これからの専修学校教育の振興のあり方検討会議(第6回) 議事録

1.日時

平成28年10月17日(月曜日) 10時30分~12時30分

2.場所

経済産業省別館3階 312各省庁共用会議室
(東京都千代田区霞が関1-3-1)

3.議題

  1. 有識者ヒアリング 「専修学校教育の質保証と第三者評価について」  独立行政法人大学改革支援・学位授与機構 川口 昭彦 顧問
  2. その他

4.出席者

委員

浦部  ひとみ   東京都立青井高等学校主幹教諭、東京都高等学校進路指導協議会事務局長
大井川  智明  日本商工会議所企画調査部担当部長
河原 成紀     学校法人河原学園理事長、全国専修学校各種学校総連合会常任理事
黒田 壽二     金沢工業大学学園長・総長、日本高等教育評価機構理事長
小杉 礼子     独立行政法人労働政策研究・研修機構特任フェロー
小林 浩        リクルート進学総研所長、リクルート「カレッジマネジメント」編集長
小林 光俊     学校法人敬心学園理事長、日本児童教育専門学校校長、全国専修学校各種学校総連合会会長
今野 雅裕     政策研究大学院大学教授
清水 信一     武蔵野東高等専修学校校長、全国高等専修学校協会会長、全国専修学校各種学校総連合会常任理事
前鼻 英蔵   学校法人西野学園理事長、全国専修学校各種学校総連合会理事・全国専門学校青年懇話会会長

有識者ヒアリング
川口 昭彦    独立行政法人大学改革支援・学位授与機構顧問

文部科学省

有松   育子    生涯学習政策局長
佐藤   安紀    生涯学習総括官
里見   朋香    生涯学習政策局 政策課長
岸本   哲哉    生涯学習推進課長
白鳥   綱重    専修学校教育振興室長
星川   正樹    専修学校教育振興室室長補佐 
牧野   浩司    専修学校教育振興室専門官

