学校卒業後における障害者の学びの推進に関する有識者会議(第4回) 議事録

1.日時

平成30年5月23日(水曜日) 13時00分~15時30分

2.場所

文部科学省東館3階 第一講堂

3.議題

  1. 聴覚障害者・ろう重複障害者のニーズに係るヒアリング(松﨑丈宮城教育大学准教授)
  2. 福祉・労働の関連事業等を活用した取組に係るヒアリング (1)田中秀樹委員(社会福祉法人一麦会における取組) (2)社会福祉法人わたぼうしの会Good Job!センター香芝、一般財団法人たんぽぽの家における取組 (3)NPO法人エス・アイ・エヌ「集いの場あゆみ」における取組
  3. その他

4.議事録

【宮﨑座長】
 それでは,定刻になりましたので,ただいまから第4回学校卒業後における障害者の学びの推進に関する有識者会議を開催いたします。本日は,お忙しいところ,お集まりいただき誠にありがとうございます。
 本日,聴覚障害のある松﨑先生の御発表をお願いしております。また,各委員の皆様には,発言に当たっては,ゆっくりと要点を絞ってお話をしてくださいますようお願いいたします。
 まずは,事務局より発表者の紹介と,配布資料の確認をお願いいたします。

【高見障害者学習支援推進室長補佐】
 委員の皆様以外の発表者の皆様の御紹介をさせていただきます。議事次第の2枚目にございます(別紙)を御覧ください。
 まず,宮城教育大学准教授,松﨑先生です。
 次に,就労継続支援B型事業所ポズック施設長,野中様です。
 社会福祉法人わたぼうしの会Good Job!センター香芝,一般財団法人たんぽぽの家スタッフ,小林様です。
 NPO法人エス・アイ・エヌ「集いの場あゆみ」所長,草羽様です。

【草羽氏】
 よろしくお願いします。

【高見障害者学習支援推進室長補佐】
 次に,本日の配布資料の確認をさせていただきます。配布資料は,議事次第にございますとおり,資料1から資料7になります。
 また,席上の配布資料といたしまして,松﨑先生より,こちらの赤い冊子でございます「観劇サポートガイドブック」を頂いております。
 また,Good Job!センター香芝,小林様より,白色の封筒に5種類の資料を入れてお配りを頂いております。
 また,「集いの場あゆみ」における講座のテキストを草羽様よりお預かりしておりますので,会議の間,皆様のもとに回覧をさせていただきたいと思います。御覧ください。
 なお,本日ですが,委員の皆様に御発言を頂く際には,前回と同様,お名前をおっしゃっていただいてから御発言くださいますよう,御協力をよろしくお願いいたします。
 以上でございます。

【宮﨑座長】
 それでは,議事に先立ちまして,初めに,資料1に基づき,ヒアリングの主なポイントについて事務局より説明をお願いいたします。

【橋田障害者学習支援推進室長】
 それでは,資料1を御覧ください。本日は4組のヒアリングを予定しております。
 まず,松﨑先生には,当事者のお立場も踏まえ,聴覚障害者・ろう重複障害者のニーズ・課題を踏まえた学びの推進について発表いただきます。委員の皆様には,その内容を踏まえ,学びの推進のために求められる具体的な方策について議論いただければと思います。
 次いで,2.のところですけれども,福祉・労働の関連事業等を活用した取組のヒアリングを行います。少し補足いたしますと,2ページ目には,昨年の大臣メッセージを添付しております。学校卒業後も生涯を通じて教育や文化,スポーツなど,様々な機会に親しむことができるよう,福祉施策,労働施策等々を連動させながら支援していく重要性が盛り込まれております。
 また,4ページ目には,生涯学習振興法の条文を付けております。第二条では,国,地方公共団体が施策を実施するに当たって,職業能力の開発・向上,社会福祉等に関し生涯学習に資するための別に講じられる施策とあいまって,効果的に行うよう努めるものとされております。
 特に障害者の生涯学習の推進に当たりましては,自立や社会参加に関わる福祉,労働の関連事業が展開される中,障害者の目線に立って,その効果的な活用,連携を図るということは重要なポイントの1つと捉えております。
 1ページ目に戻ってください。
 今回のヒアリング団体の取組にも関わって,福祉・労働の関連事業の仕組みを把握いただくため,厚労省より概要を説明いただきます。
 その上で,田中秀樹委員には,一麦会における自立訓練事業,就労継続B型事業等を活用した学びの場の取組などについて発表いただきます。
 その後,田中良三委員には,補足説明といたしまして,自立訓練事業等を活用した「学校から社会への移行期」における学びのプログラム等について補足いただきます。
 その内容を踏まえて,自立訓練,就労継続B型等を活用したプログラム・体制等について議論いただければと思います。
 続いて,Good Job!センター香芝,たんぽぽの家については,アート・ビジネス・デザインの分野を超えた仕事の創出,Good Job!プロジェクト,文化芸術等に関する取組について発表いただきます。
 その内容を踏まえ,就労移行支援事業等を活用したプログラム・体制等について,IoT等の技術の活用を含め議論いただければと思います。
 最後に,エスアイエヌ「集いの場あゆみ」については,広島市の地域活動支援センター2型事業を活用した生涯学習講座・プログラム開発の取組について発表いただきます。
 その内容を踏まえまして,地域活動支援センターの関連事業を活用したプログラム・体制等について議論いただければと思います。よろしくお願いいたします。

【宮﨑座長】
 ありがとうございました。
 続きまして,議事に入ります。議題(1)「聴覚障害者のニーズに係るヒアリング」に入ります。
 宮城教育大学特別支援教育講座,松﨑准教授より御発表を頂きます。松﨑先生,どうぞよろしくお願いいたします。

【松﨑氏】
 皆さん,こんにちは。ただいま紹介いただきました松﨑と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 私は,先天性のろう者で,教育養成大学の教員をしております。聴覚障害児・者と,ろう重複障害児・者のコミュニケーションや情報バリアフリーに関する研究や支援活動をしております。ここでは,この活動の経験を踏まえて,聴覚障害者とろう重複障害者の学びの推進について,どういった取組が必要なのか,考えられることをお話ししたいと思います。
 まず,聴覚障害者について御理解を頂きたいことがあります。
 補聴器装用効果があるかどうかという観点で見れば,「ある」と期待されるのは伝音性難聴であり,個人差がかなりあるのが感音性難聴と混合性難聴です。感音性難聴は,聴覚障害の中で多い種類と考えられています。補聴器や人工内耳を装用すれば聞こえるだろうと思われがちですが,実際は常時装用している聴覚障害者にとって,騒音や残響がある環境下では,装用効果が低下し,十分満足しているとは言えない状況があります。したがって,生涯学習の場でも,補聴器や人工内耳のみで音声や音楽を十分に聞き取って楽しんだり学ぶことは難しいということをまず認識していただく必要があると思います。
 次に,我が国における聴覚障害の人口ですが,障害者手帳を所持している聴覚障害者は約25万人です。ただし,手帳交付基準が欧米をはじめとする先進国では大変厳しいものであり,補聴器等の活用が必要なものも含めると,少なくとも1,000万人以上はいると推定されています。
 また,日本語とは異なる文法体系を有する手話,日本手話と言いますが,それを用いて生活しているろう者が約6万人いると推定されていることにも注目してほしいと思います。
 なお,聴覚障害者の中には,ほかの障害もあるろう重複障害者もおり,手話や手指サインなどを使って意思疎通を図っています。
 人口に関しては不明な点が多く,例えば厚生労働省の資料から把握できているのはスライドのとおりです。肢体不自由,内部障害合わせて約9万人はいると推計されていますが,知的障害など,ほかの障害も含めれば,もっと多くいる可能性は考えられます。
 以上を踏まえて,聴覚障害者に求められる学習プログラム・実施体制等について,私たちが経験している課題やニーズと併せて述べます。
 まず,聴覚障害者の共通の事柄として,1つ目は,聴覚障害者及びろう重複障害者自身が直面している社会的障壁や必要な配慮について,主催者側に意思表明する方法や内容を学ぶ学習プログラムです。
 生涯学習は教育や就労とは異なり,初対面かつ一過性の関わりであることが多く,かつ,教育の内容や方法も多様であるため,これらを踏まえて個々が自分の問題状況,ニーズ,必要な配慮を表明する工夫が求められます。しかしながら,その表明をどのように行うかという学習プログラムが,学校教育の段階から十分に行われているとは言えない現状があり,また,過去に受けた聴者からの心ない対応から,成人になっても聴者が怖いという聴覚障害者も少なくありません。したがって,心理的問題の解消も含めて,意思表明ができるような学習プログラムを学校卒業後も継続していく必要があると考えます。
 2つ目は,主体的に学ぶ機会の確保や拡充につながるICT利活用に関する学習プログラムです。
 スマートフォンやタブレットを所有する聴覚障害者は増えてきていますが,スマートフォンなどを所有していながら,その端末でのICT利活用によって,自身の課題状況をいかに解消できるのかを学ぶ機会が余りありません。SNSなどウエブからの自分のニーズに合った生涯学習の情報をいかに取り出し,主催者や参加者への意思表明や意思疎通などをどのようにできるかなどを学ぶ学習プログラムがあればと思います。
 3つ目は,聴者や音声による文化芸術活動だけでなく,日本手話や視覚による文化芸術活動にも触れることで,聴覚障害者やろう重複障害者のある当事者が主役になれる学びを実現する学習プログラムです。
 聴覚障害者やろう重複障害者が受ける学校教育では,聴者や音声を用いた文化芸術活動が紹介されますが,自分たちが使う手話や視覚によってどのような文化芸術活動を実践できるのかは余り紹介されず,学ぶ機会もないのです。少数言語を用いて「文化」を継承・創造する担い手として成長する学習プログラムも必要と考えています。
 続きまして,先天性難聴・乳幼児期に失聴した方々の場合ですが,各ライフステージや各活動場面で活動するために必要となる日本語(読み書き)と,それを用いた意思疎通の方法を学ぶ学習プログラムです。
 家庭や学校教育の影響で,日本語を十分に身に付けることができないまま学校を卒業する様子が現在も見られます。したがって,各場面に応じて必要となる日本語や対人関係などを学んで主体的に参加できるように支えることが必要と思います。
 また,中途失聴の場合ですが,途中から難聴になった当事者は,聴覚障害との関係でコミュニケーションや生活など,自立や社会との関係に必要な知識,スキルを身に付ける場合が必要ですが,実際はそうした場がないため,個々の努力や工夫に委ねられているのが現状です。そこで,聴覚障害などに関わる社会資源や対処技法を学ぶ学習プログラムが必要と考えます。
 次は,一般的な学習活動への参加の推進方策についてです。大きく分けて2つあると思います。
 まずは,意思疎通や情報発信の面で求められることです。
 1つ目,聴覚障害者の多くは,一般的な学習活動で手話通訳や要約筆記の派遣を必要としています。それで市町村の意思疎通支援事業にある公的派遣サービスを利用するのですが,同事業は自立と社会参加を促進することを目的にしているにも関わらず,市町村によって生涯学習に相当すると思われるカルチャー講座の受講を派遣対象として明示していたりいなかったり,生涯学習とみなされる内容であっても,個人の趣味に当たるとして派遣対象外とされてしまうケースがあります。また,1人月2回までと利用が制限されるケースもあります。このように同事業の制限や地域差によって,生涯学習に参加する範囲を狭めざるを得ないことが起きているので,意思疎通支援事業の制限や地域差の解消に取り組む必要があると思います。
 2つ目ですが,意思疎通支援事業が利用できない場合,聴覚障害者は主催者側に意思表明しますが,それでも拒否されて諦めてしまうケースが起きています。主催者側が聴覚障害者との対話の上,通訳サービスや音声認識アプリなどを積極的に活用する。台本や進行シナリオなど内部資料も情報バリアフリーのために貸し出す。通訳にも事前に詳しい情報を提供する。補聴器や人工内耳装用者が少しでも聞き取れるように情報支援システムを設置するなどの環境整備を進める必要があるのではないかと思います。
 3つ目ですが,主催者への問い合わせ窓口が電話のみであることが少なくありません。電話は聴者にとっては主催者側と何度も細部までやりとりができる公的サービスです。一方,ファクスやメールであったとしても,即時対応が難しく,両者にとって非効率的になることも少なくありません。したがって,聴覚障害者や手話または文字を使い,間にいる通訳者がそれを音声に通訳することで,主催者と電話をできることが必要です。これを「電話リレーサービス」といいます。これがあれば,聴者と同等に問い合わせや相談などを何度も細部までやりとりできます。しかし,電話リレーサービスは財団と事業者によって試験的に実施されているため,聴覚障害者だけでなく,主催者側も利用できるように公的サービス化の実現が急務の課題です。
 4つ目ですが,生涯学習関係の案内に通訳などの支援内容の有無を明確に記載する必要があると思います。また,手話を用いるろう者の場合,自身の生命,生活や健康に関わるニュース,情報を,聴覚障害関係団体や施設等が制作した手話動画や分かりやすく説明された日本語資料を使って把握する傾向があります。そこで,ろう者が用いる手話や日本語で,どのような生涯学習の情報があるのか収集することで,参加意欲や関心をもてるように,主催者側のホームページの行事や事業の案内で手話映像や分かりやすい日本語による案内をしていただきたいと思います。
 5つ目です。中途失聴者の中には,周囲の環境や健康状態などによって聴力の変動や耳鳴りが起きることがあるのですが,主催者や意思疎通支援関係者の中には,障害は固定的なものとみなしているため,障害の状態像の変化によるニーズの変更を受け入れられず,従来の配慮だけで進めてしまうというケースがあります。したがって,主催者や意思疎通支援関係者を対象に,そうしたニーズをもつ聴覚障害者と意思疎通や情報発信の必要性に関する理解啓発が必要です。
 最後のスライドです。人材の育成・確保の面で求められることです。
 1つ目は,スポーツ,文化芸術などの各分野に対応できる専門性のある通訳者の育成・確保です。ある分野では,質の高い通訳ができても,別の分野になると質が格段に下がってしまうことがないようにする必要があると思います。また,最近は,ろう通訳者のように,ろう者自身が手話通訳者として日本手話による訳出表現で,ろう者に通訳する取組もあるので,これを有効活用するといいでしょう。
 2つ目ですが,スポーツ,文化芸術などの各分野で,聴覚障害者・通訳者,主催者との調整・交渉を担うコーディネーターの確保です。聴覚障害者に意思表明に関わる学習プログラムを行ったとしても,主催者との調整や交渉が難航する可能性は考えられます。そのために双方の対話を支援する専門性のあるコーディネーターが必要なのですが,実際は家族や友人知人など,聴覚障害者側の関係者がそのようなことを担わざるを得ない現状があります。自治体や各分野の関係機関に,そうしたコーディネート的機能を担うスタッフを配置することが必要ではないかと考えます。
 ちなみに,観劇の関連団体から,本日,ろう者も観劇ができるようにということで,この赤い冊子ですけれども,サポートガイドブックを作りました。これを作った団体は,コーディネート的な機能も兼ね備えた団体です。先進的な取組をやっている団体です。あとで是非この「観劇サポートガイドブック」を御覧ください。
 最後,3つ目です。手話や手指サインなど視覚的な意思疎通手段を使うろう重複障害者が生涯学習に参加するためには,通訳や移動の支援,主催者とのコーディネートが必要になります。しかし,家族や知人による個人的支援に頼っているのが現状であり,家族への過重負担もあって,家にいることが増えてしまいがちです。したがって,自治体やろう重複関係団体の法人団体などに,通訳,移動,コーディネートを担える支援者を配置する仕組みが必要ではないかと考えます。
 以上でございます。

