青少年の体験活動の推進方策に関する検討委員会(第2回) 議事要旨

1.日時

平成28年10月8日(木曜日)10時~12時

2.場所

文部科学省生涯学習政策局会議室(東館9階)

3.出席者

委員

青山鉄兵、明石要一、齋藤芳尚、鈴木みゆき、平岩国泰、松村純子、安田公一

文部科学省

有松生涯学習政策局長、神山大臣官房審議官(生涯学習政策局担当)、里見政策課長、土肥青少年教育課長、鴨志田青少年教育課課長補佐

4.議事要旨

(1)事務局より、資料の確認。

(2)明石主査より事例発表のスケジュールについて説明の上、2名の発表者(兵庫県教育委員会近都義務教育課副課長、国立花山青少年自然の家所長の松村委員)から事例発表。

(3)事務局より、資料3について説明。また、全体の内容について、委員より事例紹介、意見交換などの全体討議を行う。

 

<近都副課長事例発表(資料1)>

(兵庫県の自然学校について)

○兵庫県では全ての小学5年生が4泊5日以上自然学校に行く。自然に触れ、自然への畏敬の念を抱き、子供の生きる力を育もうということで昭和63年から自然学校が始まった。同年からモデル校で自然学校を始め、平成3年には当時の全小学校で行うことにした。これに伴い、県立南但馬自然学校をオープンした。

(兵庫県型体験教育について)

○兵庫型体験教育と銘打って、小学3年生から高校生まで、体系立てて体験活動のメニューを組んでいる。小学生では、環境体験、農作業、自然学校を体験する。中学生になると生のオーケストラを聴きに行く「わくわくオーケストラ」や、一週間完全に学校から出る「トライやる・ウィーク」を行い、高校生になると就業体験に近い「トライやる・ワーク」を行っている。

○ふるさと教育に絡め、県内の施設を使うことを条件としている。

○系統的な成長を目的としてプログラムを組んでいる。例えば、環境体験授業なら、種をまいて、草取りをして、収穫するといった一連のプロセスを盛り込んでいる。また、地域の人との関わりを作るようにしている。

(自然学校における課題について)

○長期宿泊は教員の負担が大きいので、指導員が非常に重要である。指導員は、大学生の指導補助員と、看護師の資格を持った救急員の2種であるが、最近は大学の単位の取得要件が厳しくなって、大学生の人材確保に苦労している。

○担任の負担軽減のため、担任は2泊を超えて泊まらないようにしている。

○これまで、兵庫県内で160万人が自然学校を体験したが、その人たちが他府県に就職し、定着していないのが課題である。

○プログラムについては、「ゆとり」をもたせること、「主体性」を持たせること、ま た、制度が始まって長く、プログラムが出きってしまっているので、マンネリ化していることが主な課題である。

○体験で得たことを、一過性ではなく後の学びにつながるようにすることが重要である。

 

(質疑応答)

(委員) 自然学校の前後の活動で、効果をより高める工夫はしているか。

(発表者) 当日の交通手段を自分たちで選んで調べるなどのプレ学習を行い、帰ってきてからは学習発表会として学んだ内容を発表している学校が多い。

学校の規模の都合上、他の学校と連合で自然体験に行く場合には、事前に挨拶に行くなどの交流を行っている。

(委員) 指導者の資質向上に関して、今行っている研修等はあるか。

(発表者) 兵庫県教育委員会が参加する研修会に、大学生が所属しているNPO等の組織のリーダーたちにも参加してもらい、兵庫県教育委員会の考えやノウハウを共有している。また県立南但馬自然学校において、年に何度か講座を開き、最低限のレベルに到達していることが保証できるような修了証を出している。

(委員) 教員は、自然学校を肯定的にとらえているのか、負担だと思っているのか。また、ほかの自治体より長期の体験活動をしていることのプラス面はあるか。

(発表者) 兵庫県の教員は小学校5年生で自然学校があることを前提に段階を踏んで教育していくので、自然学校なしでは指導をイメージできないのではないか。長期の体験の効果については、例えば洗濯など、短期の体験ではしなくても済むような経験をする、できるというところが大きい。

