全国的な学力調査に関する専門家会議(平成31年4月12日~)(第1回) 議事要旨

1.日時

平成31年4月12日(金曜日)15時~17時

2.場所

文部科学省 東館16階 16F大会議室

3.議題

  1. 座長の選任等【非公開】
  2. 今期の検討事項等
  3. 平成31年度英語「話すこと」調査検証ワーキンググループの設置について
  4. その他

4.出席者

委員

耳塚座長、大津座長代理、鎌田委員、齋藤委員、柴山委員、垂見委員、土屋委員、針谷委員、益川委員、松谷委員、村山委員、吉村委員

5.議事要旨

議事1:座長の選任等(非公開)

・事務局より、座長として耳塚委員が推薦され、承認された。
・耳塚座長より、座長代理として大津委員が指名された。
・事務局より、資料2に基づき、会議の運営について諮られ、原案通り決定された。

議事2:今期の検討事項等

・議事2に先立ち、座長より就任のあいさつとして、以下の2点について、今期の課題として特に検討していきたいとの発言があった。
1)英語「話すこと」についての実施方法、結果の分析
2)教育のEBPM推進の観点からのデータ提供や分析の改善・充実
・資料2-1、2-2に基づき、事務局より説明の後、意見交換が行われた。主な意見は以下の通り。

【委員】  特に学校質問紙調査の内容から、学校が教育内容を精選し、教育方法を工夫していくことの必要性があると感じた。結果と学力調査との関連性をどのように見取って、学校に還元していくかというところを大事にしていただきたい。
 それから、調査結果を公開しそれを次に生かしていくための手法として、紙ベースで様々なものが出てくるが、たくさんの資料が関わってくるので大変になる。そこに次の授業改善のシステムが分かりやすくなるとか、実際に子供がアプローチできるような方法を提案するとかなどを考えていただけたらありがたい。

【委員】  教育のEBPM推進は大事なこと。特に政策にエビデンスをきちんと反映させていくというのは重要だと思うが、一方で全国学力・学習状況調査が始まったときは、学校にフィードバックしながら授業のやり方や様々なことを改善していくという目的で始めていたと思う。そういったデータがどれだけ直接的に使えるものなのか、調査方法の特性や現在の集計方法を踏まえて丁寧に検討する必要があると考える。同時に、新学習指導要領に変わる中で、学力の3本柱をどれだけ一体的に育むことができていたのかということを測る測定の在り方についても検討していく必要がある。
 それに併せて、従来のテストに対してCBT(Computer Based Testing)への動きの中で、今まで紙だと測れない解答の思考過程が測れるようになってきている。それも整理しながら、よりEBPMとしてふさわしい調査の内容と方法、特に子供たちの資質・能力がいかなる状態かを反映させる形で測定できているのかということと対応付けながら、中長期的な在り方を構築することができれば、より価値の高いものになっていくと感じる。

【委員】  英語の調査がどのような結果が出てくるか、全国でどのくらいの英語力、4技能を持っているのかということに関心を持っている。そういった分析を、具体的にどういう問題で進めていくと生徒にプラスになるかということを考えていきたい。またCBTの導入については、私学でも学校によって大きな差がある。CBTの導入は不可欠だと思う。国の支援などの部分も含めてどう進めていったらいいかということで考えていきたい。
 それから、B問題がどの程度思考力や判断力が測れるかということにも関心がある。その学習指導についてどのようにしていくかということも、これからの課題ではないかと思う。

【委員】  学校や教育委員会と一緒に分析・検討をすることが多いが、学校ではデータを持て余している部分がある。結果が来てからその結果を分析するのではなく、PDCAサイクルとしては先にプランがあり、それをチェックするために使ってほしい。たとえば、取組評価シートを作って、県にちょっと使ってもらったことがある。まずあなたの学校は昨年度何に力を入れましたか、その結果は調査の学力や児童生徒質問紙のどの項目にどう表れると思いますか、では結果を見てみましょうというように、調査結果を使ってほしい。もう少しうまく使われるといいなと思う。
 それから、学校がなかなか変わらない。限られた先生方の間で見て検討して取組を考えているということが幾つかの学校で見られる。みんなで共有して眺めながら議論できる感じのデータ提供ができればもっと使ってもらえるのではないかと思う。

【委員】  CBTに対してはじっくり取り組んだ方がいいと考える。CBTは30年ぐらい前にちょっとはやっていたが、今に至るまで盛り上がらなかったのはなぜかということを踏まえた上で取り組んだ方がいい。また、CBTは十分な環境を整えないと成果を得ることができないと考える。まずは環境整備が一番。その上でできるかどうかを判断し、導入することによってどういう利点があるか、得られる新しいデータをどのように分析、使用することができるか、それらを含めて十分に検討してから導入しても遅くはないのではないか。 
もう一点は、EBPMの推進について。前の委員会から話題になっているが、やっとローデータを利用することができるようになったが、国の方ですぐに分析する、そしてどうなっているか把握するという状況にない。そういう環境が整っていないというところがまず問題であると考えている。その環境を整えるところにも力を入れていただきたい。