【宮﨑座長】
 ありがとうございました。
 ただいまの御発表を踏まえて,聴覚障害者,ろう重複障害者のニーズ・課題を踏まえ,学校卒業後における学びの推進のために求められる方策についての意見交換を行いたいと思います。
 なお,御発言いただく際は,御質問なのか,御意見なのかを明確にしていただければありがたいと思います。
 たくさんの委員の皆様から御発言を頂けるよう,時間配分への御協力をお願いいたします。
 それでは,御質問,御意見のある方は,どなたからでもどうぞお願いいたします。
 すみません,皆様から御質問,御意見を頂いた後,発表者からまとめて御回答いただくようにしたいと思います。よろしくお願いします。
 それでは,どうぞ。
 田中委員,どうぞお願いします。

【田中(正)委員】
 育成会の田中です。よろしくお願いします。
 今,障害者手帳の保持者数で24万2,000人のろうの方がいると。全体で少なくとも1,000万人いると推定される中で,手話を使われている方が6万人ということで,まだまだ数は少ないのかなというふうに認識したんですけれども,きょう御発表いただいたところで質問なんですけれども,教育,学ぶ場,手話を学ぶ機会が必要だというふうにお聞きしたんですけれども,これは学校教育の場で育まれるべきとされるものと,卒業後の学習の機会でもそのような機会があるべきだと,両方とれる内容だったかと思うんですけれども,そこら辺のことについて,御意見があればと思いますし,中途障害の方でなられる方が,今,ICTがかなり発展している中で,手話を学んだ方が効果的なのか,機械の活用にもう少し力を注ぐ方が実際的なのかということについて御意見を頂ければということでの質問です。
 以上です。

【宮﨑座長】
 ありがとうございます。
 ほかにありますでしょうか。
 どうぞ,お願いいたします。

【箕輪委員】
 箕輪と申します。よろしくお願いいたします。
 私どもの企業にも聴覚障害の社員とろうと知的の重複の社員もいるんですけれども,その中で,今,田中さんからお話しがあったように,90年代に入社した人は,当時,ICTがまだ全然でしたので,ファクスとか筆談が主流だったんですけれども,それ以降,最近,一人一人にパソコンを家庭でも持つようになってからは,手話よりもICTを使ってコミュニケーションをとる人が増えている。逆に,手話は余り最新をものを習得していないような方も増えてきています。
 その中で会社では,メールでのやりとりですとか,チャットとか,先ほど,先生のスライドにもありましたけれども,音声認識ソフトを使って,会議でも文字を,きょうも出ていますけれども,画面で映しながら,議事録と並行するような形で,聴覚障害の人のためだけではないんですけれども,そういったもので正しく,会社で使うような言葉は手話がそもそもないので,そういったもので正確に伝えるような情報保障をする工夫をしてきておりまして,社内においては余り,例えば資格を取るにしても,情報系の資格の学習の場でも,受験についても,余り聴覚に障害があることが支障にならない時代になってきているというのは,仕事やそういった教育を通じても感じています。
 会社の中の実情を言いますと,一部,私たち,人事の中には手話ができる者はいるんですけれども,ほとんどの職場にいないんですが,きょう御協力いただいているような話すスピードで正しく入力ができる社員はものすごくたくさんおりまして,そちらの方が無理なくといいますか,特別な福祉という考えではなくて,自分たちが普通に生活上でやっていることをそのままできるので,非常にコミュニケーションの手段としては,手話の学習をやってきたときよりも今の方がすんなりと,どなたでもというか,やっていけるなというのは感じています。これは感想です。
 もう1つ,先ほど,専門分野の通訳が必要だというのは,今お話ししたように,社内でも一緒ですし,私たちも業界によって,英訳もそうだと思うんですけれども,やっぱりその分野のことを耳で聞いて意味が分からないことは通訳できないというのは同じだと思うので,そのあたりは,間に入るよりも直接情報が伝え合えた方がいいかなというのも実感をしているところであります。
 もう1つ,最後に質問なんですが,私も都内のろう学校では,そういった意味も含めて,ICTの教育,内容が充実してきたりですとか,あとは日本語の読めたり書けたりすることがとても大事だということで,読書の時間をたくさん設けたり,日本語を習得する,読むだけではなくて意味を理解するという,そういったところにすごく力を入れてきているので,学生さんたちも社会に出てから非常にスムーズにやりとりができるようになっているというふうには聞いているんですが,ただ,どちらかというと,ろう学校の生まれつき聞こえない方の,例えば20人ぐらいいるクラスの中で,聞こえる人とはコミュニケーションがとれませんと言っている人に理由を聞くと,自分たちは聞こえない,聞こえる人は手話も分からないし,自分たちのことを理解できないからだというふうに言っていたので,ろう学校の生徒さん同士,手話でコミュニケーションをとる人同士で,伝え合うワークをしてもらったんです。そのときに,ある絵を見ながら手話と筆談でいいので,隣の人が正しく絵がかけるように伝えてくださいというふうにしたんですけれども,伝え合えなかったんです。そして手話をメインとしているろう学校の生徒さんが感じたことは,聞こえるとか聞こえないとかが原因ではなかった。手話が使える使えないではなくて,自分たちが正しく自分の意思を伝えるという手段がうまくできていないということと,聞く方も適当に「ああ,分かった分かった」というふうにしてしまっていて,ちゃんと納得したり,分からないところを質問するということを省いてしまっていたから伝え合えなかったということがよく分かったというふうに言ってもらったので,そのあたりの,今,手話とかITとか言われているんですけれども,実際には,そういったものが進化をしても,そういった心の部分での壁みたいなことをもっていると,なかなか通じ合えないなというのが,ろう学校の中で起こっていた現状だったということがあったんですけれども,そのあたりも,もし大学の方で先生を育てているということなんですけれども,何かそういった経験の中からお気付きのことがあれば加えて御説明を頂きたいと思います。
 すみません,長くなりました。

【宮﨑座長】
 まず,お二方の御質問に,御意見も踏まえてだと思いますが,松﨑先生からお話しいただけるとありがたいです。よろしくお願いします。

【松﨑氏】
 ありがとうございました。
 最初の方,田中様からの御質問だったかと思います。2点あったかと思います。
 先天性の聴覚障害者の学校教育,ろう学校を卒業した後の状況と,それから,中途失聴者に関しての手話の習得はどうなのか,ICTを使ったらいいのかというようなお話があったかと思います。
 1つ目の御質問に対してお答えいたします。
 聴覚障害教育全体を見れば,補聴器と人工内耳の技術的進展によって聴覚を活用して日本語を身につけている子どもたちはいます。ただしその技術は聴児・者と同等の聴覚活用ができるほどの域まで進展しているわけではないので,日本語の文法などを身につける学習支援が欠かせません。ろう学校では,聴覚活用や日本語に個人差がある子どもたちが授業などで手話を共通のコミュニケーション手段として身に付け,使っています。日本語での意思疎通だけでは限界があり,細部まで意思疎通を負担なく図れることが大事だからです。学校の教育の場で共通の言語や手段を使って学習を受ける機会を保障するということが大事かと思います。一方で,私のように地域校だけで学んだ人がいれば,地域校からろう学校に転校した人もいます。そういう人たちの中にも手話を使ってコミュニケーションすることが必要な人がいます。ですから学校教育の場で手話を身に付ける機会は必要ですが,その時間が限られて手話を身に付けることは難しいこともあるので,卒業後も継続して手話を学べる機会を保障することが大事であると考えています。
 それから,中途失聴の方でICTの活用に力を注ぐ方がいいのか,手話を学んだ方がいいのかということですけれども,両方とも必要です。中途失聴と言いましても,どのように聴覚活用ができるのかどうかは個人差があります。難しい場合には手話を使ってコミュニケーションする。できる場合は音声認識アプリのようにICTを使って聞き落としてしまう日本語の情報を細部まで把握する。このように中途失聴の方にもニーズが多様なので,選択肢を1つに限定するのではなく複数の選択肢を提供して選択できることが大事になります。
 それから,2人目の方の質問で自分の意思を伝えるというところですけれども,これは手話やICTを使うこととは別に,自分の意思をいかに伝えるかということを学ぶ機会が得られているかどうかが問題として起きていると考えています。現状として,ろう学校に通う子どもたちは,地域校もそうですが,様々な場面で聴者から差別や偏見などを受けて,精神的かつ社会的に抑圧された体験をもっていることが多いのです。したがって,いかに意思疎通を図るかといった技術や方法の学びだけでは不十分であり,抑圧体験で作られた心の壁をいかに解消しつつ,かつ相互理解を目指した対話をいかに図るかといった態度や行動の形成につながる学びが必要なのです。これは学校にいる間だけでなく学校卒業後も必要なことです。なお,感想のところでICTを使って文字でやりとりすることと手話を使ってやりとりすることについて触れられていたことですが,1つは,聴覚障害のある方々は本当に多様であり,日本語をメインに生活する人もいれば,日本手話をメインに生活する人もいます。日本手話は,対面でコミュニケーションするので,言語情報としての内容だけでなく雰囲気や感情などの非言語情報もやりとりできるのですが,日本語を文字でやりとりするとなると非言語情報は見えなくなります。そうした特性も理解したうえで,聴覚障害のある方々一人ひとりの能力やニーズに合わせた生涯学習の機会やその中での適切な意思疎通の手段をきちんと検討して提供することが求められるでしょう。

【宮﨑座長】
 ありがとうございました。お二人,よろしいですか。
 もうお一人ぐらい,あればどうぞ。
 では,綿貫さん。

【綿貫委員】 すみません,遅れてきたので,もし説明が先にあったら恐縮なんですが,資料を拝見していて,一般的な学習活動への参加に関するアクセシビリティの部分の説明はあったんですが,前に聴覚障害の方たちのコミュニティの中で,日本手話の中にない言葉,そのコミュニティの中にある言葉を手話するときに,新しく手話を作るというようなことを,そのコミュニティの中では必要性に応じてやっていたりとかという話はお聞きしたことがあるんですが,その話をお聞きしたときに,そういう言葉とか文化とかを作っている創造性のあることなんだなというふうに理解しました。
 なので,一般的な学習活動に対するアクセシビリティというのもあると思うんですが,聴覚障害の方たちが,コミュニケーションにしても,学習活動にしても,楽しいと思うことですとか,豊かさですとか,そういうことについてちょっとお聞きしたいなという質問です。

【宮﨑座長】
 それでは,お願いします。

【松﨑氏】
 ありがとうございます。今おっしゃった言葉の文化の創造性について言いますと,最近,聴覚障害のある方々,特にろう者の方々が日本手話や視覚を活用して手話の音楽映画を作って一般公開するなどろう者の手による文化芸術活動が活発に行われてきているんですね。こうした活動の背景には,音楽はいわゆる聴者のものというふうに障害のない人がやるもの,おそらく一般的な学習活動もなかなか参加しにくいところとみなされていると思いますが,そういうのがあってもっと自分たちが主体になってできないだろうかという動きが出ているわけです。ですから,一般的な学習活動に対するアクセシビリティは必要であるのと同時に,手話と音声,視覚と聴覚というふうにアクセシビリティを超えてお互い異なる者同士で新たに「楽しく豊かな学び」あるいは共生につながる「文化」を創造していくということが生まれることを私は期待したいと思っています。よろしいでしょうか。

