全国的な学力調査に関する専門家会議(平成27年6月24日~)(第5回) 議事要旨

1.日時

平成28年2月2日(火曜日)15時~17時

2.場所

文部科学省 3F1特別会議室(東館3階)

3.議題

  1. 全日本中学校長会から英語調査に関するヒアリングについて
  2. 平成27年度英語力調査結果(中学3年生・高校3年生)の報告について
  3. 中学校における英語調査に関する「論点整理(案)」について
  4. その他

4.出席者

委員

耳塚座長、福田座長代理、大津委員、鎌田委員、北川委員、斉藤(茂)委員、斉藤(規)委員、齋藤(芳)委員、柴山委員、清水(康)委員、清水(美)委員、田村委員、垂見委員、土屋委員、寺井委員、戸ヶ﨑委員、長塚委員、吉村委員、渡部委員

(英語調査の検討に関するワーキンググループ委員)石鍋委員、竹内委員、根岸委員、森委員

5.議事要旨

議事1 全日本中学校長会から英語調査に関するヒアリングについて

  • 全日本中学校長会生徒指導部長の石鍋 浩氏より全国的な学力調査の英語4技能調査の実施に向けた御意見を頂き、その後、これらに関する意見交換が行われた。主な意見は以下のとおり。

【委員】
全国一斉調査なので、同日程が条件になる。実施日の調整に時間を取ることになると思うが、難しさ、あるいは可能性という点で意見をお願いしたい。

【全日本中学校長会生徒指導部長】
早目に日程を知らせていただくということが、非常に大きなポイントになる。学校独自の行事であれば、教育課程を編成する前段で日程が分かれば、変更は可能であると思う。ただし、修学旅行のような場合には、1年半~2年前に日程が決まっている。調査実施日を早目に知らせしてもらう必要がある。特に、スピーキングについては、実施に必要な教員と教室の数を早目にお知らせいただくことが必要だと考えている。

【委員】
英語教員の評価者としての力のばらつきをどうフォローするかが課題になっているが、教員採用の段階で一定のラインを設けてコントロールすることは可能か。

【全日本中学校長会生徒指導部長】
私見になるが、全国的な学力調査が実施され、今後求められる英語教育の方向性が示された時に、大学における教員養成課程の中で、そのような学習指導ができる教員をいかに養成するかが、非常に大きなポイントになると思う。そして、そのような学習指導を学んだ学生や卒業生がいるということを意識したうえで採用選考が行われると、必然的に指導力の高い教員は増えてくると思う。

【委員】
教員採用審査では、そのための対策をするという現状がある。教員採用の在り方そのものや、その接続の面を考えなければ、適切な教員が養成されないと思う。

【全日本中学校長会生徒指導部長】
資料にはないが、1点補足をしたい。全国の学校長から、4技能を別々に調査するのか、それとも複数の技能を統合して調査するのかということについて、前もって示してくれれば、今後の方向性が見えやすくなり、授業改善にもつなげることができるという意見を頂いている。この点についても検討していただきたい。

【委員】
調査実施の成否を決することになるのは、4技能の目指す方向性や今後の授業の在り方、方向性をどう明示できるかにある。それをどのタイミングで、どれだけ分かりやすく学校現場に周知していけるかということである。次の学習指導要領では、英語教育が大きく変わるということは多くの先生方が思っているが、具体的にどう変わるのかについては曖昧なままの先生方もいるからだ。
この英語4技能調査の実施も、PDCAのPが明確で具体的であれば、先生方も頑張って取り組もうということになるのではないか。

議事2 平成27年度英語力調査結果(中学3年生・高校3年生)の報告について

  • 事務局より、平成27 年度英語力調査結果(中学3年生・高校3年生)の報告についての説明があり、その後、これらに関する意見交換が行われた。主な意見は以下のとおり。

【委員】
解答例については、レベルがあるかと思うが、問題と併せて示すのか。問題の内容は、今後学校が目指す英語教育の方向性を示す、ある意味パフォーマンス課題であり、そこで表れた生徒たちの解答が目指す英語を使いこなしている姿であると捉えられるので、そういったものを示していくということが、今後の英語教育の在り方を具体的に学校現場にも伝えていくことになると考える。

【事務局】
「英語教育改善のための英語力調査の分析・活用に関する検討委員会」において分析をお願いしているところだが、解答例だけではなく、どこにつまずきがあったかということを詳細に示すとともに、指導改善例も併せて示す予定になっている。

