いています。一番上は「慢性疾患などの持病がある」など、全部で11個の四角があるんですけれども、初期対応で問題になりますのは下の7つです。例えば、「遅刻、早退がある、体調不良を訴える」。これは心身症のグループ。あるいは、友達との交流が少なく、おとなしいとか、クラスで浮いた感じがあったりするとか、これは発達障害です。心身症とか発達障害の潜在的な可能性のある子どもたちというのは、ストレスがかかるとすぐに症状が出やすいので、この子たちは学校現場で早期に見つけ出す必要がある、要一次対応児童・生徒なんですね。これは今現在、学校のほうで対応するシステムがありません。早期発見するシステムがありませんので、大阪府医師会のほうでは、健康チェックリスト(QTA30)というのを開発して、トリアージをしようと考えています。このチェックリストは、30問で出ています。非常に簡単で、小学校4年生から中学生なら自分でできますし、小学校1年生、2年生、3年生でも保護者と一緒にやればできるというものでございますので、簡単にできます。

 回答は、はい、ときどき、いいえの3件法、すなわち、はい、ときどき、いいえのどれかを選んで○するんですね。「あなたは朝起きにくいですか」に当てはまれば、○をするんです。最終的に合計点数が出るようになっています。また1枚めくっていただいて、「QTA30の評価による対応基準」という、棒グラフが並んでいるスライドの次のスライドを見ていただくと、合計点数が何点かによって、どういうふうにこの子に対応したらいいのだろうか。例えば、QTA309点以下なら問題なしと。そのまま心配ないですよと。10点以上になれば、スクールカウンセラーに相談してくださいと。15点以上になったら、これは身体疾患の可能性もあるので、一般の小児科の先生に相談してみてください、診療してみてください。25点以上になってしまえば、これは専門の先生、こころの相談医とかこころの診療二次担当医なんかに相談してくださいというふうなことを、これでトリアージできると思います。これで学校の中で、学校医さんが標準化されたシステムでできるんじゃないかと思います。今、大阪で進めていくところでございます。ちょっと気になる子どもがいるなというときは保護者と本人の了解をとってQTA30をやっていただけたらと思います。

 今日のお話をまとめますと、1番目に、放射線に注意することは重要ですけれども、過剰な不安はかえって子どもの心身に悪影響を与えますよということをお話ししました。2番目に、日本の子どもは、ストレスによる身体症状というのがでやすいですから、過剰不安なんかになったら、もっと心身症状がより悪くなるので、できるだけこの辺を学校の先生、あるいは周囲の人々が理解していただく。3点目は、学校で早期対応ができる、トリアージできる方法が必要であるという内容を、今日、提案させていただきました。

 ご清聴ありがとうございました。

【平下学校健康教育課長】  ありがとうございました。

 それでは、友添先生、よろしくお願いします。

【友添氏】  早稲田大学の友添です。よろしくお願いいたします。

 私は医師ではありませんし、放射線医学を専門としているわけでもありません。スポーツ教育学という、多分、皆さんには聞きなれない、スポーツ科学という総合科学の中の1領域を専攻している者です。そういったスポーツ教育学というのを中心に、今日は少しお話をさせていただきたいと思います。

 資料4をごらんください。1枚物のレジュメを用意いたしております。裏表です。

 実は、論文を幾つか持ってきて、全体的に網羅してお話をしたほうがいいかと思ったんですけれども、10分から15分という短い時間ですので、総括的に、概括的にお話をさせていただこうと思って参りました。先ほど申し上げましたように、放射線医学の研究者でも専門家でもありませんので、放射線量と健康被害の関係については、私は専門ではありません。また、知識もありませんので、今からお話しさせていただく内容というのは、現在、国あるいは文部科学省から発表されているように、測定される線量が健康に被害をもたらす可能性がない地域というのを前提にしてのお話であるということを、最初にお断りさせていただきたいと思います。

 具体的には、福島市、あるいは郡山市など、福島県下で学校に通う子どもたち、この言葉は幼児から小学生、高校生まで含んだ意味で使っておりますけれども、こういった子どもたちの長期にわたる運動の制限が、彼らの心と体に教育学的に見てどんな影響を与えるのかということを、端的に言いますと、語弊があるかもしれませんが、弊害をもたらしかねないんじゃないかという点についてお話をさせていただこうと思います。

 震災、あるいは福島原発の事故から既にもう80日がたっているわけですが、当初の緊張の毎日から、今、田中先生のお話にもあったように、次のフェーズに今入ってきていると思っています。つまり、子どもたちは、震災直後とは異なった別の種類のストレスが高まっていると思います。私の友人が何人か、東北に勤めていたり福島に勤めておりますので、電話で色々聞く機会があるのですが、やはり子どもたちのストレスが別のストレスになってきているということをよく聞いております。特に通常行われるべき体育の授業だとかあるいは身体運動が制限されているというのは、子どもの発達上、大きな問題があると言わなければならないんじゃないかと、私の立場からは考えるところです。

 誤解を恐れずに言いますと、放射線という直近の問題ばかりに目がいってしまって、運動量が不足するという長期的な視点から、子どもたちの心身の健康被害の問題、こういうところが危惧されていかなければならないんじゃないかと思うわけなんですね。成人でもそうなのですが、子どもたちにとっての長期間の運動不足というのは、もちろん程度にもよるのですが、コレステロール、あるいは血中脂質が増えたり血圧が上昇したり過体重による肥満が起こったり、骨密度が減少してきたり、明らかに骨密度が減ってきたりします。また筋力が低下してきたり、あるいは、今、田中先生のお話にもありましたけれども、抑うつ傾向が出てくるということが言われています。

 また、運動不足による肥満というのは、成人と同じように、子どもにとって高脂血症や動脈硬化の重要なリスクファクターになってくるし、子どもの2型糖尿病の発生頻度を高めると言われています。また、運動やスポーツで精いっぱい体を動かすと、血液循環がよくなります。経験的にも、皆さんご存じだと思いますが、血液循環がよくなると脳の働きが活発になって、不安やストレスの軽減につながります。私の立場から申し上げれば、不安やストレスを感じる今こそ、十分な身体運動やスポーツ活動が必要じゃないかと思うところです。

