専修学校における学校評価・情報公開の在り方について(主な論点)

総論

(背景)

○  社会の様々な領域において、組織をどのように統治するかという「ガバナンス」の在り方が注目を集めるようになっており、専修学校についても教育の質保証・向上を図るとともに、学習者の適切な選択に資する観点から、学校評価・情報開示等への適切な対応が求められている。
 このほか、税金の使い道に対する納税者の意識も高まっており、公費が投入される教育機関に対しては、より大きな説明責任が求められるようになっている。

○  こうした中、専修学校制度においても、平成18年の学校教育法改正により、自己評価の義務化や関係者評価の努力義務化、教育活動等に関する情報の積極的提供の義務化が図られている。
 また、学校法人については、平成16年に成立した私立学校法の一部改正法により、法人の公益性を一層高め、自主的・自律的に管理運営する機能を充実させる観点からの制度改正が行われており、その一環として、財務諸表等の利害関係者への閲覧に関する義務も課されている。

○   以上を踏まえ、より自由度の高い学校種としての専修学校の特性も考慮しつつ、教育活動等の評価の仕組みを整備するとともに、各学校における情報公開の取組を促進する必要がある。
 特に、法律で義務付けられた自己評価等及び情報提供等への対応については、その取組の実質化を促すとともに、第三者評価等のへ取組についても、専修学校が自主的に進める活動を支援・促進していくことを目的として学校評価ガイドラインを策定する。

(現状)

(自己評価・学校関係者評価)

○  専修学校に対しては、小・中・高等学校等の制度を準用し、平成19年の学校教育法及び同施行規則の改正により、1自己評価の実施・結果の公表に関する義務、及び、2学校関係者評価の実施・結果の公表に関する努力義務が課されている。

○  小・中・高等学校等については、文部科学省が「学校評価ガイドライン」を定め、PDCAの評価サイクルによる「自己評価」や、自己評価の結果を評価することを基本として行う「学校関係者評価」、それら評価結果の公表等について、各学校の取組の目安となる事項を提示している。

 ※「自己評価」・・・・各学校の教職員が自校の教育活動その他の学校運営の状況について行う評価

 ※「学校関係者評価」・・・・小・中・高等学校の学校評価においては、保護者、地域住民等(当該校の職員を除く)が行う評価。

(第三者評価)

○  小・中・高等学校等における第三者評価については、法令上の義務付けはないが、「学校評価ガイドライン(平成22年改訂)」において、自己評価や学校関係者評価に加えて、第三者評価を導入することにより、学校評価全体の充実を図るための取組の目安が示されている。

    ※「第三者評価」・・・・学校教育法に規定されている学校評価の一環として、学校とその設置者が実施者となり、学校運営に関する外部の専門家を中心とした評価者により、教育活動その他の学校運営の状況について、専門的視点から評価を行うもの

○  大学等における第三者評価については、国の認証を受けた評価機関が大学等の評価を行う「認証評価」の制度が実施されているが、こうした制度は、小・中・高等学校等の制度を準用している専修学校には導入されていない。

■私立専修学校の学校評価の取組状況

 ◎  自己評価を実施している専修学校は      62.2%
  当該結果を公表している専修学校は      17.1%
 ◎  学校関係者評価を実施している専修学校は 15.6%
  当該結果を公表している専修学校は       5.6%
 ◎  第三者評価を実施している専修学校は     5.5%
  当該結果を公表している専修学校は        3.0%

「文部科学省 委託調査 専修学校の質保証・向上に資する取組の実態に関する調査研究事業(平成23年3月)」

    

(基本的考え方)

○  専修学校については、その目的、制度の特性から、カリキュラム等の面での自由度が高く、産業界等とのニーズに即応しつつ多様な教育を柔軟に展開する上での強みを持って、職業や実際生活に資する教育を行う学校としての特色がある。一方で、全体的な学校運営、教育水準等における質保証の面では、他の学校種に比べ様々であり、学校ごとの差が大きいことが指摘される。

○  このような専修学校が、社会全体の信頼を得ていく上では、より自由度の高い学校としての特性も考慮しつつ、教育活動等の評価や情報公開が組織を改善するためのPDCAマネジメントサイクルの中に位置づけられ、1教育の質の改善、2社会に対する説明責任、3学校評価を通じたガバナンス改善に向けた自主的な取組を促進していくことが重要となる。

