(資料1)第1回及び第2回会議における指摘事項の整理

コミュニティ・スクールの成果

  • 学校と地域の情報共有、地域と連携した取組の組織的な実施など、地域連携に関する成果認識が高い。次に、特色ある学校づくり、教職員の意識改革、学校の活性化など、学校における成果認識が続いている。
  • 発現期からみた成果認識を分類すると、短期的には学校に対する保護者や地域の理解の深まり、学校と地域の情報共有などの成果、中期的には保護者・地域による学校支援活動の活発化、特色ある学校づくりなどの成果、長期的には児童生徒の学力向上、生徒指導の課題解決などの成果が挙げられる。
  • 取組の成果として、困難な課題への適切な対応(学校運営への信頼向上)、学校支援の充実(教育の質の向上、安全・安心な教育環境)、学校に関わる人の意識の変化(教育委員会職員、教職員、保護者、地域住民)が挙げられる。
  • 自治会も祭りもない新興地域でコミュニティ・スクールを導入したところ、地域が盛り上がり自治会もできた。よい学校をつくることがよい地域をつくる。
  • 防災・安全安心なまちづくりといった授業の支援に地域人材が入ると、学校と地域が結びつきやすくなる。
  • コミュニティ・スクールの取組が充実している市では、他の設置校と比べ、保護者・地域からの苦情の減少、児童生徒の学力向上、家庭の教育力の向上などに成果が出ている。

コミュニティ・スクールの課題

  • 指定前後において課題認識に大きな変化。指定後には、学校運営協議会の成果が不明確、類似制度との違いが理解できない、制度が形骸化するなどの課題認識は大きく下がる。
  • 「不要感」、「不信・不安感」、「不能感」と分類すると、いずれも指定後には数値が低くなっており、特に「不信・不安感」は大幅に減少。
  • 未指定校が指定を受けない理由には「地域連携がうまく行われている」「学校評議員等の類似の仕組みがある」という「不要感」が根強い。
  • 指定後においても、管理職や教職員の勤務負担、活動費や委員謝礼の支弁が困難、学校運営協議会委員の人材が得られないなどの課題がある。
  • 指定年数の長さにより、指定後でも課題が大きいと感じる学校がある。
  • 教育委員会の判断と類似制度の存在による不要感を必要感に変えることが必要。
  • 人の異動への対応(新たな教職員、学校運営協議会委員、保護者の理解促進)、コミュニティ・スクールにかかる時間の創出(事務のIT化、マンパワーの強化)、財源の確保(首長部局とのコラボ)などの課題が挙げられる。
  • 学校運営協議会に直接関わっていない先生方の理解が深まっていない。また、校長のマネジメント力でCSは左右される。継続可能とするために、常に原点に立ち返るとともに、世代交代も図っていくことが必要。
  • 新任校長は地域を知らないために学校運営協議会委員にふさわしい人材がわからない。新任校長等の参考となるよう県教委が学校運営協議会委員のガイドラインを示してはどうか。

コミュニティ・スクールの数値目標等

  • 米国のチャータースクールは全校の3.3%。政府としてのKPIとして数値目標があった方がよいし、数が増えていくことは望ましいが、数にこだわりすぎない方がよい。

学校評議員制度との関係

  • 学校評議員制度が形骸化しているとの認識は、CS指定校55%、未指定校54%と、指定にかかわらず、半数以上が形骸化を指摘している。
  • 多くの学校で学校評議員制度は形骸化しており、会合開催数が年3回以下の評議員が95%を超える。また、依然として地域の名誉職が評議員になっていることも形骸化の一因ではないか。学校に足を運んで一緒に汗をかいてくれる人を評議員に選ぶとともに、会議を活性化し、課題解決のための熟議をしていく形に変えていく必要があるのではないか。
  • 学校運営協議会も学校支援地域本部も存在せず、唯一導入している学校評議員制度が形骸化している学校も多く、まずは、学校評議員制度そのものを見つめ直す必要がある。
  • 学校評議員は学校運営等への意見や学校評価を担うが、地域防災協議会や主任児童委員、青少年委員、児童館の館長等、地域の方々の支援をまとめていくものがなく、学校を大きな形で支えていく組織が必要ではないか。
  • 地域社会と一緒に子供を育て、地域社会の問題も一緒に考えていく時代の今、学校評議員の制度が形骸化しているなら、恐れずに変えていけばよいし、発展的に解消してもよい。