【宮﨑座長】
 ありがとうございました。
 まだあろうかと思いますが,松﨑先生,ここで御退室をなさいます。松﨑先生,ありがとうございました。(拍手)

【松﨑氏】
 ありがとうございました。
(松﨑氏退室)

【宮﨑座長】
 続きまして,議題(2)「福祉・労働の関連事業等を活用した取組に係るヒアリング」に入ります。
 まず,厚生労働省より御説明を頂戴します。よろしくお願いします。

【石井障害福祉課課長補佐】
 厚生労働省障害福祉課の石井でございます。本日は,ヒアリングに先立ちまして,ヒアリングで触れられる障害福祉若しくは障害者雇用の関連施策について,我々から簡単に御説明させていただきたいと思います。時間の関係もございますので,資料を少し飛ばしながらポイントを絞っての説明になりますことを御容赦いただければと思います。私,石井から,障害者の現状並びに障害福祉の関係,資料では1から3を,そして障害者雇用のところは,障害者雇用対策課の渡部から御説明させていただきたいと思います。資料は3でございます。お手元に御用意ください。
 1ページおめくりいただきまして,障害者の現状に係る簡単な概要の数字を付けさせていただいております。先ほど,松﨑先生のところにも障害者の数等の話がございましたが,こちらの数字は障害者全体の数字というものになっております。細かい御説明は少し省かせていただきますが,上の図,今,国,厚労省としまして,障害者の数はというところで,総数としまして936.6万人というところで,今,把握しているところでございます。
 下の表が,その全体の障害者の中で,きょうテーマになっております労働とか雇用のところで障害福祉サービス等を利用しながら,どのような形で雇用の場に障害者の方が行っているかというふうな流れをあらわしている図でございます。こちらにつきましても,真ん中のところにいわゆる障害福祉サービスの就労系障害福祉サービスと言いますけれども,そちらを御利用されている障害者の数,若しくはそれを利用されて,どのような形で雇用の場,一般雇用の場に移っているかといった流れをあらわしている図でございますので,そちらも後ほど御確認いただければと思います。
 次のページへ行っていただきまして,実際,そのような障害福祉サービス等を利用されて,一般就労,一般の企業でどれだけの方がお働きになっているかというふうなことをあらわしているのがそちらの図でございます。見てお分かりのとおり,右肩上がりというところで,障害者で一般企業でお働きになっている方の数は,年々増えているというふうな状況を皆様方と共有できればと思います。
 では,具体的にというところで,2,障害福祉の分野での障害福祉サービス,どのような体系で障害者に御提供させていただいているかというところを簡単に御説明します。ページをおめくりいただければと思います。
 障害者に対する障害福祉サービスにつきましては,障害者総合支援法という法律の中で御提供させていただいているところでございます。サービスはいくつかございまして,本日,ヒアリングの場で触れられるようなサービスを赤線で囲ませていただいております。今回出ております例えば自立訓練,若しくは就労移行支援,就労継続支援等々につきましては,訓練等給付というふうな枠組みの中で障害者に御提供させていただいているものでございます。
 あとは,それとは別にというところで,もう1つ,赤線囲みさせていただいておりますが,今申し上げました訓練等給付につきましては,国で障害者に何らかのサービスをしているというふうにしているところでございますけれども,実際は地域の実情等に応じて,障害者のニーズも違ってくるだろうというところで,そういった訓練等給付とは別に,地域生活支援事業というところで,各自治体がメニューを選べるというふうな枠組みの中で事業を展開していただいているというものもございます。こういったサービス,事業を組み合わせながら,障害者に障害福祉サービスを提供させていただいているところでございます。
 それ以降のページが参考というふうになっておりますが,具体的な障害福祉サービス,先ほど申し上げましたとおり,いくつかございますので,それぞれのサービスがどのようなものか,若しくはどれぐらいの方が御利用されているのかというふうな,字が小さくて恐縮ではございますが,一覧として付けさせていただいておりますので,後ほど,ご覧になっていただければと思います。
 次のページに行っていただきまして,本日,ヒアリングの中で自立訓練というところも,実際,ヒアリングの場で触れられるというところを我々でも承知しているところでございますので,では,その自立訓練はどういったものかということももう少し詳細に御説明した資料をお付けさせていただきました。
 非常に簡単に申し上げますと,対象者の四角囲みのところで少し書いているんですけれども,地域生活を営む上で必要になる生活能力の向上等々をしていただくのがこの自立訓練でございます。
 長期に御入院されていた方等につきましては,非常に具体的な例を申し上げますと,例えば,鍵を開けて家に入って,のどが乾いたから冷蔵庫を開けて何か飲む,日常生活では当たり前の例えば鍵をあける等々の動作が,まだまだ習得できていないというか,獲得できていないというのも実情としてはございます。
 そういった方々が地域の中で日常生活を暮らす上で必要な能力ということで,申し上げました鍵を開けて入って,鍵を閉めるんだといった,そういった日常の動作も含めてこういった自立訓練の中で利用者に獲得していただこうということが自立訓練の概要でございます。
 おめくりいただきまして,同じようなサービスがこれから続くところでございますが,先ほど申し上げましたとおり,ヒアリングでこれから発表者の方が触れられるであろうというような事業の概要をそれ以降付けさせていただいておりますので,それも簡単に御説明,御案内させていただきたいと思います。
 これから3つ,就労移行支援若しくは就労継続支援A型,就労継続支援B型というふうなところに係る資料,これも概要を付けさせていただいております。これら3つの事業につきましては,いわゆる就労系サービスといわれるものでございまして,一般就労を目指す障害者に,では,一般就労するに当たって,職業生活上,必要な能力というふうなものを支援を受けながら向上してもらったり,獲得してもらったりする,そういった事業でございます。
 3つのメニューそれぞれ対象者といいますか,サービスの内容が少しずつ異なるところではございますが,目指すべきところは,申し上げましたとおり,一般就労を目指す,向かうに当たって,能力を獲得していただく,そういったものが大筋共通しているところでございます。
 就労移行支援事業につきましては,2年間というふうな期間の中で一般就労を目指していただくに当たっての能力を獲得していただくもの。就労継続支援A型につきましては,雇用関係をサービス提供事業者と結んでいただきながら,利用期間なく雇用関係の中で一般就労を目指す能力獲得等をしていただくものでございます。就労継続支援B型につきましては,雇用関係まではなかなかいかないけれども,雇用関係ではない中で御利用いただきながら一般就労を目指し,能力を向上してもらう,そういった支援になっているというところでございます。
 それらをまとめている資料が次のページ,スライドのページで言いますと14ページに一覧表を付けさせていただいておりますので,こちらも詳細につきましては後ほどご覧になっていただければと思います。
 続きまして,ページをめくっていただきまして,今申し上げたものが全国的にそれぞれの地域において就労を目指す障害者の方等に提供させていただいているサービスではございますが,申し上げましたとおり,地域の実情で少しサービスメニュー等も違う場合もある,そういったところを地域がそれぞれサービス実施内容を選んで,決定して地域の実情に応じたサービスを提供してもらおうというのが,次のページの地域生活支援事業でございます。こちらも概要を少し付けさせていただいておりますので,後ほどご覧になっていただくとして,実はその地域生活支援事業の中に,本日,ヒアリングの中にございます下の方にずれていただきまして,地域活動支援センターが位置付けられているところでございます。こちらもまさに各地域地域が地域活動支援センターというふうなものを設置しようということで設置いただいて,障害者に,例えば創作活動なり,例えば生産活動なり,例えば地域との交流なりの機会を提供していただくというセンターでございます。全国で今,3,000を超えるぐらい,各自治体が設置している取組でございます。
 それから,この地域生活支援事業というのは,いろいろなメニューを御用意させていただいておりまして,それを各自治体が決定して選んでいくというふうなものになっているところでございますが,そのメニューとしてどんなものがあるのかというのが,そのページから2,3等々で付けさせていただいているものでございます。
 その中でも特に国がというものにかかりましては,例えば地域生活支援促進事業というふうな形で,少し国からの補助率を上げる等で推進させていただいている事業もございますけれども,大枠としましては,地域の実情に応じて障害者のニーズに応えるような支援を提供していただく,そういった事業の枠組みの中で地域活動支援センター等をやっていただいている,そういった流れでございます。
 駆け足でございますが,次のページでございます。3でございます。
 さらに,そういった障害者総合福祉法とはまた別の枠組みで,障害者のいろいろな活動を御支援させていただいているものも予算事業として実施しているところでございます。その1つとして資料をお付けさせていただいておりますが,障害者の芸術文化活動の支援もさせていただいているところでございます。こちらも概略になりまして,その下でございます,障害者の芸術文化活動に係る予算というところで一覧表を付けさせていただいておりますが,例えば上の1つ目,障害者芸術文化活動普及支援事業等につきましては,こちらはまさに予算事業としまして厚労省でさせていただいているところでございまして,文化芸術活動等の支援体制とかネットワークを全国的に強化構築しようというふうな形で事業を展開させていただいているところでございます。
 こういったことを通じて厚生労働省としましては,障害福祉の分野で障害者の方のニーズ等に応じた支援をさせていただいているというところでございます。
 説明は私からは以上です。

【渡部障害者雇用対策課課長補佐】
 私,厚生労働省障害者雇用対策課の渡部と申します。私からは,資料22ページ,4番の障害者雇用につきまして簡単に御説明させていただきます。
 ページをめくっていただきまして23ページになりますが,まず,障害者の雇用に関しましては,障害者の雇用の促進等に関する法律,私ども,障害者雇用促進法と呼んでおりますが,この法律において,障害者雇用率制度や納付金制度を設けております。この障害者雇用率制度につきましては,国,地方公共団体,民間企業などにおきまして,雇用する労働者のうち,一定割合以上,障害者を雇用するよう義務付けている制度でございます。
 また,障害者を雇用するに当たりましては,企業内の施設,設備の整備に関しまして,経済的負担が発生することがございますので,そうした経済的負担の調整を図るという観点から,雇用障害者数が一定割合に満たない企業につきましては,障害者雇用納付金を徴収させていただきまして,一定割合以上雇用している企業に対しては,調整金という形で一定の金額を支給させていただいているところでございます。
 また,ハローワークにおきましては,地域において様々な就労支援機関と連携して障害者の就職支援を行っているところでございます。
 主な連携先は,24ページの障害者就業・生活支援センターですとか,25ページの地域障害者職業センターとなっております。今後,会議の中で触れられるかと思われますが,障害者就業・生活支援センターにつきましては,障害者の就業に当たっての生活上の支援も行っております。例えば,仕事をするために生活習慣を形成したりであるとか,健康管理などに関する相談援助,それから就職活動,就職後の職場定着に向けた支援を実施しております。
 さて,労働分野における学びにつきましては,就職に向けた職業意識形成であるとか,職業スキルの向上を目指した職業訓練が考えられます。こちらにつきましては,資料は飛びますが,28ページ,29ページにございます。
 まず,職業意識形成に関しましては,28ページにございますとおり,ハローワークにおいて障害者が企業で働くことについて具体的なイメージが沸きやすいよう,企業見学会を実施しております。また,実際に働くことを体験する職場実習という取組も進めているところでございます。
 29ページにおきましてですが,こちらは仕事をする上で職業的に必要なスキルの習得のために教育機関等を活用した訓練も実施してございます。
 以上,簡単ではございますが,雇用の分野についてお話をさせていただきました。

【宮﨑座長】
 ありがとうございました。
 それでは,続きまして,田中秀樹委員,野中施設長より御発表いただきます。
 それでは,田中委員,野中施設長,どうぞよろしくお願いいたします。

【田中(秀)委員】
 一麦会の田中です。よろしくお願いします。
 社会福祉法人での学びについて,重点にしている2つの事業所,自立訓練の結い,就労継続B型のポズックについて,私と野中で説明させていただきます。
 私は,自立訓練の結いの説明ですけれども,なぜこれをつくるに当たったかといいますと,一般企業で就職している人は,大体5年ぐらいで離職率が非常に高いわけです。それから,その離職の中で二次障害を起こす障害者も見られます。知的障害の上に精神障害を重ねていく,そういう人たちも見られます。それから,一般的に18歳でなぜ障害者が働かなければいけないのか,今の障害のある人がもっともっと学習の機会があるのではないか,そういうことでこういう場所をつくってまいりました。そういう学びの場を経験してきた三重県の聖母の家学園であるとか,愛知の見晴らし台学園の卒業生も利用しているわけですけれども,そこの卒業生を見ると,非常にしっかりしているという状況が見られましたので,18から二十歳の間でもう1つ大きな節といいますか,成長する時期があるのではないかということを考えてやりました。
 「結い」のなかまということで,2年間ということで,その中でゆっくりゆっくりと自分探しをしながら日常生活の中で生き抜く力を付けていくということです。
 それから,結いの3つの観点で重点としているのは,居場所であり,学習をする。それから集団でお互いの意見を出し合って物事を決めて実行していく集団自治の観点。それから,働くということを考えていくということです。
 居場所では,自分たちの育ちの課題を超える,そういうプログラムを生活・実用計算・文化・健康,こういうテーマを設定しながら実施しております。
 次に,集団活動では,いろいろな集団の中で討議をして物事を決めながら,いろいろなプランを決めていく。その中で所属感であったりとか,自分たちの発言する力を付けていっております。
 それから,労働の問題では,働く経験をする。ここでは模擬喫茶をしながら準備。それから就労継続A型,B型での実習体験。それから,一般企業の働いている企業を見学に行く。それから,就労に向けて就業・生活支援センターで相談に乗ってもらいながら自分の将来を考えていく。就労継続に行くなり,一般企業に就労する,そういうことを進めております。
 続いて,野中から。