5.議事録

【黒田座長】  それじゃ、皆さん、おはようございます。時間になりましたので、ただいまから始めたいと思いますが、きょうはあり方検討会議の第6回目でございます。
  皆様方には、御多用の中、また、足元の悪い中、お集まりいただきまして、ありがとうございます。本日も、報道関係者より写真撮影と録音の申出が来ておりますので、了解をしております。御承知おきの上、御発言いただきたいと思います。
本日は、前回に引き続きまして、有識者ヒアリングを行います。ヒアリング2回目となるきょうでありますが、「専修学校教育の質保証と第三者評価について」と題して、独立行政法人大学改革支援・学位授与機構の川口昭彦顧問にお話をお伺いしたいと思っています。川口先生におかれましては、大変御多忙の中、お引き受けいただきまして、まことにありがとうございます。厚く御礼を申し上げます。
  ヒアリングの前に、まず、本日の配付資料について、事務局より説明をお願いいたします。
【白鳥専修学校教育振興室長】  まず、議事次第の資料があると思います。そちらにありますとおり、資料の1、資料の2、参考資料を配付させていただいております。なお、委員の皆様方におかれましては、川口先生より御提供いただきました御著書もお配りをしております。また、前回の会議資料については、机上資料にございます。よろしくお願いします。
   以上でございます。
【黒田座長】  ありがとうございました。
   それでは、川口先生のヒアリングに入りたいと思いますが、まず、川口先生の御略歴について、事務局より御紹介をお願いいたします。川口先生は、こちらの方へ、どうぞお越しください。
【白鳥専修学校教育振興室長】  それでは、失礼いたします。川口先生の御経歴を御紹介させていただきます。
川口先生は、岡山大学理学部を御卒業後、京都大学にて理学博士の博士号を取得され、その後、東京大学教養学部教授、東京大学総合研究博物館長、大学評価・学位授与機構評価研究部長、同機構理事等を歴任され、現在、独立行政法人大学改革支援・学位授与機構の顧問、名誉教授であり、一般社団法人専門職高等教育質保証機構の代表理事を務めておられます。
   御専門は生命科学、大学評価研究であり、大学評価に関する御著書を数多く出されていらっしゃいます。
   簡単で恐縮ですけれども、以上、御紹介とさせていただきます。
【黒田座長】  ありがとうございました。
   それでは、これから川口先生にお話をお伺いいたしますが、お話が終わりましたら、質疑応答の時間もとってありますので、そのときにまた御質問、御意見等ありましたら、よろしくお願いいたします。
   それでは、川口先生、よろしくお願いします。
【川口顧問】  おはようございます。御紹介ありがとうございました。また、本日は、この委員会でお話しさせていただく機会をいただきまして、大変光栄に存じます。どうもありがとうございました。以下、着席させていただきます。
まず最初に、白鳥室長から御紹介いただきました、この私の著書、「高等職業教育質保証の理論と実践」というのを委員の先生方には1冊、お手元に置いております。ちょっとお断りしたいんですが、私の小平のオフィスの上の階が水があふれまして、機構長と理事と私の部屋だけに水が落ちてきた。多分、我々は嫌われることをやっているから、水責めにあったんだと3人の意見は一致いたしまして、直接、ここに水が落ちたわけじゃないんですけれども、ダンボールに入っているところにちょっと水が落ちたもんですから、ひょっとして、お手元で、どこかちょっとダメージがあるかもしれませんけれども、御容赦いただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
   それから、きょうお話しいたしますことは、大体、ここのどこかに書いてある内容をお話しさせていただきますので、それもあしからず、御了承いただきたいと思います。
   それで、本日、お手元に資料1として、パワーポイントを印刷したものをお配りしておりますので、これに基づいて御説明申し上げたいと思います。
本日、お話しいたしますのは、内容的には、1枚目の下にありますように、高等教育というものの環境が相当今、変わっていますと。高等教育というのは、いわゆる大学等々、以下、専門学校も含めて、高等教育の部分が相当今、環境が変わっていますよということをお話しさせていただいた上で、質、質とよく言いますけれども、一体、質って何だろうという話をさせていただきます。
   それから、その後で、大学等の認証評価制度について簡単に御説明させていただいた上で、専修学校がどういう質保証の方向性であるであろうかという、これはかなり私見になりますけれども、お話しさせていただきまして、昨年、私のこの大学、今は改革支援・学位授与機構になりましたけれども、これ以外にもう一つ、そこにあります専門職高等教育質保証機構の代表理事を務めさせていただいておりますけれども、ここで、昨年やりました試行評価の内容を簡単に御説明申し上げたいと思います。
当初は、私、後ろの方に重きを置くのかと申し上げたら、文部科学省の方が、むしろ前半もちゃんとやれと言われましたので、前半をしゃべっていると、少し熱が入って、少し時間をオーバーするかもしれませんけれども、どうぞ御容赦いただきたいと思います。なるべく時間どおりに終わって、御質問をお受けしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
   それで、1枚めくっていただきまして、高等教育の周囲の環境というのは、当然、これは社会のパラダイム・シフトと大きく関係いたしますので、まず、その社会のパラダイム・シフトということで、20世紀というのは、私はあえて産業社会と言っております。産業革命というのは18世紀ですけれども、その後、例えばエネルギー源として石炭、その後は石油というものを使ったエネルギーで、産業が大変発達いたしました。いわゆる大量生産によって、そこから生まれてくる利益ということで、社会が非常に豊かになったということは、もう皆さん、御存じのとおりです。
  ですけれども、そこに幾つかの問題が起こってきました。それで、今は、知識社会、若しくは知識基盤社会といいますけれども、これに変わっているであろうと。
  すなわち、どういうことが起こったかというと、2番目で、例えば学問や科学というのは、御存じのように非常に大きく進歩いたしました。進歩すると同時に、私もかつてはそういう研究者でございましたけれども、私自身の反省も含めて、どちらかというと自分の分野にのめり込んでいったわけです。ですから、先端化し、かつ細分化いたしました。
   そうすると、どういう問題が起こったか。例えば、一番いい例は公害かもしれません。公害問題。私も、昔は化学をやっておりましたから、どちらかというと公害を起こしていた方かもしれません。でも、ほとんどの研究者というのが、何か公害を起こしてやろうとか、そう思ってやっている人というのは基本的にいなかったはずなんです。どんどん発展してみたら、自分たちの学問や知識というものが、逆に社会が求める価値から非常に乖離してしまう、あるいは、逆に、社会に害を及ぼすようなことが起こってしまったわけです。
   そういうことから、五、六年前からサスティナブル社会、持続可能な社会、あるいはサスティナビリティーということがよく言われるようになりました。
   それから、もう一つは、これは日本では言い出したのが東北大震災のときからです。想像困難な時代に向かって、要するに、起こることが、今まで想像できたようなことではない、想像をはるかに超えたことが起こる。そういうことが起こる。例えば、今は気象現象もそうかもしれません。そういうことが起こるわけで、そういうものに対する知、それを解決する知というのを社会が求めるようになった。
   ところが、4番目は多分、これは日本のかなり固有のものかもしれませんけれども、どちらかというと、今まではキャッチアップ型の人材というのを産業社会では求められていたんですが、上の2つのようなことが起こると、これではだめなので、フロントランナータイプがいるようになったということが起こってきたわけです。すなわち、社会が人材に期待する資質あるいは能力が変化してきた。 
   それから、こちらに企業の方がいらっしゃって、ひょっとしたら失礼なことを申し上げるかもしれませんけれども、後から簡単に御説明しますが、日本の雇用環境が変化いたしました。
   こういうこともあって、職業教育とか、それから、社会の進歩が非常に速いですから、どうしても生涯教育というものに社会の期待が上がってきたという、こういうことが起こってまいりました。
   これを一々説明しますと、これで多分、1時間とっちゃいますので、雇用環境の変化のところだけを簡単にお話しいたしたいと思います。
   20世紀までは、一般的な雇用慣行の特徴というのは、新規学卒者を一括採用して、長期雇用、パーマネントなエンプロイメントを前提として、職業に関して、企業内で教育し、訓練する。大体、こういう方向だと。学校においては、基礎的な知識、技能を身に付けさせて、職業に必要な専門的知識、技能というのは、どちらかというと企業内訓練を通じてやるんだ、あるいは、その仕事を通じて獲得していくんだというのが、多分、かつての雇用慣行だと。
   ですが、今や、いわゆる非正規雇用がどんどん増加しておりますし、そうなると、企業内教育、訓練に割く時間というのを圧迫されますし、さらに、多少、今は上向いてきたとか言っておりますけれども、経済状態が厳しくなってくると、人材養成に企業が割く時間というのはどうしても縮小します。それから、非正規雇用が増えるということは、企業内で教育、訓練を実施するというインセンティブは低下しちゃうわけです。こういうことになります。
  そういうことから、企業が人材育成を行う余裕を失っている。こういうところが、今や、いわゆる専門職高等教育というところに期待が高まってきたということが言えるんではないかと思います。
   もう一つは、いわゆるグローバル化というのをよく言われる。グローバル化というと、何か非常にいいことのような話になっちゃうんですけれども、私は、決してそうじゃないと思う。メリットは、確かにチャンスが拡大する。
  ですが、デメリットというのがあるんです。すなわち、これは先ほどの予測困難な時代というのと同様で、いわゆるグローバル化することによって不確定要素が増えます。ということはリスクが増えるんです。これは大変なデメリットのはずです。すなわち、どういうことかというと、そういうグローバルに関係する国だ、社会だ、あるいは地域というものは、あるいは人間も増えますから、これまで想像もつかなかったような時代が起こる可能性というのが、もうどんどん上がっているわけです。
   かつ、その上で、そうなると、そのリスクをどう最小化するかというのが課題になってきます。リスクが顕在化したときの対処の仕方というのが問われるようになる。ですから、産業社会のように、ある程度、決まった路線の上に乗って走るというわけにはいかなくなってしまったということです。
  ですから、そういうことから、組織の柔軟性というのが求められるわけで、そうじゃないとグローバル化を生き抜けない。すなわちリスクに柔軟に対応できる人材というのが求められるようになったと。これが、私は今のグローバル社会の大きな特徴だと思います。こういう人材が必要になってきた。けれども、例えばこうやれば全部解決するという答えは残念ながらないんです。そういう社会であるということをまず御理解いただきたい。
   その上で、教育という面のパラダイムというのが、1つ、大きく変わったところがあります。これは昔から当然といえば当然なんですけれども、いわゆる教育パラダイムから学習パラダイム。すなわち、2番目も同様です。教員の視点に立った教育から学生の視点に立った学習ということをいう。
こういう席で、私、いつも話をするんですけれども、かつて私が東京大学におりましたときには、幸いなことに、ちょっと言い方がきつ過ぎるかもしれないけれども、先生が勝手に教えていればよかった。自分はこんな立派な講義をしているんだ、どうだと言って、済んでいたんです。けれども、幾ら先生が立派で、立派な講義をしても、学生は寝ているかもしれない。今や、問題は、学生がちゃんとどれだけの学習をして、どれだけの能力、力を付けたかということが必要になる。すなわち何を教えるかより、学生が何ができるようになるかということに変わってきました。
  ですから、例えば授業内容や教育方法の改善というのはもちろん重要なんですけれども、これだけじゃなくて、学習の質がいいか、どれだけ向上したのか、あるいは学生の学修成果はどれだけ上がったかということが問われるようになってきました。
   ただし、じゃ、学修成果を測定するというのは意外に難しいんです。例えば、卒業率が90%だからいいんじゃないかというのは、これは学修成果じゃないんです。後で御説明しますけれども、卒業率というのは、アウトカムズじゃなくてアウトプットなんです。ですから、そういうことで、社会が求めるのはここになるんです。ノーベル賞をとった先生が講義しているからというのは、例えば10年ぐらい前まではそういう話だった。けれども、今や、いかに学生がそこから能力、技能あるいは知識、こういうものを得るかということが問われるようになってきたということでございます。
  これだけの学習環境が変化しますと、どういうことがあるかというと、これは非常に私の偏見と独断でまとめてみました。
  例えば、左側の教員中心の学習環境と学生中心の学習環境というのは、これを比べてお読みいただければお分かりいただけると思いますが、一番の問題は、例えば学生の評価というのは、一般的に多肢選択、A、B、C、Dとか、これを教員が付けていた。
   ところが、今やどうなるかというと、学生がどれだけ学習したか、いわゆる達成度評価とか、あるいはポートフォリオというのがあります。それから、パーフォマンス評価という、こういうところになってきます。
   例えばテクノロジーの利用に関しては、どちらかというとドリルを与えて、その練習をするというのが教員中心の学習環境でしたけれども、今や、どちらかというとコミュニケーションとかアクセス、あるいは協力、あるいは表現する。
   上に戻ると、じゃ、例えば、この学生は非常に勉学が進んだというのが何かというと、かつては、例えばA、B、Cとか、これが到達したということなんですけれども、どちらかというと、今は、どれだけ学生が理解したかという、この質が問われるということになります。