 実は、身体運動やスポーツは、身体的な効果はもちろん、精神的な効果も極めて高いものがあります。集団的な運動遊びやゲーム、スポーツ活動というのは、協力、いざこざなど様々な場面を提供してくれますし、そういう様々な場面での人間関係を通して社会性を育成すると言われています。運動場面で、みんなで計画を立てて、目標を決めて努力して、その目標を達成したり成功できれば、やれるという自信が生まれてきます。自信がつくと積極性や自立心というのが生まれてきて、これ、実はやる気や意欲の源泉になってくるわけなんですけれども、運動場面というのは、他者である仲間、友達から認めてもらったり受容されたりする経験が頻繁にあります。また、うまくできたという達成の経験というのは、自分が有能だという自己有能感をつくり出してくれて、肯定的な自己概念を生み出してくれます。これは、何よりも心の安定をもたらして、高いストレス耐性、あるいは環境にうまく適応できる行動を形づくるもとになっていくと考えられるわけなんですね。

 ご存じのように、成人のアルツハイマー病、あるいは痴呆の予防には、身体活動、運動というのが効果があるということは報告されています。運動によって、ラットの記憶力は向上します。適度な運動というのは、人間の記憶や学習、思考などの知的能力の向上の効果があるということが報告されています。

 アメリカのヒルマンという人たちの研究では、有酸素運動能力と学力の間には正の相関があるということが報告されています。運動機会を十分に保障して、適切な指導をして、そういう環境下に置いてあげると、幼児の運動パターンがうまく獲得されていったり、子どもの脳の機能の発達を促進したり、仲間との関係を改善するのに非常に有効だということが言われています。生まれつき脳や体に障害を持つ子どもたちにとっても、自分から体を動かす努力をしたり、外部から運動刺激を与えることで脳の機能を向上させることができます。今、運動パターンの獲得と申し上げたのですが、運動学習には、この時期に学んでおかなければ身につかないということも少なからずあります。だから、新聞報道によりますと、一部の地域では、小中学校で屋外プールを使用してプールの授業を行わないと聞いているんですけれども、この夏、泳げるようにならないと、これからもよほどの努力をしないと泳ぐことができなくなるということもあります。

 先ほど申しましたように、運動学習にはレディネス、適時性というものがあって、一番学ぶことに適した時期というのがあります。例えば、皆さんもよくご存じのように、子どものときに自転車に乗れるようになっておかないと、大人になってからいくら乗ろうとしても、なかなか技能の獲得が難しいということもあります。こう考えてくると、過剰に――過剰と言うと言葉が過ぎるかもしれませんけれども、運動の制限を子どもに課すというのは、発育発達途上にある子どもにマイナスの影響があるように思えてなりません。つまり、運動遊び、身体運動、スポーツ活動を制限していくということは、逆に子どもの心身に弊害をもたらすように思えるということなんです。私も子どもがいます。子どもの親ですので、保護者の方のご心配、ご意見というのはもっともだと思っています。

 ただ、こういったご意見に加えて、私は当事者である子どもたちの意見というのもやっぱり大切にしなければいけないんじゃないかと思うわけなんですね。別な言い方をすると、子どもたちが屋外を含んで運動することをどう思っているかということを大切にすべきではないかということです。つまり、子どもの声もしっかり聞いて、子どもの立場に立った方策も少し考えていかなければいけないんじゃないかと思うわけです。

 加えて、子どもたちが今運動をしないことによってもたらされる、田中先生のお話、あるいは衞藤先生のお話にもありましたけれども、精神的側面での弊害、あるいは20年後、30年後に生活習慣病になるリスクが上がる可能性もあるということも考慮に入れておかなければいけないと思います。現在の線量が健康に被害をもたらすものでないのであれば、国や文科省、教育委員会は、ぜひ子どもたちが精いっぱい運動できる運動の機会を十分に図れるように配慮をお願いしたいと思っています。今申し上げたことは、体育の授業だけではなくて、幼児の運動遊びだとか運動部活動、あるいは運動会の実施も含んでのことです。

 次に、これからの対応を含めて、具体的に意見を述べさせていただきたいと思います。学校によっては、避難する子どもたちが抜けて部活動ができなくなったり、休止になったりした部活動があります。部活を休止にしたり、試合を断念させるというのは、何よりも現場の先生方にとっては、本当に苦渋の決断だったと思います。これは本当によく感じることなのですが、ただ、これまでの調査で明らかになっていますように、子どもたちは部活にものすごく大きなアイデンティティーを置いているんです。だからこそ、週末に同じようにメンバーが抜けたチームだとか学校が集まって、線量の低い地域で合同練習を行ったり、合同チームで試合や大会に出場できるようにしてあげてほしいと思っています。これからインターハイだとか、中学校の全中のブロック大会、県のブロック大会が始まっていくと思うのですが、ぜひ高体連、中体連には予選等の大会出場への格段の配慮をお願いしたいと思っています。

 これまで一生懸命やってきて、突然の災害で不安な生活を強いられる中、子どものアイデンティティーのよりどころがなくなってしまうというのは、つらいというよりも子どもの心に生涯の悔いを残してしまうんじゃないかと個人的には思うところがあります。こういう仕事をしていますので、その辺のことをよく感じるところでもあります。子どもの心の傷というのは、大人の論理でははかり知れないところがあると私は考えています。

 運動会も中止や延期が多いと伺っています。子どもたちにとっての運動会というのは非日常の晴れの日なんですね。早稲田の学生の中にも、大学生になった今でも中学校や小学校のときに運動会がどれだけ楽しかったかということを、うれしそうな顔をして話してくれる人が多くいるのですが、中止と決めたところも、難しい事情はよく承知しているんですけれども、秋のどこかで復活していただければと思います。遠足を兼ねて線量の低い県内の総合グラウンドで複数校の合同運動会を開くという手も実はあるんじゃないかと考えるわけなんですね。

 過度に心配し過ぎて屋外活動を禁止したり、プールの使用を中止したり、あるいは屋外での運動部活動を禁止するのではなくて、子どもに十分な運動機会を与えられるように考えていく方策をめぐらしていくことも必要じゃないかと思うところであります。周知のように、日本のことわざに「石橋をたたいて渡れ」というのがあるのですが、あまりにも用心してたたき過ぎて壊してしまっては、もう渡ることができなくなってしまうんですね。元も子もなくなってしまうということだと思います。

 最後に、子どもたちの1日の必要運動量について、少しお話をさせていただければと思います。楽しく精いっぱい運動ができることを保障できるんだったら、もちろん運動場所は屋内・屋外など、どちらを問う必要もありません。どちらでも可能です。必要運動量については、幼児から高校生までは発達の度合いが違ったり課題も異なりますので、必要な運動量を一概に言うのは専門家の間でもなかなか難しいんですね。大人の運動指針についての研究は非常に多くあります。そしてまた必要運動量も明らかになっているのですが、日本では子どもの必要運動量についての横断的・縦断的研究、これは非常に立ち遅れてきたところで、あまりありません。