【野中氏】
 社会福祉法人一麦会のポズックという事業所を運営しています野中と申します。本日は,発言の機会を与えていただきありがとうございます。
 ポズック(Po-zkk)という作業所なんですが,今から4年前に立ち上げました。なぜ立ち上げたかというと,いわゆる文化芸術のところを単なる余暇活動であったりだとか,趣味という形で障害者のアートの部分を考えるのではなく,それが働く,仕事にならないかということに少しこだわりを持ってポズックを立ち上げました。一麦会麦の郷自体は,1977年3月に産声を上げて,今から41年ぐらい前に立ち上がったのですが,そのときのスローガンが,労働そのものが人間としての喜びと豊かな発達につながるということに確信をもって41年前に立ち上げたと聞いております。その麦の郷の理念が脈々と流れ受け継がれていく中で,この芸術や文化を何とか仕事にしよう,いわゆる生きていく糧にしようというので始めたのがポズックの取組です。「描く」を仕事にしたり,「つくる」を仕事にしたり,「踊る」を仕事にするという,そういうふうな場所を作りたいと思いました。
 もう1つ作りたいと思ったことがありまして,それは1人のなかま,障害をもった人たちを私たちは「なかま」と呼んだりすることがあるんですが,障害がある人との出会いの中で,その人が通っていた作業所であったりだとか,または一般企業の中で,一人はとてもとてもいじめられて,自分の意見が言えない,自分を表現すること,たくさん表現はもっているんだけれども,表現することができなかったり,または作業所の中で精神的に小さな箱の中に詰め込まれているような精神状態の中で,働いたり,生活している方がおられました。
 何が起こってきたかというと,その人はお弁当屋さんに電話するんです。何々作業所の何々です。職員さんの名前をかたって,お弁当をあしたの夕方に50個届けてください。次の日,その作業所に50個のお弁当が届くんです。その作業所はパニックになるんですが,誰もそんなお弁当を頼んでいないよということでパニックになったりだとか,または消防署に電話して,どこどこ作業所が燃えています,早く消しに来てくださいと言って消防署に電話して作業所に消防車がたくさんやってくるだとか,そういうふうないたずらというか,自分がいろいろな表現があるんだけれども,表現がし切れないということで,私たちからすれば,いわゆる問題行動という形で自分の表現をするという方がいたりだとか,または,先ほども言わせていただいた自分の表現,自分がいじめられたりする経験の中で,自分の表現ができなくなってくるというメンバーたちと多く出会ってくるという中で,何とか表現をプラスの方向にもっていけないだろうかというので,このポズックという取組を始めました。
 具体的には,アートの雑貨制作をしていたりだとか,雑貨店を運営していたりだとか,軽作業を少ししていたりだとか,なかなかみんなメンバーがアートの作業をするということにならない時間もあるので,軽作業もしています。けれども,内職作業ではなくて,できるだけポズックに関わりのある軽作業をしています。
 あとは,ポズック楽団という形で,今では珍しくなったちんどん屋さんを楽団としてしています。ちんどん楽団という形で,舞台公演をさせていただいたりだとか,または商店街の盛り上げのために,もちろん公演料,出演料を頂いて,楽団として活動しています。
 そういうふうな場所がポズックの中身であります。

【田中(秀)委員】
 続きまして,この図ですけれども,7ページです。
 今の報告の2つですけれども,一麦会に関連するなかまの利用ですけれども,それに限定されるわけです。さらに地域のもっと多くの障害をもったなかま,それからボランティアの人との出会い,そういう場を求めて,2の関連団体ということで,そういう活動も行っています。
 こういうふうに,精神障害者,知的障害者,ひきこもり青年の当事者が自分たちの課題を解決していく。一麦会では,半分の障害者が半分の障害者を支えるような,そういう活動をしてほしいという提案もしているんですけれども。その1つとして,「青年学級すばらしい仲間たち」,これは知的障害者の当事者活動です。それから,精神障害者の場合は,「サークルつくんこ」というサークル活動も行っております。それから,アートサポートセンター,りんく,そのほか,おどり隊とかありますけれども,これは一麦会のスタッフが地域で受け皿を作りながら障害をもったなかまを広く募集をして活動しております。
 それから,さらにもっと社会との関係で広めていくということで,障害児者つながりを広める文化祭,わされん運動会,ふれあい登山,雪のつどい,こういうものを長く40年からの歴史をもって活動をしております。
 最後に,生涯学習をどう広めるかという,そういうところの問題ですけれども,今,様々な取組が全国で行われていると思います。いろいろな余暇活動であるとか,塾であるとか,そういう活動があると思うんですけれども,それをもっともっと地域へ広げていってもらう活動。それから,その活動を公的な場所で多くの地域のなかまを募集した,そういう活動をしています。公的な場所がどこでも年1回でも活動することによって,本当にたくさんの数の障害をもった人の生涯学習的な活動が広がっていくと思います。
 それから,人材育成,社会教育主事の育成の中に,障害者の生涯学習担当の養成であるとか,社会教育主事の方が生涯学習であるとか社会教育の場で活躍する場所を提供している。そういうふうに広めながら,ただ,生涯学習という体系的なところはまだ未整備だと思いますので,そういう様々な実践交流をしているものを一堂に会して交流をして体系化することが必要であるように思います。それを中心にして主催するということも大事ですけれども,委託をすることも必要かなというふうに思っております。
 以上で報告を終わります。

【宮﨑座長】
 ありがとうございました。
 ただいま御説明を頂きました内容について,田中良三委員より補足の説明を頂きます。よろしくお願いします。

【田中(良)委員】
 それでは,よろしくお願いします。資料4-2を御覧ください。
 先ほど,厚労省から訓練系,就労系の御説明がありました。一麦会の田中委員と野中さんから,今の障害者福祉制度の中での取組について御説明がありました。実はこういった取組が,近年,自立訓練事業等を活用した学校から社会への移行期にある学びの場を提供する活動として,社会福祉法人,NPO法人などを中心に全国的に増加しつつあります。それがこの資料4-2の2ページ,3ページ,4ページ,5ページです。その中で特に,2ページですが,全国各地で学びを軸にしたこういった活動が広がってきているということです。実際の取組についての資料も添付してあります。
 また,日本福祉大学の伊藤修毅先生が調査された資料も添付してあります。9ページ以下です。
 最初の1ページに戻っていただきまして,簡単に全体的な総括といいますか,私なりにまとめをさせていただきたいと思います。
 まず,この自立訓練事業等というのは,2004年11月に,高等部3年間だけでは短い,もっとゆっくりと青年期にふさわしいものを学ばせる機会かあったら,就労とか生活の面でしっかり自立していくのではないかというような願いで,全国専攻科(特別ニーズ教育)研究会を2004年11月に発足させました。毎年全国集会と実践研修講座を開催してきています。高等部が今ものすごく膨らんできていますから,現在,ここに力をさくということはできないということですから,学校が無理ならば福祉の分野でということで広がってきているのが,この自立訓練事業等を活用した学びの場です。
 そういうことで,これら全体を通していえることですが,1つは,学校から社会への移行支援に全て「学び」を中心に置いています。学び活動も学校のように細かな時間帯でなくて,1日午前1つ,90分とか120分とか,午後も同じようにして,大枠の時間の設定の中で障害をもった一人一人の多様な個性やもち味を引き出し生かすことができるように配慮されています。
 2つ目は,作業による技能の習得や就業体験・職場実習など,職業に必要なスキルや多様な生活体験,ボランティア活動などの社会体験によるライフスキルとともに,文化,教養,スポーツなど,青年期にふさわしい多様な学習内容で構成されてきています。
 3つ目に,ここでは,青年期教育として,本人たちが自ら主体的・協働的に調べ,まとめ,発表し,自分たちで学習や交流を企画するなどのスキルを身に付けさせる学習によって,人と関わる力,つまり,コミュニケーション能力や社会性を身に付けて,自ら判断,行動し,自立できるように支援しています。
 4つ目は,多様な学び活動においては,ありのままの自分が出せて安心して学び合うことができる仲間やスタッフのもとで,まんざらでもない自分を発見するなど,自己肯定感や自信がもてるように取り組まれています。
 5つ目ですが,学校から社会への移行期の学び支援は,修了後の就労率も極めて高く,就労を継続し,また就労後の相談活動などによって生活も安定するなど,十分な効果を発揮しています。自立訓練事業から直ちに就労に移行するというよりは,社会福祉法人の場合は,その後,先ほどの御発表にあった就労B型事業所等や,就労移行支援事業に繋いでおられる。自立支援事業は2年間ですから,その後,地域の障害者就労・生活支援センターにつなげ,また,ハローワークとも連携をとりながら,そこで職業適性検査を受けたりして,つまり,連携の中でその人たちを送り出している。その後は,ほぼ安定して仕事に就き,ひきこもりになったりした人はほとんど見当たらないというふうに,効果を発揮しているということです。
 自立訓練事業は2年間ですけれども,もう少し期間があったらということで,学ぶ青年のニーズが多様化してきておりまして,学ぶ期間も当初の2年間から3年間,4年間と長期化する傾向にあります。先ほどの2ページ,3ページの表の中に,*印で振ってありますが,1つだけの*印は3年間,2つ振ってあるのは4年間ということで,近年,長期化してくる傾向があります。そういうことでありまして,これもやはり地域における連携,そして障害をもつ人たちの学びの場をいろいろと関係する機関に理解してもらいながら,一人一人の進路,就労をしっかり支えていくというところが今後必要だというふうに思います。
 以上です。

【宮﨑座長】
 ありがとうございました。
 ただいまの御発表を踏まえて,自立訓練事業,それから就労継続B型事業等を活用した効果的な学習プログラム及び実施体制,人材の育成・確保等の在り方などについて意見交換を行いたいと思います。
 御質問,御意見のある方は,どなたからでもどうぞ。まとめてあとで御回答していただくようにしたいと思います。
 それでは,よろしくお願いします。
 田中委員,どうぞ。

【田中(正)委員】
 育成会の田中です。
 自立訓練に関しては,私も制度が発足直後に自立訓練と就労移行を組み合わせての4年間というのは非常に重要で,全く訓練事業が機能しなかったころでしたので,特に就労移行に関しては,ゴールははっきりしていましたから,そして報酬も少し手厚い状況もありましたので,かなり各地で発展していったかなと思いますけれども,自立訓練の生活訓練を使ってこのような卒業したてにカリキュラムをもって対応するというのが,全体からすると,まだ数が少ないなという印象をもっています。肯定的には考えているんですけれども,やはり自立訓練を今回の卒業したての学習の場に位置付け過ぎると,自立訓練のもつ意味が少し薄れるのではないかというような危惧もあって,そのことも踏まえて,今回この検討会があるというふうに思っていますので,自立訓練が卒業したての2年間,そして今,田中委員の方からも2年が4年になっていくというような流れの中で,実際には生活介護の事業や就労継続Bの事業のプログラムの中でそういったことが行われるべきである部分もあるのではないかと思いますので,そういったことへの2年間の学校卒業後の短大のような,若しくは単科カレッジのような位置付けとしての意味と,その後,卒業するようなイメージがやはり2年,4年にはありますので,その後,このプログラムをどう生かしていくということで事業を進めているのかについて,一麦会の田中委員と,まとめられた立場での田中委員と,両方お話を聞かせていただければと思っています。

【宮﨑座長】
 松矢委員。

【松矢副座長】
 松矢でございます。
 最初は厚生労働省の方から資料に基づいた説明がありまして,障害者自立支援法から総合支援法になりましたけれども,この厚生労働省の施策と,文部科学省の施策が一体化して連携による通達も何度か出ているんですね。それの効果が非常に大きく出てきております。東京都では,今年の3月の卒業生の就職率,障害種別を超えて43.7%,知的障害では実に49.8%まで上がっております。それも連携による通達のおかげであると。ハローワークの役割,それから職業センターの役割が非常に大きく影響しております。
 今日出ております就労支援施策の対象となる障害者数,全体の流れですけれども,私が注目しているのは,就職率が6,411人に対して平成28年度の卒業生は1万3,517人ですが,福祉進路をとった方々の一般就労への移行が学校よりも大きいということです。ですから,そのことはどういう状況が起きているかというと,離転職しても,また就職できますよというとてもゆとりのある進路の支援ができるようになったということが大きいと僕は思っております。
 そして,今日はいろいろ取組が出て,教育の,働く生活への,それも文化も含めていい実践を聞かせていただいたんですが,一麦会の田中先生の場合,移行支援事業も入っているのだと思うんですが,働く生活への移行と文化のつながり,移行率はどのぐらいになっているのかということをお聞きできるとありがたいと思うんですが。よろしくお願いいたします。