   ですから、もはや基本的に教員の役目も変わってきているんです。私も、もう東京大学を辞めて10年以上たって、私はいなくてよかったと今は思っています。こういうことをやるのは大変かなと。
  そういう冗談はさておき、これだけ教育というものが変わってきている。これは大学とは限りません。専門学校、専修学校でも同様だと思いますし、これはもはや高等教育に限らないのかもしれないと思います。
   ということで、きょうのテーマである高等教育の質保証のパラダイム、じゃ、これに伴って、どういうことになってくるかというと、一番上はさっき申し上げた。
   もう一つは、この下の図と関係があるので、まず、そこだけ読みますけれども、インプット、アクション、アウトプット中心の質保証から、アウトカムズ中心の質保証が必要である。これはどういう意味かというと、その下の表をごらんいただきたいと思います。
   評価あるいは質保証をやる上で、我々は、大体、高等教育機関の活動を4つに分類しています。いわゆるインプット、これは投入といいますけれども、これはもう御存じのように、例えば財政的、人的も含めた資源を指します。
   その上で、アクション。これはプロセスともいいますけれども、このインプットを動員して、特定のアウトプットを生み出すためにおける行動や作業を指します。ですから、例えばカリキュラムとか、こういうシラバスで、こんな講義をしていますというのは、このアクションあるいはプロセスに入ると思います。
   その上で、アウトプット。これは学校で、教育機関で生み出される結果を指します。一般的にアウトプットというのは、数量的な結果を示します。ですから、例えば卒業率が何%とか、それから、修業年限内で卒業率何%というのは、多分、この数字です。
  ですけれども、この数字、例えば100%はいいのかもしれませんけれども、それだけじゃ、本当に成果が上がったかというのは分からないんです。なぜかといったら、ひょっとしたら、とにかく100%にするために、出来の悪い学生もどんどん卒業させているかもしれない。ちょっと乱暴な言い方ですけれども。どれだけの人が育ったかということがどうしても必要になります。
  ですから、重要なのはアウトカムズ。すなわち対象者に対する効果や影響というものを指します。これは確かに難しいんです。例えば、一番分かりやすいのは研究なんです。私が東京大学に勤めたときの最初というのは、私はこんなに論文を出しましたよと、いっぱい論文を出して、重さで量ったわけじゃないとは思うんですけれども。
  ですけれども、何が問題かというと、これだけの論文の中で、どれだけこの研究が社会にインパクトを与えたか。ここが一番必要なんです。これがアウトカムズです。ですから、こんなにいっぱい論文を書きましたよというのはアウトプットです。この論文のうち、これだけ社会にインパクトを与えましたよというのがアウトカムズであるというふうにお考えいただきたい。
  今や、学生がどれだけの学修成果を得たかということが重要ということは、このアウトカムズが重要であるということになります。すなわち、上に戻っていきますと、そういうこともあって、今やアウトプットの時代からアウトカムズの時代に変わっています。
  それから、もう一つ、これはまた日本の1つの特徴です。日本の場合には、少なくとも大学、偏差値というのがあります。あれは入り口なんです。ところが、今まではそれ以外に余りなかった。出口管理というのは、例えば卒業、修了判定で、一体どういう人がちゃんと卒業しているか、修了しているか。こちらの方が重要なんです。
  今までは、幸か不幸か、日本の場合には偏差値という非常に明確な数字があったので、ほとんど偏差値で大学は語られますし、ひょっとしたら就職も偏差値で決まっていたという話が、うそか本当か知りませんけれども、あります。すなわち、大学の4年間でどれだけ学んだということよりも、どちらかというと入り口のところで決まっちゃっているというようなことがあったように話がございますが、そうじゃないことを期待したいと思います。
  ということで、次に、1枚めくっていただいて、社会の状況はこういうものですということを御理解していただいた上で、もう一点は、今、質という言葉がよく使われます。質という言葉、あるいは質保証という言葉が盛んに使われますけれども、意外に曖昧なままという部分がありますので、これについて、ちょっと解説をさせていただきたいと思います。
   質というのは、高等教育の周囲に質という言葉が登場したのは、そんな時代は古くありません。まあ20年ぐらい前じゃないでしょうか。ちょうど大綱化の答申が出た、あの頃じゃないですか。答申に質という言葉が登場したのは。
   ですが、質という言葉は、もっと古い歴史があるんです。一番上です。すなわち製造業なんかでは、ある決まった基準で判定する質であって、例えば、ねじの切る山というのは、JISか何かでちゃんと決まっていて、誤差、少なくとも、これだけの中に入っているという。ですから、どちらかというと、これは多様性というのが入る余地は少なくて、むしろ欠点がないということが非常に重要なんです。Zero Defectsということが非常に重要です。
  製造業はこれで大体いっていた。ところが、今、サービス業というのが入ってきたときにどういう問題が起こったかというと、欠点があるというのは、これはもう論外ですから、欠点が最小限に入るというのは、当然、必要ですが、顧客に不満がない、顧客が満足するということがファクターに入ってまいります。すなわちConsumer Satisfactionというファクターがサービス業に入ってまいります。
   高等教育というのは、WTO、The World Trade Organizationからの定義によると、教育というのは、1つのサービス業の位置に入っていますから、当然、こういう上のようなことが必要。
  ですから、こういうことから、最近は、ほとんど今、もう学生の授業評価をやっていない高等教育機関はないと思いますが、こういうものが導入されて、そういうことが必要になったというのは、こういうところから発しているんです。あるいは、学生の満足度調査とか、こういうことをやるべきであるというようなことをよく言われるのは、この辺から入っていると御理解いただければと思います。
   ということで、じゃ、高等教育の場合には、結局どういうことになるかというと、右のページの上の図でございます。すなわち学生の学習によって習得した知識や技能、能力、これは学修成果といいますけれども、この証明として授与されるものが職業資格なり学位です。ですから、結局は、高等教育の場合には、質を保証しなきゃいけないのは、このそれぞれの学校で授与された職業資格とか、あるいは学位というものがどういう質かということをちゃんと説明する必要があるし、それを保証する必要があるんだということでございます。
   それで、ちょっと視点を変えます。また話が戻りますけれども、ちょっと視点を変えさせていただいて、じゃ、質保証するためには、どういう視点があるかというのは、そこにあるような5つかなと。もちろん、もっと細かく分ければあると思いますけれども、大ざっぱに分けて、1つは卓越性。ある学校が非常に高い水準の質を持っているという、この卓越性。
   それから、第2が、さっきのことと関連していますように、関係者の満足度。関係者というのは、当然、これは教育の場合には、教育を受ける学生もあるでしょうし、それから、その学生をエンプロイした雇用者、これも当然、入ります。そういうものを含めた関係者。あるいは、今は高等教育というのは相当、国からのいろんなお金が入りますから、当然、ポリシーメーカーも関係者になるかもしれません。ですから、こういう満足度。
  それと、もう一つは基準に対する適合性。基準というのは、例えば設置基準です。設置基準に適合しているかどうか。でも、これは多分、最低基準で、これを満たしていないようだったら論外かもしれません。
   それから、目的というのは、学校が持っている目的に適合しています。
   あるいは、学校あるいは機関が立てている目標をどのくらい達成しているか。こういうことがある。
   下の3つというのは、私はMinimum Requirementだと思います。今必要なのは、卓越性あるいは関係者の満足度、上の2つです。こういうことが質保証としては、一番、これが重要な点で、特に社会はここを求めます。例えば設置基準を満たしていないというのは、これはもう、ちょっと論外であって、社会はむしろ卓越性あるいは関係者の満足度というのを求めるんじゃないかなと思います。
   ということで、そういうことも含めると、質保証の最重要課題というのは、私は学修成果だと思います。すなわち、これは日本の場合は教育という言葉が非常によく使われる。Education。ですけれども、英語でいくと、Teaching and Learningというんです。ですから、これはまさに教員の立場からの言葉で教授。それから、学生の立場からの学習。Learning。Teaching and Learningという言葉がよく使われて、今、重要なのは、学生のLearning Outcomesであると。これを社会にちゃんと明示する。
   もう大学評価を始めて十数年になりますけれども、最初にこのお話をしたら、ある大学の学長の先生から、そんなことを言ったって、学修成果なんて、例えば60ぐらいにならんと分からんじゃないかと言われました。確かにそうかもしれません。確かにノーベル賞受賞なんていうのは、今度、受賞する大隅君、私、いつも親しくしているもので、言っちゃいますけれども、彼は私より四、五歳若いぐらいですから、もう60ですね。
   ですけれども、そういう最後のところじゃなくて、学校は、大学は、そこの機関に行ったことによって期待できる学修成果、Expected、あるいはintended、Learning Outcomesをまずちゃんと学校としては明示してください。その上で、その学修成果をちゃんと達成しているかどうかを定期的に分析してください。
   この中には、今後は、今は卒業したときのことを言いますけれども、当然、これからは10年後、20年後に果たしてどうだったか。例えばオーストラリアあたりは、そういう調査を既にガバメントとしてやっておりますし、そういうことも、これからは求められるとは思いますが、とにかく申し上げたいことは、重要なのはLearning Outcomesであるということ。
   そういうことを前提に、大学の認証評価制度について簡単にお話しさせていただきたいと思います。右側の上の部分。これはもう随分前に、大学評価を始めるときに作ったスライドですから、もう大分、すり切れているかもしれませんけれども、大学評価というのは一体何だろうと。十何年前のものをまとめてみました。
  すなわち、当時は、日本の大学というのは入り口と出口のところのみの評価。かつ、さっき申し上げたように、入り口というのが非常に強い。ですから、偏差値という非常に明確な数字があったんです。ですけれども、これは基本的には入学試験の出来です。難易度です。それから、就職ランキングというのがどのくらい明確かどうかわかりませんけれども、こういうものもありました。
  ですが、これは結局、真ん中の、入り口から入って出口の間の学習に関しては、ほとんど何もないです。すなわち何を教えるのか。あるいは、その教育水準は一体どうなのか。あるいは、学修成果はどうなのか。ここが必要であろうと。
  すなわち、これは在学中に得られた付加価値、ちょっと乱暴な言葉を使いましたけれども、在学中に得られた知識、学力、能力あるいは技能、こういうものは一体何なんでしょうか。それから、どのような教育が行われ、その水準は一体何でしょうか。あるいは、その成果は何でしょうか。ここが行われなくてはいけない。
  そこまではあれですけれども、じゃ、大学評価をおまえらはちゃんとやれているのかと言われると、ううんと考えざるを得ない部分もなくはありませんけれども、そういうことで大学評価を始めたつもりでございます。
  専修学校の話が後で出てまいりますので、大学評価の歴史的経過というのをそこにまとめております。1991年に大学設置基準の大綱化ということが起こりました。この頃、私も駒場におりまして、残念なことに、そのときに評議員に選出されちゃったものですから、仕方ない、東京大学の1、2年生のカリキュラム改革に取り組まざるを得なくて、どうも、その辺から私の人生が狂って、こんなことになった。それまでは、生命科学で、Biological Scienceのことをやって、ノーベル賞をとりたかったんですけれども、残念ながら、当時、人事で呼んできた大隅君がとってしまいまして、私の方には回ってこなかった。ストックホルムに行く暇がなかなかないものですから。
  ということはさておき、大綱化というのは非常に言われましたけれども、そのときにもう一つ、大学みずから、ちゃんと自己点検・評価の努力義務をしてくださいということが91年に入っているんです。点検・評価という言葉が大学の周辺に登場したのは、このときだと思います。1991年です。
  その後、これは努力義務だったんですけれども、7年後にこの自己点検・評価の実施義務になりました。と同時に、評価結果は公表義務になりましたし、外部評価、これは後で、外部評価と自己点検がどう違うかというのは御説明申し上げますけれども、一応、外部評価の努力義務というのが98年。
  その後、2年後に、私がおります大学評価・学位授与機構が創設されました。2000年です。ここのところで大学評価を始めて、その後、学校教育法により、認証評価制度というのが導入されたのが2003年です。ちょっとこの専修学校と関係があるので、専門職大学院が発足したのも、この同じ年であるということだけを付け加えてあります。
  大学の第三者評価にある大学評価制度というのは、こういう形になっております。すなわち2種類の認証評価があります。1つは機関別認証評価。もう一つが専門職大学院を対象とした分野別認証評価。
  機関別認証評価というのは、基本的には機関全体を7年ごとに評価を実施します。かつ、これは大学じゃなくて、評価機関の方が定めた基準方法によって評価を実施します。
  専門職大学院、例えば法科大学院をはじめビジネススクールなどがありますけれども、こういうところは、これとは別に分野別認証評価あるいは専門分野別認証評価というのをやることが義務付けられています。これは専門職大学院が対象です。これが5年ごとに評価を実施する。3番目の基準は評価機関が定めるというのは、これは変わりません。