【委員】  どれも大事で深い問題だと思うが、まず英語については、次の調査の全貌を早く披露できることが大事なのではないか。今回「話すこと」の調査をするが、そこに先生方の質の問題も入っているのではないか。先生方が「話すこと」の力をどのように子供に付け、評価をしていくかということについて、国としていかに応援ができるかということが必要ではないかと思う。
 CBTに関してはもちろん必要なことで、慣れていないから世界標準の調査の結果が悪かったでは済まないと思うが、結果的に様々な家庭環境や状況の中で、CBTに取り残される子が出てこないかが懸念される。そういうことが絶対起きないような配慮をしていくのが日本のよさだと思うので、その点を気にしている。
 それからEBPMももちろん必要だが、その思考だけに落ち込んでしまうと人間は見えるものによって全てが決まるかのような錯覚にとらわれてしまう。そうすると、教職員というチームが子供たちを指導するのにどれだけ熱を持って取り組めているのかが見落とされたりする。教育の対象は人間である。人間ほど深いものはない。見えるものを調査するということは、その片方で見えないものを大事に見ていくという姿勢が絶対必要だと思う。そういう点では、質問紙調査において管理職の先生ではなくて最低でも実施学年の先生方、できれば全ての学校の先生方の意識が読み取れないかと思うし、それを願う。それと同時に、活用事例集ができることで少し危惧するのは、作り手がいて、作られたものを先生が頂く。これは教師にとってはある意味で恐ろしいことである。つまり、主体性を喪失して、どこかにお手本や正解があるようになってしまったら、学校の教育の仕事というのは、ある意味成立しなくなるのではないかと考える。ふだん自分が一生懸命目の前の子供を人間として育てようとしていれば、自分は一生懸命この方向でやっていますからというぐらい言ってほしい気持ちが、片一方ではある。先生方の主体性はいかがなものかということと関連して、やっぱりそういう作り手、作っておられる先生、それから実際先生方の前で説明されている先生、つまり、先生方のいろいろな思いをよく知っている方の話を聞かせてもらうということも大事ではないかと思う。
 最後に、大変関係あると思うのだが、最初の頃に比べてマスコミの方の人数が減っているのではないかと。定着したと思って安心してもらっているのならいいのだが、関心がなくなっているとすると困ったことだと思う。

【委員】  2点お話しさせていただく。まず、英語調査に関すること。英語は毎年やるものだというイメージを皆さんが持っている。今後様々な課題はあるかと思うが、英語について毎年の調査に入れていけるとよいのかなと思う。高校入試には国・数・英というイメージがあるので、学力調査が入試に影響するわけではないが、そこがうまく伝わっていかないところある。今後本体調査の中に英語をどのように入れていくか考えていかないといけない。
 それと、毎年県で学力調査を行っている自治体が非常に増えてきた関係もあり、余り区別がついていないところがある。どう区別をしていくかというのは、本来ここで考えることではないのかもしれないが、それぞれのよさ・強さを生かし、うまく外に調査の報告ができるような形を検討していくことも必要だと考える。また併せて、保護者調査に関しても、保護者の環境や家庭環境が非常に変わってきた関係もあるので、32年度の調査になるかと思うが、質問等も含めて検討に協力したいと思っている。

【委員】  全国学力・学習状況調査は、分野横断型、専門統合型の、学校、保護者、教育委員会、それから、何よりも児童生徒に大きな影響力を持っている総合的な社会科学かと考えている。大規模学力調査、IRT(項目反応理論)、CBTのエンジン部分、EBPM、データ対応、そのあたり学力の測定技術論の立場から参加させていただければと思う。

【委員】  2点述べる。1点目、EBPM推進の観点からのデータ提供や分析の改善について。学力調査の分析に携わって一番感じることが、全国学力調査は非常に欲張った調査だということ。目的もだが、質問項目などを見ても、非常に多岐にわたっている。分析をする立場になると、国として何を評価したいのか、どういった政策を評価したいのか、どういった実態を評価したいのかというのがあると、もう少し質問項目に濃淡を付けて絞れる。質問項目の整理ができるといいかと思う。
 2点目、英語は初めての実施でかなり注目をされている。そこで公表する上で2点ほど考慮していただきたい。まずは、できるだけポジティブに捉えられるよう、実施面で、何%しかデータがとれなかったではなく、何%もデータがとれたというような捉え方がされるような工夫が必要である。もう一つは分析をする側で、全てが学校の成果、学校に期するのではなく、家庭の環境等を統制した上、どのような実態があるのかという点がきちんと分析された上で公表されることが大事だと思う。