【宮﨑座長】
 ほかにどうぞ。
 箕輪委員,どうぞ。

【箕輪委員】
 お話の中で作品と商品をしっかりと分けていらっしゃって,商品のクオリティーを上げているとか,そういったところは,もしかすると,田中先生の方からあったような自己肯定感とか自信により効果的な活動なのかと思うんですが,この最初の方の資料の8ページで御紹介のあった課題のところが,これまでのすばらしい活動をされている方と同じで,どのように場を広げていくかとか,持続可能,今やっていることをどのようにしたら無理なく長く継続できるかというとても大事な視点だと思っていまして,これを中のスタッフ,福祉の職員を育てるというのもあると思うんですが,並行して,今回御紹介あったように,元アナウンサーとか,勤労者の山岳連盟とか,そういった民間の企業ですとか,プロボノというか,OB,OGなどをうまく活用されていると思うので,このあたりの地域の企業ですとか,もしかしたら大学とかもあるかもしれないですが,そういう福祉ではないところとの連携の仕方,協力の要請の仕方とか,あと仕組み,何かコーディネーターがいるのかとか,それから,もし断られることがあるならば,例えば企業ですと,断る理由はどういうことが多くあるのかということ,連携をとる中でありましたら教えていただきたいと思います。
 以上です。

【宮﨑座長】
 ほかにありますでしょうか。
 どうぞ。

【戸田委員】
 戸田です。すてきな発表をありがとうございました。
 ポズックの野中さんにお伺いしたいと思うのが,先ほどのお話ではないですけれども,よくアートの作品を商品に変えていくということで,結構いろいろなところで見ていて気になっているのは,誰がその値段を付けているのかということです。どういう判断で,どういう尺度でその価格が設定されているか。そこが気になるところを1つ教えていただきたい。アートに取り組む活動はかなり多いと思うんですが,そこの体系がしっかりできていないと,何のためにやったのかよく分からなくなってくることがあると思うので,そこを教えてください。
 あとは,皆さんの取組,社会教育の中でどういう位置付けでやられているのかということが結構気になっていまして,学びとなると,文科省寄りなのかとか,皆さんは社福なので厚労省だよねとか,そういうふうになってくると,どういう位置付けてやっているのかというところが気になっていたんですけれども,そこはB型の事業の一部としてそういうことを定義付けてやられているのかと思っていたのですが,そこの齟齬がないかどうか。
 あとは,前回の会議でも言ったんですけれども,学びの方向性です。なぜこれを学ぶのですかとか,そういうところの定義付けを,先ほど,コーディネーターということと近いかもしれないんですが,そういうことを内部でやられているかどうかというところが気になりました。
 あとは田中委員とかぶるのであれなんですが,2年後にそこに戻ってこられるのかどうかとか,そういったフォローはできているかどうかとか,そういうところが気になったので教えてください。
 以上です。

【宮﨑座長】
 4名の方からの御質問,御意見も踏まえてお話を頂ければと思います。どなたからでも。お願いいたします。

【田中(秀)委員】
 それでは,この2年間,こういう位置付けでやるかということもあるんですけれども,直接,支援学校を卒業して就労継続Bであるとか,そういうところに入るとか,グループホームに入る,そういう方もおられるわけですので,やはり障害をもった背景の中で非常に困難な課題を抱えながらいろいろな生活をしていますから,例えば自立訓練の中に入らなくても就労継続B型の中でも,そういう学習の面は多々あるわけです。だから,やっぱり家庭の状況によって非常に違うんですけれども,ネグレクトであるとか,虐待であるとか,そういう方もおられますから,そういう生活のところでは,どの部分のところでも継続して支援が要るというような,そういう状況があります。
 ただ,自立訓練事業というのは,そういう親の願いであるとか,本人の学習能力のところも伸ばしたいという人が多いので,集中して本人の課題であるとか,そこに向き合ってやれるという,そういうメリットがあって実施していっているわけですけれども,2年間を過ぎて就労Bであるとか,Aであるとか,一般就労とかというのがつながってやっています。

【田中(良)委員】
 自立訓練のもつ意味と学びの関係という御質問を頂いたかと思うのですが,離職の要因は,ほとんどと言っていいぐらい人間関係なんです。定着するための視点も仕事中心になりがちではないかと言われています。学びの場は,地域で同じ仲間と居場所とか,サークルとか,そういう学びの場というか,自由に自分が出せて楽しみ合える,余暇も楽しむことができる,そういうところが仕事を支えているということで,そこで自分を癒したり支えられて,また仕事の場へ戻っていくという,そういう効果もあると思います。
 それと,青年期に学校を卒業して初めて直面するようなことも多く,ライフスキルに応じた形での学びというか,それも同じ境遇をもつ友達と一緒に受けとめていける。前もっていろいろなことをプログラムどおりに教えるというわけには必ずしもいかない。自由度のある,みんなでいろいろと自分の考えを出しあいながらコミュニケーション能力や社会性を少しずつ身に付けていくような学びの場,それがやっぱり学校を終えてからも継続した取り組みが必要だと思います。
 そういう意味では,一般に学びの場を開いてきているところは,就労・生活支援センターや,ハローワークと連携したりしながら,そこでお互いの状況を出し合って安心して実習に入り,就職につながっていくというふうで,これまでは学校からすぐに就労移行支援とか就労していくということでしたが,学びというか,その間を媒介にするようなものが生涯学習として,今日,卒業後に継続した学びの場が求められてきているのではないかと思います。そういうことで,先ほど,松矢先生がおっしゃったように,就労支援が非常に幅広く豊かにゆっくり支えられるようになってきているのではないかと思います。
 以上です。

【宮﨑座長】
 野中施設長。

【野中氏】
 それでは,発言させていただきます。
 まず,働く場所なのか,学ぶ場所なのかというところの議論なんですが,そもそも福祉とは何だろうかということを考えるときに,私の先輩からよく言われるのは,漢字の意味をひもときなさいということをよく言われるんです。福祉の福は福の神の福です。幸せという意味があります。福祉の祉は,なかなか福祉の祉以外には使わない漢字です。この福祉の祉という漢字の意味をひもとくと,これも幸せという意味が実はあるんです。別に僕は宗教は関係ないんですが,神様からの贈り物という,そういうふうな意味が語源としてあるというふうに聞いています。この幸せを二重に掛け合わせるということが福祉の仕事なんだということを,以前,先輩から教えていただいたんですが,では,私たちがやっている福祉,幸せを重ね合わせるときに必要なのは何なのかということを考えるときに,その人が豊かに生きていくということが一番なのかなと。豊かに生きていくことによって幸せにつながっていくのではないかというふうに当たり前に思っています。
 この豊かとは何かということになると,田中先生もおっしゃられた自己尊厳であったり,自己肯定感を高めていくということが1つ必要なことかなと思いまして,その自己肯定感や自己尊厳を高める1つの手段として,働くというものがあったり,ここに学ぶというものがあるのかなというふうに私は考えています。
 なので,働く場所なのか,学ぶ場所なのか,どっちだろうという部分を考えると,どちらの用途もあるという表現になってしまうかなと思います。
 商品の価格ですが,ポズックの中心的なスタッフをしている者が,もともとアーティストで,自身もアーティスト活動を今ももちろん継続しながらポズックのスタッフとして働いています。彼自身がいろいろ評価をしていったりだとか,あとで報告していただくたんぽぽの家の商品を見せていただいて,これぐらいの値段帯にするのかなとか,全国的にはどれぐらいかなとか,一般的な商品はどれぐらいだろうかというところを検討しながら,みんなで商品の価格を作っているのと,価格のところに関連してなんですが,ポズックの商品は一点物が多かったりとか,若しくはデザインをしてプリントしているものがあるので,一点物が売れたときは,その一点物を作った人に対してたくさんの給料が入るようにしたり,デザイン料が入るようにしたりというふうな工夫を給料面ではしております。
 もう1つは,連携のところであったりだとか,いろいろな人に関わっていただいています。断られることはないのかというふうなことを御質問していただいたかと思うのですが,なかなかお願いに行くことが少なくて,これを協力してください,お願いしますという立場ではなくて,一緒にやりましょうという協働の関係性の中で人を紡いでいくような形を一麦会全体としてもとっているのかと思いますので,断られないかどうかというところで言うと,実際は断られるということもあるのかと思うんですが,できるだけ一緒に歩みを続けていけそうな人たちと手を組んで行っているということと,最近変わったところで手を組んでいるところで言うと,地域おこし協力隊の皆さんといろいろな形でまちづくり,まちおこし,もちろん麦の郷としては,まちづくり,まちおこしをしていくというところもベースに法人の理念の中であるので,まちおこしやまちづくりを一緒にしていく中で,福祉のところも一緒に考えていってもらっている,そういうふうな取組をしております。
 以上です。ありがとうございます。

【宮﨑座長】
 ありがとうございました。
 それでは,続きまして,社会福祉法人わたぼうしの会Good Job!センター香芝,社会福祉法人たんぽぽの家の取組について,小林スタッフさんから御発表いただきます。
 それでは,小林さん,どうぞよろしくお願いいたします。