  今、いろんな議論がされているうちで、機関別認証評価と分野別が何か対立概念のごとく話されるんですけれども、大学の場合に機関別認証評価というのは、機関全体を見ます。ですから、例えば東京大学の例で、文学部、医学部、11学部12研究科、それで研究所が20ぐらいありますから、それ全部をやるということです。ですから、全部に共通したことだけ見ますよという意味じゃなくて、さっき申し上げた学修成果はそれぞれ見なければならんわけです。ですけれども、例えば医学部と文学部の学修成果というのは、別の見方をしなきゃ、とてもじゃありません。同じには見られません。そういうもの。
  専門職大学院認証評価というのは、これはここだけの教育というあれですけれども、ここの専門職大学院の、いわゆるその大学院自身の経営の問題とか何かはこっちで評価するわけです。
  ですから、どういうわけか7年と5年と、また違うんです。さらに事態が複雑になるのは、今野先生もいらっしゃる、国立大学法人、あるいは共同利用機関等々。こういうものは、この国立大学法人評価というのを、これは6年ごとなんです。ちょうど今、2回目を私どもはやっておりまして、何だかこれのために大変な思いをしておりますけれども、そういうこともあって、恨まれて水が落ちてきたのかなと思ったんですけれども、こういうこと。
  認証評価以外に分野別というのは、そこにあるように、幾つかあります。既に医学。医学は、これはむしろ世界的なあれが必要になっていて、今は関係者は大変な思いをされているようですけれども、これとか、薬学。これは6年制になった薬学の部分なわけです。それから、工学じゃJABEEというのがございます。などなど、こういうものもありますけれども、日本の大学の場合には機関別認証評価と専門分野別認証評価の2つあるんだということを御記憶いただければと思います。
さて、この認証評価の目的は、ここにありますように3つあります。1つは、質を保証するということ。第2が質の改善、向上に資する。その結果を利用して、大学の方で、あるいは高等専門学校、短期大学で、改善に資してくださいということ。それから、3番目が説明責任を果たすということです。
  かつ、今の流れというのは、大学自身も当然、これは情報公開というのがあって、ちゃんと情報公開しなきゃいけないんですけれども、その大学が発信する情報だけじゃなくて、第三者評価機関が質を保証した結果もちゃんと社会に公表しなきゃいけないというのが今の制度的に、これも国際的にそうなっているということを御理解いただきたいと思います。
  細かい説明は別として、機関別認証評価がどのくらい成果があったかということを私ども大学評価・学位授与機構では、1サイクル終わった。ちょうど7年終わった後にアンケート調査等々を行いました。その幾つかのポイントだけをまとめた。細かい報告書はホームページのところにありますので、是非ごらんいただきたいと思います。
  まず、さっき申し上げたように、目的が3つあったわけですから、この目的をどれだけ達成しているかということ。これをごらんいただきますと、例えば質の保証と改善の促進と社会の理解、これをごらんいただきますと、非常に結果が明確で、質の保証と改善の促進は相当成果があった。けれども、社会のAccountability、こういうアンケートというのは、評価をした大学評価・学位授与機構がやっていますから、当然、Yes Tendencyでやります。対象機関は、余り変なことを書くと、次にいじめられるかもしれないと思っているかもしれませんから、Yes Tendencyがあると思って、みんなが割り引いて、だとすると、この3番目というのは、これからの問題かなという気がいたします。上の2つから見ると、50%がいいとはとても思えないです。ということが出ております。
  例えば、活用の2番目です。改善の促進ということに関しては、じゃ、例えば評価で指摘されたことがどうだったかということをアンケートをとった。これを見ても御理解いただけると思います。例えば、非常に参考になったから参考になったまでが90%を超えているんです。その下が、今度は、じゃ、改善の取組にどのくらい取り組んでいますかという。これは、認証評価をやって、もうすぐ翌年にアンケートをとっている学校も当然ありますから、7年終わったところでアンケートをとっていますから、全てが改善、実施済みとはなりませんけれども、実施済みと改善予定を含めると90%近い。ですから、さっき申し上げたように、質の保証と改善の促進に関しては、かなり成果があったんだろうと思います。
  よく評価、大変だ、大変だと言われたので、評価に費やした作業量はどのくらいでしたかとお聞きしたら、そのとおりで、例えば自己評価書を作るということに関しては、大変だった、とても大きかった。これはちょうど、さっきと反対です。非常に負担が多かったというのが90%を超えております。例えば、そのほかに訪問調査あるいは当日とありますけれども、これはまあ、ある程度、負担だったとはいえ、ただ、一番大きいのは自己評価書を作成するということであるということが、これではっきりいたしました。
  じゃ、例えば、そのコストパフォーマンスはどうだろうか。これは答える方も難しいと思うんですけれども、作業量に費やした労力や、あるいは、例えば改善に対するSuggestionなどなども含めて、コストパフォーマンスはどうでしょうかというと、まあまあの答えなんです。これはちょっとでき過ぎかなという気がするんですけれども。確かに自己評価は大変だったけれども、まあコストパフォーマンスは、ちょっとこれは、少しでき過ぎだと私は思うんですが、ちょっと皆さん、遠慮をしたかなという気がいたしますけれども、ここまで考えると、まあまあ、ある意味じゃ、成果はあったということが言えるんじゃないかと思います。
  例えば、記述のところを拾ってみますと、1枚めくっていただいて、認証評価の効果、影響というのは、教育研究活動について全般的に把握できた。それから、教育研究活動等の今後の課題を把握できた。改善を促進した。こういうことです。大変ありがたいんですけれども、全般的に把握が、認証評価をしなきゃ、しなかったのかなと考えると、ちょっと問題のような気もしなくもないですけれども、認証評価がそういう、特に機関別ですから、全体です。どちらかというと、小規模な大学はいざ知らず、例えば東京大学のように、先ほど申し上げたような大規模ですと、ほとんど違う学部のことは分かりません。そういうようなことも、ある程度、把握できたということも含めて、確かに成果はあったかなと思います。
  私なりに、先ほど何でこういうふうになるのか、特にAccountabilityに関して、かなり問題があるかというのは、こういうふうにまとめた。要するに、説明責任を果たすということと、大学が改善をするということと、この機能は意外に両立は難しいのかなという気がいたしました。
  もう一つは、今までの認証評価というのは、先ほどのインプット、アクション、アウトプット、アウトカムズ、4つに分類しましたけれども、次第に今、改善はしていますけれども、インプットとプロセスというのが、これに関係する基準が非常に多くて、学習に関するアウトプットの測定やアウトカムズの分析はこれからの問題で、これは重要視しなきゃいけないだろうと。
  それから、もう一つ、どうしても認証評価は、どちらかというと最低基準の指標が多いんです。卓越性の基準というのは、さっき申し上げたとおり、社会は多分、こっちを求めるだろう。こういうふうにしなきゃいけない。でも、なかなか卓越性をやろうとすると、例えばランキングにつながるだとか、いろんな問題があって、なかなか踏み出せないというのが現実かもしれませんが、社会はこういうものを求めるだろうということで、ここにまとめさせていただきました。
  ということを前提で、専修学校の質保証の方向性ということを簡単にまとめさせていただきました。
  もう一つ、これは先ほどの大学の歴史、18ページと比べていただくとよく分かると思いますけれども、時代が違うだけ、年代が違うだけで、ほとんど同じような流れです。すなわち、まず自己点検評価公表の努力義務というのが2002年に言われて、自己評価の実施、結果公表の義務化というのが2007年。その上で、学校関係者評価、これは大学にはないあれが、学校関係者評価というのがあって、これが2007年の努力義務になっています。この後、2010年に文部科学省の方で、第三者評価の必要性に言及された。ただし、この内容的には、これは学校関係者評価の内容をかなり丁寧に説明してあるので、第三者評価がどうするということは余り考えませんけれども、この学校評価ガイドライン、2010年の改訂で、かなり詳しく述べられています。その後、2014年に御存じのとおり、職業実践専門課程が認定されましたけれども、この認定のときに学校関係者評価をやっているということが認定要件になっていますから、この職業実践専門課程にとっては、この学校関係者評価というのは努力義務じゃなくて、実施義務にもう既になっているということが言えるんじゃないかと思います。
  比べていただきますと、時代がちょっとずれているだけで、ほとんど同じように進んでおりますので、これは専修学校についても、当然、これは単に国内的な問題じゃなくて、海外の状況も考えて、必要であろうと。
  専修学校の1つの特徴は、次の31番にありますように、自己評価というのをやって、しかも学校関係者評価というのをやるという、これが大学とは違うところです。その上で第三者評価をやる。これはどこが違うかというと、学校関係者評価というのは学外の方なんですが、実質的には、こんな項目でこういうふうにやりますとデザインするのは学校自身なんです。学校関係者。ですから、私どもの評価ということを語るときには、これは自己評価の中の一部だというふうに考えている。その上で第三者評価が必要になる。
  ですから、第三者評価というのは、学校から独立した第三者が、例えば大学評価・学位授与機構のような第三者評価が基準を作ったりして、そういう立場から評価をやるのが第三者評価です。
  1枚戻っていただいて、先ほどの学校評価ガイドラインというのは、かなり学校関係者評価に関しては、非常に細かく、いろんなやるべき項目というのは書かれております。本日の資料にも後ろの方にあるんですか、今、コンソーシアムでいろんな出ていますけれども、ちょっと私の個人的考えを言います。このように三層構造になっていますから、学校関係者評価でやるのと同じようなことを第三者評価でやるというのは、私は無駄だと思います。双方にとって、学校にとっても、評価をする方にとっても。もちろん学校関係者評価をちゃんとやっていますねということは、第三者評価で見なければならんですけれども、同じ項目を全部チェックするなんていう必要はないと私は思います。ですから、専修学校の評価を考えるとき、この三層構造があるんだという前提で第三者評価を考えるのが一番いいんではないかなと私は思います。
  また話、少しレベルが戻りますけれども、教育の質保証というのは、我が国では小学校、中学校、高等学校というのは学習指導要領というのがあって、ある程度、教育内容の一定の質が担保されているということになります。大学については、今、設置基準や設置審査等で、ただし、設置審査、設置基準というのは、どちらかというと設置する前ですから、成果は見られませんので、インプットとかプロセスを明確にして、ですから、事前規制です。事前規制した上で、この質保証、事後チェックということで、第三者評価をやろうという構造になっています。
  ですから、専修学校というのは高等教育ですから、かなりアナロジーはあるんでしょうけれども、専修学校というのは実践的な職業教育を目的とするという大きな目的がありますので、職業に必要な知識、技能、能力、態度、これがまさにアウトカムズですが、これにかかわる質保証という視点を踏まえた評価が必要なんじゃないかなと考えております。
  また、質保証という言葉。質保証というのは、非常に気軽に使うんですけれども、一般的に質保証というのは、ステークホルダーに対して、約束どおりの財やサービスが提供されていることを証明、説明する行為を質保証といいます。時々、質保証の証の字が安全保障の障になるんですけれども、これは間違いです。これは製品に引っ付いている保証書の保証と同じで、こちらの「ごんべん」に「正」じゃなきゃいけないはずでございます。
  ですから、ちゃんと約束された財やサービスが提供されているということを証明、説明する。当然、学校によって、その約束しているサービス、財というのは違うわけですから、そういう学校が定めている、決めているものに即して考えなきゃならんということも当然でございます。ということが下に書いてあります。
  したがって、専修学校に求められる質保証というのはどういうことかというと、まず、学校として養成しようとしている人材像、あるいは期待できる学修成果をまずちゃんと学校には明示してください。それで、その目的とかも、これは言葉は目的、目標という言葉じゃなくてもいいんです。例えば建学の精神とか、何でもいいんですけれども、ちゃんとそういう人材像や学修成果を明示した上で、それがどの程度、達成しているかを定期的にちゃんと評価をしてください。
  そこをやるのは学校自身なんです。決して第三者機関じゃありません。ですから、学校の質をみずから保証するということが、私どもは内部質保証システムといいますけれども、こういうものを構築して、それを十分機能させるということが必要でしょうと。
  それから、この評価結果も含めて、積極的な情報提供を行いましょうと。
  それから、大学の場合にはもう、今野先生、御存じのように、公開すべき情報というのは法律で決まっていて、かなり細かいことまで決まっているんですけれども、ほとんどそれが公開されて、それを全部集めて、私どものところでポートレートというものを既に作成しておりますけれども、専修学校に関してはまだまだと。公開されている情報も学校によって大分違いがあるとか、こういう問題もあります。
  それで、第三者評価では、どちらかというと、先ほど申し上げたように、学校関係者評価というのがあって、三層構造になっていますから、第三者質保証では、どちらかというと内部質保証システムがちゃんと機能しているのか。その質の改善、向上が絶えず図られているのか。
