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今後の家庭教育支援の充実についての懇談会

2002/04/24
今後の家庭教育支援の充実についての懇談会(平成14年度  第1回)議事要旨

今後の家庭教育支援の充実についての懇談会
(平成14年度  第1回)議事要旨


1.日  時: 平成14年4月24日(水)15:00〜17:00
   
2.場  所: 霞が関東京會舘「シルバースタールーム」(霞が関ビル35階)
   
3.出席者:
(委員) 大日向座長,大下委員,門川委員,北村委員,河野委員,兒玉委員,坂本委員,嶋崎委員,宮崎委員
(文部科学省) 池坊大臣政務官,近藤生涯学習政策局長,名取主任社会教育官 他
   
4.議  題: (1)中間報告に対する意見概要について
(2)その他
   
5.議  事:  
      ・ 池坊大臣政務官より挨拶があった。
      ・ 昨年度に引き続き大日向委員が座長となった。
      ・ 事務局より配布資料について説明があった後,意見交換が行われた。
(主な意見は以下のとおり。)

<各委員からの意見>
   中間報告に対する意見についての関係者の属性による傾向のようなものはあったか。

   概ねのところとしては,都道府県や市区町村の教育委員会の関係者の意見は肯定的なものが多かったが,学校関係者や経済団体の関係者からは,親がもっとしっかりしなくてはいけないといった指摘もあった。
また,子育てネットワークやサークルの関係者からは,基本的には賛同するが,支援のための取組をもう少し具体的に示したり,もっと福祉サイドとの連携を図ってほしいといった意見もあった。

   育児に非常に熱心で負担を感じるほどの親がいる一方で,親としての自覚が足りない親もいるというのが今の実情である。したがって,回答者の属性ということのほかに,どういうタイプの親をより多く見ているかということもある。両方のタイプの親を視野に入れてメッセージを発していくのか,多少自覚のない親がいても,ともかく支援をしていくという方向で親育てを中心にこの報告をまとめるのか,きちんと議論することが必要である。また,思春期の子どものことが視野に入っていないという指摘もあり,思春期の問題を視野に入れてもう少し議論をしていく必要があるのではないか。

   京都市では,小,中,高等学校,幼稚園を通じて教職員に送付したほか,PTA,子育てサークルの代表者,「人づくり21世紀委員会」の経済界も含めた80団体ほどに送ったところ,議論が大いに沸いていることはよいことだと思う。属性や世代によって意見は異なるが,概ね肯定的である。それぞれの立場でどのような責任を果たしていくのか,行動につなげられるかが重要と考える。また,子育てサークル等は,国が子育てネットワークの代表を委員に入れていることに非常に共感を覚えている。
   京都市では子育て支援の取組の一つとして,幼稚園,保育所の関係者,読書活動振興に取り組んでいる方,京都に縁のある作家,保健所長,書店の代表など20人の委員による「読書活動振興市民会議」という組織を立ち上げ,市全体で読書を通じての子育て支援を始めたところである。
  その場の委員の意見としては,子どもが小さい時に自分の膝に子どもをのせて絵本を読み聞かせした体験を皆に伝えたら,乳幼児期の時からの親の読み聞かせがもっと増えるのではないかというものがあった。また,18歳の作家からは,最近は中学生,高校生になると極端に本を読まなくなるが,昔の人間が書いた本からも,今のはやっている歌と共通するメッセージ性を感じることがあるということを知ってもらえば,若い人ももっと本を読むのではないかという意見が出された。

   最終報告では全国の先駆的な子育て支援の事例や,様々な優れた活動,面白い活動の事例を集めて資料編を作りたい。

   子育て支援の関係者に中間報告を送ったところ,国が子育てサークルや子育てネットワークのことを検討していることに驚いており,自分たちの普段の活動が評価され,温かい風を送ってもらっているという印象の言葉が返ってきた。
  内容に関するものとしては,自分の住む地域の公民館では子育て支援が行われていないので,具体のサポートがほしいといったものもあり,この点での地域格差が非常に大きいと感じた。そこで,例えば,実際どのくらいの地域で,公民館の運営を審議する委員会に子育て当事者が入っているのか調査をし,数値目標を示すとか,行政が子育てサークルの状況を全く把握していない地域については,子育てサークルの情報収集といった具体的な行動を期待したいとの意見もあった。

   社会教育委員の会議などで年輩の方の意見を聞くと,世代間の受け止め方の違いの大きさを感じるが,中学校の教員には,子どもの思春期を乗り越えようと苦労している家庭の実態を見た上で意見を出している人もいる。思春期の子どもの子育てのことを報告の内容に加えると,年配の世代の方たちに対する説得力が増すのではないか。
  自分の父親が全く子育てをしていない世代の父親だと,子育てを一緒にと言われてもとまどいが出るので,父親の育った過程をもう少し細かく見た上で企業に提言してはどうか。