【小林氏】
 それでは,よろしくお願いいたします。社会福祉法人わたぼうしの会Good Job!センター香芝と,一般財団法人たんぽぽの家の小林が発表させていただきます。よろしくお願いいたします。
 まず,組織が2つ,たんぽぽの家とわたぼうしの会があるので,簡単に説明をさせていただくと,我々,1973年に,重度の身体障害のあるお子さん,その親たちの集まりから始まりました。そこから奈良たんぽぽの会という市民団体を形成した後に,財団法人たんぽぽの家と,社会福祉法人わたぼうしの会を設立しました。社会福祉法人の方は,もちろん地域ケアが中心ですので,福祉ホームであったり,相談支援であったりとか,あとは生活支援とか,その中に就労支援もあるというような形です。最近,2016年9月にGood Job!センター香芝ができました。
 一言でたんぽぽの家が何をしているかということを伝えますと,芸術文化活動を通じて,障害のある人の学び・社会参加・仕事づくりを支援している団体になります。
 「障害のある人の生き方の選択肢を,せばめる課題と,ひろげる活動」ということで,先ほど,親の会からスタートしたと言ったんですけれども,いわゆる親亡き後と言われるものが来たときに,自分の子どもが安心して暮らせる家とか,安心して暮らせる地域であったりとか,成長できる居場所であったりとか,そういったものを作りたいという思いからスタートしたんですけれども,そのときにそういった家とか地域とか社会とかを作るというときに,同情による社会とのつながりだけだと,どうしても広がりが生まれない中で,福祉掛ける異分野の共感による社会とのつながりというところを意識して活動をしてきました。
 あと,障害のある方自身が表現する,一言で表現すると言っても,語る,かく,うたう,踊る,つくる,発信するといろいろなものがあるんですけれども,そういった機会がやはり少なかったものに対して,可能性の芸術運動で運動を進めたということがあります。
 学ぶ機会が少ないものに対しては,自分たちでフリースクールのようなものなんですけれども,たんぽぽ自由学校とか,コミュニティカレッジだったりとか,あとはセミナーだったりとかというものを開催したりしています。
 写真があるんですけれども,これは全国わたぼうし音楽祭といいまして,障害のある方が日々の暮らしの中でかかれている詩(ポエム),それが日々の楽しみだったり,喜びだったり,もどかしさだったり,痛みだったりというものがあるんですけれども,そういった言葉に対して,当時は70年代なのでフォークソングの若者がすごく盛り上がっている時代なんですけれども,そこの若者,ミュージシャンに曲を付けてもらって,福祉的な発信というよりは,一緒に文化的な発信をするということでコンサートをした,音楽祭をしたというのが一番最初の活動になります。
 今は,あとでも説明するんですけれども,福祉と例えばテクノロジーであったりということで,いろいろな異分野との関わりを進めております。
 たんぽぽ自由学校が1980年に障害と学びというところにフォーカスを当てて,いろいろなことを試行錯誤しながら進めてきています。今でもコミュニティカレッジと名前を変えてずっと続けているんですけれども,ポイントとしては5つあって,知識を広めて,表現力を付ける基礎学習。2つ目が,それぞれの能力に応じて,陶芸,絵画,手芸などに取り組む技能学習。3つ目が,クラブ活動を通して,助け合いの中で学ぶ共同学習。4つ目が,合宿を通して生活技術を身に付ける生活学習。5つ目が,機能回復訓練とスポーツを楽しむリハビリスポーツとような形。
 これは障害のある人のための講座ももちろんあるんですけれども,一般の人のための講座,子どもから高齢者までを対象にした一般の人のための講座も開いたり,若しくはともに学ぶ講座を開いたりという形で,それは初めから地域に開かれた学びの場所を意識してフリースクールを作っておりました。
 例えば,書道講座であったりとか,奈良なんですけれども,万葉集の中から恋をうたったものを集めて,恋ごごろの今昔を楽しく考える万葉の恋歌というものだったりとか,あと,文化財講座,奈良国立文化財研究所の専門家と古代史を学んだりとか,発掘現場に出かけたりとか,あとは暮らしを考えるというところで,映画を見て,その後に「自立とは」は何なのかと考えたりとか,自然に親しみ,歴史を学ぶとか,仕事を考える,そのほかギターとか,英語とか,油絵とか,詩吟とか,コーラスとか,このような多様なものをしていますけれども,約30個の講座をやっていました。
 コンセプトを一言で言うと,Learning Exchange(ラーニング・エクスチェンジ)というコンセプトでやってきたんですけれども,学校外の学校というものを地域の人たちと一緒に作ろうということで,生きた知識をもった人たちの提供できる人と,そうした知識を学びたいという人を募集して,交流若しくは学び合う場を作ってきました。
 可能性の芸術運動(エイブル・アート・ムーブメント)と我々は言っているんですけれども,エイブルアートというと,アートかなと思うんですけれども,我々の意味としては,「新しい文化をつくりだす市民の自律的な力」をエイブルアートと定義しています。
 例えばで4つ挙げているんですけれども,トヨタ・エイブルアート・フォーラムということで,トヨタ自動車に御協力いただいて,我々奈良だけではなくて,全国各地でそういった福祉とアートとか,教育とか,多様な立場の人が実行委員会を組織して,34地域で計63回のフォーラムを実施しまして,芸術文化を地域で広めるような人材を育成するフォーラムを行っております。
 ひと・アート・まちというものは,これは近畿の2府4県を中心に,近畿ろうきんさんと一緒にやっているものですけれども,地域のアートNPOとか各種団体と連携して,アートプロジェクトを実施いたしました。
 福祉をかえる「アート化」セミナーというもので,これは例えば先ほども作品の値段とかという話もあったんですけれども,作品の値段をどう付けるのか,作品をどうやって管理したらいいのだろうか,そもそもどうやってかいたらいいのだろうかということを,福祉の方と一緒に学び合う場を開催しています。
 明治安田生命社会貢献プログラム「エイブルアート・オンステージ」をやっていたんですけれども,絵画とかではなくて,どちらかというと,演劇とかダンスとか,体の身体表現というところにフォーカスを当てたものを,同じように人材育成という形で各地で行っておりました。
 厚生労働省の「障害者芸術文化活動普及支援事業」ということで,先ほどの説明にもあったんですけれども,それの一事例として紹介させていただくんですけれども,我々としては,相談窓口の設置であったりとか,研修事業であったり,ネットワーク作り,あとは作品,作家の調査・発信を行っております。
 昨年の2017年の事業内容としては,舞台芸術に関するレクチャーワークショップにフォーカスを当てているものと,あとは,先ほどのLearning Exchangeにもつながるんですけれども,芸術活動のエクスチェンジプログラムということで,奈良県内の福祉施設で実践されている障害のある人とのパフォーマンス活動と,まだそういった活動が盛んではない福祉施設を対象にしてワークショップを行ったり,それは国内と国際的な交流を行っておりました。
 あと,著作権・知的財産権に関するセミナーということで,作品が出来上がったときに,その著作権がもちろん出てきたりとか,物が作られたときの知財であったりとかは,もちろん考慮しなければならないところですので,これも福祉施設の方々と一緒に,弁護士の方をお呼びして一緒にレクチャーしたりとか,学びのワークショップをやったりしております。
 アートを仕事につなげるというところで言いますと,「エイブルアート・カンパニー」という組織というか,これは一事業としてやっているんですけれども,全国の113人のアーティストで,現時点で1万2,525点の作品をウエブサイトで公開してマネジメントをしています。これは例えば企業の契約であったりとか,そういったものを福祉の職員さんであったりとか,障害のある方御自身がなかなか難しいというところもある中で,その中間支援を行っていたりしています。
 Good Job!プロジェクトも行っております。これはあとで申し上げるGood Job!センター香芝が建つ前に,Good Job!というコンセプトで全国各地で障害のある方々の仕事,暮らしに対してすごく先駆的な活動を選定して事例として社会に発信するというプロジェクトなんですけれども,例えば,東京でいいますと,渋谷のヒカリエという商業施設で展覧会を行ったりもして,今の現状,障害のある方の仕事とか,暮らしとか,学びとかということを,こういったことをされているんだなということを知っていただく機会をつくっていたりします。
 その中で学びの事例というところで取り上げているんですけれども,学びではないんですけれども,私たち,「ケア」というものを考えるときに,「心のケア」という言葉があるんですけれども,心のケアだけではなくて,身体のケアと,生活のケアと,他者と相互につながる関係のケアを大切にして,全体的なケアを考えています。学びも同様に考えたときに,心の学びと,身体の学びと,生活の学びと,関係の学びにカテゴライズしているんですけれども,例えば福祉のプロジェクトの事例を紹介させていただくんですけれども,心の学びが,人の痛みや悲しみ,喜びや悔しさなどを知る・感じるというところで,ハーモニーさんという東京の事業所なんですけれども,精神障害のある人の幻聴とか妄想とかを実体験をもとに等身大の生活をかるたにした「幻聴妄想かるた」というものがあるんですけれども,そういう日々の楽しいこととか,悲しいこととか,うれしいこととか,悔しいこととか,幻聴妄想の世界に触れることで精神障害の人の居場所について考えるきっかけになるといったものをされているところがあります。
 身体の学びということで,自分の身体について知るとか,身体を通して学ぶというところで言いますと,これも企業の事例ですけれども,株式会社ハーバー研究所さんが,就労前と就労中の障害のある人に向けて,スキンケアとメイク講座を行っています。自分の顔とか肌とかに触るということとか,自分の身体をケアすることを通して自分に誇りをもったりとか,自立を促すとか,金銭だけではない企業の本質的な価値が存在していく。
 生活の学びということで,暮らしや職業のための知識や経験を積むということで,これは1つの企業の製品の事例ですけれども,OTON GLASSというものがあります。OTON GLASSは,そのままですけれども,OTONというのはお父さんのおとんなんですけれども,開発された方自身のお父様が文字を読むことが困難なディスレクシアの方なんですけれども,そういった方とか,弱視者を対象とした「読む行為」をサポートするスマートグラスです。読みたい文字を撮影して音声で内容を理解したりします。
 関係の学びということで,家族や地域とともに相互に学び合うということで,これも大阪の事例なんですけれども,認定NPO法人D×Pさんというところで,これは約60万人ともいわれるニートの問題です。障害福祉となったときに,いわゆるグレーゾーンと言われているところかもしれないですけれども,そういった方に対してのキャリアアッププログラムを行ったりしていくんですけれども,その人に対して機会を作るということを行ったりしております。
 今のが財団法人たんぽぽの家としての活動です。社会福祉法人わたぼうしの会が地域ケアに対して,財団法人が発信であったりとか,機会を広げるというところに重点を置いてきたんですけれども,実際の現場の取組として,Good Job!センター香芝の取組を紹介させていただきます。
 私自身も財団法人たんぽぽの家のスタッフであり,Good Job!センターの一職員として,日々現場に入っているんですけれども,Good Job!センターとしては,4つの事業,障害福祉サービス事業を行っております。就労移行支援と,就労継続A型と,就労継続B型,生活介護を行っております。
 障害のある人が豊かに生きるための「はたらく」,「まなぶ」,「くらす」,「からだとむきあう」ということで,「所得の再分配から可能性の再分配へ」ということをコンセプトに行っております。
 ちょっと細かくはなるんですけれども,大きくは製造と流通,カフェ,アトリエ,コミュニティカレッジという5つのプログラムを行っておりまして,例えば製造だと,デジタル工芸,こういったデジタル機械を使った伝統工芸との組み合わせであったりというものをやっているんですけれども,それぞれのプログラムも,この日のこの時間はみんなこれをしましょうというようなプログラムの作り方ではなくて,それぞれが,例えば月曜日の午前中は製造して,月曜日の午後はカフェをしますみたいな感じで自分でプログラムを選んでいただいて組み立てるというものを行っております。
 その中で,先ほどのプログラムは,就労A,B,就労移行,生活介護が,例えば就労移行がカフェをしますとかではなくて,全部の事業が全部を経験できるようなものにしております。それプラス就労移行支援事業ということで,週に1回,就労移行に向けた学びや外部機関への訪問を行っております。
 就労移行のプログラムとしては,もちろん就職に企業一般雇用に向けての学びの場にはなりますので,例えば就業・生活支援センターへの訪問であったりとか,ハローワーク,そのほかの関係だったりとかというような形のものを行っております。
 障害者就業・生活支援センター(なかぽつ)との連携ということで,現状と課題といいますと,現状は企業はなかぽつさんにどうやって受け入れたらいいかということを相談されているんですけれども,それに対してなかぽつさんが,複数の福祉施設,就職希望者に対して見学ツアーを実施して,職場体験を行ったりとか,あとは,職場体験の希望に対して,企業への交渉を行ったりとか,情報提供をしていただいています。
 課題としては,地域での支援の差があるんですけれども,就労に対するイメージがないので,体験して学びたいと思った人が,就労を真剣に考えていないと見られたり,登録すらできないということが現状としてあったりするので,そういったことも受け入れられるような必要性があるかと考えております。
 外部団体との連携はこんな感じで,全国各地の企業さんと関わっております。
 最初に,IOTだとかテクノロジーというところなんですけれども,こういったIOTとFabと福祉といったプロジェクトを行っていたりしています。
 その中でインクルーシブワークプレイスというところの働きやすいとか,その人の個性を生かすような働く場所は何だろうかということを考えているんですけれども,インクルーシブデザインを京都大学の潮瀬先生,潮瀬先生はGood Job!センターの協力者で,中央教育審議会専門委員を務められているんですけれども,この方と協力しながら行っていたりしまして,天文台といった社会教育施設においての視覚障害のある方とか,聴覚障害のある方の学びの場を作ったりもしています。
 最後に,「障害のある人の主体的・対話的で深い学び」というところの学習ポートフォリオなんですけれども,一言で言えば,多様な学び方のオプションとか,レパートリーをもつということが必要となると考えています。
 Good Job!センターの場合だと,利用者が1つの作業を習熟するというだけではなくて,アートとか,デザインとか,工芸とか,情報リテラシーとか,創作活動とか,他者との交流とか,自分の出番とか舞台を見付けることができる可能性がやはり増えているということを感じています。
 課題として,我々だけでは全てのレパートリーをもつことはできませんし,我々のように外部の人たちが関わる機会が多い施設ではない場合,そういったレパートリーをどうやって増やすかというところがあったりとか,あとは一般雇用に向けた学び(訓練)と,そういった一人一人の能力に合った仕事を見つける学びというところが,なかなかマッチしないところもあったりするので,その結び付きをどういうふうにつなげるかということが課題。これらの学びを学校だけに託すと教員の負担が増すので,ここは考えたりします。
 対策としては,社会教育士の活用とか,福祉施設,情報が集まる場としての「母校」とか「地域の学校」とか,就労支援機関との拡充です。
 最後は,先ほどIoTとかFabとか言っていたんですけれども,アートとか,デザインとか,IoT,Fab,テクノロジーとか,そういった新しいことを学ぶ場を提供することで,若い世代の人が呼び込めるかなということを考えております。
 以上です。

【宮﨑座長】
 ありがとうございました。
 ただいまの御発表を踏まえて,就労移行支援事業等を活用をした効果的な学習プログラムですとか実施体制,人材の育成とか確保等の在り方などについて,意見交換をできればと思います。
 御質問,御意見のある方は,どなたからでも,どうぞお願いします。
 はい,どうぞ。

【戸田委員】
 戸田です。すてきな発表をありがとうございました。
 聞いていて,財団法人と社会福祉法人が軸になってうまくバランスをとっている感じ,あとは地域といろいろな連携,パートナーシップでできている事例なんだなと思って聞いていました。
 これ,障害があるなし関係なく充実したプログラムだなと思って聞いていまして,だからこそちょっと際どい質問になるかもしれないんですけれども,皆さんには満足度が高いのだろうと思って聞いたんです。メニューもすごくバラエティに富んでいますし,今ふうですし,いろいろなことが試されている。そこで僕は利用されている方の顔が余り見えなかったので,そこの満足度とか,あとはそこの合理性を利用している方と一緒に作り込んでいっているかどうかというところと,もう1個は,関わられる方たちは多分偏ると思っていまして,そこら辺をあえてそういう設定をされているかどうかというところの3つを教えていただけたらと思います。よろしくお願いします。

【宮﨑座長】
 ほかの方,どうぞ。

【箕輪委員】
 箕輪です。
 今の御質問と重なるところもあるんですが,プログラムがすごく充実していて,継続的にもされているんですけれども,この資料でレポートとかを見たんですが,参加されている方の人数ですとか,リピーターなのか,それとも初めての人がずっと繰り返されているのかとか,センターの定員,B型だと,実際は1名しか利用されていないとか,このあたりで実際の,せっかくすばらしいプログラムをやっているんですけれども,参加されている方たちがどのような方々で,参加の仕方,今のリピーターなのかどうなのかとか,あと,それに重なるんですが,成長の評価です。参加するだけではなくて,これだけのプログラムをやっていると,確実に成長もされていると思います。それを生かしてどういうふうに次のステップに進んでいるか,プランというか,そういったところもすごく興味をもちました。
 あとは,資料の8ページにあった外部団体,本当にそうそうたる企業ですとか,大学とか,皆さんが御存じのところ,すごく大手さんと連携されているので,この連携の仕組み,このあたりは,ほかの方も,多分こういうふうに体制をとりたいなと思って活動される方が多いと思うので,そのあたりの仕掛けといいますか,仕組みというか,教えていただければと思います。
 以上です。

【宮﨑座長】
 では,田中さん,お願いします。

【田中(正)委員】
 育成会の田中です。
 たんぽぽの家は,松兼功さんがわたぼうしコンサートを始めたころから私も付き合いがあって,非常に先駆的な取組を様々に繰り広げているなと思って,今日御発表いただいた内容もますますいろいろなバラエティに富んでいてすばらしいなと思いました。
 あえて今回,先ほど,厚労省の方からも説明があった障害者芸術文化活動普及支援事業,かなり国のスタンダードな制度だと思うんですけれども,今までもこの分野,この内容で発信してきたものがあると思うんですけれども,特にこの事業を受けたことで広がったとか,関わりが深くなったとか,進められる要素がこの事業によって後押しされるものがあるとしたら教えていただければと思っています。
 以上です。

