全国的な学力調査に関する専門家会議(平成27年6月24日~)(第1回) 議事要旨

1.日時

平成27年6月24日(水曜日)10時~12時

2.場所

文部科学省 15F特別会議室(東館15階)

3.議題

  1. 座長の選任等(非公開)
  2. 会議における検討事項等
  3. 平成27年度全国学力・学習状況調査の実施報告等
  4. その他

4.出席者

委員

耳塚座長、福田座長代理、鵜沢委員、大津委員、鎌田委員、柴山委員、清水(美)委員、田中委員、種村委員、田村委員、土屋委員、寺井委員、戸ヶ﨑委員、長塚委員

5.議事要旨

議事1 座長の選任等(非公開)

・事務局より、座長として耳塚委員が推薦され、承認された。
・耳塚座長より、座長代理として福田委員が推薦され、承認された。
・事務局より、資料2に基づき、会議の運営について諮られ、原案通り、承認された。

議事2 会議における検討事項等

・議事2に先立ち、座長より就任の挨拶として、全国学力・学習状況調査は、平成28年度の実施をもって10年間実施してきたことになる、成果と課題をきちんと検証して、次世代の調査のあり方を考えていくことにつなげていきたいとの発言があった。また、下記8点について、本会議の検討課題として考えていきたい旨、発言があった。
1)調査方法としての悉皆調査と抽出調査の在り方について
2)調査対象の教科について
   調査に理科が加わった他、英語の4技能についての調査の検討が始まるところであり、様々な観点から検討を行っていく必要がある。
3)測定されるべき学力の質について
   B問題のように知識の活用を問う問題が導入されているが、現在、アクティブラーニング等を踏まえた学習指導要領の改訂作業も行われているところであり、これらについてどう対応していくか。また、国際調査においては、CBT(コンピュータ・ベースド・テスト)による調査が本格的に始まろうとしているが、これをどう見るか。
4)最新のテスト理論の動向を踏まえた調査方法の検討
5)国の教育施策に資する調査の在り方
   例えば、条件整備に生かせるような知見をうまく引き出す調査設計はどうあるべきか。
6)保護者調査による家庭の文化的、経済的環境と学力との関係等に関する調査について
   子供の貧困の点でも、一定程度継続的な実施が必要ではないか。
7)都道府県、あるいは市区町村における活用を促進するような調査の在り方について
   多くの自治体で、この調査の結果を教育振興基本計画等での指標として使用しているという現状があり、地方の意見をよく聞くということも必要ではないか。
8)調査データの社会的な活用を進めるための体制作り
   現在、大学等への委託研究というのが主にその手段となっているが、これをどう広げていくことが可能か。

・事務局より、資料3-1から資料5に基づき、検討事項及び当面のスケジュール等について、説明の後、質疑応答を行った。委員からの主な意見は以下の通り。

【委員】大阪での学力調査の結果の活用の在り方について、府立高校の入試に関わり、中学校が作成する調査書に、中学校の学力実態の違いを調整するような意味で、この学力調査の結果を使用するという報道等がなされた。それについては懸念があり、あくまでもこの学力調査の目的は、教育の水準向上のための指導改善、それから施策等の改善、そして、こういった調査等を基にした知見の蓄積といったところが大きな目的であり、実施要領にも記載されているところである。
 私としては、想定を超えた結果の活用が行われるのではないかと心配している。次回の専門家会議において、これまでの経緯や府教委との関わりについて、文部科学省から対応状況や見解を教えていただきたい。また、今後の対応策として、例えば、実施要領に想定外のことが出てくると、混乱が全国に起きてもいけないので、具体的に調査の活用の在り方について書き込む必要があるか、委員の中での検討もいただきたいという気持ちでいるが、いかがか。