 例えばカナダの身体活動ガイドラインを見れば、90分程度の中等度の運動と116,500歩の運動量が求められるというようにスタンダードを決めています。ただ、この目標は現実にはあまりに高過ぎると思います。

 アメリカにNASPENational Association for Sport and Physical Education)という組織があります。これはアメリカの体育の学習指導要領をつくっている学術団体なんですが、このアメリカの体育スポーツ協会がスタンダードを出しています。あるいは今日のヒアリングのために幾つかの先進諸国のものをざっと調べてきました。また、WHOも子どもの運動のガイドラインを出しています。こういった分析・調査を総合してみると、中等度から高強度の身体運動、これも後でもし時間があればお話しますけれども、毎日合計1時間程度行うというのが世界のスタンダードになっているようです。

 カナダでは、これに加えて、健康な体重を維持するんだったら、6歳から12歳の男子では115,000歩、女子では12,000歩が望まれるとしているのですが、一般的に生活運動としての推奨の歩数を考えると13,000歩から14,000歩ぐらいが妥当じゃないかと思います。今、それが子どもたちにちゃんと担保されているかどうかということを、やっぱり確認しておかなければいけないと思うところであります。

 運動量の確保に関して、例えば屋外のプールがどうしてもだめというのであれば、公立の屋内プールだとか、町のスイミングクラブの屋内プールを利用して、各学校で順番にそれを使うという方法もあると思います。

 あるいは、屋内スペースだけで子どもの身体活動を十分に保障しようとすると、指導する側にも豊富なプログラムが必要になってきます。学校の先生方が大変であったら、東北各県の、あるいは東京まで含んで、体育・スポーツ系学部・学科の学生さんたちにボランティアとして各学校に入ってもらうという方法もあると思います。大学では、そういったボランティア学生を、例えばスポーツ指導法実習などの授業として単位化して、ボランティアに入る前に大学の中で集中の授業でそのプログラムを伝えて学ばせておくという方法もあると思います。日常、毎日毎日接していて痛感することなんですけど、若い学生というのは意外に力を持っているし、意外に彼ら自身、勉強して一生懸命やりますので、いい勉強の機会になると思います。

 いずれにしても、今申し上げたことを含めて言えば、放射線による健康被害は絶対に避けなければならないのですが、一生に一度きりの一番大切な心と体の発育期にある子どもたちの健全な発達のためには、十分な身体運動、スポーツ活動の機会を提供するというのは大人の務めだと考えています。夏休みには、先ほど申しましたように室内プールを開放して、スイミングスクールや公立の屋内プールの指導員の指導をいつでも受けられるようにするとか、あるいは夏休みには自宅で用具だとか道具なしで手軽にできる運動、あるいはフィジカルゲームというのをさせてあげるようにする。幾つか打つ手はあると思っています。

 ちょうど文科省からもう既に配布されている小学校の「多様な動きをつくる運動(遊び)」のパンフレットがあるのですが、これはもっと利用・活用されていいと思っていますし、今、ホームページで公開されている中学校の「体つくり運動」のリーフレットの中にある運動実践例などは、どんどん推奨してあげたほうがいいと思います。今日、この冊子を急遽、このヒアリングに間に合わせて私の研究室でつくってきたのですが、教室で行える運動、あるいは廊下で行える運動、あるいは階段で行える運動などは豊富にあります。実はこういう教材やプログラム開発の研究は随分進んでいまして、場所を選ばない手軽で有効な教材やゲームというのは随分豊富に開発をされています。こういうのを特に子どもたちに伝えてあげて、手軽にやれるようなことで運動量を確保していくということが必要じゃないかと思います。幾つかのアイデアを持ち寄っていけば、子どもたちには今よりもずっといい状況が提供できるんじゃないかと思っております。

 これでいったん区切りたいと思います。ありがとうございました。

【平下学校健康教育課長】  ありがとうございました。

 それでは、ただいまから質疑応答の時間に入りたいと思います。どうぞ自由にお願いいたします。

【鈴木副大臣】  本当に4人の先生方、貴重なご意見、ありがとうございました。

 まず、私から少しご質問させていただきますが、逆に先生方同士で、もしもお話になりたいことがあれば、ぜひまた言っていただければと思います。

 それで、私からは衞藤先生にお伺いしたいと思うんですが、最後に積極的に運動に親しむ機会や環境を提供すべきことを留意しなければならないと、こういうお話でございましたが、趣旨としては、同じことは友添先生からお話ございましたけれども、追加的に衞藤先生の専門領域から、このことについて補完・補足があればお願いを申し上げたいということでございます。

 それから、長瀧先生と田中先生にお伺いしたいのですが、長瀧先生の資料の6ページを見ますと、要するに被ばくと分類された人々、まさに避難、転地された方々の中からストレス症候群、自立できない人が数百万人になったと報告され、精神的影響が公衆衛生上の最大の被害と結論されているということでございますが、避難とか転地というのは、裏を返せば相当なストレスになるという理解でいいのかどうかということを長瀧先生に。それから、田中先生にも避難、転地というものがそういうことにつながり得るのかどうかということについて、それぞれのご専門から伺えればありがたいなと思っております。

 それから、先ほど友添先生から、20年後、30年後の生活習慣病のリスクが増加されるというお話がございました。一方で、放射線を受けるということは、それに基づく健康への影響があるわけで、これをどうてんびんにかけるのかということでございますが、ここも長瀧先生にどういうふうに比較考量したらいいのかという点について、私からご質問させていただきたいと思います。

 その後、先生方同士で少しご質問等々があれば、それをしていただければと思います。よろしくお願いいたします。

【衞藤氏】  それでは、衞藤のほうに最初にご質問いただきましたので、お答えしたいと思います。

 子どもが健やかで元気に育つことを可能な限り保障しなければならないということに関して追加でということですけれども、私は健康教育という立場から申し上げますと、子ども自身が、そういった状況の中でどういうふうに体を動かして遊ぼうかとかいうことが実際にわかり、動いてもらわないといけない。そこまで持っていくように指導していかなければいけないということだと思います。

 友添先生のほうから、色々そういったプログラムが開発されているとか、そういったお話もございましたので、1つは、それを子どもたちに伝えて、実際に子どもたちがそれを活用できるようにしていくということでしょうし、それから、例えば体育館が破壊されてしまっていて廊下とか階段とかで運動するという場合には、そこはいわば本来の目的からいったら非日常的な施設でございますので、安全への配慮であるとか、施設の劣化ということに関して、設置者としてはちゃんと心配りをしておかなければいけないだろうと。そういった中で子どもたちに運動に親しむ機会をできるだけ積極的に提供していくというようなことを伝えていくということじゃないかと思っています。

