日本の女性研究者比率は、男女共同参画基本計画(第二次)が進められた期間(平成18~22年度)に漸増はしたものの、いまだに先進国の中でも最低レベルの13.8%(平成23年)である。特に、理工系分野(理工農・医歯薬各分野、およびそれらの境界領域)における女性研究者・技術者の進出と定着は遅れていることから、この国の多様な人材育成の一環として、特に上記分野の女性人材の育成が望まれる。具体的課題としては、1)女子中高生の進路選択支援事業を通じた「次世代育成と支援」、 2)「採用・昇進」を含む女性研究者・技術者の活用の場の確保、及び、3)大学・研究機関・企業において「意志決定の場に参加できる女性リーダーの育成」が急務である。
1)の「次世代育成と支援」事業については、NWECで継続性のある展開をしており、着実で実効性のある成果をあげてきている。何より中高生を送る側の現場の中高教員の間にその重要性が年々認識され、ネットワークは大変強固に育ってきている。よって、この事業はこれまでの実績を生かし、さらに発展すると期待される。
むしろ、現在の理工系女性研究者・技術者養成に関する緊急課題は、上記、2)「採用・昇進」の壁を下げることによって「女性研究者・技術者の活用の場の確保」することであり、3)大学・研究機関・企業において「意志決定の場に参加できる女性リーダーを層として育成」するである。この2点を強化するために、NWECが何を担えるかということが検討課題となる。
上記2)と3)の課題の推進には、それを担う「具体的ビジョン」と「人」と「場所」と「資金」が必要である。
これらは、いずれも順位を付けがたいほどの重要な課題であるが、私はあえて上記の順位とした。
1.については、大学・企業の女性研究者・技術者の実態、とりわけ、第3期科学技術基本計画と男女共同参画基本計画(第二次)のもとで、「女性研究者」がどれほど進出し、定着したかを知ることが緊急の課題である。そのために、内閣府、JST、JSPS、NISTEP(以上、文科省)、国大協等と協力、協調しながら、第3期科学技術基本計画の期間の前とあとにおける、
を、数値データとして明らかにすべきである。そこに、今後、何をすればよいのかが、おのずから示されるはずと考える。特に「停滞率」の把握は重要で、昇進を阻むバイアスとバリア、そしてそれをクリアする方法が見えてくるはずである。
2.については、リーダー養成については、企業・大学を問わず「女性と科学技術」に関する国内外のグローバルな現状分析と国際ネットワークの具体的な構築にむけて体制づくりが重要である。
大学の実務者対象に、一昨年より始まった「大学教職員のための男女共同参画推進実践研修」は、さらに継続拡充すべきである。
2.については、大変難しく時間がかかるかと思われるが、「大学と企業トップ双方の同時意識改革・啓発」のための「場とプログラム」をNWECが提供する。大学のリーダーと企業のリーダーに求められるものに共通性はあるはずであり、女性リーダーを増やすための課題の困難性にも共通性は間違いなくあると考える。
生涯学習政策局男女共同参画学習課男女共同参画推進係