【事務局】この問題については、大阪府教委で、これまで相対評価で行っていた調査書の評定を絶対評価に変えるということが発端である。その際、学校間のばらつきがある中で、学力調査については大阪府全体が受けており、全国的にも受けているということで、学力調査の学校の平均点を使って評定の学校間調整を行ったらどうかということになり、4月10日に決定をされたという経緯である。
 文科省としても、想定をしていなかった利用方法であり、御指摘のように、実施要領にも明確に書いていない。我々としても、この学力調査の趣旨に照らしたときに、逸脱をしているのではないかという懸念もあり、4月15日に府教委に対し、その旨伝えているところ。
 現在、こちらの懸念に対して、大阪府教委で、検証を行っていただいており、7月1日に、当方に報告をするということが決まっている。それを受けて今後の対応を考えていきたい。
 次回会議時においては、これまでの経緯及び7月1日に大阪府教委からの報告を受けての文科省としての受け止めも報告をさせていただいた上で、先生方から御意見をいただいて、今後の対応をしっかりと考えていきたいと思っている。

【座長】結果として、実施要領を逸脱しているということになると思うが、間接的ではあれ、選抜に関わるような利用の仕方がされると、各学校は、生徒の利益という点で無関心ではいられなくなる。この学力調査の結果を相当間接的に利用するということであっても、大きな影響があるので、非常に慎重に検討する必要があると思っている。

【委員】資料3-1の検討事項1の英語4技能調査の実施に向けた検討というところで、検討の範囲についてお尋ねしたい。英語の4技能ということになると、スピーキング、ライティングが入ってくる。これらは、いわゆるパフォーマンスアセスメント系の評価であり、かなりコストと人的パワーがかかり、悉皆でやるとなると、非常に難しい問題が出てくる。
 もう一つは、評点者の質の問題があり、これも先ほど申し上げた人的パワーの問題に関わってくることになるが、そのあたりも含めて議論するということでよいのか。
 さらにもう一つ、外部団体のテストを利用するという概念も入ってきているが、それとの整合性、切り分けというのはどうなるのか。それを利用して全国的な学力調査をするのか、それとは別になされるのか。

【事務局】御指摘をいただいた点については、論点として挙げていかなければいけない点と認識している。スピーキングとライティングについては、高校3年生の英語力調査を行った時に、特にスピーキングの負担が多く、先生方に一定の研修を受けていただき、ルーブリックのような形で評価基準を提示しながら、評価をしていただいたが、どうしても時間がかかってしまうということや、評価者の質など、様々な課題が出てきている。
 一方で、タブレットやパソコンを使いながら、例えばスピーキングは録音をして、別の場で評価をするというような新たな手法が出てきたり、あるいは今回の対面で行った評価の在り方というのは、それなりの教育的効果があり、例えば先生方の指導力向上、指導改善につながるのではないかというような意見も出ている。こちらで議論いただくときには、実現可能性も見据えつつ、教育的効果、中学校の義務教育段階におけるテストの在り方ということで、議論いただければと考えている。
 資料5の1ページに、中3生を対象とし、例えば複数年に1度程度での実施を検討と記載しているのは、そういった実現可能性ということを踏まえながら検討いただくと、現実的にはこういうことではないかという論点として提示させていただいている。
 外部試験の活用については、その促進のための取組を進めさせていただくこともあるが、今回はあくまで、こちらで目的を同じく掲げながら御検討をいただきたい。

【委員】資料3-1の調査結果の取扱いの2か3に関係すると思うが、これまで学力調査は、いろいろなメッセージ性を出してきている。しかし、国が地方公共団体に対して行っている教育施策はほかにも数多くあり、その効果と、学力調査を関係付けてメッセージを出すようなことは可能かどうか。
 例えば、図書費の使用状況のデータと国語の学力との関係等というのを見るのはどうか。そういう連動があり初めて各教育委員会や各県の学力向上につながっていくのではないか。

【事務局】平成25年度時のきめ細かな調査で、教育委員会調査を実施し、施策と学力との相関を見ることをさせていただいた。教育委員会の施策と、個々の児童生徒の学力の結果については、何らかの影響はあるとは思うが、相関係数という形で見てしまうと、なかなか関係が見えづらい。そういったことも含め、今後、分析の方法をもう少し精緻にやる必要があると考えているので、この会議及び今後設置していただくワーキンググループにおいて議論いただきたい。

