全国的な学力調査に関する専門家会議(平成29年6月12日~)(第5回) 議事要旨

1.日時

平成30年3月16日(金曜日)13時30分~15時30分

2.場所

文部科学省 旧庁舎6階 第2講堂

3.議題

  1. 全国学力・学習状況調査における教科に関する調査について
  2. 問題作成の基本的な考え方について
  3. 知識・活用を一体的に問う調査問題の在り方について【非公開】
  4. 平成30年度追加分析調査のテーマについて
  5. その他

4.議事要旨

議事1:全国学力・学習状況調査における教科に関する調査について

・資料1に基づき、事務局より説明の後、意見交換が行われた。主な意見は以下の通り。

【委員】
 対応方針案のどこかに授業改革・授業改善というメッセージを盛り込んでいただけないか。やはり授業改善が相当難しいという問題意識を私は持っている。新学習指導要領が主体的とか対話的とか、深い追求型の学びを初めて言い出したわけではない。特に日本の戦後の教育は、この主体的な学びを実現しようと教え込み型の一方通行の学びからの脱却を目指して授業改善に積極的に取り組んだ。それでも、教え込み型の一方通行型の授業は今もあるし、授業改善のうねりがどれほど確かに受け継がれているかというとも心許ないところがある。授業改革、授業改善のメッセージを我々から発信するには、この新しい問題の改善の機会がいいチャンスではないかと思う。

【委員】
 学びに向かう力や人間性について、教科に関する調査問題において問うのは大変難しい。教科に関する調査問題については、A問題の知識とそれからB問題の活用が網羅されているということについては非常にいいと思う。現行の質問紙をさらに工夫していただいて、学びに向かう力、人間性をより適切に問える質問項目を今後、検討して、問題や質問紙を作っていくといいと思う。

【委員】
 調査の実施方法の適当な調査時間の設定で、今回、小学校45分、中学校50分という授業時間の枠内で設定するという形で提案されている。実際現場を見ると、子供たちは、A問題についてはおおむね決められた調査時間の中で十分に解けるが、B問題については、時間が足りないという傾向が見える。45分としてどのぐらいの分量を解いていくのが適切なのかについても、ぜひ一本化する上で御検討いただきたい。解答時間が足りなくて調査が手付かずのものが非常に多くなってしまうと、その調査結果をどう反映するのかが難しいと思っている。
 2つ目は、「学びに向かう力、人間性等」というのを授業で考えていくときに、活動させるとか実際に子供たち同士で意見交換をさせるとか、新たなものを作り上げていくというような場面を想定することはできるとは思う。ただこうしたことを調査問題に落とし込んだときに、どのようにそれを見るのかなかなか難しい。「学びに向かう力、人間性等」については、引き続き、質問紙の項目の工夫を図るということで、現場へのメッセージも含めてお願いしたい。

【委員】
 人間性の部分については、評価するということがあまりふさわしくないということで、中教審答申でも「評価の視点」から外れていたと思う。現場では観点別評価はしないとしている中、3つの柱の1つとして、「学びに向かう力・人間性等」をまとめて入れてしまっていることがこの調査そのものを難しくしている1つの要因ではないかとは感じる。

【委員】
 「学びに向かう力と人間性等」の評価、その扱いは、非常に気を付けて表現しなくてはいけない。例えば、以前の、関心意欲、態度などについても、評価が難しくとも子どもたちの育ちにとっては必要で大事な力だと判断し、大事なことは育てていきたいという願いを持って学校と教師はいろいろ努力してきた。数値化とか数字とかペーパーになじまない面はあっても、だからといってその力を育てることを軽視することがないように、大事なことが剥ぎ取られていくような伝わり方にならないよう、慎重に的確に意図が伝わるように工夫し努力する必要がある。

【委員】
 一体的にということの意味することが、学校に伝わるのかということが疑問。問題数が半分ぐらいに減っていったときに、その領域が固定されてしまい、その問題がどういう力とか、どういう授業を進めるところで欠けていたのかというメッセージ性を示せるのかが非常に気になる。一体的については大問の中にストーリー性があるとかそういう意味合いなのか。

【座長】
 前回もその点については、大変多くの発言がされたところ。本日、議事の3では、その一体的に問う調査問題の在り方について、非公開という形ではあるが、議論することになっている。現場で一体的に問うということはどういうことなのかということについてイメージがなければ授業改善に生かすという観点からも問題なので、イメージを示していくことは重要と考えている。

【委員】
 「学びに向かう力、人間性等」についての議論が前回あって、学びに向かう力というのは非常に分かりやすい、PISAでも、サイエンスでは理科に関する興味関心があまり高くないということが問題になったりすることを考えると、教科との関連性で学びに向かう力を様々に調査していくことは非常に重要だと思う。一方で、人間性等については、非常に幅の広い言葉であり、将来これをいろいろ調査するにしても、どんなものを意味していくのか大きく関心が持たれるところではないかなと思う。