学校評価との関係

  • 学校関係者評価の実施率は高いが、まともに実施できているとは言い難い。評価を実施しても、教育委員会からの支援・改善が図られず、先が見えないのが現状。評価結果を踏まえ、改善意識を共有し協働を促すことがCSへの発展につながる。
  • 学校評価を実施するベースとして学校運営協議会を活用することは有効である。
  • 学校運営協議会は広がっていない要因の一つは、学校評価が十分に機能していないことにある。学校評価の結果を踏まえた改善意識を高め、地域の方々の協力を得て学校を改善していく場が学校運営協議会であり、学校関係者評価を見直しと併せて検討する必要。
  • 学校が評価されるだけではなく、地域も保護者も家庭もお互いに評価し合い、解決策を考えていく要が学校運営協議会。学校だけを評価対象にして足りない面ばかり指摘する、上に立った学校運営協議会では、全国的には広がっていきにくい。

地域づくりへの貢献の視点

  • 子供の事実に基づく学校課題の把握、少子高齢化、地域コミュニティの衰退など地域の課題に対する学校の貢献を考えていく必要がある。
  • スクール・コミュニティのような大きな枠の中で学校運営協議会を作っているものについては、より手厚い補助がもらえるという柔軟性があればありがたい。
  • 「学校とともにある地域づくり」の発想も重要で、学校を含めた地域をどうつくっていくかという哲学が大切ではないか。
  • 子供の変化だけではなく、地域の方々が自分たちの在り方を見詰め直し、次にどうしていくかを考えるのが学校運営協議会。地域力がないところにも、学校運営協議会を設置することで、地域コミュニティの活性化、再構築につながっていく事を期待している。
  • コミュニティとは、ただ単に地域・共同体という意味ではなく、そこに住む人たちが互いに自立して、お互いに助け合い励まし合い、よりよく成長していくための共同体・社会をつくっていこうという哲学。その一つのツールとして学校運営協議会がある。
  • 学校を支援してもらうスタイルはできるだけ早く卒業して、双方向で学校が外にもしっかりと成果を見せ、外に向けて得意の機能を発揮していくことも重要ではないか。