【座長】基本的には、施策の検証という点では、広い意味では学力というものを従属変数として、それに影響を与える要素としてどのようなものがあるかが検討の対象になるだろう。この全国調査という枠組みで調査をしたときに見えてくるかどうかという点や、あるいは、やはりそれだけを目的とした調査ではないことから、いろいろ情報収集を限定せざるを得ない点などもあることも踏まえ、検討していくことになる。

【委員】先ほどの御質問とも関わるが、やはり条件整備という面との関連性がみられないか。新しい教育方法についての教員の研究時間が確保されているか、そのための様々な施策はどの程度行われているかといった条件整備である。例えばスクールソーシャルワーカーやスクールカウンセラー、部活動の補助を手厚く行っている都道府県もあり、そういった施策と学力の間で、もし相関が出れば、今後の条件整備面での施策も進めやすいのではないかと考えている。難しいかもしれないが、視野に入れていただきたい。

・引き続き、事務局より、資料6-1、6-2に基づき、ワーキンググループの設置が諮られ、原案通り、承認された。

議事3 平成27年度全国学力・学習状況調査の実施報告等

・資料7-1、7-2に基づき、事務局より説明の後、意見交換が行われた。主な意見は以下の通り。

【委員】問題作成について、19年度は、学習指導要領との関係において、例えば、言語活動の充実ということを、ある意味では普及させる方法として、メッセージ性のある学力調査を行うという構図が取られていたかと思う。今進んでいる学習指導要領の改訂等との関係性というのはどのように考えているのか。
 また、調査実施後にマスコミ等が「良い問題」、「悪い問題」と批評するが、それに対し過敏に反応しているような感じがするが、重要な問題は堅持しながら続けていくということも大切ではないか。

【事務局】調査問題の作成については、学習指導要領の趣旨に沿って、かつ、現場での指導に生かしていただけるということを配慮して、これまでも作成している。今後もやはり同じような考え方で調査問題を作成するという方針を採っていきたい。

【委員】学力調査を続けていく中で、この調査がいかにメッセージ性を出していくかということは、常に考えていく必要がある。例えば、アクティブラーニングを想定した問題をどうするかという工夫をやっていただくことが、さらなるメッセージ性を高めていくことにつながるのかなということで申し上げた。

議事4 その他

・初回開催にあたり、各委員より意見を伺った。主な意見は以下の通り。

【委員】2点申し上げたい。1点は、様々な教科で必要になってくる資料活用能力を調査できないかということ。例えば抽出の方に移行するとか数年に1回といった形で教科横断的な資料活用能力の調査が作れればと考えている。
 もう1点は、英語について。日本の子供たちは、4技能は大切だけれども、それ以上に重要なのは、積極性とか、あるいは笑顔でジェスチャーを交えながら話ができるとか、アサーティブに話すといったコミュニケーションに関わる態度面の充実である。この質問紙調査の方で、そのようなことまで教育しているかといったことにも配慮して、4技能プラス1態度ぐらいの発想でやっていくと、日本の英語教育も良くなると考えている。

【委員】3点申し上げたい。一つは、このテストが指導と調査ということで、一つのテストで二つをやろうとしていて、結局、テストの目的にふさわしい情報がなかなか得られないというのが大きな問題かと思っている。テストの目的を分けて、その役割分担、集団スコアとして施策に役立てるのか、あるいは個人スコアとして指導に役立てるのかといった切り分けというのが大切になってくるのではないか。
 それから、スコアの適用範囲について。この目的で実施したテストの結果得られたスコアは、ここまでしか使えませんよという適用範囲を明確にすることが必要かと思う。
 もう一つは、アクティブラーニング等々、21世紀型学力とか汎用型スキルについて。色々な言葉で呼ばれているが、汎用的スキルをそのまま測定するというのはかなり難しい話だと思う。しかし、そういう力を持った子供たちが教科という具体を通してどのような成果を見せるかというところで問題作成をされていくと、良いテストになっていくのではと考えている。