 以上です。

【長瀧氏】  精神的な影響が避難かどうか。これは実際には我々、言葉は直接通じませんので、精神的な影響というのは、外から行ってなかなかうまく調査できないことなんですけれども、いろいろと現地の人とも話した、むしろ専門家からの助言が主なんですが、被ばくしたという「体験」であると聞きました。具体的に避難する、しないということだけでなくて、例えば、この地域は危ないと言われたような体験であるとか、あるいは移動しなくても被ばく者としてある時期補償をもらったとか、そういうあらゆる「被ばく者として扱われたという体験」が関係するんだというようなお話がございました。

 被ばくと精神的影響というのは、原爆で一番よくわかると思いますが、最初は原爆で具合が悪いといいましても、ノイローゼであるとか、ぶらぶら病であるとか、そういうふうな格好で精神的な影響というのは、日本の歴史の中で、つい最近まであまり表面に出てこなかったんですね。阪神大震災ぐらいのときからでしょうか、具体的に精神的なということが話題になってきたのは。

 そういう意味で、もう一度、原爆の被ばく者の精神的な影響というものを見ますと、放射線は怖いというのは、日本の場合、毎年毎年いろいろな場所で怖いという情報がありますので、そういうことから言いますと、実際に放射線に被ばくしてなくても、例えば原爆の雲を見たとか、熱線を感じたというだけの体験が、現在調べても精神的な影響になっているということが比較的科学的な方法でわかって参りました。

 ソ連の場合も、数百万人の人がそういうことで、結局自立できない。意欲がなくなって自立できないような方が多いというのは、事故の結果として社会にとって一番大きな問題だということでありましたので、そういう意味では放射線と精神的影響というのは社会問題として大きく考えてもいいのではないかと思って、ここにお話したわけであります。

【田中氏】  では、私からお話しいたします。

 疎開した子どもたちがストレスになるか。それは当然なると思いますよ。自分の家から離れるんですから、ストレスになります。おうちに戻れたらいいと思いますけれども、戻れないとなると、この現状で何とかしないといけなくなります。実際にチェルノブイリのデータから見ますと、もとに帰れないで疎開したままのお子さんたちの調査データがあります。それによると、保護者の不安というのが一番、子どもたちの心身に影響を与えると報告されています。つまり、疎開した保護者の不安が非常に強いほど、子どもさんのほうに心身の影響が出るとされています。人の不安、特に親の不安は子どもに伝わるということは我々の世界では非常に知られたことであります。ですから、疎開されて、もとに戻れない状況で前向きに何を考えるかというと、やはり保護者が不安を軽減できるように支援を行うということが一番重要になってくるんじゃなかろうかと思いますね。

 そういう意味では、先ほど衞藤先生が言われた自己効力感が重要ですね。子どもの自己効力感だけじゃなくて、保護者の自己効力感も上がる必要がありますし、先ほどの友添先生のお話とも関係するのですが、運動によって自己効力感がアップするというのは、これは心理学の先生方も言っておられますので、自己効力感を上げるような色々なツールなんかは、ぜひ用意してあげるといいんじゃないかとは考えております。

【笠大臣政務官】  先生方、本当にありがとうございます。政務官の笠でございます。

 実は私、昨日、福島に行ってまいりまして、伊達市の小学校にも伺ってPTAの皆さん方等と意見交換してきたときに、今、先生方おっしゃるように、保護者の方の不安を解消しないと、多分、子どもたちは無邪気にスポーツもしたい、運動もしたい、あるいは遊びたい、そういう思いを持っていても、ここが本当に最大の課題だなと思いました。

 ただ、その中で具体的にお伺いをしたいんですが、1点は、やっぱり皆さんが心配されているのは、311日以降、要するにどれだけの放射線を浴びているのかと。これは内部被ばくということになると思うんですが、それで、まず長瀧先生かと思うのですが、今の段階で、例えば尿検査をする、あるいは、その中でどれくらいの数値が出た子どもたちが次の精密検査の段階に行くというようなことを、まずはしっかりとやるべきなのかどうなのかということ。

 そして、そのときに、また数値の出し方を間違えると、さらに、今回の1から20ミリシーベルトの話と一緒なんですけれども、色々な形で、色々な方がおっしゃいますから、また不安を増長することにもなりかねないし、その辺をどういう手順でもって、その基準を決めていくことがいいのかと。もちろんこれは公開性をもってですけどね、透明性をもって。その点をぜひ教えていただきたいこと。

 もう一つは、例えばストレスとも関係してくると思うんですけれども、衞藤先生、あるいは田中先生に、ご所見あれば伺いたいんですが、れから私たちが学校で1年間で1ミリシーベルト以内にしっかりと抑えていくということを先ほど副大臣おっしゃったように、これは何としてでもやるし、やれると思ってます。ただ、学校で生活する時間というのは限られているということを保護者の皆さんはわかっていますし、これから夏休みをどう過ごせばいいのか。そんな不安を率直に申されていた中で、自分たちにも、保護者にも全部、線量計を渡してほしいというような要望も具体的にあったんですね。一部の先生なんかだと、子どもたちにバッジの形の簡易型をつければいいじゃないかと。でも、それが例えば子どもたちに精神的な影響を与えることがないのか。あるいは、保護者に渡したほうがいいのか。あるいは、そういう必要はないのか。そこあたりのご所見とですね。

 それと、何か自分たちにできることはないんだろうかということをおっしゃるんですね、例えば家の周りの。例えば私たちの分野で、校庭の土壌の放射線量の低減措置というものの財政措置とか、色々やっています。自治体でもやっていただいている。ただ、自分たちが何か身の回りでこういうことをやれば放射線量が低減されるんですよというような具体的な身近にできる取り組みを教えてほしいというようなことも、実際そういうことも出してほしいんだということで、色々な要望が出てきたんですけれども、その点、それぞれの先生方のほうで何かアドバイスがありましたら、ぜひお伺いしたいなと思います。

【長瀧氏】  今、全体を通じて保護者の方々の心配が今の場合は一番問題、どうやって解消するか、これはリスクコミュニケーション、日本に非常に少ないですけれども、そういう範疇に入るものだろうと思います。具体的には、ある情報はすべて開示する、秘密はないんだよということ。その中には、お話のあった測定値をできるだけ多方面の測定をして、現在の被ばく線量をはっきりとさせる、これはすべてにおいて必要なことですね。