学校運営協議会と学校支援地域本部等の取組の一体的な推進

  • 学校運営協議会として学校支援活動を実施していくと、学校運営の改善や児童生徒の変容等の成果認識に結びつきやすい傾向。
  • 大玉村では、コミュニティ・スクール委員会に、学校支援、学校評価、子ども・家庭支援、広報の4つの部会を設置し活動を展開。コミュニティ・スクール委員会がハンドル、学校支援地域本部、放課後子供教室、学校関係者評価、SSWが車の車輪として活動している。
  • 学校支援地域本部と連携し学校支援を充実させることで、教育の質の向上等が図られる。
  • 東日本大震災の被災地である大槌では、学校支援地域本部の動きから始まり、地域コーディネーターを中心に、コミュニティ・スクール導入に向けた動きが出始めている。
  • 地域の方々がやりがいを持ち、子供たちを一緒に育む当事者意識を持って参画していくことが大切。課題を共有した上で、次の改革につなげられる関係づくりをすることが重要であり、京都市では、学校運営協議会と学校支援地域本部を一体で制度設計してきた。1つの学校をどう運営するか考えた時、別々の制度が動いていると現場はしんどい。
  • 第1段階、第2段階問わず、コミュニティ・スクールとしての芯をどうしていくかが大事であり、コミュニティ・スクールと学校支援地域本部の数を各々把握することが必要か。
  • 学校運営協議会と学校支援地域本部は車の両輪。審議機関とアクションする機関は連動しなければうまくいかない。学校運営協議会にコーディネーターの代表が入り、学校や教員は学校支援の協議会にも入るなど、信頼関係の構築が大切。
  • 三鷹市では、コミュニティ・スクール委員会に学校支援の部会がある。委員会で学校関係者評価を実施し、評価結果を踏まえた改善のために学校支援を実施している。
  • 杉並区では、学校支援のコーディネーターたちが学校の主任・主幹教員と分区ごとの情報連絡会を設け、意識を共有している。また、天沼校区では学校教員とCS委員、学校支援地域本部と放課後の関係者等が集まって方向性を共有している。
  • 京都市では、教育委員会の規則で、学校支援等の部会や企画推進委員会などを設置できる規則にし、学校支援を併せ持った学校運営協議会の位置づけにしている。
  • 学校運営協議会と学校支援地域本部の制度の一本化はありがたい。補助の手続きが別々だと負担が増えるため、補助金の一体的な運用をお願いしたい。事業を細分化せず大きなまとまりの補助・委託事業等、柔軟な実施形態に対応できる地域主導の在り方が望ましい。
  • 予算を細分化せず、組織横断で地域とともにある学校を推進することに賛成だが、各々の機能が少しずつ異なるため、きちんとPDCAサイクルを回すようにしていく必要がある。
  • 学校運営協議会はあくまでも学校に対して意見を述べる機関であり、学校の取組を点検評価する場合、学校支援までしてしまうと評価が難しくなるため、学校支援とはある程度距離を置いた方が役割を果たせるという意見もある。
  • 学校から要望が上がってこないとボランティアを集めても実際の仕事がない。また、学校支援の謝金と既存の活動等の謝金との関係など様々な課題の整理が必要となる。
  • 一方的に地域が学校を支援する関係ではなく、学校も総合学習を通じて地域で学ぶ双方向の関係づくりが地域とともにある学校づくり。学校運営にも参画しモチベーションを高めてこそ学校支援につながる。権限を発揮するのが学校運営協議会で、一方的に支援するのが学校支援地域本部という二分論に立って考えると長続きしない。
  • 学校支援地域本部事業は一つの事業であり、年度によって変わっていき、なくなるかもしれないが、法律で定められている学校運営協議会は継続していく。
  • 学校運営協議会で育ってきた人は教育委員などの役割を大いに果たしてもらうことが必要であるし、もっと地域社会が広がっていくような働きかけをする仕組みも組み込みながら再構築していく必要がある。学校運営協議会と学校支援地域本部の予算を一緒に組み込んで、費用対効果があらわれるような仕組みにすればよい。

今後の学校運営協議会の在り方

  • CSの役割は校長の示した経営ビジョンに意見し賛同した上で、アクションの状態を見守ることにある。アクションには、学校支援等の部会が関わるが、承認した経営方針に基づきPDCAが機能しているか評価し、次年度の学校経営に生かす体制づくりが大切。
  • 海外のように、保護者や地域が学校に対してクリティカルフレンドとして対応していく発想が必要で、学校運営協議会にその機能をどのように保障していくかが重要ではないか。
  • 学校運営協議会を核にしながらスクールコミュニティという大きな広がりを持って、地域づくり、町おこしにもつながるツールにしていこうとした場合、学校支援地域本部事業も一つの部門としてそこに組み込んで、役割を果たしてもらうことがあってもよい。そうした今の時代に合った一つのデザインを作り直していくことが必要ではないか。

行政部局内の連携

  • 教育委員会内で指導系の先生方と社会教育の担当者との連携がされていない県が多い。同じ県、同じ市町の教育の中で情報の共有化、連携をしっかり進めていくことが重要であり、学校教育と社会教育との連携を重視した研修を実施していく必要がある。