  ただし、学修成果というのは、第三者がちゃんとその質保証をするということは必要。これは社会に向かってです。多分、この学校の内部質保証はうまく回っていますよというだけじゃなくて、その学修成果をちゃんと発信するということは重要じゃないかなと思います。
  これは次のページ、いろんなレベルのことが混在しています。ここに職業実践専門課程の認定要件というのが書いてございますが、これはもう皆様、御存じのとおりでございますが、そこにありますように、一番下、学校の自己評価に加えて、企業等と連携して、学校関係者評価と情報公開を実施していることというのがあります。ただ、専門学校の場合には、どういう項目を公表しなきゃいけないというところまでは、大学ほどには明確になっていない部分があって、その辺もあって、少し学校間の格差があるのかもしれませんが、こういうふうになっております。
  先ほど申し上げましたように、この内部質保証システムというのは、ちょっと何か次から次と新しい言葉を使っちゃうので、いつも定義していかないと怒られちゃうので、一応、内部質保証システムというのは、このように定義している。要するに、内部質保証を継続して行うための学内の方針、手続、体制、そういう仕組みをちゃんと作っておいてください。それと、教育の質保証の責任は、一義的に学校自身ですということです。自分たちがちゃんと責任を持ってやってください。
  すなわち、その内容は、それぞれそこで提供されている教育プログラムを提供する教員個人や、あるいは部局みずからがその質を保証するという責任を持っていますし、学校全体として、その内部で提供する質保証プログラムの質保証を行う責任というのがあるでしょうと。
  ということは、教育内容や方法を創造的に進化、発展させ、継続的に質の向上を促進することが必要で、これを私は質の文化、Quality Culture若しくは質保証文化、Quality Assurance、QACultureという呼び名で呼んでおります。
  かつて私が大学評価を始めるときに、評価文化という言葉を作って、大分はやったようですけれども、だんだん、もう使い古したので、最近は質の文化という言葉を作りまして、Quality Cultureという言葉で、是非こういうことが必要でしょうと。
  そうすると、今はこういうふうに第一義的には内部でやるわけですから、第三者質保証機関がどういう役割を持っているかということは、繰り返しですけれども、いわゆるTeaching and Learningの質水準については、最終的責任はそれぞれの学校自身が持っています。ですが、第三者質保証機関は、次のようなあれでして、改善に資する必要がある。すなわち専修学校に対して第三者機関をちゃんと実行すると。専修学校は、期待されている事項を果たして満たしているのかどうかということをちゃんと明確にする。
  ですから、例えば目的、目標に掲げている学修成果がどれだけ上がっているかということがちゃんと実施され、あるいは、それがどの程度、達成されているかということは、ちゃんと第三者質保証機関として見る必要があるであろうと。というようなことでございます。
  その上で、次からは各論になりますので、簡単に申し上げて、最後のまとめのところに持っていきたいと思いますが、この専門職質保証機構の試行評価ということを昨年、文部科学省の方から補助金をいただきまして、専門職高等教育質保証機構の方で、これはコンソーシアムごとでやりましたので、この場合には美容分野に限って実施いたしました。
  1枚めくっていただきますと、私どもは、ここにありますように評価基準、それから自己評価実施要項、それから評価実施手引書というのを作成しました。2番目までは、もうお分かりです。評価実施手引書というのは、これは私どもの方である第三者評価者のマニュアルです。こういうもの。これは基本的には、本当は3番目は公表しなくてもいいのかもしれない。評価者が持っていればいいものなのかもしれませんけれども、私どもは、全部これを公表しました。学校の方に向いては、どうぞ、敵の手の内もよく御理解された上で、自己評価書をお書きくださいと申し上げて、公表いたしました。
  試行評価の目的というのは、これは先ほどの大学と同様でございます。第1が質、この場合には、大学の場合には教育、研究になっていましたけれども、専修学校は、今なら教育でいいだろうと。教育活動の質を保証する。それから、質の改善、向上に資する。それから、説明責任を果たす。こういうことを掲げて、基本方針としては、右の上のようなことを掲げて行いました。
  評価基準は、先ほど申し上げましたように、学校関係者評価というのがもう既に認定されているわけですから、一応、学校関係者評価をやっているということが前提の上で、評価基準はこのように絞りました。学校関係者評価で細かくやっていることを全部フォローするということはやっておりません。フォローしないという意味じゃありません。ここに入っていませんけれども、学校関係者評価はちゃんとやっていますねということをチェックして、その報告書は全部、目を通しましたけれども、その項目を全部ここに上げるということはしておりません。
  基準1から5で、ポイントは、基準2。基準2は専修学校設置基準、それから、美容の場合には、厚生労働省に美容師養成施設指定規則というのがあって、これの適合性がある。ですから、これは分野が変わったら、ここを変えればいいはずなんです。現に、昨年、試行でやったんですけれども、ほかの分野で是非やってほしいという御依頼がありましたので、そこはここの分野が違うので、ちょっとここを変えました。あるいは、資格試験等々がなければ、これはなくなっちゃうかもしれません。
  それから、職業実践専門課程の選定要件の適合性で、学校関係者評価はここで見ております。その上で、内部質保証システムがちゃんと動いているか。あるいは、その学修成果が上がっているか。こういう5項目に絞ってやりました。
  評価体制としては、大変ありがたいことに、6校、やってほしいというところがありましたので、評価者は10名で、2チームに分けて、1チームが3校を担当。お1人で1つというよりも、1人の方が複数は見てくださいということで、1チームが3校を担当していただくようにいたしました。
  評価委員会の構成は、そこにありますように、美容ですから、美容業界あるいは美容組合の関係者、それから、特に高等学校の進路指導の先生。かつ進路指導もやっていられる方と、これは今申し上げた厚生労働省の資格の問題がかかわりますから、この関係性。あとは大学評価関係者を入れて行いました。
  スケジュールを見ていただきますと、15年ですから、もう去年です。去年の2月に、まずこの説明会を行って、申請を受けて、6校のところが申請していただいた。対象学校に対しては、全部、説明を、これは東京で1回やって、それぞれの学校に全部行って、御説明いたしました。
  さらに、8月には、評価者10名の方に、全員、研修を1日がかりでやりました。その上で、自己評価書をいただいて、訪問調査を行い、その訪問調査と書面調査の結果をまとめて、学校に通知した上で、それに対する意見を学校からいただいて、その上で公表いたしました。このプロセスは、ほとんど大学評価と同じプロセス。
  1点だけ。今年度初めに、一応、対象校にアンケートをとりました。ただ、6校で、このアンケートを集計するときに、まだ1校が間に合わなかったので、足すと5校にしかなりませんけれども、例えば、対象校に対して、3つの目的がどうだったかというのは、これはパーセントを出すのは意味がないと思って、数だけになっております。それから、評価者、機構の評価者です。評価者に関して、こういうふうにして、こういう結果が出ておりますと。かなり成果はあったんじゃないかと自負しております。
  ということで、もうそろそろ時間になりますので、まとめをさせていただきたいと思います。
  結局、専修学校も含めて、高等教育による質保証システムというのは、内部質保証と。第三者、あるいは、これは外部質保証、External Quality Assuranceと言うこともありますけれども、この質保証というのが必要でしょうと。第三者質保証というのが、結構、公的な質保証システムとして機能している。
  内部質保証と、今申し上げましたように、高等教育の質の維持、向上、あるいは職業資格、学位の水準の保証、これはまず、学校自身がやるというのが第一義的に必要なんです。その上で、そのために学校は、自己点検評価のための自主的な評価基準や項目を適切に運用するということが必要。ただ、ある程度、学校はそれぞれ、自分たちの好きなように評価基準を作っても、社会が見ても分からんようじゃ意味がありませんから、ある程度は第三者評価システムを参考に作っていただく必要があると思います。
  非常に卑近な例で申し訳ありません。大学の場合に、こういう例があるんです。いろんな資料が公開されているんです。ですけれども、例えば留年率というのを、例えば東京大学ですと、御存じのように駒場があって、それから本郷の専門学部に行きますから、留年するのは2年生が多いんです。1割ぐらい、進学できないのがおります。ところが、別の大学に行くと、4年生にわっと留年生がいるんです。それはどういうことかというと、4年生まで何もしないで、卒業証をとるのは単位が足りない、大変だと。ですから、例えば留年率1つ見ても、大学の授業によって、随分、数字が違っちゃうわけです。意味が。
  というようなことなどなどがありますから、ちゃんとある程度、基本的には共通の指針でやらなければ、社会が見ても分からないんです。この数字がどういう意味を持っているか。そういう意味で、確かに自主的に評価基準や評価項目を定めるということは必要ですけれども、ある程度、社会も理解できるということも必要であるということも、あえてここで申し添えたいと思います。
  それで、その上で、専修学校の第三者質保証システムでどうあるべきかというのは、まず第一は、専修学校設置基準、あるいは先ほど申し上げたように、それとは違う、いろんな資格試験なんかに関係するところがあれば、慣例法令、それから、職業実践専門課程の認定要件がありますから、これに適合しているということを認定するというのが、まず重要です。ただし、これは先ほど申し上げたように、Minimum Requirementです。これでいいというわけじゃない。その上で、学校、あるいは学科、家庭かもしれませんが、それぞれの目的、目標が目標としている学修成果がちゃんと達成されているかどうかということを、内部質保証もしなければならないでしょうし、第三者質保証もしなければならないでしょうと。
  それから、学校が機関内部の質保証体制が整備されて、しかもそれがちゃんと機能して、ちゃんと改善、向上につながっているということがやっぱり必要。もちろん、この中には、当然、その学修成果のみならず、組織の改編とか経理とか、そういう問題も加わるかもしれませんけれども、こういうことになる。一番重要なのは学修成果だということであって、学修成果と一定の水準、基準をということを含めて、私は、これを学修成果を基盤に置いた質保証と申し上げております。
  もう一つ、学校の方に申し上げているのは、それぞれの学校でQuality Literacy、質リテラシーということをちゃんと確立してくださいということを申し上げています。質リテラシーも、多分、私が作っちゃった言葉ですけれども、学校には恒常的に質の改善、向上を図る能力というのが求められます。リテラシーというのは、本来の意味は読み書き能力という意味が多分あったと思いますけれども、多分、今はもっと広い意味で使われて、その分野でいろいろ必要とする知識とか、そういうもの。例えば情報リテラシーという言葉がありますね。ですから、リテラシーというのは、情報リテラシーというのを使って、私はQuality Literacyというのを作ってしまいました。
  すなわち、この2つの側面というのは、1つは組織文化的側面。すなわち学内でそういう質に関する価値とか信念、期待、こういうことを組織内でちゃんと共有している。こういう意識を持っているということが、共通認識を持つというのが重要である。それと、もう一つは組織運営的側面として、質を向上し、その構成員の協働体制で、そういうプロセスを有する。だから、運営組織がちゃんとある。こういうことが必要でしょうと。
  学校というのは、さっき申し上げましたように、質の文化、Quality Culture、あるいはQuality Assurance Culture、QACultureとも言いますけれども、こういうものは今や必要ありますよということ。
  何のための学校評価かというのは、評価というのは、質保証するための手段です。ですから、基本的には学校における諸活動の質改善、向上あるいは質保証というのが目的であって、評価はこれを行うための手段です。ですから、評価そのものが目的化しちゃいけませんよということをここで申し上げているわけです。評価のための評価であっては困るということをここで申し上げる。
  今、これから重要なのは、学校というのは、Isolateした島じゃなくて、ちゃんと社会の中で。決して、国からお金が来る、来ないという問題じゃないと私は思うんです。学校というのは、高等教育機関というのは、これから社会を背負う若い人たちをちゃんと育てるわけで、どういう人をちゃんと育てるかということを国公私立を問わず、そういうことをちゃんと説明する責任は持っていると私は思いますので、そういうことを果たす必要がある。
  ということで、ほぼ最後まで来ましたけれども、次はQuality Assuranceで、質保証という言葉を英語で書いちゃいました。これは、その副題、Trust and Recognition、これは4年ほど前かな、EUでQuality Assuranceというシンポジウムをやりたいから、是非協力してくれと言われて、デザインのところから協力させていただいたときに言われたのをそのまま持ってきました。Trust and Recognitionという副題を付けました。この副題が日本語にならないもので、このままにしています。
  すなわちTrustというのは、2つの意味があるんです。1つは信頼、信用という言葉。当然、この中にはPublic Trust、あるいは評価をする対象学校と評価機関という相互の信頼というのが必要でしょう。それから、Trustの中には、信頼によって生じる責任とか義務というような意味がちゃんとあるんです。ですから、そういうものだと。ですから、これは日本語にできなかったというのはそういう理由なんです。この2番目だって重要なんですよということを申し上げたかった。
