新しい時代に対応した統計調査の推進に関する検討会(第3回) 議事要旨

新しい時代に対応した統計調査の推進に関する検討会(第3回)が、以下のとおり開催されました。

1.日時

平成21年3月25日(水曜日)14時00分~16時00分

2.場所

文部科学省生涯学習政策局会議室

3.議題

  1. 次年度検討会の検討スケジュール(案)について
  2. その他

4.出席者

委員

馬場座長、廣松委員、吉谷委員(五十音順)

文部科学省

生涯学習政策局
惣脇生涯学習総括官、神代調査企画課長 ほか

オブザーバー

国立教育政策研究所
笹井生涯学習政策研究部総括研究官、深堀高等教育研究部総括研究官、
本多正人教育政策・評価研究部総括研究官、青木教育政策・評価研究部研究員

5.議事要旨

 議事については以下の通り。
・事務局から、配布資料に基づく説明のあと意見交換が行われた。

<以下委員から>

(委員)
 資料4にあるA10「教育からの収益:教育投資への誘因」の部分については、統計というより研究者の研究結果という感じがする。完全に合意がとれた計算方法があるわけでもなく、統計というよりは研究機関が行っているのではないかという印象を受けた。もし日本がこういうものをOECDに出すなら公的統計というより、一つの参考値という提出の仕方になるのではないか。
 資料1の2頁の一番下の論点(学歴別調査項目)については、検討の方向性を二つに分けて考えた方がよい。同じ学歴の問題でも国勢調査のように自計方式で学歴を書くものと、賃金構造基本統計調査のように事業所が調査対象になっていて事業主が記入するものとでは問題の質が少し違う。どちらかというと後者は記入者負担の問題である。次に二次的利用分野の3つ目に関して、先ほどの話にもあったが、かなりの部分で民間の評価機関等が出しているケースが多く、その部分で日本とは状況が違う。
 最後に壮大な話になるが、医療分野でSHA(System of Health Accounts)、つまり経済分野でいうSNAに相当するような体系づくりが、OECDやユーロスタットなどでいくつか行われているようだ。そういう意味で、資料1に挙げられた論点のいくつかはSHAになぞらえて言うならば、SEA(System of Education Accounts)の部品になるようなものもあるのではないか。もちろん簡単にできるものではないが、やってみる価値があるのではないか。これは二次的利用というより加工統計についての話であるが、国民経済計算が色々な経済系のデータを統合してできているように、教育についても様々な統計を利用して体系的に教育関連の活動を表すということができないかということである。

(座長)
 国際比較について論じる時、どうしても日本と欧米の教育システムがかなり違うので、OECDの「図表でみる教育」にデータ提供できない指標が存在するのも当然ではないか。日本からこういう教育の評価の仕方もあるのではないかということを文部科学省が主導して発信するということができたらいいと思う。

(事務局)
 従来はOECD主導で作った指標に対して、日本がどれだけデータを提出できるかという対応が中心であったが、今後は日本の教育制度を評価してもらうために入れてほしい指標や改善してほしい指標について提案していくことが必要だと考える。

(委員)
 今度外国人登録の制度が変わり、従来のように一度国内に入ったらもう分からないというのではなく、一種の住民票みたいな形で把握するようになるため、総数がはっきりしてくる。そうなると学校基本調査でかなりきちんとつかんでいる部分がある一方、あいまいな部分も見えてくることになる。

(事務局)
 学校に通っている子どもについてはある程度把握できるが、通っていない子どもがどれくらいいるのかという把握が難しい。
 外国人向けに住民登録のようなものができるようになれば、外国人の総数が定まり、その中で学校に通うべき年齢の外国人の子どもの数がいくらかということが、今より把握しやすくなる。また、その先の問題として、これは国会でも指摘されたことであるが、学校基本調査の中でそうした外国人の子どもの数についても併せて把握するようにできないのかという話がある。これは少し先の話になるが、この点についてもどういったタイムスケジュールで学校基本調査に含めていくのか、あるいはどこまで可能なのかということについてもご意見をいただきたい。

(委員)
 公的統計は事前に名簿が確定していないと成り立たない。外国人児童生徒については、アンケート調査もしくは聞き取り調査といった形の手法でないとなかなかつかみにくい。無理に統計法による統計調査にあてはめる必要はない。

(座長)
 国の統計は定型的なもので毎年調査して、時系列で比較ができるようにという方向でやっている。よって学校基本調査はこれでしっかりやって、これの附帯調査という形でできればよいのではないか。

(事務局)
 実は来年度の学校基本調査の中で、一種の附帯調査として、例えば大学における社会人の現状などについて調査しようとしている。おそらく今後こういったパターンが増えてくるのではないか。そうやって試行錯誤しながら、正規の統計調査に含められるものは含め、含められないものは附帯調査とかまた別の形で行うというような使い分けが必要になってくるのではないか。

(座長)
 統計法の枠内だと審査機関を通すためあまりフレキシブルにできない。前もってこのような形で調査すると届け出なければならず、試行錯誤してというものにはなじまない。

(オブザーバー)
 ヨーロッパではEU諸国の高等教育の仕組みを標準化し、ヨーロッパ主導でEAGにおける指標を作り直そうという動きが進んでいる。高等教育のようにグローバルにトレンドが作られている世界では、そういうトレンドに合わせた指標のとり方をしていくことがかえって、日本の政策当局や高等教育機関が取組をする上で役立つのではないか。日本から問題提起をするような指標のとり方を考えるならば、ヨーロッパで議論されていることを踏まえた指標の作り方が必要かと思う。

