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はじめに

 カビ対策専門家会合(以下、「本会合」という。)は、高松塚古墳壁画がカビによる汚損を受けるなど、我が国の貴重な文化財や学術資料等のカビ被害が国民の高い関心事項となっていることを踏まえ、平成18年6月に小坂文部科学大臣(当時)のイニシアティブのもと、発足した。広く文化財や博物館等の収蔵物の資料保存の観点から、カビの発生メカニズムやその制御方法等カビ対策についての科学的知見や経験を集め、今後の施策の方向性についてスピード感をもって検討を行うことが、我々に課せられた課題であった。
 本会合においては、平成18年6月28日の初会合以来、14回にわたって会議を開催し、博物館をはじめとする関係機関や団体等からのヒアリング等を通じてカビ被害に関する現状と対策を把握するとともに、先端技術を中心とした微生物制御について専門家からヒアリングを行い、今後の文化財等のカビ対策に関する方向性について意見交換を行った。また、「カビ制御技術検討ワーキング・グループ」(以下、「ワーキング・グループ」という。)を設け、より専門的・技術的な方策についての検討も行った。
 カビの生物学的特性(菌糸体、子実体(胞子)を形成する、など)を考えると、いったんカビを大量に増殖させてしまうと、それを根絶することは極めて困難である。他方、高温多湿という我が国の環境を考えると、カビそのものは日常的に存在するものであり、カビのない環境を作り出すことは現実的には不可能であろう。このため、本会合においては、文化財等をカビから守るためには「カビを増殖させない」ことを基本としつつ、文化財等の保存環境下におけるカビの汚染防止や増殖したカビの早期発見等、カビの特性に基づく迅速処理が重要であろうと考えた。
 このたび、文化財・学術資料等を対象にカビの発生を予防するための施設環境の整備やカビ制御技術に関し、これまでの審議の結果明らかになった事項や提言とともに今後の方向性を報告として取りまとめ、公表することとした。総じて、当該分野におけるカビ対策ネットワーク構築に繋がる指針として役立つことを期待する次第である。

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