  それから、Recognitionも非常に広い意味で、例えば人や物をそういうものだと認識する、識別する、これはいわゆる個性化につながります。それから、例えば研究業績なんかをちゃんと評価する称賛ということがあります。これはEvaluationと英語でいいます。英語では、ちゃんと別の言葉があるんですけれども、日本語じゃ、何となく、みんな一緒になっちゃうんです。 
  それから、例えば組織とか文書なんかを法的に認可するとか承諾、承認するということは、これは英語でいえばAccreditationという。ですが、Recognitionという中には、この言葉がみんな一緒に入っているんです。
  ですから、Quality Assuranceは、Trust and Recognitionということが副題にあるようなことをちゃんとやるというのがQuality Assuranceですよということで、これは日本語にならなかったもので、あえてこのままにいたしました。
  ということで、最後の締めくくりといたしまして、繰り返しですけれども、評価機関と学校のMutual Trust、相互理解が、いずれこれは社会のPublic Trustにならなきゃいけないであろうと。ですから、学校の自己点検評価及び学校関係者の積み上げをやった上で、踏まえた第三者評価でなければならないし、学校みずからの内部質保証と第三者の質保証が社会の信頼につながるんですと。質の中で最も重要なのは、これは何遍も繰り返しになりますけれども、学習者が身に付けた知識、技能、能力、態度などでございますよということ。
  最後に、参考文献として幾つか羅列させていただきました。お手元にお配りしているのが一番最後、一番新しいもので、上の6つは大学評価・学位授与機構で、毎年、ちょっと間は空いていますけれども、書いたものを一応、挙げてあります。
  それから、最後に、先ほど申し上げましたように、昨年の試行は文部科学省からの補助金で実行させていただきました。今、28年も補助金をいただいておりまして、今はどちらかというと、先ほどのスライドナンバーの39ページに挙げました3つの、私どもは3点セットと言っているんですけれども、これを今、英訳がほぼ終わりましたので、これを使って、どちらかというと、むしろ国際連携の方に少し力を入れていきたいと思っております。
  雑駁な話をしましたけれども、御清聴どうもありがとうございました。(拍手)
【黒田座長】  川口先生、どうもありがとうございました。大変緻密な説明をいただきました。私自身も大学評価をやっているものですから、身に染みることが結構ありました。
  それでは、ここで皆さん方から、川口先生の今の御講演に対して、御質問、御意見ございましたら、どなたからでも結構ですが、ありませんでしょうか。
【小杉委員】  じゃ、済みません。
【黒田座長】  小杉委員、どうぞ。
【小杉委員】  どうもありがとうございました。大変勉強になりました。
その上で、ちょっとよく分からなかったところで質問なんですが、13ページのところに、保証すべきは職業資格、学位の質というふうにおっしゃっていますね。大学の場合には、学位の質という部分で、もうちょっと、その質をきちんと保証するように第三者評価が必要だという、そういうつながりをよく……。
【川口顧問】  そうしなきゃ困るというふうに私は思います。
【小杉委員】  というのはよく分かったんですが、職業資格については、専門学校の場合に、まさに美容なんかのように、職業資格というのが、ある意味では、既に質の保証になっているのではないかと思うんですが、それとの関係はどうなるんでしょうか。
【川口顧問】  まず、学位のことも御質問いただいたので、学位という問題は、本来であれば、ここにありますように学修成果の形は学位ですから、学位はちゃんとやっている。ところが、日本ではちょっと問題があって、物すごい学位の数がある。800ぐらいあるとかないとか。
  要するに、今、各学校、学科かもしれない、そういうところで学位名を付けるようになっちゃったんです。そうすると、私は、学位というのはそれを見て、もちろんそれだけで全て分からなくても、ああ、こういう能力、知識を持っている人だというのは、本当は社会が分からなきゃいけないはずなんですけれども、多分、分からないと思います。その問題があって、その問題はちょっとこの本にも書きました。
  最終的には学位、ああ、なるほど。ヨーロッパの場合は、ディプロマサプリメントというので、例えば何とか博士、何とか修士があって、それで、例えばこんなことをやったというのを説明するA4、1枚ぐらいがちゃんと付いているんです。日本では、そういうものがこれから必要かなと思います。ですけれども、学修成果を指定としたら、学位のところの質保証ではないだろうかというのがある。
  職業資格に関しては、おっしゃるとおりの部分と、それから、こんな職業資格を持っていますよというだけでは、学修成果を説明することには十分じゃないかもしれない。
  例えば、これは関係者がおっしゃったので、言っていいと思う。美容の話をしているときに、まさに、さっき厚生労働省の例がありますね。あるいは資格。どうも、あの世界では、その成績が優秀な人にお客さんが付くとは限らないんだそうです。
  ですから、学修成果としたら、確かにこういう職業資格を通りました、あるいは、こういう試験を通りましたというのは、ある意味じゃ、1つの成果です。ですけれども、それでは不十分だと私は思います。さっき申し上げたディプロマサプリメントに類するものというのは難しいかもしれない。何かそういうものは、当然、必要でしょう。職業資格、何々資格、あるいは、こんな試験を通ったというだけじゃ、学修成果の一部であることは認めますけれども、もっと詳しい情報がないと社会は理解できないんじゃないかなと私は思っております。
【小杉委員】  ありがとうございます。つまり、美容師国家資格合格100%というのでは、それは一部であって、その美容学校が目指す、違う目標があって、その目標に対して顧客満足度を高めるような教育をしてとか、そういうところでちゃんと出すべきだということですか。
【川口顧問】  御理解いただきまして、ありがとうございます。ですから、例えば試験を通りましたというだけではあれなので、ですから、そこにそれぞれの学校の目的、目標が重要ですよということは申し上げている。例えば同じ美容学校でも、地域によって随分違うかもしれない。そういうことをちゃんと目的、目標に書いてくださいということは、説明会で十分お願いして、今回はそれを随分ちゃんと書いていただきましたので、今おっしゃったように、美容師合格率が90%、じゃ、内容はといったら、そこまでは、我々のところで、ある程度は評価することができました。それは必要だと思います。それを学校の方もちゃんと発信していないといけないと思います。そうじゃないと、100%がいいに決まっているという話だけになっちゃうので、でも、それだけじゃ十分じゃないということは言えると思います。
【小杉委員】  ありがとうございました。
【黒田座長】  ほかに。それじゃ、小林委員、どうぞ。
【小林(浩)委員】  ありがとうございました。きょうは先生の話が聞きたくて。
【川口顧問】  光栄です。
【小林(浩)委員】  私も、大学院協会で評価の方をさせていただいているんですが、大学は約800ありますね。
【川口顧問】  800あります。
【小林(浩)委員】  それでも、学位授与機構と基準協会と高等教育評価機構と3つあって、かなり先生方もたくさんかかわってやられているというふうに思います。
【川口顧問】  はい。そのとおりです。
【小林(浩)委員】  今回、専門学校でいくと、3,000近く学校があって、分野も非常に多様化しているという中で、これを実現していくための課題みたいなところは、先生はどういうところにあるというふうにお考えでしょうか。
【川口顧問】  難しいというか、幾つか課題があって、さっきから何回か申し上げたように、専修学校では学校関係者評価というのをやっていますから、あれはちゃんと大事にして、せっかくやっているわけですから。あの上に立った第三者評価をやるべきであろうと。同じようなことをもう一遍やるなんていうのは、双方が無駄だと私は思う。双方というのは、学校の方も評価する方も。ですから、あれがあるんだという前提の上でやる。ということで、そうすると、第三者評価をする評価者のメンバーも、例えば、それによって相当、ある意味じゃ、絞れるかもしれません。
  もう一つは、私、専修学校を見出したのがこの数年で、初めて見て、びっくりしたんですけれども、1つの学校法人の中に、ヘテロな分野ですね。じゃ、例えば、それぞれの分野を分野別に全部評価をするかなんてやると、とてもじゃないと思います。それはなぜかというと、例えば、非常にヘテロですから、全てのところの分野全部に共通の専門家なんていませんから。そうすると、例えば10ぐらいのいろんな抱えているのがあったら、10回やらなきゃならんわけですね。多分、そんなことをやっている暇はありません。
  それと、これは、アメリカは割にそれに近いタイプなんです。地域ごとのアクレディテーション団体があって、機関評価みたいなことをやって、それ以外に60ぐらいの専門分野別評価機関、アクレディテーション機関がちゃんとあるんです。60の中には、同じ分野で2つあると困る。その話をし出すと、またこれは1時間ぐらいあるので。
  アメリカと同じようにやったらいいんじゃないかという話が出るんですけれども、私は、それは非現実的だと思います。なぜかといったら、私も数字は持っていないんですけれども、アメリカの場合には、どちらかというと、機関の中に非常に事務系統のスタッフが多いんです。ですから、日本の大学、国立大学だけですけれども、日本の国立大学だったら、1教官に対する学生数というのは20人弱だったと思います。全部を平均したら。1人当たり、職員に対する学生数が平均で50人ぐらいだったと思います。国立大学ですよ。公立、私立は入っていません。
  ですけれども、アメリカの場合は、職員に対する学生数というのは、10とか、一桁かもしれない。ただし、これは、分母には、非正規雇用の掃除の人とか何か、みんな入っていますけれども。教員に対しては、アメリカの大学は一般的にいって、20とか、そんなになると思う。
  ですから、結局、アメリカの大学の場合には、いわゆるアグニストラスティックスタッフがちゃんとそういう質保証とか、そういう対応をしているんです。ところが、日本の場合にはそういう職員がいないわけで、それだけ国情が違うところで、アメリカと同じようなというのは、とてもじゃない、もう疲弊するだけだと私は思う。
  ですから、そうすると、ある程度、機関別と分野別を別々じゃなくて、1つのところで、そのかわり、機関別だから、機関全体だけじゃなくて、個々のあれも。
  ですから、そういう意味では、先ほど申し上げたように、東京大学のように文学部も医学部もあるところは、全部、克明には見られないにしても、どれだけの学修成果がそれぞれ上がっているかということは、大学評価ではやっております。そういう対応をせざるを得ないと思います。分野別にしようか、機関別にしようかというのはちょっとあれで、多分、単に理念の問題以上に、日本の教育機関の中のいわゆるハードミンストラスティブ、あるいはティーチングスタッフの事情を考えると、そういうことにせざるを得ないんじゃないかなと思います。それを両方うまくやるということです。
  かつ、例えば今、10分野もある学校法人がどうするかといったら、10回、別々の自己評価をやって、10回、訪問調査なんていったら、物すごい数の、評価者の人数も増えますし、おっしゃるように3,000ですから。そこは相当、省力化、省力化という言葉は悪いかもしれません。効率的に、日本の制度で現実的な方策を考えざるを得ないと思います。
【小林(浩)委員】  ありがとうございます。
【黒田座長】  今のJABEEがそうなんです。
【川口顧問】  固有名詞を言っちゃまずいと思って。
【黒田座長】  学科ごとで一応、受け取るんですが。毎年やっているんですけれども、追い付かないです。
【川口顧問】  そうでしょう。だって、あそこはさらに細かい分野ですから。
【黒田座長】  ええ、細かいですから、これも大変です。一巡する前に、次のものがまた、前に受けたのがもう来ますからね。
【川口顧問】  受ける方も大変なんですけれども、評価者の数も大変なものですよ。
【黒田座長】  評価者も大変だけれども。きょう、川口先生の話で、自己評価と学校関係者評価、第三者評価。私も、この第三者評価というのは、学校関係者評価をやっていますので、同じことをやる必要はないんだと。本当にこの学校がきっちり改革、改善に向かって、回っているかどうかというのを第三者評価として見ていただく。その程度でいいんじゃないかというふうには思っているんですが、どうですか。
【川口顧問】  私もそう思います。そのとおりなんですけれども、私は、学修成果というのは第三者からも見ないと、これは社会が一番求めている情報なんです。例えば、これから学校に送ろうという御両親の方から見れば、多分、興味はそこですね。それから、それをちゃんと発信しなければ、教育機関の意味がないと思います。ちょっと言葉は悪いけれども、食堂がきれいだからというだけにはいかないと思います。済みません、ちょっと乱暴なことを言いました。
【黒田座長】  ありがとうございます。
【川口顧問】  ですから、おっしゃるように、学校がちゃんとまず自己評価をやってくださいというのは大前提で、その中で重要なポイントは、学修成果がちゃんと上がっている。あるいは、その学修成果の質がちゃんと向上している、改善されている。そこじゃないかと思います。
【黒田座長】  ありがとうございました。ちょうど先生の持ち時間になりました。質問ありますか。はい、どうぞ。
【河原委員】  詳しいご説明をいただきまして、ありがとうございます。
  アウトカムズが私どもも専門学校教育にとって重要だと考えているのですが、今日、社会のニーズも非常に細分化をしておりまして、それに応じて職業の分野もかなり細分化しております。そのような状況において、専門学校によっては、組織的に非常に小さいところもあるのですが、アウトカムズを担保するという観点において、その基準を明確にしていくために、業界であったり、政府・行政機関等と一緒になって、もちろん教育機関も含めてですが、人材像や教育の中身というのをある程度、一定の基準を定め、そのうえで、それを個々の学校が、独自にどういう教育によって実現していくかを選択する、そのような基準を作っていくということが必要なのかなと考えるのですが、そういったような方向性については、どのようにお考えでしょうか。
