いじめ防止対策協議会(平成27年度)(第2回) 議事要旨

1.日時

平成27年9月24日(木曜日)10時~12時

2.場所

文部科学省3階 3F2特別会議室

3.議題

  1. いじめ防止対策推進法に基づく基本方針や組織を実質的に機能させる方策について(第1回協議会を踏まえて)
  2. 不登校での重大事態の調査に係る指針について
  3. 概算要求について
  4. その他

4.出席者

委員

相上委員、愛沢委員、石鍋委員、木太様(柏木委員の代理)、高田委員、實吉委員、水地委員、種村委員、寺本委員、道永委員、村山委員、森田委員、横山委員

文部科学省

小松初等中等教育局長、伯井大臣官房審議官、藤原大臣官房審議官、浅田内閣官房教育再生実行会議担当室長、坪田児童生徒課長、平居生徒指導室長、齊藤課長補佐、丸山生徒指導調査官、滝統括研究官(国立教育政策研究所)

5.議事要旨

≪議題(1)いじめ防止対策推進法に基づく基本方針や組織を実質的に機能させる方策について(第1回協議会を踏まえて)≫
 ※事務局から資料説明(資料1~2)
【委員】  基本方針や組織を実質的に機能させるためにどのようなことが課題になって,何に取り組んでいけばいいのかということについて,前回に引き続いて議論したい。
  事務局に伺うが,附属機関の設置率が,市町村はまだ十分じゃないという調査結果が昨年度出ていた。その後,フォローアップした結果等について現在の状況はどの程度なのか。というのは,矢巾町もそうだが,事件が起こってから組織を立ち上げるというような態勢ではそれだけでも遅れてしまうので,重大事案が起こった場合にそれがどう機能していくのかということが大変重要な点だろうと思う。
【事務局】  昨年以降の調査となると,26年度の問題行動調査と並走してやっている。そちらについては,調査の見直しを掛けているところであり,集計には至っていない。
【委員】  調査の結果の詳細,数字はまた後日でも,今の感触はどうか。
【事務局】  昨年度の10月1日の調査結果以降であるので,当然昨年よりは改善されているが,伸び幅までは詳細は現在把握していない。
【事務局】  補足だが,今のところで,50%以上は,条例設置かどうかにかかわらず会議体は設置されてきているということで,昨年の10月1日よりは伸びてきているという状況だが,いまだ3月現在で検討中であるとか,設置に向けて検討中であるとか,まだそれをするかどうかも分からないということが三,四割あるというのが3月現在であった。ただ,3月31日現在であるため,4月や6月の議会で設置している可能性もある。何らかの形でフォローを急ぎたい。
【滝総括研究官】  教員がいじめに関して気付かないとか,重大性に気付かないというのは,ちょっとずれているのかもしれないという気がする。例えば研修で深刻ないじめの話を聞いて,それは重大だ,大変だと思うことと,自分たちの学校で目の前で起きている子供同士のトラブルが,その深刻ないじめにつながっていくという部分がずれているというか,溝があるというか。先生たちは,いじめが深刻な事態だという話はもう十分過ぎるぐらい知っている。いじめが深刻だという話を多分先生方は知っており,いじめはどの子供にも起き得るという言葉も知っているが,目の前で起きている子供同士のふざけやからかいというものが,実は被害者の側(がわ)にとっては深刻であるということがつながっていない。だから,行動につながっていかないのだろう。
  だから,いじめをいじめとして認知するという部分のところでもギャップがある。文科省から出ている資料でも何かささいなことに気が付いたら,まずは学校の組織で諮って,それがいじめなのか,ただのふざけなのかということを個人ではなくて組織として判断してくださいというお願いをしてあるにもかかわらず,軽いいたずらやふざけは,各先生レベルで判断して,組織にも上がらず見過ごされていったものが,教師の側(がわ)からすると,ある日いきなり深刻化したというふうに見えるんだと思うが,実はじわじわと深刻化していることに気付いていない。あれは軽いふざけ,あるいはグループ内でやっているふざけだからお互いに分かってやっているし,本人に聞いても大丈夫だと言っているからいいという感覚,そこをてこ入れしない限り,今までと同じことをただ重ねても難しいと思っている。
【委員】  小学校だが,今の話や資料の内容をなるほどというふうに思った。いじめというのは,あるものだけで起こるのではなくて,いろんなケースがあるということを想定しながら,一つ一つ全部学校としてはどのケースでも起こり得るということで日頃から対応しなければいけないと思う。
【委員】  中学校だが,小学校と同様の思いを持っている。いじめは深刻であるということは,ほとんどの学校でそれを通知したり話をしたりしているはずである。いじめは絶対にあってはならないという授業もやっています。ただ,目の前で起きていることが実際にこれは本当にからかいなのかどうかの線引きをするのは,最初はまずどうしても学級担任であったり,担当の教科の教員であったりになる。そこでずれが生じることがないのかと言われたら,これはなくはないと言わざるを得ないと思う。どのように教員の意識をある程度共通にしていくかというのは重要であることは校長たちも分かっているが,実際に難しいところもあるのが事実と感じる。