【委員】
高いパフォーマンスを出した事例校について、全国平均点との比較で示しているが、例えば、「A1レベル」等のルーブリック形式での示し方は検討されていないか。

【事務局】
年度末に提出予定の報告書では、是非参考にさせていただきたい。

【座長】
公立中学校では、学校単位でのばらつきと生徒間でのばらつきを比べたときに、どのような知見があったか。
また、高等学校は、初年度に比べて2年目の分布の方が上方に変化している。上昇した理由はどのように解釈しているか。

【事務局】
今回は、無作為抽出で実施しているため、学校ごとの比較はできないため、学校単位のばらつきは示すことができない。

【調査官】
高等学校においては、昨年度の調査は旧学習指導要領での中で学習した子供たちであり、今年度については、新学習指導要領で学習した子供たちが対象である。新学習指導要領では、授業は英語で行うことを基本としているため、子供たちが英語に触れる量が増えたことが、分布が上方に変化した一つの要因として予想される。しかしながら、細かな分析をしてみないと、要素を断定することは難しい状況である。

【委員】
今回、話すことの調査の場合、他技能と比べて、教員の指導による違いが大変大きかった。そのため、4技能をセットで見る場合は、そのようなことが見られるようにしたら良いと考える。

【座長代理】
中学校では、教員が今回の調査にどう挑んだか、また、どのような課題を提案しているか。

【事務局】
話すことについては、対面で試験を行い採点をしてもらうが、こういった取組に余り慣れていないという意見が多かった。送付したDVDを見ながらトライアルで採点をしていただいたが、チャレンジしてみると方法が理解され、また、これを使って授業で改善してみたいという意見もあった。早く結果が知りたいという御要望も多々あった。
一方、試験会場の設営等、学校にかなり負担を掛けてしまったため、この点については工夫して欲しいとの意見を頂いている。

【座長代理】
例えば、全数になった場合にどういうことになるのかという見通しはどうか。

【事務局】
今回、高校において実施した際には、先生方や教育委員会の御協力のおかげで、大きな混乱はなかった。来年度の中学校での実施にあたっては、今後、御議論いただくことを参考にしていきたい。

【委員】
スピーキングの採点等が入ったとき、どのぐらいのタイムスパンで結果の返却が可能なのか、スケジュールに関する情報を伺いたい。

【事務局】
単年度事業のため、4月から開始という制約がある。4月に調査を実施した後、9月以降、3か月ぐらいの間に3回に分けて個票を返却している状況である。

【委員】
書くことの分布が他の技能とは異質だったという点について、見掛け上は一つの集団の分布のように見えていて、統計で言う層別のように、背後に何かグループが想定できるという点が興味深い。そのような検討が今後可能であれば、是非していただきたい。

【委員】
昨年と今年で等化された問題を使って比較しているが、その場合、恐らくプリテストを実施して難しさの調整を行っていると思うが、一部共通の問題は入っているか、それとも全く別セットの問題を使ったのか。特に話すことや書くことの問題について、伺いたい。

【事務局】
非公表の中にアンカー問題を入れている。話すことと書くことについては、レベルの調整をするための等化を行うため、プレテスト、フィールドテストも行っている。

【委員】
学ぶことにおいて、その学んでいることが好きではないという心理状態は、かなりしんどい状況だと思う。小学校で外国語活動を行った子供たちが、中学校3年間で43.2%が好きではなくなったのはなぜかということを、子供たちから聞かなければならない。やる気のスイッチが入っていない子供に4技能の言語活動をいくらさせても、ますます嫌いになることもあり得るわけで、なぜこうなっているのかということに対する我々の捉え方をもっと深める必要がある。

議事3 中学校における英語調査に関する「論点整理(案)」について

  • 事務局より、中学校における英語調査に関する「論点整理(案)」についての説明があり、その後、これらに関する意見交換が行われた。主な意見は以下のとおり。

【委員】
資料12ページから13ページにかけて、いわゆる4技能の力についての説明がある。「英語」という語を省けば、全教科に共通する汎用的な力とも受け取れる。例えば「話すこと」「書くこと」について、日本語であれば非常に流暢に、あるいは自分の思いを正確に伝えられるにもかかわらず、英語では難しいという場合がある。義務教育段階での「英語」の力を育成できないために、グローバルに活躍できる人材を育てられないことがあってはならないが、改善のためには、真の課題が英語力なのか、別の力なのか等を特定する必要がある。日本語で測ろうとしているスコアと、あるいは質問紙調査との関連について、自治体あるいは学校単位で分析はすべきだが、国においても一定の分析はしていただきたい。