【川口顧問】  多分、おっしゃっていることはそのとおりだと思うんですけれども、ここで今、言い忘れたことがあります。さっきから多様性、多様性と盛んに申し上げました。専修学校、専門学校の方の前でこういう話をしたら、そんな多様性と言われたって、例えば自分の学校は非常に小規模だから、そんな多様なものをやるなんていうことは無理であると言われて、はっと気が付いた。
  ですから、多様性と私が申し上げている中には、1つは、それぞれの学校が個性化する、そこが特徴、特色化。それを含めて僕はしゃべっているつもりだった。それを言い忘れました。
  ですから、そのことと、それからもう一つは、私が今、申し上げているのは、今、日本の大学、専門学校もちょっとあるけれども、大学は特に、非常に同質が高い社会なんです。例えば18歳で試験を受けてある。しかも、成績が同じような人が入って、彼らは3年ぐらいになると、就活だとか言って、どこかに行っちゃって、キャンパスにいないわけです。非常に同質性が高いんです。けれども、今、特に社会がこれだけ、未知な社会に突入したら、そういうところで多様な人がディスカッションするとか、そういうことで、それぞれの学生の能力を育てなきゃいけないんじゃないかと。そういう意味で。
  ですから、多様性というのは、あるいは国全体で見て、かなりちゃんとグローバル社会に対応できるような、いろんな個性を持った学校は、それぞれちゃんと存在するということも必要だと思う。
  ですから、おっしゃるように、確かに基準を作ってというんですけれども、基準を作って、同じような、金太郎あめとよく言われる。ああいうものばかりがそろっても、日本がこれからうまくいかないと私は思うんです。もっと多様な人が育っている、そういう社会がある。ですけれども、逆に言えば、じゃ、どんな大学でもいい、どんな学校でもいいのか、そういうわけにいきません。高等教育としては基準はちゃんと満たす。さっきからMinimum Requirementだと申し上げましたけれども、それは必要なので、その部分は絶対必要です。まさにそれは設置基準になる。
  ですから、そういうものがあった上で、それぞれの学校がいかに個性化し、そこも重要じゃないかな。
  ですから、多分、おっしゃっていることはそう違わないんだと思うんですけれども、余り基準に合わせるというのばかりいくと、金太郎あめができちゃう。これは今、これからの日本、学部、社会全体がもたないんじゃないかなと思っているということだけ付け加えます。
【河原委員】  職業資格をある程度ベースにして、そのうえで学校独自の教育を展開していくというような形ですか。
【川口顧問】  そうです。それぞれの学校が、例えば、どういう質ので。例えば、同じ職業資格を持っていても、随分違うと私は思うんです。これも事実ですから、間違いない。これはまさに去年やった美容のところで私が申し上げたところ。
  例えば、その学校に入ってくる学生さんの出身地なんかを見ると、地方にある美容学校というのは、基本的にはそこの県内です。ですけれども、東京にあるといったら、どこか分かっちゃうんですけれども、そこなんかは県内じゃない。関東とか、あるいは、留学生も非常に多い。そういうところによっては、当然、美容資格を取るということに関しては共通かもしれないけれども、非常に多様な構成の人たちをいかに教育していくかというのは、随分違うと思いますし、地方に行けば、地域に貢献、地域連携というものが非常に強くなるでしょうし、東京じゃそうじゃない。その差は出てくるので、そういうものがそれぞれの学校の個性というものにつなげていただければいいんじゃないかなと思っております。
【黒田座長】  よろしいですか。ほかにございますか。はい、どうぞ。
【浦部委員】  都立青井高校の浦部と申します。本日はどうもありがとうございました。
  昨年度、私どもの都高進の総会のところで、岡本和夫先生にお話をいただきまして、ありがとうございました。認証評価機関の評価結果で大学選びが変わるというお話を頂戴いたしました。学生がどれだけ伸びたかという指標が非常に重要だというお話の方を承っております。大学の方が、かなり整備が進んでいるなというふうな実感も持っておりますし、高等学校の方でも、かなり活用しているという状況があるのかなと思っています。
  今回、専修学校となった場合に、先ほど就職ですとか、あるいは資格等の視点があるんじゃないかというお話がございましたけれども、専修学校の中には必ずしも、もちろん資格も、それから、必ずしも就職にもつながらないという分野もあったりということで、先ほど先生もおっしゃられた多様化というところの、分野の多様化という部分をどういうふうな形でまとめていらっしゃるか、先生の中でどのようなイメージをお持ちになられているのかをちょっとお聞きできればと思います。
【川口顧問】  どうもありがとうございます。岡本を非難するわけではないんですけれども、彼はそう言ったと思います。我々もそう言っております。ですけれども、今おっしゃったように、大学の方はかなりそれが整理されていると言うけれども、決して私はそうじゃないと思います。まだまだだと思います。
  そういうことは別として、おっしゃるように、確かに専修学校というのは三千幾つあるわけですから、大学よりもさらにヘテロです。
  それから、もう一つは、大学関係者がいらっしゃって失礼。私は、大学は既に、相当、いわゆる職業教育的なことをやっていると思うんです。分野によっては、専修学校、専門学校とバッティングする分野もあるわけです。ですから、そういういろんなことを考えると、私自身は、高等教育という言葉を今はなるべく使うようにしているのは、今や高等教育というのは、これから若い人が社会に出ていく最後のところなんです。ここでどれだけの力を付けるかということが一番重要なので、それはまさに国の存立にさえかかわるんだろうと。
  だから、そういう意味で、ちゃんとそこの部分がね。それで、例えば一律に専修学校というものはこんなものですよというんじゃなくて、例えばこの学校であれば、こういう人がちゃんと育っていますよと、この情報があって、これは大学でも同様なんです。そういう情報をちゃんと流す。当然、それは学校自身も流さなきゃいけないんですけれども、第三者質保証機関がちゃんとそれを保証する。それを社会が見て、ああ、なるほどと。じゃ、ここに行ってみようと。
  かつては、私がまだ大学にいる頃というのは、幸か不幸か、東大にいると就職はよかったんですけれども、だんだん、そういう時代じゃなくなって、特に今のこういう中途採用になると、その人が持っている今の力がどんなものだということをどうしても企業は見ますね。どんどんそういう時代になる。
  そうすると、例えば、さっき申し上げたように、こういうものがヨーロッパなんかでは必要になっているという理由はそこなんです。例えば理学博士というのを持っています。けれども、ディプロマサプリメントというのは必ず、例えばこの人はこういうことをちゃんと勉強しましたという証明書みたいなものです。そういうものがあって、それが結構、重要な役割。理学博士というよりは、そちらの方が重要になっているかもしれません。
  そういうものが必要で、そういうものをちゃんと提供するということによって、先は長いんですけれども、社会がそれを利用していく。そういう意味で、評価結果をちゃんと利用してくださいということを多分、岡本は申し上げたと思うんですけれども、そういうふうにならないと。
  それから、さっき申し上げるのを忘れましたけれども、もう一つ、アメリカの例が、かつては、10年ぐらい前、これはスタンフォードかな。スタンフォードのあるセンターの学生の意識調査というのをやって、私、非常に興味を持ったんですけれども、昔は、10年前の学生は、ヘリコプターペアレントと言って嫌がったんです。要するに、親がうるさいと。この辺でホバリングしてということで、ヘリコプターペアレントという言葉、日本じゃモンスターとか言うのか知りませんけれども、アメリカでは、あのデータは10年、もうちょっと前かな。その頃の学生のアンケートで、ヘリコプターペアレントというのはどちらかというと嫌われていた。
  ところが、最近の同じ大学の結果を見て、私、ちょっと驚いたんです。驚いたというか、よかったと思ったんですけれども、むしろ今のアメリカの学生は、大学に来る前に、親からもうちょっとアドバイスが欲しかったという方が多いんです。そのヘリコプターペアレント。学生もだんだん、そういう情報を求めているので。
  アメリカの場合の深刻な事態は、これはアメリカを非難するわけではないんですけれども、大学第1世代。要するに、親は大学に行っていなくて、その子供が大学に来たというのは、日本よりはるかに高いです。第1世代。ですから、そういう学生に対しては、じゃ、親がアドバイスできるかといったら、できないんです。そうすると、どうしても質保証機関がある程度しないとならない。だんだんそういうふうになってきているので、こういう第三者がちゃんとそういう質を保証するというのは、これから必要で、それを基に大学の選択、あるいは専門学校の選択、学校の選択というのがこれから重要になると私は思います。それだけ、社会がヘテロになってきているんじゃないかと私は思っております。
  これでお答えはいいでしょうか。
【黒田座長】  それじゃ、小林委員。
【小林(光)委員】  評価の問題というのは、私達、専門学校にも大変難しい問題でありましたけれども、この難しい問題を深く広く、そして分かりやすく説明いただいて、本当にありがとうございました。
  また、専門学校として、先生がおっしゃったように、全国に3,200校、今は専修学校があるわけです。地方の小さい学校が多いわけですが、こういった学校が、どうしてこの評価の問題に取り組んでいくのかということについても、大変、示唆のある御説明をいただきましてありがたく思っております。
  先生におっしゃっていただきましたが、日本では、大学が学び直し機関の機能を今まで果たしていませんでした。むしろ専門学校が今後、その役割を果たしていくことが期待されています。特に地方、地域にある小さい学校も、その機能をきちっと果たしていく。それには、おっしゃっていただいたように、学修成果というものを主体的に考えて、そして、みずからそういったことに取り組んで、まさに実践的な人材を育成していく。これが大変必要なことだと思います。
  また、先生がおっしゃっていただいたアウトプットとアウトカムズの違いというのも、私自身、再度お聞きして、本当になるほどということで、よく理解できる説明をしていただきました。
  これからも、またよろしく御指導をお願いしたいと思います。ありがとうございました。
【川口顧問】  ちょっと今おっしゃった、社会人の学び直し。日本では、いわゆる社会人入学ということが、ちょうど大綱化のときでしたかね。
【黒田座長】  そうですね。
【川口顧問】  大綱化のときに社会人入学ということが可能になったんです。ところが、残念ながら、日本ではほとんど伸びていないんです。私は、別の意味で、ちょっとそれは問題だと。さっき申し上げたように、日本の大学というのは非常にホモジニアスな世界で、そういう社会経験を持った人が入って、その中でいろんな議論をするというのは、私、学生にとって非常にいいと思うんですけれども、残念ながら、ほとんど増えていないんです。
専修学校は、今、1割ぐらいでしたか。
【小林(光)委員】  1割を超しています。
【川口顧問】  超していますか。
【小林(光)委員】  社会教育などを入れると、もっと多いです。
【川口顧問】  もっと多い。ですから、大学を卒業して入り直す人も含めると、1割は当然超えますね。あそこが1割ぐらい。
【小林(光)委員】  はい、そうです。
【川口顧問】  ですから、そういう意味じゃあれで、これから、これだけ社会の進歩が激しいと、どうしても、ある程度、学び直しというのは必要になりますから、私は必要だと思います。
  単に、学習者の方だけじゃなくて、組織を作る上でも、そういうヘテロな人がいるというのは、日本の大学には、これから大いに必要なんじゃないかと私は思っているんですけれども、なかなか増えませんね。
  専門職大学院で大分多いところは、例外的には、でも、本当に例外的です。ビジネススクールでしたか。50%オーバー。先生、御存じありませんか。たしか、あそこは50%を超えています。
【今野副座長】  私どもの大学は、公務員ですけれども、ほぼ100%、現職者の学生で、また職場に帰ってきて、私ども、できたときに、多分、こういった大学はいろんな形で増えていくんだろうなと思っていたんですけれども、ほとんど増えていないんですね。生涯学習が始まってから、大学の生涯学習科ということで、いろんな形で社会人を受け入れようということが、制度的にも予算的にも、いろんなことをやってきたんですけれども、先生がおっしゃられるように、ほとんど進んでいないということで、すごい残念なんです。
  背景には、大学の努力不足もあると思いますけれども、まとまった形で社員を勉強させよう、あるいは勉強してもいいよというような文化というか風土というか、そういうものがまだ一般の社会の中にはできていなくて、そういう学び直しを許すような企業なり、社会全体の意識というのが、もうちょっと出てこないと、大学だけの努力では、なかなか打開は難しいのかなという感じを今は持っています。
【小林(光)委員】  そこで、中教審で答申を出していただいたように、専門職業大学ができる必要性というのがここにはっきりあるのかなと思いました。本当にありがとうございました。
【黒田座長】  もう残り、あと10分ほどになりましたけれども、川口先生に対して、もう一回、感謝を述べて、これで終わりたいと思います。ありがとうございました。(拍手)
これからは、前回、文化学園の大沼理事長から、専修学校の制度創設のいきさつとか、そういうところから始まって、学校教育の複線化、多様化というのが非常に重要だというお話を承りました。それから、専修学校というのは、非常に社会との接点が大きい。殊に専修学校と産業界のニーズというのを連携をとりながらそれぞれに進めていらっしゃるというお話もお聞きしたわけであります。