  中間報告をまとめる時の論点の一つが,父親の家庭教育について企業に対してどこまで踏み込んで言うのかという問題であったが,経済団体からはどのような意見が出されたのか。

  経済団体の意見の多くは,概ねは,文部科学省や教育委員会等が中間報告のような取組を進めることに賛同するというものであったが,現在企業経営が厳しいこともあり,父親が家庭教育に参加すれば,どのような効果が出るのかということを分析する必要があるといった意見もあった。
  このほか,問題点と対策の因果関係をもう少し整理してほしいという指摘や,行政,企業,市民が一体となった取組の推進については具体的なイメージがつかめるような提言にしてほしいという意見もあった。

  20代や30代の父親の中には子育てを楽しみたいと考える人が増えてきている。職場環境が許さないという実態があるが,それだからこそ逆に,夫婦で子育てを楽しめる社会的な枠組について提言してはどうか。ドイツは年間労働時間が約1600時間で大きな経済力を持っているのに対し,日本は年間約2000時間であることを考えると,父親が家庭に帰っても,なおかつ底力があるということを目指していくことを示すことが必要ではないか。

   子育てというのは,効果を評価するところから離れるのが一番大事なことであり,父親が育児に参加したから子どもが優秀になるというようなレベルでこの報告書をまとめると,かなり息苦しくなるのではないか。

   最近は,企業も行政も成果評価に変わってきている。成績評価を重視する企業文化の中で20年,30年育っていくことを考えると,今の経営者よりも,これから経営者になる人の方がかえって目に見える効果を求めるようになるのではないかと心配である。中長期雇用がなくなっている中で,すぐに効果が出るものではないが,10年後,20年後に結果が出るかもしれないというものがあることが見落とされつつある。

   企業関係者の意識は大きく変わってきている。家庭教育の重要性について立場上言っていないが,声に出して言わなければならないという時期が来ていると思う。

  人によって育児や家庭についての考え方が違うので,親に意識の差があることに触れてから各論に入った方がよいし,意識の部分と施策の部分とをもう少し分けた方がわかりやすいのではないか。
  また,企業と子育てのかかわり方については,父親や母親をうまく雇用することによって,仕事と子育てが両立できるような制度と運用について具体的に書けば,説得力が高まるのではないか。

  ビジネスマンの思考が仕事以外の家庭と家庭を包む生活に少しずつ移ってきている。そういうものに目覚めた人が地域の中でどんなことをやっているのかについての情報を欲しがってきているので,子育てサークルなどの子育ての当事者の取組の事例だけではなくて,「こんなおじいさんは素敵」といった中高年の子育て支援のモデルとなるような事例も紹介してはどうか。

  4月に団地の中の幼稚園から商店街の中の幼稚園に異動したが,子育て中の親の環境,意識については異なっている面と共通している面と両方あると感じているが,乳幼児期の子どもへの関わり方が思春期の自立の容易さなどにも影響しているように思う。
  4月から完全学校週5日制が始まり,父親が学校や幼稚園に来にくくなった。保護者に5日制について聞いてみると,休日が増えたからその分子どもの世話をしなくてはいけないから困るという保護者と,子どもと一緒にやりたいことが楽しめるという保護者とに分かれている。5日制になった意味を本当に理解し,父親も母親も地域も皆で楽しめるようにして,地域の特徴に応じて,幼稚園や学校も含めて地域で一緒に子育てができるようになるとよい。

  思春期の子どもの話をすれば,乳幼児期の子どもを持つ母親たちが年配世代とうまく接点が持てるのではないかという話だが,具体案があったら聞かせてほしい。

  幼稚園の園長先生から,保護者会を見ていても,今の親は自分勝手で基礎的なことを子どもにしつける力もないが,幼児期の子育ての結果が思春期に出てくるのだという話を聞いた。
  また,中学校の先生からは,親が思春期に子どもと真っ正面から向き合うことでいろいろなことが変わっていくという面があり,子どもが小さい頃からの親子のふれ合いが基礎となることに早く気づいた方がよいという話を聞かされた。幼少期のふれ合いの重要性を理解してもらうことが一つの鍵かと思う。

  今の若い父親は授業参観や学校行事への参加も多く,家庭教育に関わっていこうとする機運は高まっている。子育ての観点と親育ての観点の両面からまとめ,具体例を資料編に織り込むと,若い世代の人には受け入れやすいと思う。

