(資料5)前回の会議における主な意見

子供の読書活動推進に関する有識者会議(第1回)における主な御意見

1 総論

(1)「読書」の定義・概念・範囲について

  •  読書の概念、範囲、捉え方は、世代やICT化といった技術革新の進歩、各種読書調査により、それぞれ異なる。雑誌や電子図書も含めて、読書をどう捉えていくか、目的に応じて対応を考えることが大切ではないか。
  •  実用的な読書と、感性を磨く鑑賞的な読書という2つの目的がある。目的に応じた読書習慣の形成を考える必要がある。
  •  高校生は、調べ学習や探究的な学習などで結構本を読んでいる。また、多くの高校生は、教科書、参考書、コミック等で読書をしている。本を読んでいないのか、もう少し精密に考えてもよいのではないか。

(2)読書の新たな位置づけについて

  • 本を読むことを、どのように次期計画の中で考えていくかが1つの鍵になる。「分かち合う」ことが重要ではないか。
  • ブックスタートは、本を媒介にして、親、保護者、大人たちと赤ちゃんが楽しいひとときをシェア(分かち合う、共有)しているという考え方で進めている。シェアということで、重苦しい、課題があるような読書から、緩やかな楽しいひとときをもたらす読書となり、多くの賛同を得ている。
  • 本を読むだけではなくて、本のある暮らし、本に触れるような様々な経験を読書コミュニティーとして実施することが大切ではないか。

(3)主体的・能動的な読書、読書の質、読書の目的について

  • 質は、事務局からの論点に位置付いていないが、特に高校生の不読率を改善するための1つのポイントである。質の問題を議論の視野に入れることは非常に大切。
  • 量の追求のみでは、何でもいいから読めばよいという傾向となり、冊数競争ばかりが前面に出てくる。量と質はつながっている。感動的な本に出合うような良質の体験をしていると継続して読み続け、結果として量が増えるのではないか。そのために、小学生のうちに、活字やストーリーを追うのみではなく、読書の楽しさと深い喜びを味わえることが重要である。
  • 中央教育審議会の答申に、受け身の読書ではなく、著者の考え方や本の中身について主体的に読み解く読書の仕方、能動的読書、インタラクティブリーディングという言葉が出てくる。
  • 主体的に子供たちが読書に取り組むためにはどのような方法があるのか、どうすればいいのか、どう継続していけばいいのか。
  • 例えば、ペア学習、読書会、アニマシオンなどの、深い交流をし合える読書を大事にしていく必要があるのではないか。
  • 新たに主体的、対話的、深い学びという3つの観点を満たすことを読書の目的と捉え直していくということも一つの考え方である。このように読書を少し広く捉えていくことも、重要な論点ではないか。
  • 読書は、学力のベースとなる読解力につながることを認識し、何のために本を読ませるのか、指導者の意識はどうあるべきかまで踏み込み、その有用性を周知することも必要ではないか。
  • 子供自身が学校図書館や委員会活動など、様々な取組に関わることが大切である。

2 発達段階に応じた読書習慣の形成

(1)読書のきっかけづくりについて

  • 紙の書籍を全く読まない、もしくは、1か月に1冊も読まない高校生でも、19%が電子書籍サービスを利用している。電子図書サービスは読書のきっかけ作りの一つになる可能性も秘めているのではないか。
  • 読書のきっかけづくりとして、1機会や場を提供すること、2適書や良書を提供するといった内発的な動機への働き掛けと行うこと、3ビブリオバトルのようなフィードバックや交流というような外的な動機付けを行うことの3つがある。
  • 本自体は楽しいがゲームはもっと楽しいという捉え方もある。本の楽しさプラスアルファの部分を作ることが読書のきっかけ作りとして不可欠。今後はフィードバックや交流といった外発的な部分の働き掛けを重視すると良いのではないか。

(2)発達段階に応じた読書について(主に中学生までの取組)

  • ブックスタートで本を読み始めるものの、3歳、4歳、5歳と順に年齢を追うにつれて、家庭での絵本の読み聞かせが減ってきている。
  • 子供の読書活動推進のために、切れ目のない児童サービスを行い、手が届く場所にいつも本があるという状況を作ることが大切。
  • 小学生から中学生の最初の段階までは読書習慣も付いていると見ることができる。一方で、中学生の後半に、読書習慣が無くなるとか、読書が好きでなくなってしまう、あるいは、読書に価値を置かなくなってしまうのではないか。
  • 高校や生涯にわたる読書を好きになるためには、義務教育段階までに読書が好きになり、好きな本ができるといった心に残る経験を、学校や家庭でしていることが重要。