 そして、今度、その測定値がわかったときに解釈がばらばらだと大変ですから、そこで専門家が入ってきて確実な情報を整理して住民と話さなきゃいけないんですけれども、さっき私、ここで専門家の役割というのを申し上げましたけれども、そのときに専門家が勝手なことを言ったら、これは混乱するだけでありまして、そのために、私、さっきから国際的な合意であるとかということで、科学的に合意したものがあって、それは非常に重いんだと評価します。世界中の専門家が集まって、世界中の論文を見て、そして国際的な合意ができ上がっているのでありますから、それに対して、これはおかしいというようなことが言えるだけの能力を持った人が本当にいるだろうかということは素直に感じるんですが、現実にはそういう方がいっぱいいらっしゃって、それが社会を混乱させるということをチェルノブイリのときも、非常に感じました。不安に対しての専門家のほうからの意見の陳述が非常に不安を増大する。これはやはり我々専門家と社会との関係を本当に考えなきゃいけないことじゃないかなと思いましたので、国際的な、世界的な合意というものは科学の情報として非常に必要である。

 それを加えて、説明する。住民の方に十分に説明するということ。質問に対しても説明する。そこら辺がやっぱり一番、今の不安をとるための基本的なところではないか、情報開示して、その情報を正確に解釈して、そして住民と対話する。そんなことを今、感じておりました。

【衞藤氏】  それでは、私のほうから。今、長瀧先生が最後におっしゃられたこと、私は基本的に同じだと思います。不安があれば、その不安がある限りは、ますます増大していきますので。しかし、保護者のご発言の中には、自分たちが何かをしたいという積極的に、それは一方的に単なる受け身ではなくて、なさりたいという気持ちがある。これは大変重要な原動力であると思いますので、そういった情報開示とか対話というところにぜひ活用していくべきです。結局、この困難な状況の中で、当事者の方々たちにも、今まで知らなかったシーベルトとか、そういったようなこともご理解いただいて、それも日常の世界で理解できるようなご説明が与えられた中で理解していただいて、そうしたら、自分たちの生活はどうなのかということを考えることができる方向につながっていくと思いますので。

 これは具体的にはPTAの活動であるとか、そういったところで、この問題に関してのお話し合いをいただくように、また、それに関して必要な情報なりを提供するようなことを、また行政のほうからも少し働きかけていただくというようなことではないかと思っております。

【田中氏】  では、私のほうから。放射線に対して非常に不安になられるのは、親御さんも子育てに非常に熱心であるということでいいことなんですね。まずは、その不安を解消しないといけないんですけれども、不安を持っているというのは、まず親御さんが非常に熱心だというポジティブなとらえ方をしていく必要があると思うんですね。あんまり過剰不安ですよとかいうよりも熱心であるということ、まず受けとめていくということが重要だと思います。

 その上で、カウンターはどうでしょうかと、カウンターを配ってほしいということなんですけれども、これは子どもの心にとってあまり好ましくないと思います。というのは、子どもの心身症に心因性発熱というのがあります。これは実際に微熱がずっと続いたり、本当に高熱が出る場合があります。子どもをさわると体が熱いんですね。そういうお子さんでよく見られることですが、保護者が心配して、10分ごとに熱を計るというケースもあります。頻繁に熱を計って繰り返す。熱を頻回に計るということが保護者の注意を自分のほうに向けるということになって、発熱がいつまでも治まらないことがあります。これはよく知られたメカニズムなんですね。そういうことがカウンターをつけて頻回に測定するようなことになれば、中にはそのようなあまり好ましくないことが出てくる可能性がありますので、むしろ放射線バッジのようなもののほうがよろしいんじゃないかと思いますね。つけっぱなしにしておくというやつですね。それを希望者の子どもにつけておくということでやられたらいいんじゃないでしょうか。医師も日常、それをつけていますけど、日常ほとんど気になりませんので、よろしいのではないかと思います。

 それから、保護者の不安というのは、かなりレベルがあると思うんです。不安がほとんどない人から非常に高い不安の人まで、様々なんですけれども、保護者の中で、ある集団で温度差が出てくるわけですね。そうすると、非常に不安のひどい人がその集団になじめなくなるという不適応なんかが起こってくる可能性もありますので、できたら、そのような不安のレベルが違う人たちが同じような合意を持てるように、地域の人たちがある程度合意できるようなコミュニティーというのが必要になってくると思うんです。

 そういう点では、例えば、PTAなどがうまく機能して、お互いに話をよくしていくことが必要です。よく話して言語化すれば不安が減るということもあります。言語化というのは言葉に出してしゃべるということですね。それで随分と不安が解消するということもございますので、そのような地域での取り組みもあわせてされるほうがいいんじゃないかと思います。個々別々に不安の強い人に対応していくと、その人が社会の集団の中から何か特別な目で見られるというような危険性もありますので、その辺は地域でご配慮いただけたらと思います。

【友添氏】  私は最初申し上げたように医師ではありませんし、放射線の専門家でもありませんが、今お話をお伺いしてきて、線量の問題というのは、これは専門家じゃないのでよくわかりませんけれども、むしろなぜこういうときにスポーツとか身体活動を利用して地域で結び合わないんだろうかというように逆に不思議に思っています。不安なお母さん、親御さんの気持ちや思いやりは、ものすごくよくわかるんだけど、例えばストレッチング教室を開いて、そこで1時間も汗を流すと、現状は何も変わらないんだけれども、おそらくものすごく精神的なリラックスは得られるだろうと、専門家としてはお伺いしながら聞いておりました。

 あるいは、親子でフィジカルゲーム大会でもその地域でやったら、かなり雰囲気が変わってくる。むしろ、どうでしょうか、1日中デスクワークして、難しいディスカッションして議論ばかりしていて、ネクタイしてやっているとストレスがたまってきて、大したことでもないのにイライラしたりということが起こってくる。ところが、ネクタイを外して、そこらをウォーキングで少し汗ばむ程度歩いてくるだけで心と体はリラックスしてしまう。テレビなんかの報道を見てもわかるように、これは福島ではないですが、トップアスリート達や元アスリート達が被災地に入って、そこで子ども達とスポーツ活動を行っています。トップアスリートですね、彼らが何であれだけの明るいイメージと雰囲気を醸し出すかといったら、スポーツの持っている魅力は大きくて、やっぱり皆さん知っているわけなんですね。

 むしろ文科省の中で、スポーツだとか、身体運動を使いながら、この不安を柔らげるような方策を今こそやっていただけたら、私はかなり違う側面でプラスになると思うんですね。不安だ、不安だ、不安だとやっていると、不安が集合化してしまって、より大きな不安になってしまう。これをほぐすというのには、やっぱりスポーツ、フィジカルエデュケーション、フィジカルカルチャーという、こういうのが非常に有効なツールだと私は思っています。