PTAとの関係

  • コミュニティ・スクールの在り方の中で、直接の保護者の存在をどう位置づけるのかという議論が必要ではないか。元PTAの役員が学校運営協議会の委員になったり、支援本部に関わったりするが、在籍する児童生徒の保護者と、卒業した後の地域で活躍している保護者との協力をどうしていくのか議論が必要ではないか。

地域との協働による学校・子供の抱える課題の解決

  • 困難な状況に直面した時こそ、保護者や地域の方々と課題を共有し、ともに学校を運営していくことが大切。保護者や地域の力を統合する場として学校運営協議会は絶対に必要。
  • 大玉村ではコミュニティ・スクール委員会の下に「子ども・家庭支援部会」を設置し、SSW等と連携し、子供たちを巡る問題の解決に向けたニーズの把握、支援を実施している。
  • 大玉村の「子ども・家庭支援部会」の取組は非常にすばらしい。コミュニティ・スクールの問題は、多様な視点で議論していく必要があり、子供の貧困問題や非行など、学校の中で声にならない声をどう拾い支援していくかが課題。
  • コミュニティ・スクールの家庭支援教育部会では、不登校の子供の居場所づくりについて協議し、ボランティアの方にお願いし、その子供が公民館の一室で活動する時間、寄り添える体制を整えた。
  • 支援のベースは、学校が真に困っている課題について保護者や地域の方々を巻き込んで話すこと。不登校やいじめの問題は学校から外に発信できず苦しんでいる部分。学校がどんなに困っているか共通の理解を得る場が学校運営協議会の場。
  • 非常にプライベートな部分の解決には公的な形でSSWやカウンセラーが関わる必要があり、そうした方向に働きかけるのもコミュニティ・スクールの役割ではないか。
  • 家庭教育支援チームの方々がコミュニティ・スクールや学校支援の動きと協働し、学校の抱える学力や荒れ等の課題を意識して、アクションをしていくことも考えられる。
  • 家庭教育支援チームによる全戸訪問の取組など、訪問型のアウトリーチの手法により、声なき声を拾い、支援を届けていく取組が広がっているが、そうした取組とコミュニティ・スクールとの関連に期待したい。
  • 非行や学級崩壊など学校の困り感にどれだけ寄り添えるかが拡大・充実のポイントではないか。ソーシャルワークの視点で取り入れるのは、住民を巻き込んで課題をオープンにし、地域の方々が関わっていくこと。そうすることで目標が一致し学校全体が変わっていく。
  • 京都市では、生活保護率・就学援助率が高い学校でもコミュニティ・スクールに取り組んでいる。一人でも学校のことを思ってくれる人がいれば、その人を巻き込むことで、コミュニティ・スクールに発展していくことが可能ではないか。地域力のある学校で取り組みやすい側面はあるかもしれないが、必ずしもきれいにリンクしている訳ではない。

幅広い普及・啓発

  • 都道府県ごとに「CS推進協議会」を設置し、CS推進フォーラムを開催してはどうか。現場の校長に理念等が伝わっていないため、もっと身近な地域でフォーラム等を開催し、学校・教育委員会の研修の機会を設けてはどうか。
  • 町村は、学校がうまくいっており、既存の仕組みで十分という意識があるなど、学校運営協議会への必要感がないのでは、細かい情報も町村に十分伝わっていないのではないか。
  • 地方では少子化が進み、学校も統廃合が進んでいる。過疎化に歯止めをかけ地域を活性化させるためにも、地域とともに学校に新たな魅力を創出していく必要があるのではないか。
  • 本来、コミュニティ・スクールはしんどい学校をよくするものだが、コミュニティ・スクールを導入することにより、豊かで人が集まる校区、人も集まらない校区とで一層の校区間格差が生まれるのではという危惧があり、導入に踏み込めない県もあるのではないか。
  • コミュニティ・スクールの協議の中にはSSWや福祉の人など様々な人が入り、皆で考える場が絶対に必要だということを積極的に情報発信し、理解を促す必要がある。
  • 学校運営協議会への不要論に対し、子供たちの荒れなど課題が発生した際に生きてくるという危機管理の視点での必要性をしっかりとPRしていく必要がある。
  • 町村の課題は人口減少によりコミュニティが成立しなくなりつつあること。そうした地域で学校運営協議会の設置はコミュニティの再生、町おこしにつながる。教育委員会改革を踏まえ、首長に旗を振らせ、首長と教育委員会が一緒に進める姿勢も必要ではないか。

