いじめ防止対策協議会(平成30年度)(第3回) 議事要旨

1.日時

平成31年2月5日(火曜日)15時00分~17時00分

2.場所

文部科学省3階 3F2特別会議室

3.議題

  1. いじめの重大事態に係る調査報告書の分析について
  2. その他

4.出席者

委員

岡野委員,栗原委員,高田委員,佐藤委員,新海委員,水地委員,田村委員,針谷委員,笛木委員,松谷委員,森田委員,八並委員,渡部様(横山委員代理)

文部科学省

芦立文部科学審議官,永山初等中等教育局長,丸山初等中等教育局審議官,大濱児童生徒課長,松木生徒指導室長,粟野課長補佐,星専門官

5.議事要旨

※議事に先立ち,座長の挨拶と代理出席者の紹介があった。
※事務局より資料の確認と資料の説明があった。

【座長】   それでは,いじめの重大事態の調査報告書の分析について,事務局から示された論点を基準に議論を進めていきたい。いろいろな点から前回の整理をしてもらったので,それに沿って議事を進める。まず資料1のいじめの重大事態の調査報告書の分析に係る方針,まず分析の目的についてはいかがか。
【委員】  私は総じて被害者側の代理人をしており,特に第三者委員会の関係では,学校の個別事案に対する分析・検討,それと報告書だ。ガイドラインにも冒頭書かれているが,亡くなった場合は遺族になるが,彼らが知りたいという思い,それにこたえる役割があるが,そういう観点から報告書というものが被害者に対してどの程度説明されたのかということが気になる。それから,数件ということで,どういう観点から事案を選んでいくのかということだ。文科省の方で分析・検討するというが,今見る限りでは,報告書をそのまま整理・検討して記載するということのようだが,それでいいのか。例えば最初の事例として挙げた中では「死にたい」というように子供がわざわざ書いた。子供が「死にたい」と言ったことは極めて重大なことだ,ということを私は精神科医から聞いたことがある。だから,報告書の分析だけで十分なのかという辺り,疑問に思ったのだが。
【座長】  恐らく事務局の方も,これについては検討した点だろうと思うが,いかがか。最初の遺族の観点から,手続,説明等含めて,どういう具合に進めていったのかという点だが。
【事務局】  遺族に対して報告書がどの程度説明されたかというのは,マクロ分析の項目にそれを入れるべきかどうかということかと思う。私どもとしてはあえて外しているわけではなくて,あくまで公表されている報告書から一般的に抽出できるものをベースとして並べた。そこがどの程度読み取れるかというところは,また一個一個見ていかないと分からないが,もしそれが全体のマクロ分析にとっては重要だということであれば,それも追加することは可能だと考えている。 それからもう一つの,子供が「死にたい」というのが極めて重要だということを精神科医の方が言っているということについては,そのとおりだと思う。しかし,私どもが個別事案分析で3枚程度のものにまとめた際に考えていたのは,レポートがもともと200ページ近くある中で,本来は全部に目を通すのがいいことであるが,そもそもせっかくいいことが書かれていても,それが実際には全然共有されていないから,せめて報告書の中で読み取れるものだけでも抽出して,それを周知してはどうかという,そういう観点で作っている。それを更に掘り下げて,専門家の方から意見を求めて,実は子供の「死にたい」という言葉,これこれこういうものなんだよという,専門家の解説を加えるところまで行けば,確かにより分かりやすくなるかもしれないが,今日示したのは,あくまで調査分析をした報告書の中から我々の方で見て読み取れるものを忠実に引っ張りながら見せ方を工夫したという程度なので,もしその上で専門家の方からの意見をもらった方がいいということであれば,それは貴重な提案としていただいて,また考えたいと思う。
【委員】  あと,どういう観点から事案を選んでいくのかということだが。
【事務局】  どういう観点からというところについては明確な基準は示し難いが,例えば最近スマートフォンが普及していて,ネットいじめがあった。たまたま先生に見えないところでネットいじめが進行していて,表面上は仲良くしていたけれども,実は自殺につながってしまったといったようなことがある県で起こったとする。そうするとこれは当該県だけの問題ではなくて,これだけスマートフォンが普及しているのだからほかの県にもこういった事案があるということを周知した方がいい。そのように我々が思ったら,当該県でたまたま起こったものではなくて,日本全体に,全国に啓発する価値があると思われるものをピックアップしていきたいと思っている。考え方としてはそういう観点で選んでいってはどうかと思っている。
【委員】  今も話題になっていた分析の目的だが,同種事案の再発防止とある。まず一つ目のミクロ分析の方については,結局,今やろうとしているとりあえずの作業というのは分析ではなくて,報告書のサマリーを作るということにとどまっているように思う。だから,文科省としてなり,別のメンバーかもしれないが,サマリーを作って,それを読み合って,そこでどういう問題があるのかということを分析しないと,結局,200ページは読めないから3ページのものだったら読めるということでしかないと思う。調査報告書を積極的に活用することが重要だと,これまで児童生徒課から通知を出しているということからすれば,そう言われたって利用できないよというものを,きちんと利用しやすくするという意味では取りまとめるということは大変大きな第一歩だと思うが,皆さんにそれを発出するだけではなくて,次に,それを題材として専門的に,精神科医の方の意見だとか法律家の意見だとか,そういうものを基に,それを分析していかないと本当の再発防止の役に立つというのは難しいのではないかと思った。 