(3)子供司書について

  • 子供自身が専門の読書の知識を学び、地域や学校の読書推進力になってもらう「子ども司書制度」を推進している。取り組みを実施する全国の図書館、教育委員会は、推定数字になるが、今、200ぐらいではないか。
  • ポップ作成やリファレンス等、子供自身が本に主体的に関わる取組を発達段階に応じて順に行っていくことも大切である。

(4)朝の読書活動(朝読)について

  • 小中学生の不読率が高校生に比べて低いことは、朝読が小中学生に大きな力を発揮したことの表れではないか。
  • 小学生の英語の学習を新たに朝15分くらい実施する動きが一部の学校現場である。その際に一番狙われるのは朝読の時間。
  • 朝読では、本当に本を読んでいる子と、中には文字を追っているだけの子といる。読書の中身はどうなのかという部分まで考えていくことが大切。
  • 大学受験や部活等の関係で、高校生になると、朝読を実施している学校は少ない。小中学校のように、高校でも朝読の時間を設置すれば、本を読むようになるのではないか。

(5)家庭での読書活動(家読)について

  • 家読の活動は現在、全国約500のまちで取り組まれている。
  • 伊万里市では平成19年から家読に取り組んでいる。親が、子供の気持ちや悩みを持っているのかを、同じ本を媒体にして話し合う時間を持ち、親子のきずなを深めるというコミュニケーションを取る手段とし家読を推進してきた。伊万里市内では、「日本一のうちどく推進のまち・いまり」を宣言し、さらなる推進、普及を図っている。平成29年4月に伊万里市民図書館内にうちどく推進室を設置。学校教育課、生涯学習課、公共図書館、市民図書館との連携を強化するために、それぞれの部署から人員を配置。
  • 栃木県では、家読の推進のために、リーフレットを作成し、お薦め本を小中学校に貸し出している。

3 高校生が読書をする工夫について(高校生自身に対する直接の取組)

  • 学習指導要領が改訂され、特に高等学校では、数年後から、社会の中で探究的な科目が入っていく。そのために高校生が図書館を活用利用することが考えられるのではないか。これらが将来的に、本を読んでいくということにつながっていくのではないか。
  • 高校生の不読率について過去をさかのぼると、実はそれほど増減がない。高校生は、スマホの保有率の向上等、様々な状況の変化がある中で、不読者が一定しているという裏には何があるのか。もっと高校生の読書について細かく調査する必要があるのではないか。
  • 多くの若者が活用している、SNS等のインターネットを読書推進に関係させることについても本会議で議論したい。

4 地方公共団体における推進体制と国が実施すべき取組について

  • 国が読書計画のフォローアップを実施していることを、自治体にも積極的に伝え、自治体自体にも同様の取組を促すと良い。
  • 全国の自治体が定めている読書条例や読書宣言、読書に関する取組、その評価手法、読書推進に関する事務局は各自治体でどこが取りまとめているのか、といった自治体が見て役に立つ情報を整理すべき。
  • 地域間の取組の格差や不読率など、数値目標のうち達成できない部分が明確になってきた。これまで組織的な対応としては、これまでのような関係者の情報交換のみならず、例えば、アドバイザー的な役割を担う組織を作る等も考えられる。特に、県レベルへどのように働き掛けるかが重要。
  • 読書の現場は家庭、学校、地域。国や県はモデル事業やベストプラクティスを奨励し、市町村の自主的な取組を支援するだけでも良い。
  • 読書活動は、一過性のイベントではなく、市町村行政においては、年間を通して実施する必要がある。国の助成体制の中に市町村への助成制度を検討していただけないか。

5 その他

  • 平成28年4月に障害者差別解消法が施行され、合理的配慮が義務化されている。障害のある子供の読書をどう支援していくのかについて、次の計画で、より踏み込んだものが検討できると良い。現状では、小・中・高校、特別支援学校、公立図書館での取組に温度差がある。
  • 子供だけではなく、それを支えていく大人側の取組が重要である。
  • 司書教諭とともに、学校司書も増加している。絵本に関しては、現在、絵本専門士という取組が始まった。今後も、本のある暮らしを支える専門家の育成することも大切。
  • 若者がスマホを日常的に使う現実の中で、例えば高校生の不読率を数値的に改善することは難しい。子供が本のおもしろさを理解し、何かのきっかけでまた本に戻るために、大人は何ができるのか。

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総合教育政策局地域学習推進課

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