(参考資料2)座間市における事件の再発防止策について

座間市における事件の再発防止策について

座間市における事件の再発防止策について

平成29年12月19日
座間市における事件の再発防止に関する関係閣僚会議

平成29年10月に座間市で発覚した9名の方々が亡くなられた事件は、犯罪史に残る極めて残忍で凶悪な事件である。現在、警察において捜査中であるが、加害者が、若者が日常的に利用するSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を利用し、自殺願望を投稿するなどした被害者の心の叫びに付け込んで、言葉巧みに誘い出し殺害したという極めて卑劣な手口によるものとみられる。
二度と今回のような悲惨な事件を繰り返さないことは、関係省庁が横断的に取り組むべき課題であるという認識の下、11月10日、政府は、「座間市における事件の再発防止に関する関係閣僚会議」を開催し、関係省庁における従来の取組を検証した上で、今般、再発防止策を以下のとおり取りまとめた。
政府一体となって、再発防止を徹底するため、関係者の協力を得つつ、以下の対策に迅速に取り組むこととする。

1.SNS等における自殺に関する不適切な書き込みへの対策
SNSにおける自殺に関する書き込みのうち、人を自殺に誘引・勧誘する情報等については、従来から有害情報として、多くの事業者の利用規約等において書き込みが禁止されており、自主的な削除や削除の要請がなされている。
こうした禁止されているはずの書き込みが、一般に公開されたまま放置されている状況は許されず、適時適切に削除等を行う取組を強化するため、以下の対策に取り組む。

(1) 削除等に対する事業者・利用者の理解の促進
1 利用規約等(自殺の誘引情報等の書き込みの禁止・削除等)による対応の徹底等に関する事業者への要請
違法情報等対応連絡会がプロバイダ等向けに作成した「違法・有害情報への対応に関する契約約款モデル条項」を踏まえた人を自殺に誘引・勧誘する情報等の書き込みを禁止する規定等について、関連事業者に対し、利用規約等による対応の徹底等、必要な要請を行う。

2 利用規約等の遵守に関する利用者への注意喚起
利用規約等の遵守について、確実に利用者に注意喚起するよう、関連事業者に対して必要な要請を行う。
また、インターネット安全教室及びe-ネットキャラバンを活用し、人を自殺に誘引・勧誘する情報等を書き込むことは利用規約等に違反する旨等を周知し、利用者のSNSの適正利用を促す。
さらに、人を自殺に誘引・勧誘する情報等を書き込むことは利用規約等に違反する旨、都道府県警察やサイバー防犯ボランティア団体による広報啓発活動等、各種の機会を通じて、サービスの利用者に注意喚起を行う。                                       
加えて、情報モラル教育に関する教師用指導資料について、利用規約等の遵守に関する内容を盛り込んだ改訂版を作成し配布するなど、学校における情報モラル教育の充実を図る。

 (2) 事業者・関係者による削除等の強化
  1 事業者による自主的な削除の強化
警察庁による今回の事件に関する情報提供を受け、12月6日に青少年ネット利用環境整備協議会が公表した「座間市における殺人事件を受けての緊急提言について」を踏まえ、利用規約において人を自殺に誘引・勧誘する情報等を明確に禁止すること、人を自殺に誘引する行為と認められる投稿を確認した場合において積極的に対処すること等、SNS事業者が行う取組に協力する。

2 事業者による削除を支える団体の支援            
人を自殺に誘引・勧誘する情報等について、新たにインターネット・ホットラインセンターへの業務委託の対象とし、サイト管理者等への削除依頼を支援する。
また、人を自殺に誘引・勧誘する情報等を的確に発見するため、サイバーパトロール業務を民間団体に委託し、サイバーパトロールを強化する。
さらに、サイバー防犯ボランティア団体に依頼し、SNS上の人を自殺に誘引・勧誘する情報等について、集中的なサイバーパトロール及び通報活動を実施する。

3 インターネット・ホットラインセンター及び違法・有害情報相談センターの間の連携強化
インターネット・ホットラインセンター及び違法・有害情報相談センターの連携を図り、違法・有害情報相談センターに寄せられた人を自殺に誘引・勧誘する情報等のインターネット・ホットラインセンターへの通報を促進すること等により、両センターにおける適切な対応を強化する。

2.インターネットを通じて自殺願望を発信する若者の心のケアに関する対策
自殺願望を有する人は、心の中では「死にたい」という気持ちと「生きたい」という気持ちとの間で激しく揺れ動いており、自殺の危険を示すサインを発していることが多い。SNSにおける「死にたい」「消えたい」「生きていたくない」等の若者による書き込みの中には、こうしたサインに該当するものもあると考えられるため、自殺願望の書き込みを削除するという対応は適切ではない。
こうした書き込みを行う若者が適切な相談相手にアクセスできるよう促し、必要に応じ、充実した相談・支援が受けられるよう体制を整備する必要がある。
加えて、そもそもインターネット上のみではなく現実空間においても、生きづらさを抱え自殺のリスクが高まることを未然に防ぎ、悩みを気軽に話し、孤立を防ぐことができるよう、若者の居場所を確保する必要がある。
その際、従来行っている各種取組の内容を検証し、SNSを利用する若者の実情に即した取組へ転換していくこと、インターネット上における対策と現実空間における対策を連動させること、関係省庁間の連携を深めることにより、効果的・効率的に施策を推進するという観点が重要である。
このため、以下の対策に取り組む。