それから,マル2のマクロ分析の方だが,整理項目で何が必要かということについては,そっちの段階のときにもう一度発言したいが,これも整理して並べてみて,これは時間が掛かっているなとか,そういうことをみんながそれぞれ見るというだけではなくて,整理したマクロのものを見て,どういうところに問題点があるのかとか,そういうことを分析していくことが必要だと思う。そのための目標としてここマル2のところでは,重大事態の調査に係る事務の円滑な実施ということで目的にされているのだが,決して円滑な実施が目的ではなくて,少なくとも適正な実施というか,第三者委員会が適正に動いていくというか,被害者の方に対する対応とか,どれだけ問題を抽出できるかということだと思う。事務的にうまく流れるという意味での円滑ということではなくて,今いったことを目標として各地の報告書を整理して,この委員会で検討して,ガイドラインは出しているが,さらにそれを改定するというか,もっと違う視点が必要かとか,そういうことを分析結果を基にやっていくという作業が必要なのではないかと思う。
【委員】  私も大津に関わったのだが,今から考えても,調査ができなかった。例えば本件では最も重要な担任の先生に対する聴取。我々が認定した限りでは幾つかシグナルを出している。この紹介した事案もそうだ。一人で抱えてもいいのだが,なぜ先生はその子供さんから背景事情とか,部活の細かいこととかを聞き出す機会がなかったのか。大津でもその辺りを掘り下げられなかったのは残念だ。それからある指導部会では,一定の人数の方はいじめだというのだが,過半数はこれはいじめではないということになって処理されていく。そういう組織体制の中での討議。それから,いじめという概念が普及していても,いじめではないということも実際あり得るわけで,そういうミクロということになっていくと,そこまで議論しないと,現場の先生で本当にリアルに教訓として残っていかないのではないか。さらっと見ただけで,そうなんだと終わることではいけない。そのように現場に生かすような形での,題材提供とディスカッション提供と,それからそれをサポートする。地方での議論についてサポートする専門家がついて一緒に議論するというシステムを作らないと,ただこれを作って普及しても,と感じる。
【座長】  いまの議論で一つ論点を取り出すと,分析の目的の一番頭の丸の3行目から,当該学校を越えて広く共有し各々のいじめ防止基本方針の改善等に積極的に活用することが重要だ,という論点に関わってくるだろうと思う。ここのところが今後の分析の進め方というところへ流れて,先ほどの,単なるサマリーでは終わっては,せっかくしていることが無駄になるのではないかという点だが,それは後に出てくる今後の進め方のところへ生かしながら,どういうぐあいにこれを分析し,活用していくかという第2弾の分析の取組というか,サマリーを作って,そこから組み上げて,どういう対応策,あるいは今後の各々の学校の基本方針の改善等にどのように役立てていくのか。単なる結果報告を受けた,世に出したというだけではなくて,それがどう実現されていくのか。あるいは,それに対して,この協議会なり,あるいは他の専門機関なりがどのような支援ができるのかということも含めて,今後の進め方というところへ入っていくのが丸の最初の生かし方ではなかろうかと私は読んでいた。だから,後段の方が後の進め方の方に入っていないような気がしていて,その指摘があった,というぐあいに捉えている。この辺は,どういう委員会にするのか,どういうメンバーにするのか,どこでそれを議論していくのかなど,いろいろな論点を含んでいるので,この点については検討いただいて,我々の方へ提示いただければなと思っているが,それでよいか。
【委員】  結構だ。
【委員】  今のまとめに賛同するのだが,前回の会議のときに,私はマクロの分析には意味があると思うが,ミクロに関しては,個別の事案に関しては丁寧な調査がなされて報告書が書かれているとすると,そこから何を分析するのかというのがイメージできないということをいった。要は,それは個別の事例の中身に詳しく入っていくと,結局,この事例だったからということで,その教訓がなかなか一般化されにくくなってしまうのではないかということを懸念する。一方,例えばこの事案のように,生徒からはたびたびサインが出ていたが,なぜそれを酌み取ることができなかったのかとか,有効に生かすことができなかったのかという点は,非常に教訓を含んでいるものだと思う。そういう事例は恐らくこの1件だけではなくて,重大事案まで行かないとしても,恐らく生徒が出すサインをきちんとキャッチできていない事例というのはたくさん報告されているのではないかと思う。だから,それらを集めた上で,それではどうしてサインを適切に受け取ることができないのかとか,今後,どういう対応をすれば,例えば教員の力量をどういうふうに上げればいいのかとか,組織体制をどのように作ればいいのかとか,そこに必要な報告の書式はどういうものがあったらいいのかとか,多方面から分析した上で,最終的に教訓化するということは可能なのではないかと思う。だから,きょう資料2と資料3で示されているものが,ちょうど合わさったような形で報告書が有効に活用できるということになるのではないかなと思う。ただ,それだと,事例集とか,いろいろとこれまでにもありがちな事例ということで作ってこられているので,それとどこが違うのかなということが若干難しいことになるような気もする。もしかすると,調査の在り方とかに関しても今後起こったときにどういう調査方法をとったらいいのか,どういう人員体制で臨めばいいのかとか,そちらに関しての教訓みたいなものも今回作ろうとしているのかなと思ったが,その辺りに関してはいかがか。
【事務局】  分析の枠組み作りの議論の後に,第三者委員会における調査の在り方自体の議論が必要かと思っている。これも法改正の動きなども見ながら,それを踏まえつつ,そういった議論に次の段階で入っていく。法ができて5年以上たって,いろいろ出てきていると承知しているので,調査の人選の在り方とか事実認定の在り方も含めて,調査の方法については,この次の段階で議論が必要かと思っている。