【委員】  高校だが,日常的に接している担任が見たときに,かえっていじめの発見が難しい場合がある。暴力や恐喝等が絡めば可視的であるが,担任は,それまでの人間関係からフィフティー・フィフティーの中での「トラブル」と捉え,「トラブル」を解消したから「いじめ」には発展していない,という認識をしてしまう場合がある。したがって,複数で見ていかないと端緒を捉えられないと思っており,学校においては,「トラブル」,からかい等を含め,少しでも気になるものは報告するよう指示し,また,極力複数のチャンネルを確保するようにしている。一人一人の教職員には,いじめの重大性や法令の内容についての認識はあるが,具体的な認知に至る道筋は,担任では難しいところがある。
【委員】  現実にあった話で,具体名は申し上げないが,子供がいじめに遭って不登校になった。いじめた子が複数いた。一人の子は,よく周りにもいじめをしたりする子だから,その子については学校側が指導した。もう一人のいじめていた子については,ふだんからおとなしくて,決してそんなことをする子じゃないよというふうに学校側も思っている。現実に,その子に対しての指導だとか何かをされましたか,保護者について何かお話をされましたかと言ったらしていないと。もう少し詳しく言うと,そのおとなしくてまさかいじめをしていないだろうと学校が思っている子供の御家庭はというと学校の先生だったと。被害者側になっている子供にとってみれば,一方の子は学校が対処した加害者であり,一方の子には学校は何も対処をしなかった。学校の先生でなくても,例えば地域の有力者などいろいろなところで学校の先生や学校側がちゅうちょしている部分もひょっとしたらあるのかもしれない。でもそんなことがあっては,いじめを根本的になくしていくというこの法律や運用の趣旨には沿わないので,きちっとした対処をしなければいけないと思い,現実の話を少しさせていただいた。
  いじめがあろうがなかろうが,いじめをどう教育として取り上げて,子供たちの成長,意識の改革に向けるかという問題性に対する認識というのがまだ薄いように思う。人権に関わること,人間関係に関わること,様々なものを,いじめというものをきっかけ,切り口として,子供たちに伝えていかなきゃいけない。
  もう一つ,いじめの抱え込みというのは,単に本人の意識だけではなくて,学校の組織文化もやっぱりある。その組織文化の中に少しメスを入れていかないと,抱え込みというのは,本人の意識だけでは済まない。本人は一生懸命対応しているが,どうしても組織に上げにくい,あるいは人に迷惑が掛かるという文化にいかにメスを入れるかというのが一つ。
  それから,いわゆるフォーマルな組織というのはどこにでもある。それがあっても,本来組織として機能するためにはどのような組織要件が必要なのか。ともすれば個人に委ねていき,個人の研修によって個人の力量を高めるという研修の在り方,あるいは組織の運営の仕方というものがまだまだ学校教育の中では残っているように思う。
【滝総括研究官】  ここの資料に書かれていることが不要だということではもちろんなくて,特に認知件数があれだけ都道府県別にばらつきがあるということを考えたときに,当然ある種の文化,風土の問題というのを考えざるを得ないし,やはり基本的に認知件数というものが積極的に上がったところが,都道府県であれ市町村であれ,むしろ肯定的に評価され,逆に少ないところは,本当に少ないのか,そんないいかげんにしか見ていないんじゃないかというそっちの方に非難が行くような文化というのを作っていかないと,これはもう難しいだろうという気がしている。
  それから,代表者が研修をしてきてその話を伝えるという形の限界というのがやはりあって,各学校で少なくとも年に1回は校内研修というものがなされるべきだろうと思っている。ささいなことでも組織に報告しろと言うと,ささいなことってどこまでなんだと,当然その議論が先生方の中で出てこなきゃおかしい。全国一律の共通認識ができることよりも,結局先生方に温度差がある限り,感度の鈍い先生が見付けたときには報告されない,敏感な人が見付けると報告するという方がはるかに問題で,先ほどの委員の話も,この子供は真面目な子だからというのに対して,ほかの先生は,いや,そうとは限らないよという意見だってあったかもしれない。話し合う中には養護教諭やスクールカウンセラー,ソーシャルワーカーが入る中でいろいろな見方の話が出てくる。そこの中で先生方の温度差がなくなる。 
   私どもではそれを促すための研修ツールを実際にやっていただいたりするが,子供というのはいじめたりいじめられたりしながら育っていくものであるという意見に対して,先生方の多くは「はい」と丸を付ける。いじめというのは子供同士で解決させるべきだとか,いじめがあって子供は成長していくものだという話になると,途端に先生は丸を付けてくる。各学校で基本方針と組織ということが出てきたとしたら,当然基本方針の中に研修を行うのも入ってきて当たり前だと思うが,残念ながらその時間を取ることが難しいという理由で学校はちゅうちょすることもあるので,義務付けられていかないといけないのではないかと思う。
【委員】  心理臨床の学会で児童養護の関係のディスカッションがあったが,従来頑張ってきた児童養護施設は,うちの施設は安定していると言われるが,この施設で見えない暴力なりいじめがどれだけあるか。その子たちが施設を出てから,僕はこういうことをされた,ああいうことをされたということが物すごくある。先生に見せない形,大人に見せない形でやっているいじめがいっぱいあるんじゃないかと思う。件数が減るという形でエビデンスを求めていくと難しいんじゃないかなということはかなり思う。
  組織としてどう考えていくかという視点が非常に重要になってくるんじゃないかと痛感した。