コミュニティ・スクール等の多様性と裾野の拡大

類似の仕組みの機能化

  • 何のためにコミュニティ・スクールを導入するかという目的が重要。あくまで、子供や大人の課題解決のための仕組みとして有力なツールの一つに過ぎず、学校運営協議会や学校評議員、学校支援地域本部、学校評価を別々に捉えるのではなく、一体化して捉える必要。
  • 「CSへの発展をめざす学校」づくりの構想として、学校評議員、学校支援ボランティア、学校関係者評価など、今ある資源に価値を見出し、PDCAに生かすことが考えられる。具体的には、(1)形骸化した学校評議員の仕組みを見直し熟議する組織に転換し活性化、(2)学校支援ボランティアを創設し地域人材の積極的活用、(3)学校関係者評価を改善し評価者に学校評議員を活用、を組み合わせることが考えられる。
  • 学校評議員やPTA代表なども含め、様々な人が総掛かりでよい学校をつくるというガイドラインを都道府県や市町村で作成し示せるとよい。
  • 地域によってコミュニティ・スクールの形は様々。学校運営協議会がなくとも、学校支援地域本部を主体にしたもの、学校評議員を主体にしつつ移行していくものなどもコミュニティ・スクールという柔軟な発想もあってよいのではないか。
  • コミュニティ・スクールの多様性について議論する上で、各々の取組の中で、コミュニティ・スクールの要件・要素がどのように存在しているかを見ていく必要がある。

任用規定の扱い

  • 学校現場の方から、人事にまで口を出されるのは面倒という声を聞く。学校運営協議会の委員が学校経営の味方になるという視点に立つ必要があり、校長がビジョンを描き、学校経営に対し明確にスタンスを示す中で、それに対して意見具申が言える。
  • 現場の受け止めとしては、任用規定に対するハードルが高い。あくまで任意の規定であり、地教行法に基づけば、任用規定のないものも認めるという捉え方を示してはどうか。

小中一貫校のコミュニティ・スクール

  • 大玉村では、統合運営型コミュニティ・スクールとし、5校園(幼稚園2園、小学校2校、中学校1校)の学校運営協議会を単独に運営するのではなく、一体的に運営(委員が5校園の学校運営協議会の委員を兼ねる)している。
  • 学園全体のコミュニティ・スクール委員会とは別に、個々の学校運営協議会において、学校ごとの課題を話し合う機会も設けている。
  • 小中一貫教育が進められているが、学校運営協議会は制度上学校ごとに指定する規定。中学校区単位でどういう制度構築ができるかということを検討する上で必要な人的体制を支援するインセンティブがないと、全国にはなかなか広まりにくいのではないか。

魅力(インセンティブ)の提供

  • 大玉村では公費でコーディネーターを配置し、学校運営協議会の運営事務を任せることで学校の負担軽減を図った。取組の継続にはコーディネーターの継続配置が必要。そのほか、理解促進のための教育フォーラムの開催、漢検・英検の実施など活動への財政支援が必要。
  • 学校運営協議会に関わった事務職員はコーディネーターや連絡調整等を行っているが、学校運営協議会の運営にはマンパワーが必要である。
  • 全国的に広げていくためにはインセンティブが必要。立ち上げ支援から定着まで、4~5年のスパンでの支援があるとよい。当初の学校の関わりが重要であり、教員・事務職員の人的な加配を重点化することが望まれる。あるいは、後の2~3年はコーディネーターの養成・配置にシフトしていくという指定の仕方も考えられる。
  • 中学校区単位の指定にシフトしていくためにも、中学校区での指定に対してより過重な人的配置のインセンティブがあると指定しやすい。
  • 学校運営協議会の導入には教職員にかかる負担が非常に高いため、学校のガバナンスを支える体制として、導入校への教員加配、中学校区単位での事務職員加配ができないか。