 (委員) 教員の新規採用研修と、自然学校は連携しているか。

(発表者) 新規採用研修では、必ず県立南但馬自然学校で2泊3日して施設について知ってもらっている。

(委員) 長期体験について、皆さんに理解してもらうための手法はあるか。

(発表者) 短期ではできないようなメニューの提案をたくさん行っている。

 

<国立花山青少年自然の家 所長 松村委員事例発表(資料2、参考資料1、2)>

(ネット依存対策事業について)

○国立青少年教育施設で行うネット依存対策事業を「セルフディスカバリーキャンプ(SDiC)」と銘打ち、今年で3年目になる。1年目は静岡県の国立中央青少年交流の家、2年目以降は群馬県の国立赤城青少年交流の家で行っているところ。医療と教育の融合を目指しており、久浜医療センターが認知行動療法やカウンセリングを行い、機構は体験活動部分を担っている。

○ネット依存対策で大事になるのが、参加者の相談相手となるメンターの存在。ネット依存になって不登校になった子供たちに対して、メンターがよく話を聞くことによってたくさんの効果が出ている。

○SDiC初年度はメンターの事前研修ができなかったことが課題として挙がったため、2年目からは事前研修をしている。

○SDiCのプログラムとしては、メインキャンプを8月に8泊9日行い、フォローアップは11月に行っている。フォローアップは2泊3日で、メインキャンプの再開という形で食事作りなどを行っている。

○SDiC一年目のときから効果があったのが、食べ物を作るプログラムである。ネット依存の子供には、ジャンクフードばかり食べて太っている子供と、全く食事をとらずにネットをしていてやせている子供と2パターンいる。参加者には後者が多かったが、自分で作ったものはおいしいと言って徐々に食べるようになる。危なっかしい手つきで竹を削るところから始めて流しそうめんを作ったり、湧き水をくんできてカレーを作ったりする。オリジナル食と称して、自分たちで好きなものを考えて作るというプログラムも好評であった。また、外出への抵抗感をなくすように、プログラムで使用するものは自分たちでスーパーに買物に行くように仕向けている。ほかには自然体験のアドベンチャー、トレッキングのプログラムを取り入れている。

○SDiCでは、朝の集いを毎日行うことにしており、昼夜逆転の生活を送っている子供たちが最後の日まできちんと出てくるかという懸念があった。しかし、最終日まで全員が出てきており、キャンプ参加に当たって、本人たちも生活習慣を変えたいと思っていることが伺えた。

○SDiC一期生や二期生を集めて、セカンドフォローアップという試みを始めている。SDiCのようないわゆるネット依存キャンプは韓国が有名だが、セカンドフォローアップについては日本が初めてなのではないか。国際的にも発信できる取組だと思っている。

○ネット依存対策には、規則正しい生活習慣の確立と定着が大事なので、機構以外の取組についても青少年教育施設を活用・宿泊してもらうのがよい。

○SDiCについて、参加者の公募をすると、対象にすべきではないような子供からも応募がある可能性があり、対象の参加者については、医療機関・相談機関と連携して選定することが必要ではないかと感じている。

 

(子供の貧困対策事業について)

○国立青少年教育振興機構(以下、「機構」という。)において、子供の貧困対策を行っている。子供の貧困対策に係る生活・自立支援キャンプ、子供ゆめ基金、学生サポーター制度という3つの取組がある。

○困難を有する子供たちに対する取組は、規則正しい生活習慣を確立・定着させつつ、自然体験・交流体験などの様々な体験プログラムを行うことが大事である。そのために、いろいろな連携先との連携、予算が必要となる。