 以上です。

【清水事務次官】  今回の問題に関連して、住民の方、親御さんの疑問というのは1つだと思うんですね。子どもにとって放射線が害があるか、どういう形で影響があるということについて専門家の中で意見が皆さん違って何を信じたらいいかわからない。それは学校も同じなんです。なぜこういう違いが生じるのかということを、田中先生、長瀧先生にお伺いさせていただければと思うし、衞藤先生にも教えていただきたいと思います。

 そのこととちょっと関連して、今日、科学技術・学術審議会で、研究者、科学者と、それから社会との距離感をこの問題でどうとらえたらいいだろうかということで、1つは2つの失敗というか、失敗というのは言い過ぎかもしれませんが、1つは情報をサイエンティストの側がどうとらえ得るかという、そういう問題。もう一つは、いわばそれが専門性を持ったアカデミーの側から発信するものだ。いずれもこれは今回の場合は失敗しているんじゃないか、これをどういうふうに取り戻すかということが議論なり、色々考えるところがあり、特に学会の役割というのは何だろうかということがその際あわせて色々考えさせられたということを、ちょっとつけ加えさせていただきたいと思います。

【長瀧氏】  いつもお話していることなんですけれども、チェルノブイリで初め、何万人も死ぬというのは個人の経験とか、そこへ訪問した人が見聞してきたことであります。そのうち、それがだんだんと体系を持って学問的な論文になってくるのですが、膨大な論文が出てきますと、その中では賛成という論文もあるし、反対という論文もあって、それがみんな科学的な論文という格好で出るわけですね。

 ですから、その段階の自分が反対だとか、自分は賛成だというときに、都合のいいものだけ持ってくると、どっちの立場でも科学的にこうだという話ができてしまうんで、それは科学者としてはものすごく気をつけなければいけないこと、科学者の側が社会に対してアピールするときに慎重に言わなきゃいけないというのはいつも感じておりまして、何かあると必ずそういう状況が出てくるんですね。その何かあるという緊急の時に、専門家と称する方が、社会的あるいは思想的、色々な立場がありますけれども、自分の社会的な立場を強調するために都合のいい論文を持ってきて科学的にこうだという言い方をされると、これは素人の方から見るともっともらしく聞こえるんです。それを逆の人は、また逆の論文を持ってきて議論する。

 これは本当に大きな問題。低線量の影響なんていうのは、まさにそのとおりでありまして、これはフランスのアカデミーとアメリカのアカデミーが違う学説で、今でも議論しているわけですから、それに対して個人が私はこう思うということが言えるような科学的成果をもっている方は本当はいないはずなんですね、自分の都合のいいものだけ持ってきて主張するのは、しかも、社会に対して、ある考えを押しつけるというのは、私は科学者としてはやるべきではない、それは科学者の間で議論して、そして、社会に対する科学者の提言というのは、やはり1つでなければいけないのではないかなということを非常に感じておりますので。

 今の状況も、専門家の扱い方といいますか、意見の言い方があまりにもばらばらで、そしてまた今度、報道するほうも、こっちの立場の人を持ってくると、また反対の立場も持ってきて話してというようなことが公平なように見えることもありますので、何かそこら辺の科学者の側のアプローチと、それから社会の科学が欲しいということのアプローチの間でのコンセンサスみたいなものをつくらないと、専門家が社会を混乱させてしまうという可能性も十分にあると思って、それは今日、一番お話したかったことであります。

【田中氏】  子どもの心の支援の方法とか、サポートについて、今のお話では学会間で意見が合っていないんじゃないかというご意見でしたけれども、私はそのような認識はないんですが、何か実際に具体的に挙がっているんですか。

【清水事務次官】  そうではありません。むしろ一般的な全体の状況に関してということです。

【田中氏】  学会としては、そのようなことがなくて一致していまして、その理由は、日本小児科学会が中心になって、小児心身医学会であったり、小児精神神経学会、あるいは関連領域の学会と合同で子どもの支援をやりましょうというようなことで意見は統一させながら進んでおりますし、お互いに効果的にしましょうということは我々も常にやっております。ですから、そういう点では、私自身は認識のずれというのは、この領域に関してはないかと思っております。

 それから、1点お願いしておきたい点なのですが、先ほど内部被ばくのことで身体検査とか尿とか調べるというご意見がありましたけど、様々な検査でありますとか、アンケートの調査とかありますのは、これは厚労省も考えているはずなんです。ですから、できましたら、現地で厚労省はする、文科省はするということになると、現地の方は非常に困りますので、ぜひ省間の連携をしていただいて進めていただくようにお願いしておきます。よろしくお願いします。

【衞藤氏】  今回の出来事は、私は学会の理事長みたいなのを幾つかしておりますけれども、学会とか専門家というものがどういうふうに対処するかということも問われたと思っております。今、田中先生にご紹介いただきましたように、個別の学会、私は小児保健協会の会長をやっておりますけれども、そういったところが取り組んでいたのは、お互いに連絡をとり合って合同の会議を開いたりということ、今までそういうことはなかったわけですから1つの成果だとは思っておりますが、専門家の意見で逆に一般の方々が翻弄されるということも現実にありますし、そういったメッセージの伝え方というのも、専門家の役割は、それを発信するというだけではなくて、先ほど来、少しお話が出ておりますけれども、話を聞く側も話に参加できるような、対話ができるような状況でのコミュニケーションというものが、この場合には大事ではないだろうか。

 そこで、その真偽のほどを確かめながら、自分の日常生活の中でそれが意味があることなのかどうか、専門家の口から直接生の声を聞いて確かめ合いながらというような、そういうコミュニケーションというものも今後大切な意味をもってくるのでしょうか。今、具体的にそれは何がということでございません。例えば現地に行って集会、そういうところに参加するとかいうようなこと以外にも何かあるのかもしれませんけれども、我々専門家と言われている人間は、ただ論文を書いたり講演をしたりということだけではなくて、もっと考えていかなければいけないかなということを感じてきております。

 以上です。

【友添氏】  体育とかスポーツにも学会が随分ありまして、私も理事長をやったり、副会長をやったり、幾つか兼務しているのですが、学会レベルでは対応していないと思います。ただ早い段階から福島だけではなくて、今回被災された方々にスポーツを通して社会貢献をしようということで、個人あるいはグループ、あるいは幾つかの連携をとりながら何かアクションを起こしていったということはありました。