○  今後は、どの学校にも求められる取組として法律上の義務とされた自己評価については、その取組の確実な実施と充実が図られるよう、専修学校における取組の目安をガイドライン等として取りまとめ示していく。

○  第三者評価への取組については、専修学校やその分野等におけるコンソーシアム組織等による自主的な取組を促していくための具体的な方向性を示すことが必要ではないか。

○  その際、1学校として一定程度共通に求めるべき取組として、義務的に行われているかどうか評価(アクレディテーション)・情報公開を進める視点と、2専修学校教育の充実に向けた自主的な取組として、各学校の特色を活かす取組を評価(エバリュエーション)し、専修学校教育の支援・促進を図るという視点とを整理した上で、それぞれ必要な対応を進めていくことが必要ではないか。 

(専修学校の特色を踏まえた学校評価の定義・意義)

○  専修学校の実践的な職業教育活動等を評価し、改善・支援等を行うことにより、産業界等のニーズを踏まえた質の高い教育活動等を享受できるよう学校運営の改善と発展を目指した学校評価が重要。

○  小・中・高等学校のように学習指導要領で教育内容の質が担保されている学校の評価や、大学のようにインプットを明確に評価しつつ、学問の自由と大学の自治の中で行う評価とは別に、実践的な職業教育については、職業に必要な知識・技能・態度(=アウトカム)による質保証とともに、専修学校については、産業界などの社会との関わりの中で、教育目的、教育方法、統制の3つを柱として評価する必要がある。

○  実践的な職業教育を行う公的な教育機関として、学校が産業界等へ適切な説明責任を果たすとともに相互の課題やニーズ等を共有し、実質的な連携強化を図りながら産業界等において必要な人材養成を実現するという視点が重要となる。

○  これらのことから、専修学校の教育活動その他の学校運営の状況について評価を行い、その結果に基づき学校及び設置者等が学校運営の改善を図ること、及び、評価結果等を広く雇用側の経済団体・職能団体等に公表していくことが求められる。また、経済社会にとって有意な人材を育成するかという観点から、産業界等として、学校評価において、どのような協力が得られるのか検討が必要である。

○  このような指摘を踏まえ、専修学校の学校評価は、以下の3つを目的として実施するものであり、これにより専修学校の生徒がより良い教育活動等を享受できるよう学校運営の改善と発展を目指すための取組と整理する。

(試案)

  1. 各学校が、実践的な職業教育等を目的とした自らの教育活動その他の学校運営について、目指すべき目標を設定し、その達成状況や達成に向けた取組の適切さ等について評価することにより、学校として組織的・継続的な改善を図ること。
  2. 各学校が、自己評価、及び保護者、企業・関係施設・経済団体・職能団体など学校関係者等による学校関係者評価の実施とその結果の公表・説明により、適切に説明責任を果たすとともに、学校関係者等から理解と参画を得て、それらの地域におけるステークホルダーと専修学校との連携協力による特色ある専修学校づくりを進めること。
  3. 各学校の設置者等が、学校評価の結果に応じて、専修学校に対する支援や条件整備等の改善措置を講じることにより、一定水準の実践的な職業教育の質を保証し、その向上を図ること。

○  現行制度では、学校教育法に基づく小学校の制度を準用した学校評価制度となっているが、後期中等教育段階の高等課程、高等教育段階の専門課程の段階を踏まえた学校評価システムとすべきではないか。また、課程ごとの状況にも配慮した評価・情報公開とする必要がある。

  • 専門課程(専門学校)は、1多様化、高度化する産業界等のニーズにこたえるため、社会人等の学び直し機会の提供に関する積極的な取組や、2急激なグローバル化への対応として、実践的な職業教育を行う高等教育機関としての国際的な通用性がより一層強く求められることなどが想定される。期待される専修学校の役割・機能について、どのような視点を考えていくべきか。
  • (高等課程(高等専修学校)は、第3回の議論を踏まえ記載。)。
  • 高等学校等修学支援金制度の対象となり、その活動状況等に関しては、社会全体からより多くの説明責任を求められるようになっていること。 

自己評価、学校関係者評価、第三者評価の実施

(学校評価の流れ、具体的な留意点)

次回、学校評価の基本的な流れ、留意点等について提示・議論の予定。

(専修学校の特色を踏まえた具体的な評価の視点(例))