【委員】
出題の方針について、基礎的な「知識・技能」を問う問題に加え、「思考力・判断力、表現力」を問う問題を出題すると示されている。もしアカデミックな能力のある人間を選抜する場合であれば、トータルで高いスコアをとる人間を採るという方針はあり得ると思うが、主な目的が調査であるときに、そこまで踏み込むのは、かえって測っているものが分かりづらくなる可能性があるのでないか。
そこも含めて統合的な能力を測ると意図的にする場合はよいが、それに関しては、少し注意深くお願いしたい。

【委員】
どの児童生徒にとっても偏りのないような内容、そして認知力を求めるのだと思う。つまり、極力、言語以外の能力は排除するというのが基本方針だと思う。テストタスクを作る上で、そういうことは注意深く、中立にということを目指すべきである。
生徒たちの能力、学習成果、それから指導方法を知ることは一番重要なことに違いない。その一方で、生徒たちが実際に何で書けなかったのか、そのテストについてどういう思いをもったのかを聞いて、次の段階のテストタスクを作る参考にするという使命もある。
したがって、オープンエンドのコメントをもらう機会も必要になると考える。最大限の中立にする努力はするが、バイアスになったようなことがあるのではないかということを知る努力をする必要があるのではないかと考える。

【委員】
英語力が把握できた後、学校での指導や研修をどう高めるかというところはポイントだと思う。一方、行政としてのフォローという観点で考えた時、ICTやALT等の外部人材の活用状況についての観点も入れてはどうか。

【委員】
長期的なゴールと短期的なゴールということを考えたときに、長期的なゴールの部分では、コミュニケーション能力や4技能の総合的な育成など論点整理で目指しているような力がある。ところが、高校入試では、リーディングが大半を占めており、スピーキングについては恐らく0%に近いような実態の中で、高校入試が目の前の短期的なゴールと考えたときに、論点整理で目指している力との乖離があることの戸惑いが生徒にも教師にも生じるのではないか。
この全国調査を入試で利用しないでもらいたいという御意見が先程校長会からあったが、逆に、このような調査が入試を牽引していくような形になるといいと思う。 また、英語の指導力向上について一層の充実が必要であると述べられているが、研修を行う際に各自治体で非常に困っているのが、英語の指導主事の確保である。付けたいスキルが明確に分かる形での調査をしてもらえると、英語の授業改善について考えるよい機会になり、それが研修の代わりにもなると思う。
さらに、CAN-DOリストを作成して指導していくことによって、このような効果が上がるというようなエビデンスもこの調査で可能になると説得力が増すと思う。

【委員】
調査の実施は、最初は非常に大変だろうが、繰り返すことで先生も慣れてくる。負担はもちろんあるが、慣れることにより、大分軽減してくる。それが3年に一度となってくると、少し間が空いて長い。もう少し短い期間で繰り返すというようなことも検討していただきたい。それは長期的に見ると、学校の負担を減らすことにもつながっていくかもしれない。

【委員】
調査問題が把握したい能力を適切に測定しているかといった時に、使える英語が身に付いているかどうかという観点から考えると、ニュートラルにそのスキルだけを取り出して測るというのは難しい。
ペーパーテストに比べて、このスピーキング、ライティングは、テスト理論的な意味で、そんなに厳密な信頼性は追わなくていいと思う。むしろ妥当性の方で、リアルな場面や具体的な幾つかのコンテクストの中で使える英語が身に付いているかどうか。そこで問題設定されていって、それらが一通りできるようになったら汎用型の英語能力が身に付いているという作り方するとよいと思う。

【委員】
問題を見て、これは明らかに英語以上の論理的な思考力なども問題に含まれると感じた。しかし、この調査の目的がグローバル人材とか、異文化理解とか、異文化コミュニケーションとなると、そういった異文化の中で、いかに自分の意見を説得力をもって言うかというところが大切だと思う。調査の信頼性、妥当性からは難しいと思うが、そこまで踏み込めば、異文化の中で自分の立ち位置をどうするか、また、それをどう表現するかが測れるのではないかと思う。
また、ある部分はテクニック的に解答できることを生徒が学んでいくことが、英語でのコミュニケーション力を学ぶということになるのかと感じた。