【委員】  分かりました。そうすると,やはり再発防止のためにあくまでもこの報告書から得られる教訓をということですね。そうすると,個別のかなり具体的なセリフなども挙げてあった方が分かりやすいのではないかという意見はあったが,一方でそれは相当個人情報にも重なるところだ。当該自治体に問合せということだが,実際に被害に遭われた方や,また加害児童の方のプライバシーなどにも触れてくる部分があると思うので,相当慎重にする必要があると思うし,一言一句同じ表現にしなくても,こういう書かれ方という言い方は可能なのではないかと思った。 それともう1点は,先ほどの次第の実施体制のことだが,文科省の中でということだが,文科省の中でどういう人員体制でするのかということがよく分からなかった。例えば一つの事例を読んだとしても,私は精神保健福祉関係のソーシャルワーカーだから,その立場から読む。でも,法律家からの読み方もあれば,教育関係からの読み方もあればというように多様な読み方ができると思う。そういう多様な読み方をできる体制が文科省の中でとられるのであれば,それでいいと思うが,もしそうではないのであれば,少し検討いただいた方がいいと思った。
【座長】  その点についても,今後検討をしてもらいながら,次年度に向けて,この分析を有効に活用できる形で進めていければと思っている。
【委員】  資料2についてだが,マル1について見ると,1年時の部活で関係教職員及び校長には情報共有がされていた,とある。その下の1年時の学校の対応については組織的に共有された形跡はなかったということで,どのような対応がなされたのかなという疑問があるが,部活に限っては情報共有がなされていなかったと私は解釈したわけだ。これが事案として,目的はいじめ防止基本方針の改善等に積極的に活用することが重要ということだが,さらに言うと,このようないじめが絶対に起こらないようにすることが究極的な目的だと思う。そういう観点から考えると,「死にたい」と子供たちが言い出したときからの学校の対応,それから教育委員会の対応というか,そういうものもある程度読み取れるような,そんな資料にすることによって,事例集と同じような形になるかもしれないが,重要案件ということから考えると,学校も管理職も教育委員会も利用でき,最終的にはいじめが限りなくゼロに近付けるような,どの組織体も参考にできるような,そんな中身はぜいたくなのだろうか。そこら辺を聞きたい。
【事務局】  私どもがこのイメージを資料2と資料3でそれぞれ示す中で考えたのは,それぞれのミクロ分析,マクロ分析の結果が誰にとって有用なものなのかということだ。我々の頭の中ではミクロ分析というのは,現場で実際子供たちに接している担任の先生とか,そういった方々の気付きを促すとか,そういった現場の方々向けで,マクロ分析は,施策を担当している者がどのようなところに今の施策の改善すべき点があるかとか,運営面で何か改善できるべきところがあるかという,そういう施策担当者向けの気付きという意味で,文部科学省自身もそうだし,あるいは教育委員会とか,むしろそちらの方で考えたということだ。なので,ミクロ分析の方に教育委員会の対応というのはあえて外してあった。重要でないというわけではないが,分析結果を誰に一番活用してほしいかということを考えたときに,どうしてもそういう発想があったので,こういう整理にしたというのが経緯だ。
【委員】  組織上,上か下かという問題ではなくて,やはり教育委員会も学校も同列に考えてもらいたい。だから,教育委員会もいろいろな事案によって学んでもらって,各学校をしっかりと見詰めてもらいたい。最近起こった事例として,市町村の教育委員会の対応が悪かったというような報道もなされている。ああいうことが起こってはいけないが,やはり教育委員会の者としては気になるし,今後,起きないためにはどうしたらいいかという大きな示唆を与えてくれた事案が起こっているわけで,同列に学んでもらい,前に進んでもらいたい。
【委員】  現場のスクールカウンセラーの立場で発言をするが,調査をするときに,我々が臨床心理士,あるいは様々な心理の資格を持った人たちが関わるときに,研究というのがどうしてもある。研究というのはある程度そういう研修をしていくということで,質的な研究と量的な研究がある。例えば量的な研究で言えば,簡単なのが9月1日に子供たちの自殺が一番多いというようなことが統計的な根拠を持って発言されることがある。実際には8月から,ノートに「死にたい」と書いている,メールに「死にたい」と書いている,いろいろなところでの「死にたい」というサインを出している相談を担任の先生たちは何件受けたか。それらにどのように具体的に関わっていくかというのはいろいろなパターンがあると思うが,先ほどの事例にあったが,最初は死にたいというように書いてあって,非常にびっくりしたとこの先生も思ったが,いろいろな関わりを通していくうちに,自分の関心を引きたいためにこういうことを書いているのかなと理解したのだろうと思うが,その理解が現場ではやむを得ない部分もあると思う。いろいろなことがあるし,「死にたい」ということを言ってくる子もいるので。そのときにこの先生が一人で私の関心を引きたいんだなという見立てをしたことが間違いではないかなと思うので,せっかくいじめの委員会もあるし,そういうところで議論していると違う観点から見れたのではないか。 それともう一つは,スクールカウンセラーにはつながっていなかったということで,非常に残念に思うし,今後自分たちの解明すべき点だと思う。事例研究,これは文科省の言葉ではミクロとか,マクロとかということで説明するのかもしれないが,現場でやっていると,「死にたい」という言葉にどこまで過敏に反応するのか。アンテナは敏感にキャッチするが,その言葉に対してどれほど具体的に現実的な対応をしていくかというのはその都度選択していかなければならない。そのためにもある程度は質的研究をやっていくことは重要ではないかと思った。 具体的なところでいろいろな資料を出してもらったので,これで反省すべき点,改善すべき点があれば,そこに焦点を当てていく。この先生が,私の関心を引くんだなと思われた,それが決して間違いではない。ほかにもそんな子はいっぱいいたと思うが,この子の場合にはそのことが違っていたというところで,どこが違ったのか。ではどうしたら防げるのかということを一緒に考えていけるような,そういうものになるといいと思うし,調査の目的が再発を防ぐということが一番の目的ということであれば,そこのことになるのではないかなという印象を持った。