≪議題(2)不登校での重大事態の調査に係る指針について≫
※事務局から資料説明(資料3~5)
【委員】  私立の学校なので異例のケースかもしれないが,多くの中学受験生の中に,小学校時代に不登校になったという子が交じっている。不登校になった原因を聞いてみると,やはりいじめというのは非常に大きな要素の一つになっているように思う。かつていじめられていた子がいじめっ子になるケースというのは多い。方法をよく知っているから,自分が中学に入ってきてからいじめっ子になるというケースはあるように思う。そういう子供たちも,お互いに話込みをしっかりしていけば真情を吐露してくれる。ただ難しいのは,家庭をどう巻きこむか。学校がその子をどういうふうにしたいという姿勢をまず見せることによって,親御さんに協力してもらうということが必要だと思う。
【委員】  いろんな問題がある場合に,家族的なことも含めて情報がラベリングにならない形で共有されていくと,ずっとその子が大人になるまで全体として見守っていけるということができるのでは。
【委員】  支援シートは,将来的に御本人なり保護者の方に開示を求められたときにはどうなるか。
【事務局】  基本的には学校が作成して,保護者や生徒にも見せて,共通理解を図って,場合によってはその子供を支援する関係機関にも情報を共有する。
【委員 】  それならいいと思う。開示を前提としてということであれば非常にすばらしい。
【委員】  学校では,内部文書として記録する個人情報に関わる部分はどなたにも開示できない。それとはこの支援シートはちょっと性格が違う。
【委員】  加害者の方も,書くということで了解を得ないと書けないということか。
【事務局】  これは,いじめではなくて不登校支援なので,不登校に至るまでの事実関係は記載する。ただ,それがいじめというふうに特化しているものではないので,加害者を念頭としたものではない。
【委員】  不登校にはいろんな理由があって,その中の一つとしていじめがもとになって不登校になったというときに,それを情報として伝えようとなったときには,加害者側の了解も得なければいけないということになるということか。
【事務局】  不登校に至るまでのその子に関する事実関係については全て書くことになるので,例えば何々君がたたいたということも事実関係として記載される可能性はある。事実関係として書く部分については本人の了解を得る必要がないと思う。
【事務局】  いじめの被害者は,普通加害者が誰かというのは知っているので,記載について本人の同意を要することにはならないと思う。
【事務局】  進学する際,進学先の学校へのシートの引継ぎというのは,引継ぎ先の学校においても守秘義務が守られるということを前提として,私学に対しても,個別の確認は必要だと思うが,一般論としてできる場合が多いのではないかと思っている。
【委員】  いじめに限っては,被害者はいいとしても加害者の了解を得ることはなかなか難しいという現状がある。
【委員】  いじめられたから不登校になったという類型は学校で不登校対策としてずっと進めていくには非常に流れとしてはいいが,対応の仕方,記述の仕方,学習指導要録の載せ方,資料の扱い方に,非常に大きな問題が残ると思う。
【委員】  不登校シートへの記載が客観的な事実かどうか。先ほどの小学校の現場からの意見は非常に重要じゃないかと思う。
【委員】  重大事態の場合には,調査を立ち上げ,調査報告書が出る。それと今の教育支援シートとは関連はするが,そっくりそのままではない。