 ただし、それが具体的な学術のレベルで今後どれだけ貢献できるかというのは、実は今からスタートするところだろうと思っています。今日ここへ呼んでいただいてお話しているのも、これも1つのそういう活動の一環だと個人的に思っているところです。

【平下学校健康教育課長】  友添先生がプールの関係で、なるべくなら積極的にやらせたほうがいいというような話があったと思うんですけれども、屋外プールで子どもたちが活動をするに当たって、例えば水質の問題とか、おそらく水道の水を入れてやれば問題はないという気もしますし、それから肌を露出させて活動することによって何か影響があるんじゃないかとか、水の中での放射線の影響はどうかとか、不安になっている声もあるわけです、その辺はどうお考えか、長瀧先生に、お聞きしたいと思います。

【長瀧氏】  結局、プールの中の放射性物質がどれぐらいあるかということを測って、そして、科学的な合意として、どのぐらい健康に影響があるんだということを説明してわかっていただくということが基本だと思うんですね。ですから、測定してどれぐらいの値ということをまず…。それがどれぐらいのレベルでどうかというときに、専門家の意見を社会に出す前にきちっと統一しておいて、社会の人から信頼されるような専門家の意見として出さないと不安はいつまでも解消しない。ですから、結果はわかりませんが、測定してみて、その中で泳いだら何か放射線の具体的な影響が出てくるというようなレベルではないと想像いたしますけれども、でも、それは実際に測定して十分に説明してからプールを使用すべきではないかと思います。それは測定値がわかってからの話です。

【鈴木副大臣】  今の話と清水次官の話と絡むんですけれども、測定まではできると思うんですね。その後の専門家の意見の聞き方というのが非常に難しくてですね。今回、本当に私ども小児心身医学会に感謝しておりますのは、学会としてきちっとしたデュー・プロセスに基づいて議論をしていただいて、色々なご発信をしていただいているわけですけれども、必ずしもそうでないアカデミック・コミュニティーというものがあるという現実がある。専門家といってもジャンルが色々ある。

 あるジャンルの中の学説には、少数説と多数説と通説がある。あるいは、通説が構成されるまでの間のプロセスがあるかと思うんですけれども、その中で我々の悩みは、あるアカデミック・コミュニティーの中から、我々があるご専門家を選ぶと。ここにバイアスというものが色々なところでかかってしまう。それを避けるためには、学会にお任せをするということが1つだと思います。

 次に、どの学会を選んだらいいのかということがあります。比較的、医学の場合は、いわゆる学会間の連絡、意思疎通というのをわりと日常的にやっておられて、そういうプロトコルがある種確立しているような気がするんですけれども、学会によりますと必ずしもそうでないケースもある中で、我々が行う学会のセレクション自体に恣意的であるとの指摘を受けかねない。こういうところで一番悩んでおりまして、おそらく、その悩みと混乱と伝えられ方の悪循環に陥っているのかなということだと思うんですね。

 プールの話が目下、問題の1つだと思います。運動会は秋にやれば、まだできると思いますけれども、プールとか部活とかということですが、線量をはかることは簡単だと思いますけれども、まさにその評価が、この1、2カ月のプロセスの反省に立ったときに、だれに、あるいは何学会に聞いたらいいのかと。我々も個別の専門家に何か聞くというよりも、むしろ学会にもお願いをして。それは複数でもいいかもしれませんが、その学会としてのオピニオンをいただくのが望ましいのだと思います。ただこの場合、今回の田中先生が率いておられる小児心身学会のように非常に速やかにやっていただける場合もあるんですけれども、ともすると学会でコンセンサスというと、学会によりますと結論が出るのは冬になってからみたいなことも生じかねないケースもありまして、その辺の悩みを抱えているんです。

 我々は、心と体の健康と発達について連立方程式を解かなければいけなくて、保護者の皆さんの安心を確保しながら、もちろんそこでの言い方は、最初に、衞藤先生からご指導があったような言い方に変えなきゃいけません。ただ、例えば今回でも、ICRPの原則に基づく100ミリシーベルト以下の場合の影響、国立がん研究センターが発表されたように受動喫煙や野菜不足の影響の100分の1とか、10分の1とかというオーダーであるという説明ですら受け入れられてない。それでは保護者の不安を解消するに十分でなかったという反省、教訓があって、その中でプール問題を抱えています。なかなか答えが直ちに出るものではありませんが、ご示唆とご指導をいただければと思います。

【長瀧氏】  確かに文科省の立場といいますか、私もずっと大学におりましたので大学の研究者という立場から言うと、ばらばらな意見を議論するのが科学の進歩であって、だれも認めてないようなものの中からノーベル賞が出てくるというのが当然あるわけですから、科学者の中での議論、いっぱいある議論で、そこでけんけんがくがくと議論することが科学の進歩につながる、それは確かで間違いないと思うんです。学会は、どちらかというと、そういう総元締めみたいな感覚があるんですけれども、でも、それは学会の中の議論であって、今度は科学者の立場として社会にある情報を出すというときには、学会によって違ったり、学会の中でまた割れたりしたら、それは社会が混乱するだけです。

 今の段階で社会にということを学会としても十分議論しなきゃならないけれども、それができなければ国際的な、先ほど出たUNSCAREとかICRPに出ている委員が日本にいっぱいいるわけですから、あるいはかつて出た人もいる。そういう方に、これをUNSCAREとして見たときにはどう考えるんだろうかとか、ICRPとしたらどうだろうか。それをサポートして、国民全体として1つの声としていくしかないんじゃないかなと思います。特に放射線に関係したことでは社会の中で大切ですね。

 そういう意味で、今度は社会的に1つ大事なことは、科学的にわからない、あるいは意見が分かれているところがあるわけです。それを社会に向かって賛成だ、反対だと言っていると、ただ混乱するだけですから、もし意見が一致してないんだったら、ここは科学的にはわからないんだということを積極的にお話して、そのわからない範囲では社会で考えていただく、それこそ日本の社会で科学的にわかっていないことは、たくさんあります。例えば10年前にわかっていることと50年前にわかっていることは全然違うわけですね。

 ですから、50年前にわからないことがいっぱいあっても、社会はそれでちゃんと生きてきた、制度を持ってやってきたわけですから、すべて科学者がどうだという議論を社会に持ってくるんではなくて、むしろここから先は科学的には一定の意見がないので、行政としてどう考えるかとか、住民はどう考えるかとか、あるいは場合によっては司法になるかもしれません。そういう社会的なファクターの中で議論を十分尽くしていただくというのが、私、放射線に関して今まで色々なところで苦労してきた感じから言いますと、決して逃げているわけじゃないんですね、むしろあなた方が考えてくださいと、科学者としてはここまでは言えるけども、この先の不確実な範囲では社会で考えてくださいと言うべきではないかと思います。