【委員】  資料2の赤字だけ読むと,これは学校の先生,大変だなという印象になってしまうが,そもそもこういった重大な結果になるような事例の場合は一担任の問題ではなしに,多分ある日突然の事件ではなく,保護者,若しくは関係者の方から学校へのいろいろな話があったはずだ。そういったやりとりとか,事後になって保護者と認識の違いでいろいろとトラブルが起こるだろうと思うが,報告書は一通りのところを見ての報告書だから,報告書の中から保護者とのコミュニケーションの在り方とか,そういった課題を入れてもらうと,学校の先生にとって再発予防になる視点ということでは必要だと思う。カウンセラーなり,関わりのある職種が教員以外でいるのかいないのか,その現場ではあったのかなかったのか辺りも入れてもらえると,先生方にとっては役に立つ事例検討になると思う。
【座長】  いま幾つかの論点が出てきた。まず質的な研究の件だが,これは先ほどの再分析にも関わるところなので,この点も含めて文科省の方で検討いただきたい。その再分析をどの主体で実施するのかということも,いろいろな問題点を含んでいるし,通常はここからワーキングを構成してやるとか,いろいろな手法をこれまで使ってきたので,その辺りも含めて検討してほしい。エネルギーを使ってまとめた分析を,いかにして有効に再発防止へ向けていくのか。質的分析というのは非常に難しい面があるので,その点も含めて専門家の立場から検討もお願いするというのも意見として出ている。 それから,先ほど出た教育委員会と学校との扱いの問題だ。現在の法律について,これからの改正はどうなるか分からない。しかし,いじめ防止等の対策に関してこれは重層的責任構造をとっていると私は捉えているが,そこは変わらないだろうと思う。また,文言もそういうぐあいに明記されている。つまり,学校,教育委員会,さらには地方自治体の首長,この三つがそれぞれいじめ防止に努めなければならないという形になっている。だからこそ首長の現行の場合には再調査がそこで行われるということも可能になっているわけなので,その辺りはしっかりと分析してもらい載るようにしてもらった方がいいと思う。往々にして学校側と教育委員会との共同体制,あるいは支援体制というものに,地方自治体によってばらつきがあって,うまくいかないケースが随分ある。学校がするのだから,学校へ全部放り投げる。丸投げ方式というようなものが行われているところもあるし,調査の場合にも,どちらかがやるにしても,支援体制はしっかりとやっておかなければいけない。その後のフォローアップもあるから,結果が出て,その後,どういうぐあいに実現されたのか。つまり,書いてある提言が生かされたのか,生かされなかったのかというところまでフォローはしていかなければいけない。こういう性質の問題も含まれているので,その辺りをしっかりと分析してやっていただくためには,どうしても教育委員会との関係も同じように並行して法律に照らして項目を分析していただく。あるいは明記していただくということもあっていいと思っている。是非とも検討ください。これはやってくださいというわけではなく,そういう意見が出たので,そういうまとめとして述べさせてもらった。
【委員】  保護者の立場からということで,活用方法が大切だ。これが各学校に配られたときに,先生方にどのようにこれを使ってもらって,どのようなことをしてもらうかというような,そういった勉強方法まで指示してもらいたい。ただ担当者が読んで終わりということではなくて,活用方法を広く伝えてもらいたい。いろいろ細かい点は専門家の先生方から意見があったが,いち早く学校に届けてもらいたい。これを見てすぐ気付く先生は,これはもしかしてというように思えば一つ芽を潰すことができるのではないかと考える。 また,この会議自体もそうだが,どうしても学校,教育委員会,市町村というところに行くが,私たち保護者としては,家庭教育というところも十分に考えていかなければならず,全て学校にお任せしていじめがなくなるとは思っていない。これはやはり私たち親というか,まさに例に挙げた子が自分の息子ではないかと思うぐらい身近に感じながら今日の話を聞いている。とにかくそういういじめた方の加害者側の子供たちの心理というか,その辺もなぜ執拗にいじめを繰り返すのかというところも大事だし,いじめられた子を責めることはできないし,ましてや亡くなってしまったとなると,これは親としては何も打つ手がないというところだから,是非重大事案,特に自殺,自死という案件がゼロになるように,それを私たちはまずやらなければならない。適切な事例だと思うので,いち早く出していただきたいと考えている。
【座長】  ただ制約は,調査報告書の分析というその範囲があるので,かなりいろいろな限界はあるだろうし,また,そこから酌み取れるものは今のように保護者,家庭の方へ返す。返せるものは返していけばいいと思うが,それは再分析という形で恐らく出てくるだろうと思っている。その点制約はありながらも努めるように工夫してもらうということも検討ください。