【宮﨑座長】
 ほかにありますか。
 はい,どうぞ。

【綿貫委員】
 意見というか,質問も含めてなんですが,すごく新しい技術とか,本当に先駆的な,社会的に,一般社会にとっても先駆的なことをたくさんされていて,これと実際にこの方々がその後の生活とか移行ということを考えたときのその先のところで,現実的な社会資源とのつながりが,ここで学ぶことは,多分利用者さんたちにとってはすごく新規のことが多いと思いますし,そこで学んだこともたくさんありますし,それをその後のところで,特別支援学校とかもICTとかをすごく持て余していたりとか,そういった社会の方がまだこういった先駆的なところに全てが追いついているわけではないところでの移行とか,啓発とか,教育とか,そういうところのつながりについても教えていただければと思います。

【宮﨑座長】
 それでは,小林さん,各委員からの質問や意見を踏まえて御説明を,ちょっと時間が押しているものですから,5分程度でお願いいたします。すみません,よろしくお願いします。

【小林氏】
 最初のゴール設定とか参加人数,参加の仕方とか,リピートの話ですけれども,参加の仕方は,A型は今は1名で,就労移行が3名で,Bが十何名という形での人数で,それぞれが,例えば踊りたくない人に対して踊るとかはまず無理な話なので,この曜日のここは自分はダンスがしたいというのに対しては,自分で基本的に主体的に選んでもらうというふうにしているので,こちらが無理強いをして何かをするということはまずありません。
 例えば,ダンスのプログラムであれば,今までやったものは十何人ぐらい参加はしていますけれども,そういった形でしたいことを自分がする,自分が選ぶというふうな参加の仕方をしていて,基本,リピートは,ずっとリピートしているような形です。この日に歌のプログラムがありますとか,この日には製造しますとかというのは,自分で決めて週間のリズムは決めた上でずっとリピートをしているというふうなことをしています。
 成長の評価とかキャリアプランという形で言えば,いわゆる個別支援計画のような形で一人一人に対して1週間とか1か月とか,半年,1年に対して目標を作るということはやっていたたりします。
 我々の考えとして,例えば,今まで精神的な負担があった中で,週に1回しかこられないんですけれどもいいですかという人に対して,もちろんいいですよというふうな人たちに対して,週2回来る,週3回来る,週5回来るのが目標かと言われると,我々としてはちょっと違うなというのはすごく思っている中で,やっぱり自分が納得いく日数であったり,自分が納得いくリズムというところをまず作れるというところが1つ成長の評価かと思っていまして,例えば,自分が週1回だったものが週3回で,今のところ自分がリズムをもてるということをしているということ自体がすごい大切だったりするので,それはいわゆる自主製品を作ることが自分のリズムに合うのか,それともやっぱり表現することが自分に合うのかというところの,そこにレパートリーがないと,そこの自分のリズムを押さえながらはつかめないとか,こういうことが自分が好きだったんだということに気付くことができなかったりするので,そういったところを意識しながら作り込んでいるかなということを考えています。
 2つ目の関わる人が偏るのではという質問は,利用者さんで偏るということの質問の意図になるんですか。あるプログラムがあって,ここは人気というようなことではなくて……。

【戸田委員】
 参加できる人に偏りが出るという話,これをこなせる人というか,体験できる人に偏りが出ると思うんです。障害の区別もいろいろあると思うんですけれども,そういう意味です。

【小林氏】
 なるほど。どうなのだろう,今の質問で言うと,偏り自体はそうないと言ったらうそになりますけれども,今時点ではできないかもしれないけれども,自分はこれをやってみたいという人に対しては,是非是非という感じで入ってもらって,一緒に参加しているメンバー,利用者さんとか,スタッフとかで,この人が楽しめるにはどうしたらいいかということを考える。
 例えば新聞ワークショップというのがあって,新聞4紙を自分が興味があるものを読み合うというものがあるんですけれども,それに関しては,文字が読めない人は参加できないじゃないかとなるんですけれども,見て,自分が興味があるというのは紙面として分かるけれども文字が読めないという場合は,興味がある記事をもってきてもらって,読むのは読める人に読んでもらうという形で参加してもらう形で工夫をしているかというふうなことをやっています。
 あと,3つ目と外部団体と関わる仕組みというところなんですけれども,最初はトヨタさんのエイブルアート・フォーラムに関してで言うと,そのときはメセナという形で企業目線の形で文化活動がすごい活発だった時期もあったのと,我々が障害のある方の表現活動を盛り上げたいとあったのと重なったという部分ももちろんあったりするので,それがどういう仕組みなのかと言われるとあれなんですけれども,例えば,IoTとFabの場合だと,今は山口県と福岡県と岐阜県と一緒にやっていたりするんですけれども,それに関しては,IoTとFabが単純にミーハーな技術なわけではなく,カスタマイズできることと,関係を作るということが同時にできる技術だと思っているので,すごくケアとか,一人一人の仕事を作るということにマッチする部分があるので,それを地域に根ざすために,大学とか,市民団体とか,福祉施設と一緒に何かをするということをやりたいということを伝えて,それを一緒に共同するということがスタートする流れだったりするんですけれども,そういった関わりの作り方なのかなというふうに思います。
 最後が,厚労省で進めていて発展的なものという形で言うと,例えば,オープンアトリエというものをやっていまして,それは障害のある方が学校を卒業した後に自分を表現する場所がなかったりとか,1つの企業で働くと,自分を出す場所がなかったりするので,そういう人たちも施設利用者ではなくても受け入れるというような場所でオープンアトリエをやっていたりするので,それは厚労省の事業から始まったものを展開して今でもやっています。
 あと,舞台芸術とかも昨年やっていたんですけれども,それを展開して舞台の作品を作っていくというようなことは展開されているかとは思っています。
 5つ目が,アートとか新しい技術が現実的な社会資源とのつながりになるのかという御質問なんですけれども,1つ事例で言うと,プライベート美術館というものをやっていまして,これは障害のある方がかいた作品を,奈良町の地域の商店街とかお店とかに作品を飾ってもらう。ただ飾ってもらうだけではなくて,お見合い展示というのをやっていて,作家さんと作品と商店の人たちが一緒にお見合いをして,実際に私はこの絵が好きだというものを選んでもらって,自分で店主さんが主体的に作品を選んでもらうということをやってもらう。それは実際に飾ってもらって,まちじゅうにそういうアートがあるというふうなプライベート美術館をやっているんですけれども,それはその美術館のイベントが終わった後でももちろん関係性が続いていったりするので,一イベントとしてアート活動はよかったですねと終わるのではなくて,それが終わった後でも,あの人を気にかけたりとか,あのお店にちょっと寄ってみようと思ったりとかというふうな形で,実際に地域で暮らすということに関して,障害のある方と地域の人たちが結び付くということができているのかなというふうなことは思っております。
 すみません,5分以上かかって。

【宮﨑座長】
 では,どうぞ,最後に。

【山田委員】
 今の約30名の方の障害の区分といいますか,知的とか,ざっくりでいいんですが。

【小林氏】
 本当にざっくりですけれども,割合で言うと,30名と言ったときに,精神障害のある方が大体4割ぐらい,12名~15名ぐらい。知的障害のある方が10名ぐらいで,身体障害のある方が数名という形で,割合としては精神,知的,身体の順番です。

【宮﨑座長】
 ありがとうございました。ちょっと時間が押してしまって申し訳ありませんでした。
 最後に,NPO法人エス・アイ・エヌ「集いの場あゆみ」草羽所長より,御発表いただきます。
 それでは,草羽所長,どうぞよろしくお願いいたします。