  きょうは川口先生から、その中でも学修成果について強く述べられていたわけでありますが、この学修成果というものをどうするか、質保証の枠組みというものをどういうふうに作っていったら、この高等教育機関としての専修学校というのが生きてくるのかというふうなこともあるわけであります。
  きょうは、前回の大沼先生の文化学園で聞いたお話、それから、今、川口先生から聞いたお話、そういうものを踏まえながら、専修学校の価値、役割、この質保証の方向性、あり方について、残りの時間、あと6分ほどですが、御意見を伺いたいと思います。どなたからでも結構ですが、何かありましたら、どうぞ。
  前鼻委員、今来られたわけでありますが、質保証の観点から、職業実践専門課程の方向性について、何かお話しできますでしょうか。
【前鼻委員】  遅参して大変申し訳ございません。
職業実践専門課程が、実際問題、今は3割ほどの学校が認定をされているんですが、先般、北海道だけ調べ直しさせてもらいまして、通っている学生数、在籍数でいけば、大体どのくらいの人が職業実践専門課程の学生なのかというふうにやりますと、5割を超えておりました。北海道は学校数、百三十何校ありまして、今回は59校が今は認定されているわけなんですが、全体の4割方ですけれども、在籍者数は半分は超えているというところで、一定限の質保証の傘の中にいるのかなというふうに思っておりますが、実際問題、果たしてこれは、一体、何のためにやるのだということが、都道府県においても温度差があるなというふうな感じを持っております。
  今のお話の中にもちらっと、後半の方だけですけれども、聞かせていただいた中でも、どういう指標で我々の学校、それから卒業していった学生たちが社会的に認知されるのかということを考えたときに、最低限の制度の中で、私たちはこれだけのものはやっているんだということをきちっと示さなければならないのかなと。その上でも、最低限のことの公表をどういう形で私たちが、公表という形の中で世間に知らしめていくのかということが非常に大事だなということが1点。
  それから、高校の先生に対する啓蒙という部分では、ちょっとこれはまだ足りないと考えております。実際のところ、先生方、現場の高校の先生のレベルでは、まだまだ認知度がない分、この実践専門課程が質保証とどういうふうな関連性があるのかということがまだ周知されておりません。ここのところには非常に大きく、これからもっとPRしていかなきゃならない部分と、我々、会員個々がもっと広報に対しての周知を図る活動をしなければならないというふうに今は考えております。
【黒田座長】  ありがとうございました。それから、清水委員は高等専修学校について、ちょっとお話を。
【清水委員】  きょうは高等教育機関のお話でしたので、後期中等教育機関の立場で聞かせていただいておりました。中等教育機関である専修学校の高等課程では、学校関係者評価まで達していませんので、その先の第三者評価まで、当然、達することはありません。
  しかし、仲間の学校さんといろいろなお話をしたときに、また、きょうのお話をお聞きして私が思ったのは、学生数に対する事務方の人数の少なさです。これが大学とは大きく違うところであります。川口先生もおっしゃっていたように、せっかく職業実践専門課程が学校関係者評価をやったのですから、無駄なことをもう一回する必要はないと。私は専門学校の立場ではありませんが、高等専修学校の立場で専門学校運営、経営を見ていると、いかに時間と費用を掛けずに評価をするかということをしっかりと肝に銘じてこれからシステムを作っていただかないと、なかなか専門学校全体に浸透していかないのではないかなと思っています。
  人数の問題であるとか、経済的な問題であるとか、いろんな問題が絡んでいるので、是非そこは高等課程としてもお願いをしたいというふうに思います。
  以上です。
【黒田座長】  ありがとうございました。ほかにございませんでしょうか。はい、どうぞ。
【前鼻委員】  今、清水先生のお話にもあったんですが、私は医療系、福祉系の方の学科を持っているんですが、学科を認可する厚生労働省の方にも、似たような自己点検評価、内部監査的な評価表を出すということが義務付けられております。一方で、職業実践専門課程の方でも、同じような書式の中身があったりします。今の話じゃないですけれども、非常に事務方が少ない中で、同じような書類、それから、都道府県にも出さなきゃならないもの、非常に交錯していて、それぞれで出さなきゃいけない。この辺のところをもう少し簡素化して、代替できるものは代替していただきたいなというふうに思っています。
以上です。
【黒田座長】  ありがとうございます。川口顧問、今の質問に対して、厚生労働省へ出す自己点検評価と、先生のところで出す評価の違いというのはあるんですか。
【川口顧問】  もう何も来ないのかと思ったら。今おっしゃる、美容だけに関しましては、私、ちらっと見たら、別にあります。ただ、相当、共通性がある。ですから、この間、試行でやったときには、例えばそういうものを、元のままじゃまずいので、コピペしてくださいとか、お願いしたかもしれませんけれども。
  例えば、おっしゃるように、当然、資格試験なんかとつながっているところと、そうじゃないところもありますから、その辺が非常に難しいでしょうね。当然、それは省庁が違うので、違うフィロソフィーがどちらにもありますから、こっちだけの話じゃないので、大変難しい問題です。
  例えば、さっき申し上げたポートレートに関しては、大学、専門学校もそうですね。5月に学校基本調査を出しますね。あれをそのままポートレートに持ってこられるようにしてあるはずなんです。ですから、完全に一元化して、1本で全てが済むというのは、ちょっときついかもしれない。どうしても細部でいろいろな。ですけれども、ある程度、そこの辺は運用でうまくいく。うまくとは言えないな。省力化はできるんじゃないかなと思う。
  ですから、例えば、早い話、私ども、大学評価をやっている場合には、そういうところに出した資料はそのまま出してください。あるいは、既にポートレートにデータが入っていれば、それを出していただければ結構です。何ページを見ろということだけ指示してください。そういうことまではできます。ですから、どうしても、まだ評価機関と学校との相互の間でのあれにとどまっているんですけれども、多分、その辺までは可能です。
【黒田座長】  大学の評価についても、そこが問題になっていますね。
【川口顧問】  ええ、そうですね。
【黒田座長】  どこまで区割りするかということですが。
時間が来ましたので、きょうはこの辺でやめたいと思うんですが、本件については、また引き続き意見交換を今後もしていきたいというふうに思いますし、また、職業実践専門課程の方向性、あるいは質保証向上の進め方、これについては、今後、皆さんから御意見をお聞きしていきたいというふうに思っております。
  それでは、最後に、今後の予定について、事務局からお願いします。
【白鳥専修学校教育振興室長】  資料2をごらんいただけますでしょうか。既に御案内のとおり、次回、第7回ですけれども、11月21日月曜日に、地方開催といたしまして、福岡市にて開催する予定でございます。
  12月以降の会議開催につきましては、現在、調整中ですので、御連絡が遅くなり、申し訳ありませんけれども、改めて御連絡をさせていただきます。
  また、本日の資料につきましては、机上に置いていただければ郵送をいたします。
連絡事項は以上でございます。
【黒田座長】  ありがとうございました。第7回は福岡で行うということでありますので、遠路でありますが、御参加をいただきたいというふうに思います。
   それじゃ、これで終わりたいと思います。ありがとうございました。

―― 了 ――


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