【委員】調査が既に10年目を迎えるような時期に来ていることも考えると、この調査の実施自体を振り返ってみるというか、検討してみることも必要だと思っている。
 現在は、4月の第3週に調査が行われるため、実質的に、中学校3年生の学力の把握ができていない。制度設計上は仕方ないことではあるが、その部分が何かうまく工夫できないか。また、高等学校の基礎学力調査ということも話題になっているので、そことの連携であるとか、いろいろな問題を検討する可能性がある。そのような状況であるので、検討事項として振り返りの作業も必要なのではないか。
 それと関連するが、英語の4技能をテストしようということは賛成だが、実際、複数年に1回という形でやろうとしても、今のスタイルからすると、3年の間のところに入れていくような形でしか実装の仕方は難しい。そういう運用上の細かな点についても、今後検討すべき事項が幾つかあると考えている。

【委員】資料4にある全国学力・学習状況調査の目的というのは、まさにこのとおりだと思うので、これについては今後も継続していくべきだろう。こういう目的を達成するために、今の調査の在り方というのは、当然、完全なものではないので、今後、可能であればこういった点を検討すべきではないかということを3点ほど申し上げたい。
 一つは、保護者調査については何年かに1回行うというような方向性が示されているが、もう一つ重要なのは、教員を対象とした調査を少し充実させないと、指導の充実、学習状況の改善に役立てるといったところにはなかなか結び付きにくいのではないか。今、学校質問紙という形で状況を調べているが、実際に子供と接している教員を対象とした調査を悉皆である必要は必ずしもないかもしれないが、できるところから始めていくことも必要。
 2点目だが、調査対象学年は、現在、小学校6年と中学校3年であるが、小学校6年生の結果であっても、もう既に学校間の差はかなりついているという状況があるように思う。小学校6年生よりもっと前の段階で状態を把握して、格差が広がらないような施策に結び付けていくということも必要なのではないか。対象学年については専門の先生方の知見などを伺いながら、少し学年を引き下げるという観点からの検討もするべきでは。
 3点目は科目について。今後、英語が入ってくることは良いことだと思うが、必要な科目が増えるだけ、テストの数を増やしていくというのは大変な話である。そのため、先ほど、委員からあったように、分野、科目を横断したような形でのテスト、つまり国語、数学、英語というのではなく、それらを融合した総合科目のような形でのテストをして、その中で、もし観点として見るのであれば、各科目からの観点、見方というような形でのテストの仕方、テスト問題作成ということもあって良いと思っている。

【委員】教員の研究時間の確保や条件整備と学力との関連を見るという指摘と、教員を対象にした調査の必要性、この二つの意見に共感する。教育指導の充実ということを考えた時に、子供を守り育てる先生の姿、ここにすごく関心があるし、焦点を外すわけにはいかないのではないか。
 今、現場の先生方の中では、校内研究や研究授業に対する負担感の声すら出始めている。その背景には、現場の教員の多忙化があるが、また、一方で若い先生が増えて、その中で学校組織が作られていき、10年目にもなれば、学校の外せない中軸メンバーになってしまうという今の学校の現実がある。こういう姿にメスが入るような、例えば学校質問紙調査項目の充実であったり、あるいはまた違った角度からのアプローチであったりということをしていく必要があるのではないか。

【委員】地方の教育委員会の立場としての考え方を述べたい。一つは、マスコミ等で結果の公表がいろいろ言われているが、果たして、結果公表と学力向上との相関関係なり因果関係なりが出ているデータがあるのか。公表することで学力が向上するという因果関係があれば、他の因子を含めた積極的な公表のあり方も考えていく必要があるだろうし、また、ないのであれば、やはりその辺は慎重にやっていかなくてはいけないと考えている。
 もう一つは、財政が非常に厳しい中にあって、いかにお金をかけないで効果のある指導法なり教育施策を打っていくかということに対して、今、非常に危機的な意識をもっている。今後、新しい学びとか、また、いわゆる21世紀型スキルの育成を目指して授業改善を進めるに当たって、例えばアクティブラーニングひとつをとっても、こういった授業改善をしていけば大変効果があるけれども、こういった取組はあまり効果はないというようなことが、データで裏付けられた形、つまり、エビデンスベースで見えてくれば、財源の集中投資が可能になる。地方の教育委員会では、なかなかそこのところが見えないので苦慮している。
 この学力調査そのものが様々なビッグデータを持っているわけで、これまでの会議でも意見が出ているのかもしれないが、教員等にタグを付けたりして、追跡調査をやっていけるとよいと思っている。つまり、現在の調査対象は小学校6年生と中学校3年生という定点調査であるが、CBTやIRTなどの様々な手法を生かしながら、同一集団や同一の個が、どのような手立てによりどのように変化をしていったのかということが明らかになるとよい。それが明確になれば、廉価で効果的な学びがどこでも提供できるようになるのではないか。