 ですから、急性の放射性障害が起こるようなことだったら、これは科学者として絶対にこんなことはやめてくださいと、それは確実に言えるわけです。だけど、プールの水がこれぐらい汚れているときにというと、それは科学者として絶対にというレベルではありませんし、意見も分かれるでしょうから、それはむしろ科学者的にどうこうというのではなくて、あるいは放射線の専門家ではなくて、実際に、まさにプールを使うかどうかという、精神的・スポーツ的な専門家の方も含めての保護者の方とのお話し合いで決まるんではないかなと。そこに行政が入ってですね、という感じがいたします。

【鈴木副大臣】  衞藤先生、田中先生、何かありますか。要するに科学的に確定できないこの状況下にあって、しかしながら、安心を少しずつ確立しながら適切な判断をしていくために。

【衞藤氏】  なぜプールが問題になるかというのは、学校のプールのほとんどは屋根がなくて雨水やほこりが入る。それは川の水のように流れていなくてたまっているから、一定の期間、例えば雨に放射性物質が入った場合、それは蓄積するだろうという、そういう心配から成り立っているのかと思います。それは測定をして、その測定の結果を分析していただければよいんだけど、だれがどのように分析するかが問題であると。

 現在の学校の組織といいますか、建て前の中では、これは学校の環境衛生の問題でございますので、環境衛生のチェック項目には入っていませんけれども、学校薬剤師の方というのがいらっしゃいますので、学校薬剤師の団体、例えば日本学校薬剤師会とか、そこに投げかけて、そこで検討をいただくというのは1つの正当な道であります。もちろん、そこでは現在、そういったノウハウが蓄積されてないかもしれませんけれども、しかし、そこで何らかの回答をいただくということは期待できるのではないかと思います。

 それから、なおかつ、それで一定の方針が出されたとしても、それでも、うちの子は絶対に入れたくないという保護者が絶対にいらっしゃると思います。その場合には、そういったときには忌避といいますか、入れなくてもいいですよということを受け入れて、少し柔軟な対応ということも、また考えていかなければいけないだろうと思っております。

 今のところお答えできるのは、その程度だけでございます。

【田中氏】  私も今の衞藤先生の意見に賛成ですね。

 それと学会をまとめるということなんですけれども、これは文科省の中にも日本学術会議がありますよね。ですから、日本学術会議にお願いされるといいと思います。すでに対応されておられるんじゃないかと思います。現に厚労省のほうがこれから進めていこうとする心のサポートのほうですね。もう既にホームページに出ていますね。日本学術会議も入っていますので、学術会議が学会を束ねていますから、そちらにお願いされるのが1つの方法ではないかと思っております。

 それとプールのことなんですけれども、お風呂のように毎日、水を変えることだって可能かも知れません。お金はかかるかもしれませんけれども、そのようなことをやったり、全員強制ではなくて、希望者が入るということでもよろしいかと思いますけど、日本学術会議に早くお答えをいただくのが良いと思います。

【友添氏】  私どもの立場から言うと、それこそ、長瀧先生はじめ、放射線医学の方々が大丈夫だとおっしゃっていただければ喜んで使うわけなんですけれども、現状を見てみますと、目の前にプールがあるのに泳がないというのは、これは精神衛生上、子どもたちにとって非常に悪いですね。だから、先ほど申しましたように、室内プールの借り上げ等の代替措置を少し努力してみる必要があるんじゃないかということを思います。

 それと、全然別の話になりますが、せっかくの機会ですので、多分ご専門に近い衞藤先生にお尋ねしたいのですが、長袖でマスクをしてみんな運動していますけれども、今から梅雨に入ると熱中症の危険が出てくるんじゃないかという逆の心配を私どもの研究室の院生なんかはしているのですが、その点は大丈夫なんでしょうか。

【衞藤氏】  運動しているときにマスクをしているというのは知りませんでしたけれども。

【友添氏】  マスクしたり、長袖を着たりして運動しています。

【衞藤氏】  熱中症の危険は高まると思います。

【笠大臣政務官】  今のお話に少し関連してなんですけど、実は、福島県に伺った際にこういうことも言われたんですね。安全だというんだったら、長そでを着て通学しろとか、例えばマスクをしろとか、そういうことを言わないでくれと。同じように実はプールで、これは我々も反省しなきゃいけないんですけれども、例えばプールが本当に安全だと、泳いで構わないと、水は大丈夫だよというんであれば、なるべくプールサイドにいるときはバスタオルでまず肌を隠しておくみたいなことを言われると逆に不安を増長するんだと。ただ、我々からすれば念には念を入れて的な部分で、色々な留意事項的なことをむしろよしと思って言ってきたようなところも若干あろうかと思うんですけれども、やはりそこあたりというのは、これはちょっと反省しないといけないのかなというようなちょっと思いを持っているんですけれども、いかがでしょうか。

【衞藤氏】  おっしゃられたとおりであると思いますので、できるならできるということで普通に、ふだんプールを使っているのと同じような状況でするというのがよろしいかと思いますし、運動も外で体を一生懸命動かすんでしたらマスクもせずにする。適切な衣類を身につけて、汗をかいたらちゃんとふくというような、そういった本来の運動ができる環境を与えて、その中で本来の運動をするということが大事だと思います。

【田中氏】  保護者、一般の方が言われるほうが筋が通っていると思います。もし、安全だと言うなら、マスクも外して長そでもやめるべきだと思いますね。

【友添氏】  私は何度も申し上げていますように、今の現状では安全だということに従えば、私は積極的にプールを利用して子どもたちを泳がせてあげたほうがもちろんいいに決まっていると思っています。

【平下学校健康教育課長】  そろそろ時間になりましたけれども、よろしいでしょうか。

 それでは、本日はどうもありがとうございました。

5.出席者

長瀧重信 氏(長崎大学名誉教授(元財団法人放射線影響研究所理事長、国際被ばく医療協会名誉会長))、衞藤隆 氏(社会福祉法人恩賜財団母子愛育会日本子ども家庭総合研究所副所長兼母子保健研究部長)、田中英高 氏(日本小児心身医学会理事長)、友添秀則 氏(早稲田大学スポーツ科学学術院教授)

お問合せ先

スポーツ・青少年局学校健康教育課

電話番号:03-5253-4111(代表) (内線 2706,3489)
メールアドレス:gakkoken@mext.go.jp

(スポーツ・青少年局学校健康教育課)

-- 登録:平成23年06月 --