  社会人としての教育は社会人になってからでは遅く,幼少期からの教育が本当に重要である。様々な仕事の現場を見ていても,すばらしいアイデアを出すとか,危機管理ができるといったことなどは,企業で実施する1泊2日の研修で身に付けられる力ではない。家庭教育が重要であり,社会人になってから影響が出るということをコラムで紹介すれば,経営者も管理職も少しわかってくれるのではないか。

  少子化に関する有識者会議の席上で,子どもが生まれたときから何年間か父親が子育てに関わっているケースと関わっていないケースとを比較したところ,思春期以降に明確な差が出てきたという外国の調査結果が紹介されていたが,そういう情報もコラムに入れるとよいのではないか。

  子育てについては立場によって考え方が異なるため,本報告書の構成を,まず現象を見せて,分析をして,論点を絞って,最後にこういう解決策があるというように持っていくのはどうか。結論だけ先に書くと,一方的な押しつけのような印象を持たれてしまうので,各世代の人になるほどと思わせる工夫が必要である。子育て支援は行政全体のテーマであり,内閣府や厚生労働省,それらの外郭団体などが実施した調査等をコラムや別添の資料に入れてはどうか。

  いろいろな意見を並列的にまとめると,なぜ父親の育児参加が必要なのかとか,なぜ母親のみに育児をさせるのではなく,社会で皆が支えていくことが必要なのかという議論が必ず出てくるので,こうした点の理由を説明するためにも3段論法的な構成案にするのがよいのではないか。

  高度経済成長期は,男性は仕事,女性は育児といった性別役割分業で乗り切るというのが社会経済的な体制だった。少子高齢化社会に入った現在,そうした体制との齟齬が大きくなってきているので,育児ストレスがあるのではないか。子どもの育ち方が歪むかどうかということよりも根本的なところでなぜ男性参加が必要なのかということを議論して,基本的な家庭の在り方,人の在り方としての21世紀はこうだといったモデルを提言できるとよいのではないか。

  地域で子どもを育てることは,子どもの教育の面にとどまらず,教育をきっかけにしたコミュニティづくり,人々のネットワークを作っていくことなど様々な分野への波及効果を持っている。学社融合と言われているが,子どもたちと関わることは中高年の生涯学習でもあり,高齢者対策としての効果もあるということを言ってもよいのではないか。

  企業の経営者から,子どもの時に家庭できちんと家の用事をしている人間は,仕事をしていても何でも気がついて動けるという話を聞いた。また,大学の先生からは,介護保険に関する資格取得を目指す学生たちの多くが自分の家の掃除や食事の準備をしていないという話も聞いた。

  父親が忙しくても子育てに関わっているという話をいくつかコラムに書いてはどうか。例えば,私も,忙しいタクシーの運転手から,自分の子どもに本を与え,読んだ感想を聞いたり,子どもが読む本を全部一生懸命読んだりしているという話を聞いた。
  また,海外に単身赴任した父親から毎日同じ時間に必ず電話が入るので,毎日,その時間になると電話の前で子どもが待っている家庭がある。その家庭は,他の家庭よりも親子の会話ができている。子育ては,手間暇,心をかけることであり,メールや電話を使うなど忙しくてもできる心の使い方がある。大事なときにちょっとしたことでも子どもに心をかけ,具体的な行動に現すことで子どもは必ず変わってくるということを盛り込めたらよい。

  京都市で子育て支援として中学校での給食の実施を検討した際に,2000人の子どもの食生活を調べた。その結果,朝食を食べているかどうかで,中学生の落ち着き具合をはじめ,様々なことに影響があることが分かった。また,中学校での給食については,家庭からの弁当を持ってくるか給食にするかを選択制にしたところ,給食を選択した者は全体の35%から40%の間に収まった。

  各項目を,レギュラーなケースと,工場閉鎖のために家族と別居している父親といったイレギュラーなケースに分けて,レギュラーなケースについての提案をするとともに,イレギュラーなケースについての対応策もコラムを使って提案してはどうか。

  コラムに紹介できる事例として,例えば,親子の会話が少ないので,子どもたちが見たいテレビ番組の少ない木曜日をノーテレビデーにしようという取組を幼稚園で実施したところ,親子の会話が増えたという話もある。

  一般の人たちにこの中間報告を読んでもらったところ,他省庁の施策に対する意見を出してくるといったケースもあり,家庭教育に対する支援という一部の領域での捉え方はされなかった。子育て中の親にとっては省庁の垣根がないので,政府として子育てをどのように応援しているのかという全体像を情報として提供できるとよい。

  朝の10分間の読書推進も効果を上げている。国民的なうねりとして広めていけるようなことや施策に反映できるようなものを考えていただけるとよい。
   
  ・次回日程は別途調整することとし,閉会となった。
   
  (男女共同参画学習課家庭教育支援室)

 

(生涯学習政策局男女共同参画学習課家庭教育支援室)

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