(座長)
 大学(学部)だけでなく大学院もコースが複雑になっており、簡単にカウントするだけでは把握できない。

(委員)
 大学も社会人学生への対応の必要から、事前に登録した修業年限よりも短い年数で修了できるなど制度を柔軟にしており、学生の実態把握が以前より困難になっている。

(オブザーバー)
 社会人学生の数を調べる際に、そもそも社会人学生の定義が難しく、社会人特別選抜という入試制度に合格した人と定義しても、必ずしもそうでない人もおり、そういう社会人の学生が入ってきたり、逆に抜けたりと非常に流動化しており、学生の実態や教育の内容を捉えるのが難しくなっている。 

(座長)
 各大学が法人化してから、学生や教員なども今までの枠に収まらない形態のものが多くなった。

(事務局)
 難しいといえば、教員もそうだが学生の国籍の問題がある。留学生政策上は不可欠なデータではあるが、大学がどこまで把握しているかということである。

(委員)
 最近二重国籍の方もどんどん入ってきており、法令上22歳になるまでは国籍がひとつに確定せず、調査するならば、これも聞きにくい部分である。

(座長)
 大学の重要な資金源にもなっている産学協同について、施策上推進すべきとされているが、これについて文部科学省できちんと把握しているのか。

(事務局)
 研究振興局で受託件数が何件かというように取れるものについて個別に把握しており、全てというようにはいかないがトレンドが追える位にはなっていると思う。

(オブザーバー)
 分科会を初等中等教育分野、高等教育分野というように分けられているが、学校の部分だけではなく、むしろテーマで縦に繋がっていくような形で情報をつなげていくことが大切である。しかも同一人物でなくとも同じタイプの人を追いかけていけるような聞き方が必要ではないか。

(事務局)
 学校現場の負担軽減という観点からの要求がある一方、統計調査の改善という観点から、場合によっては新たな調査や項目を増やす、あるいは調査手法についてより手広くあたるというようなことがあるかもしれない。この点について、どのようにバランスをとっていけばいいかという課題があり、このことについても今後ご議論いただきたい。  

(座長)
 資料2で挙がっている調査について、どこまでオンライン化が進んでいるのかということも教えてほしい。

(事務局)
 少し先の話になるが、分科会でご議論いただく際に、資料2に挙がっている調査について、個々にご説明させていただいた上で問題点・改善点をご議論いただきたい。

(オブザーバー)
 資料2について、学校の現場からみれば負担かもしれないが、自治体側にとっては施策を進めていく上で必要であり、国というより自治体側からのニーズもあると思う。

(オブザーバー)
 テーマにもあるとおり新しい時代の統計で、対象者もなかなか定まらないというものについては、啓発が非常に重要だと考える。ある省のホームページには、この調査がどうして必要なのかから始まり、この調査を利用した論文が何本あるか、さらにマーケティングにも使えますというようなことが掲載されている。要するに調査に協力しやすい雰囲気づくりが大切だと思う。

(委員)
 各省により統計部局の位置づけは多様であるが、個人的には大臣官房に置くべきだと考える。縦割りで省ごとだけど、少なくとも省内のことについては調整機能を含めてできるような組織のあり方を考える必要があると思う。

(委員)
 例えば、ボランティアの登録についていえば、ボランティアを行う者も、学生としての側面やボランティア団体に所属する社会人としての側面など、個人が色々な側面を持っている。その全体が捉えられないことについて、ある一面であるボランティアを行う学生数が把握できるとして公表したとしても、それを出したばかりに少ないとか、多いとか言われてしまうことがある。

(座長)
 色々なところに出入りしている人については、ダブルカウントしてしまうという問題もある。

(事務局)
 分科会を立ち上げる前に、各分科会の分け方やそこでどういうテーマを取り上げていくのかということを来年度に入ってから座長とご相談させていただきたい。

(座長)
 また、本日ご欠席の2名の委員の方についても、テーマ等に関してご意見があるかどうか聞いておいてもらいたい。

(事務局)
 資料8にあるとおり、来年度は分科会形式でご議論いただきたい。初等中等教育分野及び高等教育分野では、既存の統計調査やそれ以外の業務報告について、どういう形でどういう調査を行っているかの全体像を把握していただき、今後の改善点などをご検討いただくということを考えている。また、二次的利用分野については、すでに具体的な論点が出ているので、4月から全面施行される新統計法の下で、オーダーメードの集計や匿名データの提供について、文部科学省として具体的にどう進めていくかという議論が中心になると考えている。生涯学習分野については、社会教育調査を現在集計しており、その中間報告が8月ないし9月に出るので、それに基づきご議論いただくのが効率的と考えるので秋以降に分科会を立ち上げる方向で考えたい。先ほど話の出た、分野的に横断的な統計調査の開発が必要でないかということについては、そのための新たな分科会をつくるか全体会の中で議論するのかは、今後座長と相談していきたい。

(座長)
 検討会のタイトルにある「新しい時代」をどう認識するか、それからそれに対応する政策が基本にあると思うので、その政策と統計調査の関係をどう繋ぐかという構造をまとめなおして、その中でどういう分科会が必要かということをみるとすっきりすると思うので、事務局でまとめていただきたい。 

(オブザーバー)
 経済系の統計と教育の統計とではかなり性質が異なる。乱暴に言えば、経済産業・雇用分野の統計は、ある種のモデルがあり、例えば国民経済計算のように、そのデータがあればGDPがいくらになるというような方程式があり、それ自体に合理性があるが、教育の場合はそれがはっきりしていない。今後分科会を作って議論していく際、目的の意味付けをしないと統計の意図がはっきりしない。この調査を行うことによってどういう意味があるのかということを細かく見ていく必要がある。

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生涯学習政策局政策課