【委員】
 新学習指導要領の成果は「学びに向かう力、人間性等」を明記したところにある。これは個人的な意見だが、人間性というのはどこまで行っても本人が自分の人間性をどう捉えているかということであり、その力を育てていかなければならないと捉えている。人が人生を生きていこうと思えば、自分がどんな人間かが分かっていなければ前へは進めない。ここのところと人間性の言葉の意味付けがないと、人間性の涵養が宙に浮いた話、危ない話になると思う。

議事2:問題作成の基本的な考え方について

・事務局より、問題作成の基本的な考え方について説明があり、了承された。

議事4:平成30年度追加分析調査のテーマについて

・資料4に基づき、事務局より説明の後、意見交換が行われた。主な意見は以下の通り。

【委員】
 (1)の3では、このような文面だと、保護者の調査となぜ効果的な指導方法が関連しているのか疑問に思うと思う。場合によっては、指導方法というのは保護者の指導方法なのかとも受け取られかねないので書き方に工夫が必要。

【委員】
 ICTの活用の中で、読解力に絞っているというのは何か意図か意味があるのか。

【事務局】
 PISAの2015の調査結果等で、読解力の部分がCBTに移行した影響等があったことを踏まえて、読解力としている。

【委員】
 むしろ理科などの方が使いやすいような気がする。

【事務局】
 読解力については研究いただきたいということであるが、加えて独自提案も公募のときにしていただくことが可能。

議事5:その他

・事務局より、参考資料(「平成30年度全国学力・学習状況調査リーフレット」「平成30年度全国学力・学習状況調査における中学校の英語予備調査について」「『全国学力・学習状況調査』の個票データ等の貸与に関する有識者会議」)に基づき、事務局より説明後、意見交換が行われた。主な意見は以下の通り。

【委員】
 30年度の全国学力・学習状況調査における中学校の英語の予備調査について、話すことを問う問題について、これはそれぞれの学校のパソコンルームを使って、USBメモリーを差し込んでいくという形になっていくと思うが、これは北は北海道から南は沖縄まできちっと整備しているところもあれば、予算的に非常に厳しいところもあって、不具合が出るとどうなのかなという心配がある。そこのところは丁寧にやっていった方がいいと思う。

【委員】
 英語予備調査について音声データのひも付けといったいわゆるテクニカルな部分のトラブルは絶対あると思う。そのあたりが絶対あってはならないけれども、あった場合はこういうトラブルがありましたよというのをちゃんと報告していただくということも大切と思う。それからもう1つは音声データを聞いて採点するわけだが、いわゆる採点チームの質みたいなものがすごく重要で、採点チームの質保証をどうやっているのか、これは会社の経営ノウハウに入ってくる部分かと思うが、公開できるものは公開していただくのがいい。

【委員】
 今、英語については、大学入試も含めてCEFR(Common European Framework of Reference for Languages)という達成段階を相当意識した問題作りがされようとしている。今回のこの中学校の英語の予備調査もそういうことを意識して問題作成がされる方向なのか。
 もう1つは英語についてはCEFRがあって、それを参考にしつつ問題のレベル作りなどができるが、国語とか数学はそういうものはない。本来ならば、現在は目標準拠型のテストだとか学習評価となっていながら、この学力調査も実は目標準拠とは言えないというか、どのレベルでやるということを確定できない状況ではないかと思う。なかなか難しい話ではあるが、英語がもしそういう目標段階を設定していくのであれば、今後この学力調査の国語や数学においても、知識と活用を一体型に進める上でも、達成レベルを意識したような調査につなげていく必要があるのではないか。

【委員】
 全国学力調査は、カリキュラム上の達成度がどのぐらいできているかということが第一にある。しかし、終局的にはその英語能力は、日本だけで通じる英語力などはないので、当然のことながら普遍性を持った英語力ということになる。つまり、大きな全国学力調査の目的の1つは、学校で指導されていることが子供たちにしっかり学ばれているかということで、それは終局的にはCEFRというような共通枠につながると、そういう結び付きになる。
 なお、まだ日本の生徒はA1レベルと、まだA1レベルと否定的に捉えられると困る。それはA1レベルというのは決して低いレベル、一番下にあるのがA1、A2、B1、B2となるが、A1レベルというのは中学校3年生程度と言う方もいるが、それは決してできない人ではない。A1レベルはA1レベルでタスクが、課題がしっかりこなせていて、A1レベル。それを誤解して、A1はA2よりも劣っていると、A2はB1よりも劣っているという解釈はぜひ広まらないようにしっかりしていただきたいと思う。

【委員】
 このパフォーマンスアセスメント系の点数はかなり粗くて揺れがあって当然。イメージしているペーパーテストでの点数に対してここでのスコアはすごくぶれがあるということを納得していただかないといけない。

【委員】
 とても貴重な御意見。CEFRというのは課題がこなせられるか、言語を機能として、自分の持っている言語能力が機能するかどうかを試すと考えられる。テストの解釈の読み手として重要な課題になると思うので、それを伝えるという使命が私たちにはある。

【委員】
 学力・学習状況調査も今のCEFRが出てきたときに目標準拠型の到達度がどうだということを見る調査と位置付けたときに、到達していないと判断された場合、その後どうするかという問題も出てくるかと思う。

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