【委員】  目的のところで,文部科学省側の再発防止とは何かとなると,具体的には「いじめ自死ゼロ」あるいは「重大事態ゼロ」が重点となり,その重点達成に本分析は役立つのだというが一番大事だと思う。重大事態の調査報告書の分析から学校や教育委員会が,いじめの防止等で何をおさえなければいけないか。それを学ぶことで,先ほど言った「いじめ自死ゼロ」あるいは「重大事態ゼロ」に近付けるのではないか,という意気込みを出した方がいいのではないか。 次に,事案のでは資料3でも書かれているように,重大事態は1号の生命・心身・財産重大事態と,2号の不登校重大事態の二つある。1号と2号が分類されて,なおかつ自死事案か非自死事案かがある。また,小・中・高・特別支援学校の校種や学年などがある。これらの変数のクロス表を作って,抽出基準をある程度示す。そこから今回は,このような基準でサンプリングしたとする方が理解もしやすいのではないかと思う。 また,資料2に関しても複数意見があったように,サマリーで終わってしまわずに,何が問題だったかを明示する。その際に,以前総務省がだした膨大な調査報告書が,参考になると思う。いじめ防止対策推進法では,いじめの防止,早期発見,対応あるいは重大事態と幾つか段階がある。その各段階に,分析項目を決めておいて記述をする。例えば防止の点では,学校いじめ基本方針が国の基本的方針にそって策定されたか,校内研修は実施されたか,児童生徒や保護者に対して学校はいじめ基本方針を説明したかなど観点を決めて記述するのがよいのではないかと思う。また,各段階別でのポイントを整理した表を示しておくと,サマリーの最後の部分でこういうところを注意しなければいけないというのが分かるのではないか。
【座長】  ただいまの意見,参考にしてもらいたい。一遍検討することはしてもらいながら,最後のところの段階別,これはもっともな意見だが,何せ先ほども出たように,こちら側が手にしている調査報告書に限界がある場合がかなりある。その点を踏み込んでやるのが先ほどの再分析のプロセスだろうと思うので,最初に出てくるサマリーの段階でそれが全て期待できるというぐあいにはならないと思うので,できればそういう形に役立つような形の,形式の方法の在り方もありだろうと思うので,その辺は現実のデータと突き合わせながら検討いただければと思う。 さらにもう1点,最初にも出たがケースの抽出基準。これが質的分析の場合は量的分析と違って,立てにくいというのが通例だ。だから,これを明確に基準化してというよりも,通例ケース分析の場合,質的分析を典型性に照らしながら,ある意味では現実のデータの中から,それと思われるものをつまみ出していく。こういう指標が一般的に行われている。最初からこの基準,この基準,この基準という,そういう定量化した量的分析とはかなり性格が違ってくる。しかも,分析そのものがこういう最初の情報,事案情報整理のような,我々の調査で言うとフェースシートというが,要するに,調査が持っている基本情報を一覧にする場合はそういうことが可能なのだが,質的分析の場合はどの点にポイントを置くかという,そのポイントの置き方によって典型性というのが変わってくる。だから,そこら辺りは非常に難しいことで,最初から立てるのは至難のわざかなと解釈しているが,いかがか。
【委員】  要は,典型例をどうやって抽出するかというときの観点で,1号・2号,自死・非自死,校種や学年を意識してピックアップする方がいい。典型例なので,その事案を見た現場の教員や教育委員会が,そこから学ぶものがある典型例を選ぶ方がいいと思う。
【座長】  その辺は理論武装してもらいながら進めてもらえればと思う。
【委員】  少し話がずれてしまうかもしれないが,自殺事案,マル1イメージ,資料2に関わり,冒頭の事務局の説明の中に超党派でいじめ防止推進法の改正がこれからなされようとしているという話があった。何日か前に新聞1面に,今回の国会で通る見通しだと載っていた。その中でいじめに特化した教職員の処分も規定されようとしているとあった。どんな表現がいいのか分からないが,いじめに関わる教員の処分も盛り込まれる見通しだとの記事が載っていた。そう考えると,事務局の話の中で,動向を見極めながら最終的にまとめ上げていくという話で,もちろんそれでよいと思うが,事案の中に該当する子供の細かな言動,それから,教員の言動等々,含まれるわけだ。学校の校長をはじめ先生方が,働き方改革が叫ばれている中で大変ではあるけれども生き生きと仕事をしてもらい,教育に関わる成果を上げてもらいたいと常々思っている。教員あるいは公務員の処分に関しては地公法にしっかりと規定がなされているわけで,いじめに特化した処分というのが大変重く感じた。それが通る見通しだという記事だったわけだが,そこら辺,事案の作り方がますます難しくなるなということを今危惧している。ベールに包まれたものを教育委員会なり,学校現場なりに提供しても何ら参考にはならないということと,相反する部分が出てくるわけだが,そこら辺,議員方が作ったものは間違いなく通ってしまうわけか。答えづらいだろうか。文部科学省も現場を守る立場でもあろうかと思うので,慎重に進めてもらいたいというのが私どもの気持ちだ。分かる範囲内で結構だ。法が今回の国会に通る見通しはどうか。
【事務局】  超党派での勉強会なので,超党派のメンバーの全ての政党の了解を得るということを目指すのであれば,それ次第というところかと思う。なかなか発言しにくいが,内閣提出法案と違い議員立法なので,またちょっと違う論理とか都合とかあると思うので,確定的な見通しというのはここでは申し上げられない。
【委員】  分かった。答えづらい質問をしてしまい,申し訳ない。
【座長】  ただ,今の論点は地公法との関係,そこのところは検討しておくべき事柄だろう。これは我々ではなくて,作る側の方が提案される。そこのところはしっかりと押さえておかないとかえって弊害を招くようなことが起こり得る,というのが委員の心配だろうと思う。この協議会の範囲を超えた議論になってしまうが。