【委員】
今の段階であれば、CAN-DOリストを作ったか、作らなかったかというところでの調査内容になっているが、今後、CAN-DOリストの中身も問われてくるのではないか。
コミュニケーションということが強調されているが、その場合、目的、相手、場など、様々な状況を解釈する力が入ってくると思うので、CAN-DOリストの質についても、今後の細やかな調査の中では入れていってはいかがか。

【委員】
主体的な協働的な学びの観点から、インタビュー形式や生徒同士のペア・パフォーマンスが示されており、子供たちの主体的な学びを見とる評価としては、このような形式がこれからは求められてくると思う。しかし、様々な子供たちの実態がある中で、果たしてペア・パフォーマンスができるのかどうか。ペアによって表れる子供の力が違ってくるため、評価が異なると思うので、全国学力調査としてふさわしい調査方法かなど検討が必要である。

【委員】
日本語で解答することができるのかどうかというところが確認されているか。日本語でやりとりができた上で、それを英語で表現することができるかとなると、間違いなく英語力になるが、日本語でどうぞ、と言われて返答できないのであれば、もちろん英語でもできないということになると思う。その視点で英語力を捉えたときに、どういった調査が可能なのかという考え方があるのではないか。

【委員】
先ほど研修や採用の段階の話が出されていたが、多分2種類あると思う。話すこととか書くことをどう評価するかとかという研修と、この調査のためにどう採点するかという研修である。
もう一つは、この問題が公表とはいえ、実施するまでは発表できないとすると、トレーニングは実施後でしかできないということなのかどうか。調査実施後からトレーニングを開始したとすると、どれぐらいの期間が掛かるのかとか、あるいはどれぐらい掛かると想定するかという計画を具体的にする必要があると思う。
今、事務局の案は1人10分話すことの提案である。1人当たり10分ということは、例えばクラスに40人いた時に、400分掛かる。調査を受けている子は1人で、先生も1人だとすれば、残り39人は何かしているのか。
学習指導要領の実施状況調査において、特定の課題の話すことというのを実施する際にシミュレーションして、とても大変だった。フィージビリティ調査と書いてあるが、シミュレーションを行う必要があるということ、もう一つは、それでもし運営が難しかった時に、スピーキングテストでパソコンなどに向かって話すという形式の開発もしてほしい。

【座長】
次期学習指導要領では、外国語では指標形式の目標というのが設定されることになると聞いたが、外国語だけのことなのか。それとも、ほかでもこういう形で目標が設定されていくことになるのか。

【事務局】
現在、国の指標形式のもう少し詳しい目標というものを、ワーキンググループの中で審議をしていただいている。

【委員】
聞くことについても、もう少し検討する必要があると思う。大学入試センターのリスニングテストとは性格が異なるので、全国一斉にテストするというようなスタイルにはならない。仮に書くことと読むこととセットにして実施したとしても、生徒に対する説明や音声の出入りの部分で一定、時間が掛かりそうな気がする。論点整理の中には、聞くことについて記述が少ないと思われるので、加筆していただきたいと思う。
また、テストの結果を見る限り、聞くことがあまり良くないので、調査全体の中でどのぐらいのバランスを占めるかなどについても検討していただきたい。

【委員】
御意見については、たくさんの事柄ではあるが、何らかの形で反映させるべきであると思う。これを基にして、今までできなかったことが始められるということが一つの目的であろうかと思う。教員採用や教員養成についてなど、ロジスティックスな問題に関しても整備をして意識を高めていきたい。
テストを行っただけで自動的に何かが起こるということはあり得ないので、これをきっかけにして、色々な情報を先生方に提供したり、あるいは、先生方や生徒たちからの意見を受けたりしながら、診断テストとしての意味を持たせたい。終わったあと、実施して良かったと思われる調査であることを願いながら、これから作業を進めていきたい。

議事4 その他

  • 事務局より、行政改革推進会議における全国学力・学習状況調査に関する議論の動向について、報告があった。


お問合せ先

初等中等教育局参事官付学力調査室

(初等中等教育局参事官付学力調査室)