【委員】  この2年ほどEBPMという言葉が非常によく聞かれる。結果の利用という観点からのEBPM、というのに関心を持ちいろいろ調べていると、EBPMという言葉について、我が国では大きく3つの解釈の仕方があるのではないかと感じる。
 日本語に訳すと、例えば、教育再生実行会議の資料だと、客観的な根拠を重視した教育政策、政策立案とある。客観的な根拠ということに関してよくある解釈では経験や勘ではなく数字やデータを使う、こういう考え方がEBPMだと。この解釈のされ方をするのが、一番多いのではないか感じる。この考え方からすると、全国学力調査、13年間、毎年200万人以上、これだけの膨大な数字、データがあるのであれば、これを利用しないわけにはいかない。こういう話が出てくるのは当然かと思う。
 2番目の解釈として、特にいろいろな省庁で聞くのは、政策に対する評価、過去に行った政策の事業評価、これを数値などに基づいて行っていくのがEBPMだと。こうなると、過去の事業評価あるいは行政レビューなどとどう違うか、という話になってきている。
 第3の解釈、EBPMが進んでいると言われているイギリスやアメリカを調べてみると、今の例の行政レビュー、あるいは事業評価と行政評価というのは、過去に行った政策の評価と言える。だが、未来に行う政策に対する評価、これがEBPMだと。何で未来の政策評価ができるのかというと、例えば学力を例にすると、隣の自治体ではこういうような政策、あるいは、隣の学校であればこういう指導をしたら学力が向上したということが客観的なデータに基づいて実際に示される。学力の向上、例えば、国語の学力を向上させるための指導方法に幾つかロジックモデルとして考えられるものがあるとする。その中で実際にデータに基づいて本当にここの学力が上がるのかどうなのかということを、客観的な根拠で示されている、そういう指導方法はどれなのか、そのような過去の政策あるいは指導方法など、そういうものに基づいて、これから自分たちはどういう政策を打つのか、どういう指導方法をしていくのかということを考えていくのがEBPMだと。そういう意味で、未来のこれから行う政策あるいは指導方法についての評価をしていく、それを過去の客観的な根拠に基づいてしていくという考え方が第3の考え方としてあるかと思う。
 全国学力調査について、1あるいは2の考え方であれば、これだけ膨大なデータがあるので、これを使わないわけにはいかないという考え方が出てくる。しかし3の考え方では、今の全国学力調査の枠組みは、因果推論をしなければいけない。因果推論にこのデータは使えるかというと、幾ら膨大なデータであっても不十分ではないかと。それを解決する一つの方策としては、経年変化分析というのは非常に強力なツールになるかと思うが、それだけでもやはり足りないだろうと考える。何をもってEBPMと言うのかという解釈にもよるかと思うが、もし3の解釈ということで進めていくのであれば、本体調査に加えて評価したい政策などについて必要なデータがとれるような附帯調査などの設計といったものも必要になってくるというふうに考える。

【座長代理】  見ていると2つの側面がある。1つは、学校にこういう教育をしてもらいたいというデモンストレーションとして全国の学校で実施する側面。もう一つは現状の教育行政政策、現在の教育方法がどういう結果をもたらしているかをモニタリングする役割。比較的前者の役割の方が大きくて、後者の方がサブというような位置付けであったかと思う。けれども、かなりのお金を使って大量にやっていることなので、どういう行政手段が、どういう政策が、あるいはどういう教育方法がどういう帰結をもたらすのかということの裏付けをとるという視点を強く持つといいと思う。
 また、採点のことについて。大量の記述を大量の採点者が相当の時間を掛けて採点する仕組みをとっている。これはやり続ける限り相当のお金が掛かることになる。何らかの効率化、現状の人工知能とか画像認識のテクを使ってもすぐには難しいとは思うが、どうにかして効率的に素早くやる方法を工夫していただかないと、それだけのお金を使っていることに対する説明責任をどんどん問われることになるのではないかと思う。

・事務局より、資料2-3に基づき説明の後、分析・活用等の検討のためのワーキンググループの設置が諮られ、原案通り承認された。

議事3:平成31年度英語「話すこと」調査検証ワーキンググループの設置について

・資料3-1から3-4に基づき、事務局より説明の後、平成31年度英語「話すこと」調査検証ワーキンググループの設置が諮られ、原案通り承認された。

議事4:その他

・参考資料に基づき、事務局から全国学力・学習状況調査の個票データ貸与について説明があった。


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総合教育政策局参事官(調査企画担当)付学力調査室

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