取組内容の充実と活性化、人材育成

学校の組織としてのマネジメント

  • 学校運営協議会、評議員制度、支援本部のいずれも肝心なのは情報と人。学校で抱えている課題をまとめ、まずは教職員が共有し、地域が共有することでまず土台をつくること、そこにどういう立場の人がどこの組織で関わるかということが非常に大事。
  • 情報の共有化、学校の中の校務分掌の在り方も含め、学校の課題に対する組織づくりが大切であり、継続性のある人員配置・育成の在り方を検討していくことが必要ではないか。
  • 事務職員も含め、教職員が全体で関わっていくという意識改革が必要。事務職員が運営面・経営面に参画していき、地域との連携や広報等を積極的に進めていくんだという意識改革もなされていかなければならない。また、人も併せてハード面での場づくりも重要。

教職員等の意識改革

  • コミュニティ・スクールを通して、学校の体質改善、教職員の意識改革を図り成長していく必要があり、教職員の人材育成の手段の一つとして捉える必要がある。
  • 10年間の取組の中で、先生たちの中に一緒にやってよかったという成功体験が重なり、コミュニティ・スクールの文化が浸透してきた。現在は、全ての教職員が学校運営協議会委員と懇談する機会を設けるなど、理解を促す取組も進めている。
  • 学校支援のボランティアは“子供たちのため”には熱心だが“学校のため”にはなかなか結びついていかない。“学校のため”に結びつけるには、学校現場の受入れに課題がある。行政職員と有志のコーディネーターとが一緒になって、勉強会や新任コーディネーターの研修会を企画しているが、お互いの状況をよく知ることが“学校のために”につながる。
  • 教職員は異動し、学校運営協議会委員も保護者も変わる。立ち上げた時だけでなく、常に丁寧に理解を求め、コミュニティ・スクールの文化を地域に定着させていくことが大切。
  • コミュニティ・スクール委員会で研修会を開催したり、教員、PTA、支援本部、学校運営協議会等のメンバーが熟議を開催するなど、意識の啓発と、文化の継承を図っている。
  • 教職員と学校運営協議会委員、コーディネーター等が一緒に研修する機会を充実していくことが必要であり、共通認識を持って学ぶ場がないと足元がぐらついてしまう。
  • 地域コーディネーター育成の研修は、家庭教育アドバイザーの研修も一緒に兼ねて実施。コミュニティ・スクール等の研修会にも家庭教育アドバイザーの方は数多く参加している。

教員養成課程への位置づけ

  • 山口大学の教職大学院のカリキュラムの中にコミュニティ・スクールの授業を設けていただく方向。教員養成課程におけるコミュニティ・スクールに関する学びの充実が必要。
  • 教員全体にコミュニティ・スクールに対する理解・意識が行き渡らず、学校間の意識の差が大きい。教員全体が関わるという意識を持たせることが大切であり、大学の教員養成課程において、社会教育との連携、コミュニティ・スクールの理解を学んでいく必要がある。

校長に対する研修

  • コミュニティ・スクールの視点を入れた形で、県として求める校長の学校経営の水準を示すとともに、校長の研修を徹底している。
  • コミュニティ・スクールによる学校づくりの視点を取り入れた論文・面接試験の実施など、管理職の選考要件としてコミュニティ・スクールを位置付けている。
  • 校長の管理職の試験においてコミュニティ・スクールの理解を促すことが必要。
  • 今後のコミュニティ・スクールの充実に向けた研修プログラムの作成に取り組んでいるが、組織作り、熟議の場づくり、マネジメントと評価指標づくりの視点が重要である。
  • コミュニティ・スクールの充実・普及のためには、校長等への研修を実施し、コミュニティ・スクールを意識した学校経営に当たらせることが必要である。また、各市町の教育長に対する研修も重要である。