次回、学校が共通して求められる視点と、専修学校としての特色を踏まえた目標・評価項目・指標等の設定を含めた試案を提示し、議論の予定。

(イメージ)

○ 教育の理念、人材養成の目的(専門分野の業界・職種との関係)
○ 教育活動
・実践的な職業教育・キャリア教育の内容・方法・成果
(企業・関係施設、産業界、職能団体が参画したカリキュラム編成、最新の実務に必要な知識・技術・技能を教授する教員の配置・マネジメント(本務・兼務教員)、実技・実習、就職等における連携、職業資格等との関係など)
・分野の多様性、地域性
・在学生、卒業生評価の活用
・課程(高等課程・専門課程・一般課程)ごとの配慮   等
○生徒支援
○教育環境
○財務・組織運営・法令等の遵守
○社会貢献

(専修学校における評価主体)

○  実践的な職業教育を行う専修学校の評価における「学校関係者」の定義を整理することが必要である。例えば、ステークホルダーとしての企業、関係施設や、経済団体、職能団体等を例示し、また、その必要性を整理することが必要ではないか。

    ※学校評価ガイドライン(平成22年改訂):保護者、地域住民、学校評議員、青少年健全育成関係団体の関係者、接続する学校(小学校に接続する中学校など)の教職員その他学校関係者により構成された委員会等が評価

○  学校関係者評価の評価者として、学校関係者評価という枠組みを、どのように位置づけるか。専門学校のステークホルダーとしての学校関係者となると、第三者評価の評価者と一部重なってくる。

(例)

  • 学校の専門分野における業界の人たち(就職先企業、分野別の業界団体の人)
  • 卒業生(同窓会関係者、卒後一定のキャリアを持った人)
  • 地域の市町村・都道府県の関係者(教育委員会・専修学校担当者等)
  • 保護者
  • 夜間課程の学生の勤務先管理者
  • 地域住民
  • 中学校、高等学校等の長(専修学校との接続がある学校の関係者)等

    ※このほか、学校関係者評価の評価者として、当該分野における評価の専門家(第3者評価機関の評価者など)も考えられる。

 ○  学校評価が適切に行われるため、専修学校の評価に携わる評価者が一定の知識等を修得するため、学校における担当者や外部の学校関係者評価に携わる者の知識の向上等を目的とした研修機会の提供・充実のための方策が必要である。

(第三者評価の実施体制)

○  実践的な職業教育を行う専修学校ついて、専門的な評価を行う第三者評価の主体として、どのような実施体制が考えられるか。

■学校評価ガイドライン(平成22年改訂)では、第三評価の実施体制として、学校とその設置者が実施者となり、その責任の下で、第三者評価が必要であると判断した場合に実施。
 具体的な実施体制については、地域や学校の実情に応じて、

例1) 学校関係者評価の評価者の中に学校運営に関する外部の専門家を加えるなどして、学校関係者評価と第三者評価の両方の性格を併せ持つ評価を行う。
例2) 一定の地域内の複数の学校が協力して、互いの学校の教職員を第三者評価の評価者として評価を行う。
例3) 学校運営に関する外部の専門家を中心とする評価チームを編成し、評価を行う。

(学校評価により期待される取組と効果)

○  自己評価に加え、学校関係者評価を行うことが、学校側に大きな負担となるが、自己評価、学校関係者評価を受けることが、専修学校の教育の質向上、学校運営の強化、地域における社会的理解・関係強化につながるような取組にしていくことが必要である。

○  学校関係者評価に関わる地元の企業・関係施設、役所、地域住民、高等学校挙げて、当該専修学校を強力に支援する出発点となるような評価であるべき。

学校評価の評価結果の公表・報告、設置者等への報告と支援・改善

○  評価結果を公表する際には、併せて、その結果を踏まえた今後の改善方策等につながるように公表し、学校関係者、自治体等からの理解と連携強化、支援を促すような仕組みが必要だと考えられる。

積極的な情報提供・情報公開

○  専修学校の運営等に関わる関係者の理解を深め、連携・協力を推進するための積極的な情報提供となるような工夫が必要であると考えられる。教育機関としての最低限の条件は満たしておくべきものは公開すべきである。

お問合せ先

総合教育政策局生涯学習推進課

(総合教育政策局生涯学習推進課)

-- 登録:平成24年08月 --