【委員】私立の参加率が多少気になる。参加率がちょうど半分ということだが、どのような理由で、参加したりしなかったりしているのか、ある程度把握できればいい。今回、小学校の参加率が少し伸びたというのは何が背景にあるのか。もしかすると、理科を今回調査するということになったので、私立の小学校では、理科については進んだ形でやっているというような自負を持っている学校も少なくない。その結果も見たいということで参加率が伸びたのではないか。
 この理科に関しては、中学校が終わった高1レベルがPISA型の調査の年代にあたり、国際比較だと、理数系のいわゆる活用力のところも決して低くない、むしろ高まってきているが、ただし、関心、意欲という点が、国際比較では決して十分とは言えないというところが課題になっている。その点が実はこの学力調査でも課題であり、学力の3要素の三つ目がどうなのかというのがこれからの大きな課題で、そこにアクティブラーニングなどの方法論があれば変わっていくのではないかという期待があるんだろうと思う。
 そういう意味で言うと、参加型の授業などがどう展開されているかというようなことも、生徒の目から見ればどうなのかを調査したらどうか。生徒が意見を発表しているかのみを聞いていても、教員の指導の変革につながっていかない。生徒の意欲を高めていく、参加意欲を高めていく上ではどういうことが必要なのかということが分かってくるような調査に結び付けていくことができるといい。
 それから、英語に関しての調査についても、各技能が想定より伸びていないという結果が出た時に、なぜ伸びていないのか、そういう背景を調べ、変えていかない限りは、結果向上にはつながらないのではないか。

【委員】いろんなところで先生のお話をお聞きすると、先生が大変不足している中で授業を進めている。政令市の中でも中高一貫教育と一般の公立小中学校があるが、先生の数も違う学力も全然違う。やり方も違えば教科書も違うというところがあって、同じ市の中で測っても、そこでむらがある。全国調査をする場合に、先生方の置かれている環境を把握しない中で学力調査をした時に、そのようなむらがあるのに、どのように分析するのか不安である。

【委員】学力調査が、状況的にはその目的に沿わない、若しくは結果が公表された時に各自治体が違う動きを示して、その目的に沿わないような動きになっているのが、少し気になる。目的に沿わないような、想定外のもので予想されるものがあれば、ある程度出しておいて、それについて対応していっていただけるとありがたい。
 また、教員の授業力が高まれば子供たちの学力も高まると言われているが、ただ、授業力があっても、子供たちの学力を高めるときには繰り返しをさせて臨むということが、学力の結果を出すためには必要になってくる。それが本当にいいかどうかというのもある。そういう全部のことを総合的に含めながら、この学力調査を考えていく必要がある。
 今、学力の差については、教員の授業力等の違いだけでなく、地域の状況等も大きく関係し、少なからず差となって表れると思われる。また、学校によっては特別な配慮を要する児童が多い学校もある。そのときに、公表が違う形で出ていくと、大変苦慮される部分があると思っている。
 ついては、この学力調査の目的が、とても大事である。その目的に沿うように、全国の子供達のためにという視点で考えていって、この調査が生きるものになることを望んでいる。