○「子供の貧困対策に係る生活・自立支援キャンプ」については、平成26年度より行っているところである。内容としては、自然体験・交流活動のほか、「早寝早起き朝ごはん」啓発事業で作成している冊子を活用し、簡単な料理を作るようなプログラムを行うなど、これまで機構が蓄積してきたノウハウで、プログラムを作成している。また、このような事業においても、ボランティアが活躍している。

○機構の行う子どもゆめ基金事業の中で、子供の貧困対策に係る枠がある。平成27年度向けは申請が160件あり、うち95件を採択した。

○学生サポーター制度は、児童養護施設を対処した後、大学や専門学校に進学した人向けの制度であり、制度の周知が課題である。

○その他、機構は、貧困対策以外にも、心身の障害など、困難を抱える青少年向けに、様々な事業を行っている。

 

(学校・家庭・地域連携等の観点における体験活動の推進について)

○機構では、施設の運営や事業を地域と一体となって行う「新しい公共」型の管理運営に取り組んでいる。地域の青少年団体やNPO・企業などに「運営協議会」として施設の管理運営や事業の企画参画もしてもらうシステムであり、平成23年から導入されている。

○「新しい公共」型の管理運営について、いくつか課題がある。まずは職員全員の「新しい公共」型への理解が大変であるし、「地域に根差す」という観点から、県、近隣市町村のどういった人に運営協議会に入ってもらうかも課題である。

○既に移行済みの「新しい公共」型の管理運営のメリットは、委員に年間を通して事業に参画してもらえること、委員の知識やネットワークを活用して新たな取組ができること、経費削減等のアドバイスがもらえることなどである。

○大学との連携について。大学と協定を結んでボランティアを派遣してもらい、活動を単位認定してもらっている。大学にとっても、大学で学んだ理論が生きる実践の場となるメリットがある。一方、地方の青少年教育施設の場合、施設と大学が遠いという課題がある。

○教育委員会と連携し、教員研修・初任者研修を青少年教育施設で行っている。

 

(質疑応答)

(委員) 市町村・NPOなどが取組を行う際、機構としてどんなサポートができるか。

(発表者) アドバイスを求められれば資料を提供しているが、そのようなサポートを行っていることを知らない市町村も多い。フォーラム等で周知していく必要がある。

(委員)SDiCについて、家庭と連携してキャンプ後に行っている取組はあるか。

(発表者) 初日と最終日には家族会を行い、家に帰ってから夕飯を一緒に作るなど、家庭で取り組んでほしいプログラムを伝えている。

 

<全体討議>

○国立花山青少年自然の家では、家族向けのファミリー制度を作っていて、会員登録している人に家族・親子向けの事業を発信している。QRコードを作ることによって、若いお母さんに簡単に登録してもらっている。また、Facebookで事業の様子を発信している。こういったSNSでの体験活動の情報発信も重要である。

○2つの発表を聞いて、体験の前後、特に後が大事だと感じた。家庭で体験後について連携して指導することで効果が変わる。関係機関の連携や、外部人材の活用も重要なポイントである。

○2つの発表を聞いて指導者やメンターの重要性を感じた。特に幼児期においては体験の言語化が重要であることから、子供が単に「体験した」というだけではなく、体験した活動を感覚的な言語に置き換え、理解することができるか。それを導くメンターの資質向上が重要である。

○体験活動の良さについて、数字だけで説明するのではなく、子供やその周りの大人の体験活動の感想を集めた冊子を配布したところ、非常に反響があった。感想の中には友情、自然、命、協力、挑戦、信頼などの言葉が出てくるが、こういったものが体験活動に大事なのではないか。

○体験活動を考える上で、学校の中でできることと外でできること、非日常的な体験と日常的な体験の区分けを整理する必要がある。

○最近の保護者は習いごとなど、結果の見えやすいものに投資する感覚が強い。既存のやり方では子供が減り続ける。SNSを活用するなど、運営に若者の視点を混ぜつつ、体験活動のメリットをアピールすることが必要である。

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総合教育政策局地域学習推進課青少年教育室

(総合教育政策局地域学習推進課青少年教育室)