3−3.専修学校の新たな位置付けに関する論点
社会環境の変化に対応した人材育成の必要性やキャリア教育・職業教育の重要性を踏まえ、新たな学校種に関する提言について検討するに当たっては、以下のような論点を踏まえて検討を進めることが必要である。
また、その際には、2.で述べたように学校教育全体の中での職業教育の意義・在り方についても総合的な検討が必要である。
(1)高等教育関係
- 高等教育段階では、大学のキャリア教育重視の傾向が、従来から、きめ細かな職業教育を施してきた専門学校の機能・役割に近接してくるものと考えられることから、職業教育における大学と専門学校の本質的な相違をどこに求めるのか、高等教育が職業教育に果たすべき役割を踏まえながら、改めて議論する必要があると考える。
すなわち、大学においては、平成3年の大学設置基準の大綱化以降、ユニバーサル化と言われる高い大学進学率を背景として、初年次教育や資格取得支援等を教育課程内外に位置付ける例が増えつつあること、就職支援を念頭に職業資格を意識した新しい学科が作られていること、基礎教育においてスキルの訓練に関する教育の比重が大きくなっていること等、学生の要望を反映した教育が大学の重要な役割として定着しつつある実態が指摘されている。
他方、専門学校においても、4年制の課程の設置、修業年限の長期化や、一定の要件を満たす専門学校修了者への大学院入学資格の付与が行われるなど、教育の高度化が図られているといった実態がある。
- 短期大学は、「深く専門の学芸を教授研究し、職業又は実際生活に必要な能力を育成すること」を目的とする短期の高等教育機関として、保育・幼児教育、家政、経営・実務、看護等の分野を中心に、職業教育や実際生活に必要とされる能力を身に付ける教育を行い、職業人の養成を目指した教育を行ってきたところである。今後、キャリア形成の支援の観点を踏まえた教育の推進が期待されるところであり、その在り方との関係を含めて今後議論していくことが必要である。
- 高等専門学校は、「深く専門の学芸を教授し、職業に必要な能力を育成すること」を目的として、工業分野を中心に高等学校段階を含めた5年一貫の職業教育が行われてきた。しかし、工業分野及び商船分野以外の学科は、情報系や経営系の4学科に止まっているところであり、分野の拡大や高等学校等を母体とする新たな高等専門学校の設置の可能性等についても議論されている。新しい「職業教育」の在り方を考える上では、高等専門学校を巡る議論の動向や高等専門学校と高等学校等との関係も視野に入れて議論を進めることが必要である。
- 職業人の養成を目指した教育を、高等教育段階において全体として推進していくために、大学・短期大学・高等専門学校・専門学校といった高等教育機関それぞれの学校種の目的・機能を踏まえた考え方の整理を行うことが必要である。
その上で、職業教育機能に重点を置く新たな学校種の創設の検討に当たっては、当該学校種の目的について、他の学校種との関係で十分に検討を加えることが必要であり、更に、入学資格、修業年限、他の学校種との接続等についても、議論を深めることが求められる。
- その他、かつての専科大学構想(注7)、諸外国の制度(注8)や改革の動向等も十分勘案の上、議論を進める必要がある。
- なお、大学教育においては、社会や学生からの多様な要望に対応するためには、学部・学科等の組織に着目した整理から、学位を与える課程(プログラム)を中心とする考え方に再整理していくことが必要であるとの指摘があり、その仕組みの導入の是非についても、現在の中央教育審議会の審議事項となっていることにも留意する必要がある。
- (注7) 昭和33年の学校教育法の改正により、入学資格を高校卒業程度、修業年限を2年又は3年(必要がある場合には、3年の前期課程を有する5年制又は6年制とすることができる)とする、4年制大学とは別個の高等教育機関の創設を目指したもの。審議未了・廃案となった。その後、大学審議会において、短期大学又は高等専門学校の在り方に関する議論の中で、修業年限や名称、制度上の位置付け等について様々な意見が出されている。
- (注8) 例えば、ドイツは複線的な職業教育体系を有していること、アメリカのコミュニティカレッジはパートタイム学生の割合が多いこと等を参考とすることも考えられる。
(2)後期中等教育関係
- キャリア教育・職業教育を充実していく観点から学校の在り方を検討するに当たっては、高等学校等、後期中等教育との関係についても留意する必要がある。
また、その際には、後期中等教育においては、進学率が97パーセントとなっている高等学校の在り方、すなわち、高等学校においては普通科(72パーセントが在籍)、総合学科(同4.5パーセント)、専門学科(同23パーセント)において一定の基準(学習指導要領)の下に多様な教育が展開されているが、このことについて、2.で見たような職業教育の充実の観点から、極めて多様化した生徒に対する教育の在り方としてどう考えるのかということも課題となる。
さらには、義務教育修了段階から一貫した職業教育を行っている高等専門学校の位置付けについても視野に入れる必要がある。
また、専修学校高等課程(高等専修学校)の在り方についても、このような後期中等教育段階における学校教育の在り方や高等教育との接続との関係から検討を加えていくことが求められる。