【委員】  一つ,募集案にしても,ガイドラインにしても,学校側の基本調査というのがあって,それから詳細調査に流れる。私はある報告書を読むと,基本調査の中身と詳細調査の中身が大きく違ったり,基本調査の聴取の生徒数が二,三人であったりとか,そういうのがある。マクロの方では基本調査がどのような内容になっているのか,その辺りの問題だ。基本的には学校が第三者委員会の世話にならずに,学校自らが調査して,極力そこで対応しながら解決していくというのが大原則だと思っている。その辺りのところを明らかにするために,そういうマクロの中で基本調査の有無とその内容というのを入れていただければと思う。それと,私は兵庫県の加古川のケースに関わったが,あそこは報告書の提言を受けて再発防止のための施策を検証する委員会を設置している。大津の方では報告書の趣旨を踏まえて新たにシステム化している。そういう再発防止という意味では,マクロの中に報告書を生かす形での制度化がされたのかどうか。私の経験では,立派な報告書が出てもそのままというのがかなりあると思う。むしろ,あとをどうするのか。組織をどのように作るのか。市長部局につくのか市教委部局につくのかと市教委の方と議論したが,要するに,市長部局にすると入る権限が少ない。だから,それならば市教委にそれなりの委員を第三者から入れて,そこで検証しながら定期的にという形で落ち着いた,せっかく第三者が苦労して調査した結果報告書が現場において生かされるかどうかという意味では,そういう制度化というのは極めて重要だと思う。 それからもう一つ,報告書というのは,当該問題の学校を含む公共団体の全体と当該問題が起きた学校の現場に返すという意味合いがあると思う。その辺りはどうすればいいのかというのはよく分からないが,当該学校の先生方が校長以下問題点を共有して,こうやろうというようなことがない限り,保護者の方がかなり学校に不信を持ったりしたのを私は感じたので,教育を再生するためには一旦受けた報告書をさらに学校で検討して,こういきますというような動きとかそういうのを捉える。失敗事例を踏まえて再発防止に動いたという形を目指していくようなチェックをしてもらえればと思う。
【座長】  ただいまの論点も今後検討が必要だと思うし,今いろいろな観点から,先ほどの議員立法の勉強会も進んでいる。それを踏まえて,また調査報告書の生かし方も検討していかなければいけない事柄だろうと思う。それはどこがどういうぐあいにするのかというところも,法がもしその点について改正に至れば,検討すべき事柄と思っているので,検討すべき段階で我々の方で論議できるような形にしておいてほしいと思う。
【委員】  この事案を読んでいると,現場サイドから見ると,どこの時点で食いとめるタイミングがあったかなということが分かるように事案がまとまってきている。ただ,それが分かったとしても,では,どうしたらいいかというところが一番大きいのだと思う。この事案に出ているお子さんが「死にたい」ということをずっと言っていて,そのことについての対応が,先生も学校全体も十分に共有化されてなかったために,このお子さんについて,きちんとした対応に至らなかった。この報告書の3ページ目に書かれているように,「自殺の危険因子が孤独感を感じていたことが推測される」とか,「学級,部活動,家庭など,様々な要因が長い時間を掛けて積み重なり,「死にたい」の気持ちを持つことにつながった」「自殺の主な原因が何であったか断定することは避けるべきであると判断する」,といったようなことが書かれている。では,この事案から我々学校現場は何をどう学んでいくのかというところが難しい。ただ,これはケース・バイ・ケースなので,学校はこういう事案を読みながら,自分の学校で似たようなケースがあったときにどう対応するのかということを学校としてスクールカウンセラーを活用するとか,学校センターで対応するとか,方策が出てくるかなと思いました。今後,報告書の範囲の分析になっていくと範囲が限定的だという話が先ほどあったが,事案の何を取り上げいくか。そういうところが学校としていただいたときに再発防止の視点は大きく生きてくるだろう。 改正案の話が出ていたが,事例が様々あって,「死にたい」というお子さんの一言で,そのときにどこまできちんと対応していくかというところと,では,どうしたらいいのかというところがまだなかなか難しい。それが事実なので,この事案をまとめる中で,学校としてどの時点で,何をどうするかというところが分かってくるような,報告書のまとめ方の問題も出てくると思うし,報告書から学んでいく。そして,二度とこういった事例を起こさないようにする。学校の教員一人が全てできるわけではなく,組織としての対応が必要であるといった,本来の法の趣旨が生かされるような,そのようにまとめてもらえれば,ミクロの分析としては有り難い。是非そういう方向でお願いしたい。
【委員】  一つ一つの事案の分析はすごく難しい,事例集との差別化が難しいなと思いながら聞いているが,一方で,こういう重大事案の調査は相当緻密な調査をしているとすると,かなり貴重なデータがそこには入っていると思う。被害に遭われた方とか,苦労した方に対して,データという言い方をしては申し訳ないが,実際に生かし方はいろいろあると思う。 例えば一つ一つの事案の地域特性がどういうものなのかとか,過疎地域なのか,高齢者が多いのか,貧困な地域なのか,外国人が多いのかとか,そういったことによってももしかすると何か違いがあるかもしれない。また,いじめに遭ったお子さん本人の特性というか,例えば成績がいいお子さんなのか,障害はないのかどうかとか,あるいは背が大きい小さいといったことも,低学年だったら関係するかもしれない。そういった情報はあるのかどうかとか,家庭の事情として貧困家庭なのか,豊かなのか,ひとり親家庭なのかとか,3世代同居なのかどうかとか,共働きなのかとか,そういった家庭環境の背景などによっても恐らく対応の仕方というのは変わってくるのではないかと思う。また,学校の規模の方も1学年のクラス数が非常に多いとか,今は少人数な学校ばかりなのかもしれないが,学校全体のお子さんたちの顔と名前が,教員が覚えられるぐらいの規模なのかどうかとか,そういうことも違うと思うし,その担任の先生が,経験が長い先生だったのか,短い先生だったのかといったことなども恐らく含まれてくるかと思う。また,スクールソーシャルワーカーやスクールカウンセラーの配置状況だとか,保健室の利用の仕方がどういうものであるのかとか,かなり多様な特性がきっとあるのではないかと思う。