【事務局】  不登校になった子供をどうケアするのがふさわしいかということをみんなで共有し,引き継いでいこうということがベース。ただし,引き継がれるときなどの取扱いについては,懸念をクリアしないといけないと思っているが,もう既に福生市など,こういうシートを使って引き継がれている,共有されている試みも始まっているので,更に不登校の協力者会議では詰めていきたいと思っている。
【委員】  不登校のシートは,不登校になった子供さんの方の話を聞いた上で学校がどういう判断をしたかということになると思うので,事実認定のところがずれる可能性というのは当然ある。例えば子供さんはこういうふうに言っていたとそのシートに書いて,そのあと例えば28条重大事案ということで委員会が立ち上がって,調査の結果が出れば,またその中に書くとか,客観性を担保するとかという形にしておかないと,加害をした子供たちが,何らかの形で開示されたときに不利益を受けるといった危険性もあると思う。
  それから,たたき台の方で,重大事態が発生して,外部の専門家を入れての調査ということであれば,正直1か月では無理だろう。被害に遭ったとされる子供を例えば学校に戻すといったところまでその委員会の役目として課されているのであれば,報告書を作るだけではなくて,その後の支援みたいなところも含めていろいろ考えていかなきゃいけないのではないか。
【滝総括研究官】  欠席を開始して,学校側が組織としていじめだと認知するのは,欠席が始まる前や,欠席が始まって3日とか7日とかなったときであるという可能性がある。1か月ぐらいの間に聴取結果等の取りまとめ等を整理するのは,それからあと1か月の間で不可能ではないだろう。
【委員】  支援シートに限らず記録をどう整理していくのかということを考える視点を持たなければいけない。
【委員】  ささいなものを組織に上げ,情報共有し,校内・校外の方々の応援を得ながら対応していくところで往々にして欠陥がみられ,もしもそれが重大事案に至った場合には,学校の対応に瑕疵(かし)が認められる可能性が十分出てくるケースになってしまう。そういうところでこれは不登校の対応だが,いじめの対応の充実と密接に関連しながら進めなければならない。
【委員】  学校現場は一つ一つ簡単に区切れないものがたくさんあって,短期間で処理できる問題と,時間をしっかり要する問題というものがあることを認識し,柔軟に対応できる余地を残しておかないといけない。
【滝総括研究官】  担任が勝手に判断してその場で対応するというような従来型のパターンだとリスクもあるし,その後の問題も出てくる。今回法律ができたときの最大のポイントは,ささいなことから始めて必ず複数の目で判断するということ。組織に1回上げる,組織に上げたということイコール校長が知らなかったということにはもうならないという形を取りましょうというのが法律の趣旨のはずだが,学校現場で必ずしも理解されていない。組織が現在機能している学校がどれだけあるかということをチェックしなければならない。

≪議題(3)概算要求について≫及び≪議題(4)その他について≫
※事務局から資料説明(資料6~7)
【委員】  スクールカウンセラーの配置で,貧困対策のための重点加配は具体的にどのようなことをするのか。
【事務局】  通常は週1回配置をするところだが,例えば就学援助率が高い地域において,週2回配置できるように加配するのを1,200校分計上している。
【委員】  いじめ問題等の解決支援チームのイメージとして,弁護士などによる法曹的見地からの助言ということですが,これはスクールロイヤーのようなイメージか。
【事務局】  そうである。
【委員】  いじめ予防という見地から実施しているいじめ出張授業みたいなものは,位置付けとしてはどこになるか。
【事務局】  いじめ対策等生徒推進事業の調査研究の枠組みの中で申請いただければ対応できる。


お問合せ先

初等中等教育局児童生徒課