 (1) ICTを活用した相談機能の強化
1 ICTを活用した相談窓口への誘導の強化
検索事業者、SNS事業者と自殺対策関係NPO法人をつなぐ場の設置により、事業者・NPO法人の連携による誘導を強化する。
また、以下の施策により、SNS等に対応した相談窓口への誘導を強化する。
・ 「自殺」「死にたい」等の自殺につながる用語の検索を行った場合において、相談窓口を表示する取組を強化すること等に関し、事業者に対して必要な要請を行う。
・ 自殺につながる用語の検索を行った場合に表示される相談窓口のうち、「こころの健康相談統一ダイヤル」については、メールやSNSに対応していないこと等から、この表示画面におけるリンク先である厚生労働省ホームページにおいて、メールやSNSに対応した相談窓口を含め、幅広い相談窓口を紹介する。
・ スマートフォンにおいて、様々な相談窓口のうち、個々の若者の悩みに適した相談窓口を検索して絞り込むことを可能にする取組を推進する。


2 SNS等を活用した相談対応の強化
地方公共団体におけるSNSを活用した相談体制の構築に向け、相談事業を実施する。
また、広く若者一般を対象としたSNSによる相談事業を開始するとともに、同事業の実施状況を検証しながら、相談支援ノウハウを集約したガイドラインを作成し、相談員の研修を実施する。
さらに、IP電話に対応した公的な相談窓口の設定について検討を行い、速やかに実施に移す。
加えて、子ども・若者総合相談センターの設置を促進するとともに、既存の子ども・若者総合相談センターにおける拠点機能の更なる充実及びメール、SNS等インターネットを活用した相談体制の導入・充実を推進する。

(2) 若者の居場所づくりの支援等
1 新たな居場所づくりのモデルの作成
若者が悩みを気軽に話すことができ、「生きていていいんだ」と思えるような居場所活動を推進する。多岐にわたる民間団体等が、家庭・学校の外で、学習の支援を受けられる場、様々な体験・交流をできる場等を提供しており、こうした居場所を利用する若者に対して、命や暮らしの危機に直面したとき、誰にどうやって助けを求めればよいかについて、具体的かつ実践的な方法等を学ぶ教育(SOSの出し方に関する教育)を行うとともに、若者が出したSOSを受け止めて、必要に応じて地域の支援につなぐゲートキーパーの役割を居場所の職員が担えるよう、人材を養成する。こうした方策を組み合わせ、新たな居場所づくりのモデルを作成する。

2 学校との直接のつながりを有さない若者の支援の推進
高校中途退学者及び進路未決定卒業者のように、学校との直接のつながりを有さず、支援が行き届きにくい若者については、ハローワーク、働くことに悩みを抱えている若者の就労を支援する地域若者サポートステーション、学校等の関係機関が連携・協力し、孤立感が深まることのないよう、効果的な支援を行うことを推進する。

  3 子ども・若者の自殺対策の更なる推進
「自殺対策基本法」(平成18年法律第85号)第12条の規定に基づく「自殺総合対策大綱」に基づき、子ども・若者の自殺対策を更に推進し、若者等に対する「生きることの包括的な支援」を進める。

3.インターネット上の有害環境から若者を守るための対策
今回の事件に限らず、SNSの利用等に起因する犯罪に係る最近の情勢を踏まえると、SNS等のインターネット上において、若者が悪意を持つ者と接点を持つことは、現実空間における犯罪被害に結び付く可能性があり、若者がインターネット上の有害環境に巻き込まれることを防止するため、以下の対策に取り組む。

(1) 教育・啓発・相談の強化
例年の取組を前倒しし、フィルタリングの利用促進及びインターネットリテラシーの向上に重点を置いた啓発活動等の取組を一層強力に推進する「あんしんネット冬休み・新学期一斉緊急行動」を実施する。また、インターネット安全教室、e-ネットキャラバンに教育委員会関係者・教育関係者の参加を促すとともに、講師を教育委員会が開催する研修等に対して派遣することにより、教職員やスクールカウンセラーに若者のSNSの利用実態を伝える。加えて、児童生徒からの相談等に的確に対応できるよう、スクールカウンセラー等の配置を拡充することにより、学校における教育相談体制を充実させる。
さらに、情報モラル教育に関する教師用指導資料を改訂し配布するとともに、児童生徒向け啓発資料を作成するなど、学校における情報モラル教育の充実を図る。
今回の事件も含め、SNSの利用等に起因する犯罪に係る最近の情勢を踏まえた広報資料を作成・配布し、都道府県警察、サイバー防犯ボランティア団体等における広報啓発活動を推進する。

(2) 改正青少年インターネット環境整備法の早期施行
平成30年春頃を予定していた「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律の一部を改正する法律」(平成29年法律第75号)の施行時期を平成30年2月に早めるとともに、フィルタリングに係る説明や有効化措置の事業者への義務付け等の内容の周知徹底を図る。





4.今後の検証
本再発防止策に掲げた各施策の推進状況については、「自殺対策基本法」第11条の規定に基づく年次報告の作成の過程において、関係省庁が確実に検証を行った上で、同年次報告に盛り込むとともに、検証の結果により新たに把握された課題については、「自殺総合対策大綱」の見直し等に反映させる。
また、平成29年法律第75号による改正後の「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律」(平成20年法律第79号)第8条第1項の規定に基づく「青少年が安全に安心してインターネットを利用できるようにするための施策に関する基本的な計画」に関連する施策については、同計画の次期見直しに反映させる。
さらに、本再発防止策に限らず、若者等に対する「生きることの包括的な支援」を進めるためには、広く「自殺総合対策大綱」に掲げた様々な施策が確実に実施されることが重要である。したがって、これらの施策の実施状況、目標の達成状況等を検証し、施策の効果等を評価するため、平成30年度に有識者から成る会議体を立ち上げ、PDCAサイクルの徹底を図る。

お問合せ先

初等中等教育局児童生徒課