その種別ごとに,こういう対応の仕方の方がいいのではないかとか,こういう場合には発生リスクは非常に高いということをあらかじめ察知できるような,そういうものも,必要なのではないかと思う。 せっかく実際の調査報告書に詳細なことが出ているのであれば,そういうのを基にして,多分外には出せないデータなのかもしれないので,よくよく考えると,外部の人が簡単に見て意見を言うというのは難しいのかもしれないので,何か大きな予算をとって,コンピューターで分析できるようなことをする。起こってしまったことについて2度同じようなことが起きないようにというのは十分していると思うので,もう一歩先に進めて,いじめ発生のリスク分析みたいなこととか,そういったことがまだなのであれば,そういう観点から取り組むということも考えてもいいのではないかと思った。 特に私はソーシャルワーカーなので,周辺の状況というか,家庭とか,地域とか,そういった環境要因についても是非知りたいと思っていて,ここに載っている一覧表にはそういったものは今のところないようなので,可能であれば,それも人口規模がどうかとか,そういったこともあるといいと思う。 それと報告書の提言を受けて当該学校がどういう対策をその後とったのかという,そういった追跡調査のようなものがされていれば,それは非常に重要なデータになるのではないかと思った。
【座長】  今の提言は,個人や学校が特定される可能性が非常に高いデータが含まれてくる。この辺は当初の方針どおり,全てのケースについてするなら,一つの基準として考慮すべき点だろうと思うが,抽出され,しかも教育委員会から提供されたデータを扱い,しかも先方の了解を得ながら公表は進めていかなければいけない,こういう制約がある。
【委員】  公表するというよりは,相当労力とお金もかけて分析をするのであれば,全事例に対してそういう分析をすると,何か分かることがあるかなという,そういう意味だ。
【座長】  私も調査分析はするので,その点は,背景分析としても,地域分析などいろいろな分析は必要だろうと思うが,ここでは公表データとしては扱いにくい性質のものが含まれている。その点は検討いただきたい。
【事務局】  家庭の事情とか,本人側の要因といったものに調査委員会の方で踏み込んだことに御遺族の方が反発することも実は多々あり,これは調査委員会が事実認定としてどこまでの範囲のことをやるのか。特に死亡につながった場合には,一部の方は人が死を決意するときは,単独の要因ではなくて様々な要因があるはずだ,特に本人側の要因は非常に大きなウエートを占めるのではないかと考える反面,他方の方はいじめが原因かどうかだけを淡々と調べればいいのではないかといった意見もあり,報告書の中身も多様なところがある。実際,一旦は本人側の,例えば思春期鬱だといったようなことを報告書に書いたら,それに対して反発があり,再調査になったようなことがあちこちで起きている。そういったことを考えると,本人側の要因にどこまで国が出す分析結果の中で触れるかというところについては,慎重にあるべきだと考えている。今日,お示しした事案でも,家族とか家庭とかいろいろな要因が重なってという表現をしたが,具体的にどういう家庭の状況があったのかというところはあえて触れなかったわけだが,その点は踏み込むのはかなり限界があると考えている。
【委員】  裁判でやるような厳密な立証をしてという,そういう認定ということではないというのを我々議論して,むしろ原因という言葉を使ったりして,あくまで教育の現場の問題で,最後は教育の現場に返して,そこでなぜ防げなかったのか。一つの要因でも一定程度可能性があるならば,それに対して教育というのはどう応えていくのかというのが第三者委員会の本来の役割だ。法的責任を問うかどうかは裁判で決着をつければいい問題であって,そういう観点のものだとどこかではっきりしないと,第三者委員会は混乱して,厳密な立証をする手法がないから分からないというような形の議論をしているような節もある。あくまで教育の現場の問題点。ここでいじめがあった。ここで精神的に苦しんでいる。こういう結果になった。それをどうやって教育現場として課題としてやっていくのかというのを抽出するのが第三者委員会の役割ではないかと思う。責任とかいう概念ではなくて原因という言葉を使いましょう,とみんなで議論していた記憶がある。第三者委員会というのは何なのかというのを文科省でもそろそろはっきり出した方が混乱抑止になるのではないかと思う。
【委員】  自殺という最悪な状態になる背景は様々あると思うし,また,文科省にもいじめ自殺対策の委員もいて,この重大事態を扱うのには,不登校もある。1号,2号があるし,不登校でそういうサインを出してくれると,自殺まで至らなくて済む。その辺も考慮して,自殺ばかりではなくて,重大な事態ということをどう報告書としてまとめていくかみたいなところも必要ではないかと思った。典型的な部分を抽出していくことも大切だが,例えばわざわざ資料2にあるように,最初「死にたい」と言われたら先生もびっくりしたが,だんだんとその辺のところがなれていって,自分に関心を向けてほしいのかなといった,一般の学校でよくあるような体験,その先生がなぜそのように思ったかというと,今までの生徒さんたちとの関係で,そのように私の関心を引きたいのかなというようなことを思った様々な経験があるのだろうと思う。だけど,その見立てはこの子に関しては間違っていたということで,そういうこともあるというような,そういう典型を出すことも大切だ。ある意味では差別化のような,こういうこともあるよ,日頃感じていることとは違いますよということも示唆できることも必要ではないか。それだけいじめられていてつらかったから自殺したとか,それだけではなくて,多くの者がそのぐらいちょっとからかわれたぐらいでそんなにダメージがあるのかと思うようなこともあると思うので,典型的なのも必要だが,そうでない,様々な個別的な要素も検討していくことも,提示していくことも必要ではないかと思った。