【委員】私からは、この調査が学校現場にどのように影響しているか及び学校現場での受け止め、利用の仕方、生かし方という点から、3点ほど述べさせていただきたい。
 1点目は、やはりこの調査が学校現場に与える影響が非常に大きくて、特に今、21世紀型学力と言われているが、それがどのような学力かということをこの調査の問題によって示していく。先ほど委員の方からメッセージ性という言葉でそのことをおっしゃられたところであるが、学力調査は、カリキュラムの設計の仕方として、逆向き設計、つまり最初にゴールを示して、それに向かってどのような指導をしていくのかという設計方法があるが、そういった指針を示すものになっていく。今、21世紀型学力とはどのようなものかを議論されているが、それを分かりやすい形で伝えていくような問題を是非作り続けていただきたい。
 2点目であるが、結果が学校現場でどれだけ生々しく受け止められているかについてである。一つの例だが、研修会で教科調査官が平成19年度の算数、数学の問題、典型的な例についてお話をされ、子供の解答の傾向について話されたが、参加されている先生方から感嘆の声が上がった。そういう声が上がるということは、これまで示された結果によって、そのような印象を受けていなかったのではないか。どういうところに力を入れればいいのかが伝わるような結果の示し方について、より一層の検討があれば良いと思う。
 それから3点目だが、こういったところができていないという課題が示されたときに、例えば、4年生の時の指導が影響しているという場合もある。その学年のその子供達だけではなくて、もっと以前の指導とどうつながっているのかということが把握しやすくなるような、あるいは、今ここの部分でつまずいていることが、将来、中学校や高等学校のどの部分に影響しているのかということに目が向きやすいような、そんな結果の示し方というものが検討できればと思っている。

【委員】2点申し上げたい。私としては、この調査で1番重要なのは政策上のモニタリングであると思っている。受けた人の利害に関わるような取り扱いをすると、試験実施上の負担というのが非常に大きくなる。機密性に関してもそうであるし、公平性の担保、例えば追試なども必要になる。もし、そういう扱いが進んでしまうと、実施上の負担が大きくなり、本来の目的を達成することが大変な状況になる可能性があるということを危惧している。本来目的以外の使い方、当人の利害に関わるような使い方は極力制限していただきたい。
 もう一つは、研究体制というか、この結果を使う、あるいは学力調査の戦略を練る継続的な調査集団というか、戦略、中身の研究を進めていくチームが必要だと思う。大学に委託研究をするというだけでなくて、内部に、継続的に学力調査を支えていくチームが、社会科学的にも、あるいは教育学的にも、その教科の中身など、色々な側面の分析が必要だと思うが、その理論や考察に基づいて試験問題を戦略的に作っていくという努力が必要なのではないか。

【座長代理】8年ぐらい専門家会議に関わってきているが、調査開始から10年経つ中で、ある意味ではフェーズが変わるかなという思いを持っている。大事なことは、これまでの成果を検証しながら、いかに次につなげていくかということだと思う。確かに検証というところは、必ずしも十分でなかったところもある。次から次へと課題が投げかけられて、それに対応していくというところが多かった。せっかく長年培ってきたノウハウとかデータがあるのだから、じっくりとそれを見定めて、新たな展開につなげていけたらいい。
 そのためには、学力に関係する問題に対応するような組織とか人材を配していただきたい。中長期的な観点で、これからの日本の教育の在り方をエビデンスベースのツールを使って考えていくような、人的資源も含めての整備が絶対に必要である。
 それから、悉皆か抽出かという問題もある。悉皆を大前提として進めてきたが、悉皆でなければいけないかということに関しては、何のためのテストか、どういう方法論を用いた方がいいのかということを常に検討していく必要があるのではないか。最初に悉皆ありきではなくて、目的に即した方法をいかにして選択していくかということで、多様な選択肢を常に用意しておく必要があると思う。
 最後に、この学力調査がこれまで蓄積したことの中で良い点というのは、国がやっているこの調査が一つのモデルになって、各都道府県等において独自の取組が展開されていることである。国の調査が全てではないし、完璧でもないし、あらゆるニーズに対応しているわけではない。各教育委員会等が独自に隙間を埋めるとか、すみ分けをするというような形で、丁寧な対応ができるようにデータをそろえ、あるいは対応策を考えていくようなことが考えられる。それぞれの役割分担をもう1度全体で見直してみる。そういうことが現実に進んできていることも、広く知ってもらいたいと強く考えている。

お問合せ先

初等中等教育局参事官付学力調査室

(初等中等教育局参事官付学力調査室)