【草羽氏】 私は,集いの場あゆみというところで所長をしております草羽と申します。広島からきました。
 地域活動支援センター2型事業という,先ほど厚労省の方からも御説明のあった広島市の障害者福祉サービスを活用した生涯学習支援の発表をさせていただきます。
 パワーポイントの枚数が多くて,途中スライドをとばしながら話しますので,ご了承ください。
 それと,今回,皆様に御用意ができなかったんですが,委員の先生方には,少しもってきた資料の一部を回覧もさせてもらっています。先に御説明しておきますけれども,1つは,生涯学習を始めてから2年ぐらいですが,その2年ぐらいの主なテキストと,それから,そこで現在参加している人たちの文集や写真集を回覧しております。
 また,これを始めるに至った,以前取り組んだ生涯学習講座のモデル事業のときに作ったテキスト,黄色い冊子ですが,これは助成金を受けながら半年から約1年取り組んだ生涯学習講座のテキスト集で,委員の先生方に御用意できればよかったんですが,あと2冊しか残っていなかったもので,きょうは1部だけ持ってきました。もしよろしければ置いて帰りますので,お時間があるときに読んでください。資料が多くて申し訳ありません。
 最初のページから入っていきますと,私がそもそもこういうことを始めたきっかけになった「こいこいクラブ」という青年教室を始めたのが1992年です。これが私の生涯学習を始めるときの前身の取組だと今でも思っております。このときにいろいろ取組をやりまして,一番大切にしたのは,当事者運営とか自己決定を考えて取り組んだ青年教室でした。そして,約15年ぐらいは続きましたがサポーターの確保や事務局体制,財源などの問題で継続が難しくなってきました。こういう取組はだめなんだと実感しまして,何らかの形で継続できるような運営をしていきたいという思いで,NPO法人を友人と設立しました。エス・アイ・エヌは(Support Independence Network)というスペルの頭文字です。 そして,その中で青年教室ではなくて何か継続できる方法はないかと広島国際大学と法人が連携をとってオープンカレッジの取組をしました。学びの講座とカルチャー講座を両立させた取組でした。運営は大学の先生たちに,非常に熱心に関わっていただいたんですけれども,継続ということになると,バックアップ体制を作っていくのが最終的には難しくて,単発的な活動に終わってしまいました。キャンパスライフの中でできたというのは,非常に大きな意味があったということと,専門的な学習を分かりやすく学ぶということの意味もあり,非常に成果を感じた取組でした。
 このような経緯をたどりながら生涯学習というテーマについて,根本的に考えなければいけないと思い日本福祉大学の大学院で,学びながら生涯学習について調査を始めました。このスライドは,その当時の調査ですけれども,現在委員の皆さんに回覧している黄色い冊子の生涯学習講座の基礎になっています。
 生涯学習や余暇活動に関する本人100人へのアンケートを通して,50人以上が希望している当事者の学習ニーズとか,困りごととか,心配ごとであるとか,余暇活動の希望などが主な調査です。今日の発表は学びが主だということでしたので,余暇活動の調査は参考までに見ていただければと思います。スポーツのことも出ております。
 調査結果のなかで私が,最初に思っていたこととちょっと違ったことだけ,ここで御紹介すると,5番目で食生活へのニーズが余りなかったんですけれども,これは後から本人たちにも話を聞いてみると,在宅者が多いということと,食べることに困っていないという,単純な回答だったと分かりました。
 細かい傾向と分析については資料をお読みください。 
 私が大学院の修論のなかでまとめたのが,自立を学びあう生涯学習講座のプログラムで黄色の冊子を作るときの基本にしたところです。そして,6つの視点を立てました。1つは,キャリアスキルアップ型の学習ニーズということで,いろいろな調査を反映した1つではあるんですけれども,まず,就職活動とか,日常生活スキルの獲得とか,職場内での人間関係とか,自分の今持っている力をスキルアップしたいというようなところがあるのではないか。
 もう1つは,表立ってはなかなか出ないんですけれども,資格を取って少し仕事の種類を増やしたいとか,それから,漢字とか計算の基本的な勉強をして,自分の仕事や生活に役立てることです。 3番目なんですが,転ばぬ先の杖というふうに,今はそんなに心配していないけれども,将来的にはこういう準備もしておきたいというような内容のものと,それから,4番目は権利意識ということで,この当時,ちょうどいろいろな障害者福祉制度とか,障害者の権利についてのいろいろなことが社会の中でも出てくるようになってきました。そういう意味では福祉サービスを知りたいとか,お金の使い方,例えば金銭管理の問題なども含めて知っていきたいという要求が出てきました。成年後見人などの制度もこの中の1つです。
 5番目では,自己解決型ということで,そういうことを自分の力で解決していけるようになるために,自分のできることは自分でやっていきたいというようなことを付けていきたいという1つのニーズがあるのではないかと。
 最後に,6番目は本人たちの側よりは,家族とか支援者の提案型の学習ニーズというのも実はあるんじゃないかと。つまり本人と周囲の人とのニーズが,マッチングしながらひとつの学習というものができていく必要があるのではないかと思って,まとめたのが私の6つの視点です。
 その中には,生涯学習の場合,性別とか,年齢とか,生活の形態とか,先ほどから障害の違いであるとか,あるいは発達段階であるとか,生活経験であるとか,様々な問題に留意する必要がありますし,それを行うときにどういう手段でやったらいいのかとか,それから,支援者の立場で言えば,そういうことについて,分かりやすい教材とか,あるいは支援方法を考えていくことが必要になってくるのではないかと思ってます。
 また,いろいろな人たちとネットワークを作っていくときには,コーディネーターの存在は否めない。どうしても必要であるということが分かってきました。
 そういう中で,本人たちの参加というのは,当初の青年教室をやっていたときからの私の考えの中の1つでしたので,やっぱり主体的に関わっていくというところで,どういうふうに当事者参加を考えていったらいいかというところが課題でした。
 今,お手元に回っているかもしれませんけれども,黄色い冊子の自立を学びあう生涯学習講座を2011年から2012年3月まで,先ほどのNPO法人が主催して,このテキスト内の8つの講座をテーマにして,それぞれの専門的な知識のある専門家の方をお呼びして,障害をもっている方たちへの支援のいろいろな方法も考えてもらいながら教材を作って講座をしてもらいました。ほとんどの方が,実は障害をもっている方たちとの関わりの経験のある方たちが多かったので,その分,やっぱり内容的にも非常に充実したものができたのではないかというふうに思っています。
 そこの実践から学んだのは,学びを生かすための相談支援や就労・生活支援が,実際に生活の中で生かして解決できるところまで至らないと「やっぱり学んだことは,学んだことで終わってしまったね。」ということになってしまわないように,学びが就労・生活に活用できることを大事にしたいと考えました。しかし先ほどの自立を学びあう生涯学習講座はモデル事業的な発想でしたので,その期間のみの講座ということでの成果と課題をパワーポイントのスライド33で5つを挙げました。2番目などで言えば,参加者はみんなが就労している人たちばかりでしたので,自分の生活や仕事に裏打ちされた学習への要求が非常に強いんです。ですから,能動的な学びにつながっていると分かりました。
 それから,自分の経験がいろいろ豊かですので,ほかの人へ学び,自分の経験してきたこととか,学んできたことに対して,それを享受するというか,交流しています。グループワークなどをしてみると,ほかの人と学びを伝え合っている様子が非常に印象的なことでした。
 あと,自分の生活を築くためにやるという自立意識とか自覚力,それから,学びの場から潤いの場というのは,学ぶだけではなくて,学んだ後の一緒の食事をしたり,ずっと残っていろいろな話をしたりするような潤いの時間というのも,すごく大きな意味がある時間だと改めて感じました。 そういった中で,学習プログラムが冊子としてまとめることができました。これをどういった形で進めていくかというところで,先ほどの地域活動支援センター2型事業の活用を考えました。地域活動支援センターというのは,先ほどの厚労相の御説明にもあったんですけれども,自治体が必要だと思って柔軟に活用していく制度です。ほかの地域で聞いてみると,2つまでの事業ところが多いんです。つまり地域活動1型,2型とか,A型,B型とかの呼び名であります。広島市は1,2,3の3つの型があるんです。それは非常に特異な例かもしれませんが,広島市地域活動支援センター2型事業というものが非常に有効であるということでもあります。これは大人のデイサービスというふうな捉え方ができる事業であるというふうに理解しております。
 ただ,こういう形で活用するということが実際にどうだろうかということも広島市ともずっと話をしてきました。生涯学習講座の取組を,この冊子を通して話をしたりするなかで,就労継続を定着していくためにはこういう場が必要だということが,明確になってきました。検討を進める中で,地域活動支援センター2型事業を活用した生涯学習支援の取組が2年経っております。
現在の集いの場あゆみは,利用者の数とか,述べ利用人数,今は月間の利用人数が増えてきています。利用者は皆さん,就労しております。それから,給料とか,年齢構成,特に年齢構成は本当に様々です。それから,家庭生活,生活状況も様々です。利用者は一般就労している方が多いです。障害者福祉サービスを利用していないけど自立をめざす,比較的軽度の就労している知的障害の人とか,発達障害の人たちを対象にして支援をしたいということで,今,考えております。
 実際にプログラムなんですけれども,取り組んでいくと当初考えていたものから予想以上の発展をしていってます。今はウィークデーの取組,つまり月曜日から金曜日までの取組と,日曜日の講座ということで,2種類というか,2つの流れでプログラムを作っています。
 集いの場あゆみは地域的には,広島市の中心部にあります。ビルの1階のテナントで結構広い事務所を借りてます。4階には「わが家」とい名称で読んでいる一般の住宅の部分も借りています。
ウィークデーの取組は日替わりです。本人たちの希望もまじえてやっています。パワーポイントのスライド42と44枚目が取組内容です。ウィークデーは大体3人から5人ぐらいで,顔ぶれもまちまちです。ですから活動内容も利用者に応じて,サークル活動や個別の活動をやったり,あるいは,外出をしたりして,本人たちの希望に応じてやっています。サークル活動というのは,クラブ的なもので,作家クラブとか,アートクラブとか,食堂(利用者が主体になってレシピをみながら昼食を作る)をやろうとか,カラオケ,カフェをやろうかとか,スポーツしようかなどの,取組をやっております。文化活動や外出の行事は(美術館,マリホ水族館,映画鑑賞,展示会,ランチ,社会的施設《郷土資料館,健康科学館,気象天文館,プラネタリウム,ガラスの里,植物園など》,イベントへの参加《アイサポート活動》など) などです。
あとは,個別のトークというのは,いわゆる相談支援です。相談をずっとして,種々の悩みごとを聞いたりして,なるべく解決に至るように取り組んでいます。
 いろいろ本人たちの思いなども出ておりますけれども,ここも職員たちとのケース会議でよく話題に出るところです。
 最後に,今の時点で分かることは,やっぱり安定した継続的な運営ができることが非常に生涯学習の場合は大切だなということと,それと,学びへの要求と主体性という意味では,経験を生かして徐々に自分たちが主体的な学習,学びになっていっているということです。それから,学びが人生の中で非常に必要なものだとして感じながら,自分らしさを出していける,そしてまた仲間でできていくという展開になっています。それと同時に,そこに必要なネットワークを作りつつ,プロの講師陣が支えてくれています。また,先ほどからも出ているいろいろな団体とのネットワークにも広がっています。そして,何度も言っている相談の中で必要なことは援助をして解決をするまでの過程も学びになっているということを感じています。そういったことを含めて,さらに学習プログラムを作っていかなければいけないなというふうに思っております。
 では,大体そんなところで,あとはパワーポイント資料やその他の資料を見ていただければと思います。終わります。ありがとうございました。少し写真を持ってきたので,写真を流しながら御質問を頂いてもよろしいでしょうか。

【宮﨑座長】
 ありがとうございました。
 それでは,流しながらということで,ただいまの御発表を踏まえて,地域活動支援センターの連携事業を活用した効果的な学習プログラム・実施体制,人材育成,それから人材の確保ということについて意見交換をしたいと思いますが,お約束の時間が既に過ぎておりまして,申し訳ありません,10分ぐらい延長させていただきたいと思います。
 本日,御発表していただいていない委員が何人かいらっしゃるんですが,そちらの方から,朝日先生,いいですか。ちょっと待ってください。そちらで何かあれば。松田委員,いいですか。

【松田委員】
 こういった形で,いろいろと実践だけではなくて,それを普及といいましょうか,そういった視点でお取り組みいただいていること,本当に心よりの敬意を表したいと思います。本当にありがとうございます。
 先ほど来,黄色い冊子ということで,拝見させていただいたところですが,本当にこれ,このまま使わせてもらえるものならばこんなにありがたいことはないなと考えています。私ども生涯学習センターを担当していますので,そこにうまく取り込んでいけないかということを考えながら,今,見せていただいきました。利用者さんの人数,規模といったものをお示しいただいているところなのですが,大体この事業を実施していくに当たって,どれぐらいの人数でやっていらっしゃるのかということと,あと,黄色い本に1,000円という売値が書いてあったのですが,これは買い求めることができるのかということ。あと,著作権上の扱いとかはどういうふうにお考えなのかということ。一応,3点お聞かせいただければと思います。

【宮﨑座長】
 では,松矢先生。

【松矢副座長】
 どうもありがとうございました。
 地域活動支援センターを使っているということで,大人のデイサービスだとさっきありましたけれども,比較的自由な,毎回行かなければいけないとかということはないんですね。それで,平日の日課があるということは,恐らく短時間の労働で,勤めがない日は来ているという方もいらっしゃるのではないかと思うんです,その辺のところを確認したいんです。だから,こういう形は非常に有効だと僕は思っていますので,ちょっとお聞かせ願いたいです。

【宮﨑座長】
 はい,どうぞ,山田委員。

【山田委員】
 これは財源はどうやってされているかを教えていただけますか。

【宮﨑座長】
 ほかはよろしいですか。
 それでは,各委員の質問等に御説明を5分程度でお願いいたします。

【草羽氏】
 取組内容や方法利用者の参加人数ですが,日曜日の講座で,例えば,「食の講座」とか,それから「健康の講座」とか,作業療法士の先生が講師で就労生活に役立てるコミュニケーショントレーニングもあります。それから文化講座など各種活動いろいろです。それから,最近では,今,就労・生活で必要性の高いものや困っている内容の講座をやっています。例えば,リスクマネジメント的な講座であるとか。そういう講座を年間,基本は3回シリーズで行っています。例えば「食の講座」が年間3回とか,そういう感じでやっています。日曜日にやっている講座ですので,ここでは,約15名から18名ぐらいの人が来ています。「音楽とダンスの集い」も文化講座の1つです。これは毎月やっています。これは非常に人気のある講座でプロの劇団員や声楽家の方が講師となっています。そして,すぐ近くに男女共同参画事業のセンターに音楽室がありまして,そこを利用してもやっています。日曜日の学びの講座や文化活動は,月に3回程度行われています。
 松矢先生の御質問と併せてお答えになるんですけれども,日々の取組ですが,つまり,先ほど説明をしたウィークデーの取組です。当初は,大体3,4名程度の利用でしたが,最近は6名~7名が来るような日もあり,ちょっと増えてきています。全く利用者が来ない日もあります。
なぜウィークデーに来るのかと言ったら,スーパーとか業種によっては,普通の日が休みの人が結構いますので平日(ウィークデー)に来ることがあります。「(仕事が休みの日にまで)あゆみに来ると,全部休みがなくなるから,少し休んだら。」と,こちらが言うぐらい来ていますので,フルに来ていますね。理由を聞くと楽しみに来ている,あるいは学びに来ている,友だちがいるなど(家ではひとりぼっちでつまんない),そしてくつろぎにきているというような状況です。
 そういう中で,日曜日にしか来られない人もいます。そういう人には,やっぱり学びだけでは,物足りない。だから,行事的な活動も取り入れています。また,学びの講座の午後は仲間と遊んだり,楽しんだりできるような活動も行っています。
日曜日は,今,主としては講座を中心に,そして行事を中心に文化講座を入れながら。それと,ウィークデーの人は,そういう1つの取組に,アートクラブとか,そういうものに参加して,個人個人の力を引き出しながら,自分がやりたいことを引き出して活動しています。 きょう持ってきた「天耕録」というのは,全部本人が文章を書いています。また「あゆみレター」という事業所の通信も本人が作っています。「天耕録」を書いている,「松風天耕」というのはペンネームです。彼は,中国新聞の「天風録」というコラムがあるんですけれども,それを毎日ずっと5年間書き続けていて,「写すだけではおもしろくないだろう,自分の作品を書いてみたら」と話して,作家クラブを作って書き始めたんです。
 生涯学習支援の取組の財源ですが,地活の2型(広島市地域活動支援センター2型事業)と略して言いますと,利用者1人が1日利用すると,5,700円の報酬になります。是非,これも各自治体でこういう制度を活用して,こういう場を設けることが,逆に就労継続,就労定着が可能になっていくので,期限付きのものではなくて継続して,ずっと年をとってからでも通えるところを作っていくということが,すごく重要なのかなと思っています。
 それから,自立を学びあう生涯学習講座のテキストですが,1,000円(印刷代程度)と書いてあるんですけれども,もうあと2冊しかありませんので,増刷するかどうかは,ちょっと今,考え中です。
 それと現在,取り組み中の講座のテキストも,積み上げられていますので,新しいテキストを作ろうと思っております。そのときには是非よろしくお願いいたします。
 それから,著作権の問題が非常に難しいところですけれども,厳密に言えば,テキスト内の絵やイラストなどは,インターネットからの画像ですので,手続きを通して利用させてもらう必要があります。作者の方にはその点を踏まえていただき,制作費として製本代の範囲で広く皆さんに活用していただくことを目的に,出版という形をとらずに製本印刷という形でしました。テキストや教材の作者の方は,私たちの集いの場あゆみ,あるいはNPO法人エス・アイ・エヌに,教材として提供していただいているので,活用意図を組んでいただき製本にいたりました。十分なお答えになっていないかもしれませんが,ありがとうございました。

【宮﨑座長】
 ありがとうございました。
 本日のヒアリングをした内容と頂いた御意見につきましては,事務局の方で整理をしていただくようお願い申し上げます。
 少し時間が延びましたが,本日の会議はこのあたりで終了したいと思います。
 なお,会議の時間内で発言しなかった御意見等があれば,事務局までメール等で御連絡を頂ければというふうに思います。
 最後に,事務局より連絡事項があればお願いいたします。

【高見障害者学習支援推進室長補佐】
 資料7を御覧ください。次回の会議でございますけれども,6月14日,木曜日の14時から16時,文部科学省3階の3F1特別会議室にて行います。その次,第6回は,6月29日の同じ時間帯を予定してございます。追って正式に御案内を差し上げます。
 また,本日の配布資料につきましては,机上に置いていただけましたら,後日郵送いたします。
 以上でございます。

【宮﨑座長】
 それでは,少し時間が延びましたが,本日の会議はこれにて閉会いたします。ありがとうございました。御発表の方々,大変ありがとうございました。

―了―

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