【座長】  そうなると,資料2の(2)の数件程度というところが引っ掛かってきて,具体的にはマンパワーの問題だ。これをまとめるに当たっては大変なエネルギーと労力が必要だろう。この辺も併せて検討してもらいながら,考えてもらえればと思う。今の意見も含めて検討してもらうということで。
【委員】  こういう形で調査報告書を分析して学校に示してもらうときに,示しっ放しという感じになると,学校として物理的にできそうなこととできなさそうなこととが実際問題あると思う。今度の法改正の話のこともそうだが,そこまで言われると,例えばこの間中教審の答申で,上限45時間とか出たではないか。そこら辺との整合性が全然とれない。今,学校の校長が教員たちに一番申し訳ないなと思っているのは,子供と向き合って話をして,この子をどういうふうに考えていてどんなふうに環境を整えてあげるのが一番いいのか,向き合う時間が全然とってあげられないことだ。実際問題そこのところが,一番悩む部分ではある。調査報告書を分析しました,こういうところでこういうふうにするべきですとか,ああいうふうにするべきですとかと言いっ放しになると,分析しただけという形になってしまうのかなと思う。それを今の学校ができるような体制を整えながら,そこら辺の提案も併せてしてもらえると,学校として実質的に対応していくことが可能になるのではないかと思った。
【座長】  いろいろと議論が交錯したが,今日提示のものは,まずサマリーと先ほどから称されているものをまず第1段階でできる限り早く作る。そして,それを次は分析するという体制をどういうぐあいに作るか,作らないか。そういうチームを作るかどうか。意見を伺うと,かなりの方々が有効活用するためには再分析をそこから行っていくべきだろうといっている。今の学校へ提示いただくという部分は,再分析も含めていっているだろうと思うので,そのタイムスケジュールとして,私自身は2段階に整理して話したつもりだが,議論は常に重なって,最初のところのサマリーに入れようとか,いろいろな議論が出てきて,ちょっと私の整理の仕方が悪かったかなと思っているが,そういう進行で皆さん方の意見は集約してよいか。再分析の過程ではフォローアップも,つまり報告書を出してからどういうぐあいにしたのかということも含めて再分析してもらうことが大事で,幾人かの方々から意見が出ていたので,その点を含めて,チームをどういうぐあいに誰がどういう再分析をしていくのかということも含めて検討いただければと思っている。タイムスケジュールとしてはそういう感じで,私の理解,まとめでよいか。
【事務局】  それで結構だ。
【委員】  今の座長のまとめは全くそのとおりだと思うが,今の機会に資料3のマクロ分析の方もどこまでやっていくかということで,先ほどサンプリングの話もあったが,項目としてどういうのを入れるかということが余り議論できてなかったと思う。 一つすぐに入れられる項目として,再調査がその案件について行われたか,行われていないか,申し立てられているかというのがあると思う。つまり,先ほどこれを誰のために役立てるかということで,施策を立てるという意味で十分に利用できるという話があった。確かに施策を立てる上で有効に利用できると思うが,もう一つ現実に調査をやっていく第三者委員会のやり方としてうまくやれているかをみる資料という形でも使えると思う。そういう意味では調査結果が当事者に受け入れられたか,受け入れられなかったか,信頼関係が作れたか,作れなかったということの一つの指標であると思うので,そういった意味で再調査が行われたか,これで確定したかみたいな項目が一つあると分かりやすいと思った。
【座長】  確かに事案情報整理はまだ議論が余り練れていない。教育委員会との関係というのが項目で出た程度なので,何かこの点で気付いたところ,これは要らないのではないか,要るのではないかということも含めて,ある意味ではデータベースだろうと思うが,その点について。
【委員】  大津で非常に役に立ったのが,当時の管理職の先生たちの詳細なメモだ。そういう記録がとても参考になって,それを全部整理した。多くの子供たちの調査で,このメモとの整合性で事実が解明できた。どういう資料を使ったのかというのはどうしても入れてほしい。それがきちんと学校から引き継がれたのかどうか。あとは生徒の人数とか,管理職か,一般の職員,教職員の方か,人数とか,その辺り,ここはどうしても聞きたいという子供さんが来られなかった場合もあるので,その辺りの人数も把握できれば入れてほしいと思う。
【事務局】  とりあえず5件試しにやってみて,公表されているものの中から抽出できるものということで引っ張ったが,ほかを見てどれぐらいいわれたものが抽出できるのかというところもある。指摘の趣旨は分かるので,やりながら適宜柔軟に変えていくといったやり方の方がよいのかなと考え始めたところだ。
【座長】  いろいろな制約はあるが,どんどん意見を出してほしい。最初の事例のイメージ図で出てきた個別事案,これは本当にケースが限られている。ここはかなりの数が出てきながら,そこのデータベースを作り上げるという方向で進んでいるのだろうと理解している。そういう意味ではいろいろな項目を皆さん方からも出してもらい提案いただきたい。それでは,新たな提案があれば事務局の方へ直接意見を寄せてもらい,今までのイメージ案についても意見があれば出してほしい。そろそろ時間だが,本日のいろいろな意見を事務方が整理しながら検討を進めてもらい,良い報告書の分析ができればと願っている。
【事務局】  今後の協議会の進め方等については,本日の様々な意見を踏まえて議論の内容を整理して,次回どうするかを考えたいと思う。 次回の開催の日程については,後日,連絡させていただく。
【座長】  それでは以上をもって,今年度の第3回の会議を閉会する。どうもありがとうございました。

―― 了 ――

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