戻る

高齢者との連携を進める学校施設の整備について
−世代を超えたコミュニティーの拠点作りを目指して  


はじめに

  文部省では,従来より,教育内容の多様化,高度化等に対応した学校施設の質的向上を図るため,学校施設整備の基本的な考え方や計画・設計上の留意事項を示した学校施設整備指針を策定し,学校の設置者に対して指導・助言を行ってきている。
  また,生涯学習社会における学校施設の在り方や学校と他の文教施設との複合化については,文部省における調査研究協力者会議の報告「文教施設のインテリジェント化について−21世紀に向けた新たな学習環境の創造−(平成2年3月)」,「学校施設の複合化について(平成3年2月)」等において提示し,これらに基づき良好な学習環境が確保され,地域に開かれた快適・安全な学校施設の整備を推進してきたところである。
  近年,学校教育においては,豊かな人間性,社会性の育成や自ら学び,自ら考える力の育成が求められ,個性を生かす教育や体験的学習が重視されている。また,完全学校週5日制の下,ゆとりある教育活動を展開する中で,学校と家庭・地域が連携・協力し,地域全体で子どもたちを育てていくことの重要性が指摘されている。
  このため,文部省では,地域に開かれた学校施設の整備を進めていく観点から,学校開放のための施設・環境整備の具体的な方策等について検討を進め,平成7年3月「学校開放のための施設・環境づくり」を作成し,刊行した。
  さらに,今日の都市部における学校施設に関する諸課題として,学校施設の高層化とともに,学校と福祉施設等の地域施設との複合化が進行していることに鑑み,平成9年10月には,「複合化及び高層化に伴う学校施設の計画・設計上の配慮について」を取りまとめ,今後の学校施設の整備において適切な計画・設計が図られるよう各都道府県教育委員会等に通知したところである。
  今回の調査研究は,このような,地域に開かれた学校施設,あるいは,地域のコミュニティーの拠点としての学校施設の整備をさらに推し進めるとともに,中央教育審議会第二次答申(平成9年6月)において提言された「高齢社会に対応する教育の在り方」を踏まえ,今後,学校が地域の高齢者と連携を図り,交流を進めていくための学校施設整備面の方策を検討することとし,検討に当たっては,「学校施設整備指針策定に関する調査研究協力者会議(主査 元日本育英会理事長 鈴木勲)」の下に「学校と高齢者施設との連携に対応する新たな学校施設の在り方に関する検討ワーキンググループ(主査 共立女子大学教授 長倉康彦)」を設置し,全国の施設の実態調査や現地におけるヒヤリングを行いながら検討を進め,本報告書を取りまとめるに至った。
  本報告書においては,高齢社会に対応する教育の一環として,高齢者との交流の重要性と,そのための学校施設整備の必要性を記述(第1章)し,学校施設において高齢者との交流を行う際の施設整備の留意事項を提示(第2章)するとともに,特に,高齢者施設との連携を推進するための一方策として,学校と高齢者施設との複合化について,施設整備の留意事項を提示(第3章)している。また,これらの方策をより分かりやすく示すため,各交流形態に応じたイメージ図を作成し掲載している。
  この報告書が,広く学校関係者に活用され,今後,各学校の創意工夫により,地域の高齢者との連携・交流が積極的に図られ,学校施設が地域のコミュニティーの拠点として機能していく一助となることを期待するものである。