負担の軽減

  • 事務局の人がいなくても継続して運営していけるよう、運営部会を設けて、議事録や次回の協議事項等の調整も運営部会が実施する体制にしたり、評価アンケートの作成・分析・報告も全委員が平等で担当するなど、体制の工夫をしている。
  • 教育委員会の理解・協力が必要というが、教育委員会もアップアップ。教育委員会・学校が何をするのか、事務の再配分を整理する必要があるのではないか。
  • 学校現場が非常に忙しくなってきている中で、新たな事業に対する負担感・抵抗感があり、インセンティブも含め、管理職や教員への理解の促進が必要である。

財源の確保

  • 大玉村では、今年度からふるさと納税の用途に“子供の教育”という項目を設け、独自の教育財源を確保する工夫をしている。

都道府県・市町村の役割

  • コミュニティ・スクールの指定の決め手は「教育委員会からの働きかけ」だと指摘する学校が約8割の状況。
  • コミュニティ・スクールの充実に向けて最も重要なのは、市町の教育長の意識改革。自身の設置している学校の将来像のイメージ化、社会総がかりで子供を育てる仕組みづくりに対する意識を持ってもらうために、県として市町に積極的に働きかけている。
  • コミュニティ・スクールの視点を入れた形で、県として求める校長の学校経営の水準を示すとともに、校長の研修を徹底している。(再掲)
  • 県教委の中には、義務教育に積極的に関わり支援していくタイプと、市町村に委ねてしまうタイプがあるが、県教委がいかに義務教育を支援するかが重要である。
  • 県の長期教育総合計画には、コミュニティ・スクールの文字が出てこない。県が、頑張っている小さな市町村をしっかりと支援してことが大切。
  • 都道府県ごとに「CS推進協議会」を設置し、CS推進フォーラムを開催してはどうか。現場の校長に理念等が伝わっていないため、もっと身近な地域でフォーラム等を開催し、学校・教育委員会の研修の機会を設けてはどうか。(再掲)
  • 過疎になればなるほど学校の重要性が問われる。人づくりをする町こそが地域再生が行われる町になるのであって、これからの学校経営の姿を教育委員会が示すとともに、町に学校があることの重要性を町ぐるみで再認識する意識を盛り上げていく必要がある。
  • 以前コミュニティ・スクールのフォーラムで、発表校以外に県の関係者が来ていなかった回があった。そこに根強い課題が表れているのではないか。
  • 新任校長は地域を知らないために学校運営協議会委員にふさわしい人材がわからない。新任校長等の参考となるよう県教委が学校運営協議会委員のガイドラインを示してはどうか。また、学校評議員やPTA代表なども含め、様々な人が総掛かりでよい学校をつくるというガイドラインを都道府県や市町村で作成し示せるとよい。(再掲)
  • 山口県は全国的にもコミュニティ・スクールが多い県だが、校長の学校経営の水準の一つにコミュニティ・スクールの運営を位置づけている。新任校長にはコミュニティ・スクールの研修を悉皆で受けてもらっている。
  • コミュニティ・スクールの質を確保するために、県としてプログラム開発や研修を仕組んでいくなどの支援をしている。地域の名士を入れただけではうまくいかないため、実行部隊のメンバーを入れ、教員が提案できる組織をつくることにより、成功している事例がある。そうした先進校を各校の取組にいかせるよう、先進校に校長を集め、研修を徹底している。

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初等中等教育局参事官(学校運営支援担当)付

(初等中等教育局参事官(学校運営支援担当)付)